香港のやたら長い一夜
「ちょっとちんこ貸せ。」
目の前で仁王立ちし、躊躇いも恥じらいも無く女はそう言った。
黙っていれば清楚にも見えるこの美少女が自分と同じ『国』である事は知っている。
それは向こうも同じだろうし、会議があった際には擦れ違うぐらいはしたかもしれない。
その程度の相手に初対面でいきなりこんな事を言われ、正直香港は大分面食らっていた。
「…ユーは一体何をセイイングしているんだ?」
多くの国が参加する会議が終了し、滞在しているホテルに戻ろうと香港が道を歩いていた所で言われた為、通行人何人もがぎょっとした様にこっちを見てくるのが分かった。
「もう一度言おう、香港、ちょっとちんこ貸せ。
今夜から明朝にかけ、お前のちんこ…もとい男根…もといペニ」
割と良く通る声でそうのたまうベラルーシの口を香港は咄嗟に手で塞いでいた。
「…この先に俺がステイしているホテルがある。
続きはそこで聞かせて頂こう。OK?」
ギャラリーが出来かけていた。
「承知した。」
ベラルーシは前を向き少し闊歩した後、未だそこでぼんやりしている香港に早くホテルにに案内しろとばかりに睨んできた。
これからどうなるのかあまり考えたくも無いが、とりあえずは自分を待つ少女の元へ急ぐことにする。
割と名の通ったホテルに着き、香港が自室のドアを開けるとベラルーシがするりと部屋に入り込んだ。
まるで猫だな、などと思いながらドアを施錠し、視線を部屋に向けるといつの間にか目の前にベラルーシが立っていた。半裸で。
「さあさっさとベッドに横たわり海綿体に血液を寄せろ。」
「ちょっ……」
香港は慌てて視線を逸らすが、頭に血が上ってくる。
黒く、レースで飾られた可愛らしいベビードールと下着、ガーターベルトと黒いストッキングだけを身につけているのは全裸寄りの半裸か。
「ああ、『ちんこを貸せ』の意味が分からないと言っていたな。
今夜から明朝にかけ私のセックスの練習に付き合って貰いたい。」
部屋の奥のベッドに向かいながら若干楽しそうな声音で言った。
「…ホワイ?」
「兄さんの言う『ギャップのある女』に成る為だ。」
兄とはロシアの事だとに思い当たる。
そう言えば彼女はいつも彼を追う様に歩いていた。…妙に熱のある眼を向けながら。
「兄さんがリトアニアとこんなことを言っていた。
『何でも巷ではツンデレが流行っているらしいですね。』
『へえ…それって何?』
『普段はツンツンしてるけど、二人っきりになったらデレデレ甘えて来る人の事らしいですよ。』
『ふーん…』
『ギャップが良いって事でしょうね。ロシアさんはどうですか?ツンデレ』
『デレデレさせる間もなく押し倒したいかな。』
『あはは…』
『純情ぶってたけどヤッてみたら相当なテクニシャンで淫乱だと尚良いかな。言葉責めのネタにしやすいし』」
ベラルーシはベッドの前でその会話を再現する。
「私は兄さんに言葉責めされたいのよ!
…その為にはテクニシャンなツンデレ淫乱で無ければならぬ。
淫乱になるのはまあ媚薬でも何でも飲めば良い。
自分で言うのもアレだが…、割と私はツンデレだと思う。」
ユーは俗に言うヤンデレではないのか、と香港は思ったが黙っていた。
サイドテーブルの上に置かれたきちんと畳まれた服の上に、ナイフが数本見せつけるかの様にむき出しで置かれていたから。
ベラルーシは続ける。
「…しかし正直私はあまりセックスが上手くない。
そこでセックスの練習がしたい。付き合え。」
「…俺に拒否するライトは?」
「そんな物は、無い。」
軽く口角を上げながらナイフを取り、彼女は刃先を見詰めた。
「昨日研磨したばかりだからな、切れ味抜群だ。
精液意外の物を垂れ流したく無かったらさっさと服を脱げ。」
諦めた様に香港は上着をソファに投げた。
もうどうにでもなればいい。
脅されていること、相手が病んでいることを除けば、今自分は大変な据膳を前にしている筈だから。
「しかしお前の口調…なんかムカつく。」
香港が半分自棄になりつつ服を脱ぎ捨てるのを見ながらベラルーシは言う。
「………ユーはスィンクしたことを少しはオブラートに包むべきだ。」
口調が妙なのは自覚しているので否定はしない。
ベラルーシは香港の言葉を華麗にスルーし、自分の服をあさり、香港に何かを投げ付ける。
「これを付けろ。許可するまでは外すなよ。」
ギャグボールだった。
泣きたくなった。
「………」
「ほら、黙って居ないで早くつけろ。
お前なんとなくマゾっぽいから付けてる自分を考えるだけでも勃起モンだろう?」
香港は内心号泣していた。
「…ユーが俺の口調をディスライクなら…サイレント、キープする…
だから、これは勘べ…」
「何か言ったか?」
にこにこと笑いながらベラルーシはナイフを手に取り照準を股間に向ける真似をした。
「ああ、自分で付けられないのか。
仕方が無いな、私が付けてやろう。」
香港の元に行き、ギャグボールを手から取る。ナイフを持ったまま、笑顔を湛えて。
「…お願いだからナイフをプットしてからそれを付けてくれ。」
「下さい、だろ?」
「………付けて下さい。」
ベラルーシの満足そうな顔を睨む事しか出来ない自分があまりに情けなく、香港は目にうっすらと涙が浮くのを感じた。
「感謝しろよ。」
「…………」
自分が付けるとはゆめゆめ思わなかった器具がベラルーシの白い指に取られ、付けられる。
その際、ベラルーシのシャンプーだか香水だかの甘い匂いが香港の鼻腔を突く。息子が素直に反応するのが悲しく、香港は激しい自己嫌悪に陥った。
「お…付けただけで興奮したか?」
ニヨニヨと嫌な笑みを浮かべながら、ベラルーシは下着越しに香港のそれを指の腹で執拗になぞる。
「っ…!」
「さあ、下着を脱いでベッドに横たわれ。」
ベラルーシの笑みがこの上なく恐ろしく見えた。
二人分の体重に、ベッドのスプリングが小さく悲鳴を上げた。
ベラルーシは香港の上に跨がると、満足そうに顔を見詰める。
香港は太めの眉をしかめてベラルーシを睨んでいるが、ギャグボールのせいで唾液が垂れて来ているその顔は、唯唯ベラルーシの征服欲を満たすに過ぎなかった。
「睨んでいても下半身は素直だな。」
「ッ!」
すっかり上を向いたそれを後ろ手に扱く。
カウパー液が意思とは裏腹に零れ出ているのが分かる。香港は悔しいが感じていた。
「テクニシャンになるにはフェラと騎上位の腰使いからかな…スマタとパイズリはまた後でやろう。
おい、フェラの練習をするぞ。ちょっと脚開け。」
なんかもうどうでもいい香港は言われた通りに脚を開く。
両足の間に座り、鈴口を口に含むと、ねっとりと舌を絡めた。いきなりの生暖かい感触と刺激に香港の腰が跳ねる。
焦らす様にゆっくりと口腔内に収めて行く。舌を慣れないなりに使い、顔を上下に動かしながら手でも刺激を与える。
上手い所に当たったらしい時は、身体がびくりと反応し、声になっていないが喘ぎが聞こえる気がした。
自分の愛撫でよがって貰うのは、案外嬉しい物だった。兄さんは、この男の様に自分の口で喜んでくれるだろうか、とベラルーシは思う。
怒張したそれから口を放し、香港の顔を覗く。
眉を潜めたまま目を逸らされる。しかし顔が真赤で、下手なりにも快感を与えられたらしいことは明確だった。
ニヤリと笑うと、ベラルーシはまた両足の間に滑り込む。
「一回イッとけ」
唾液とカウパー液でぬらぬらと光るそれの鈴口を咥え、強く吸い上げた。
「…!」
「ん、」
自身が痙攣しながら熱いものがベラルーシの口の中に吐き出される。
量と濃さに少し驚いてから、飲み込みにくいそれを無理やり喉に流す。
「…溜まってたのか?」
腹に跨がり、顔を覗きこみながら問うと、更に顔を赤くして目を瞑った。図星なのだろう。
香港はベラルーシが思っていたよりもずっとうぶな男だった。
あまり女慣れしていない事がよくわかる。
英語混じりのこの妙な口調が周りの女を寄り付かせない理由に違いなかった。
ベラルーシそう確信して、少し勿体ないと思っている自分がいることに気付く。
顔は、そして多分中身も良いだろうに、と。
香港の腹をそっと撫でる。鍛えられ、適度に筋肉が付いている。
女とは、私とは、違う身体。
………兄さんとも、違う身体。
そう思った瞬間、下半身の疼きがベラルーシを襲った。
何故かは、よく分からなかった。
分かりたくもなかった。
「っは…」
身体が熱い。
頭が、顔が熱い。
ベラルーシは腰を浮かせ、自分の黒いショーツに手を入れる。
秘部は既に蜜を大量に溢れさせていた。指が触れ、くちりと水音がする。
フェラに夢中な間は気付かなかったが、下着は最早あまり意味を成していなかった。
香港は暫く前に気付いていたらしい。香港のそれは再び存在を主張していた。
「………香港」
名を呼ばれ、それまで閉じていた目を開け、また勃起したことをからかうんだろうと言いたげな顔を香港はベラルーシに向ける。
「…!」
明らかに欲情したベラルーシの顔がそこにあった。
今までの態度が全て嘘だったかの様に、顔を赤らめ、恥じらいのせいか視線を下に向け、少し乱れた呼吸をしている。
「…ギャグボール……外していいぞ。」
「……………」
「ずっと寝かせておくつもりだったが…気が、変わった。
一度位なら、練習相手であるお前に主導権を握らせてやらんでもない。
…言っておくが報酬として、だ。それ以外の感情など無い。」
口元でもごもごとそう喋る少女の姿は、香港の劣情を煽る。
香港はギャグボールを外すと、俯くベラルーシの腕を掴んで身体を自分に引き寄せた。
「ちょっ…!」
腹筋同様鍛えられた胸板に身体を密着させられたかと思うと、両腕でぎゅっと抱き締められる。
「ベラルーシ」
「何だ」
「ロシア…ユアブラザーとは、こういう事をする関係なのか?」
「………」
腕の中の少女は答えない。
「ソーリー、嫌なら答えなくていいんだ」
「…『そういう関係』だったら、ここでお前なんぞを相手にセックスの練習をする訳が無いだろう。
兄さん好みの女になれば、いつか兄さんは私を『妹』で無い一人の『女』として見てくれる。
『女』として享受出来る愛は『妹』の立場の比では無い。
…だからこそ私は『そういう関係』を兄さんと持ちたい。」
どんなに好みの女になっても、ロシアからベラルーシに注がれる愛が『女』へのそれに変わる事は、恐らく無い。
香港はなんとなくそう確信した。
そして、ベラルーシがそれに薄々でも気付いているだろう事も。
「トレーニング中は、俺オンリーを見てろ。」
香港はそう言うと、ごろりと転がってベラルーシを組み伏した。
「…最中位は私が兄さんの事が思い出せない様に努力するんだな。」
ベラルーシはくつくつと笑う。
香港はベラルーシの額に唇を落とし、「そうセイドしたことを後悔させてやる。」と言って笑った。
舌を絡め合い、貪るようにキスをする。
顔の角度を変える度、舌を動かす度に、くぐもった声が小さく漏れる。
口をゆっくりと放すと、ベラルーシは少し名残惜しそうにして唾液で濡れた唇を拭った。
「…何だ、もう『兄さん』をスィンク出来なかったか?」
ニヨニヨしながら言う。
「はっ…戯言を抜かすな。まだまだ余裕だ。
兄さんへの思いは此式では揺るがん。」
「ふーん…?」
「うあっ?!」
濡れたショーツ越しに秘部に触れてやると、ベラルーシの身体が大きく跳ねる。
「このままでも簡単にイン出来そうな濡れ具合だ。」
「っ言うなっ…!んっ」
筋に沿って上下に軽く撫でる。
与えられる快感が微量すぎてどうにももどかしい。
ニヨニヨ顔のまま香港は続ける。
「ユーが跨がってた時から、ウェットなのは十分過ぎる程分かってたけど?」
「や…あ」
「ペニスをしゃぶりながら感じるなんて、ユーはとんだ淫乱だな。
媚薬などユーズする必要は無い。」
秘部を触るのを止め、ベビードールをたくしあげてその白い身体をまじまじと眺める。
人種の違う白は、妖しく香港を惑わせる。
腹に手を這わすと、その細身からは想像出来ない程身体が鍛えられているのが分かった。
「…筋肉付いてて可愛くもなんともねえって言いたいんだろ。
この太眉毛弟二ごうひゃあ!」
ベラルーシは香港の地雷をモロに踏んだ。
香港はブラジャーを一気にたくしあげると、頂きに軽く歯を立てた。
「はあぁっ…おまっ…!
いきなりこれはっ…卑怯っ…あっ」
「黙れ。触れられたくもない呪いの事に触れたユーが報いを受けるのは当然だ。」
「そんなの知らな…ひゃあああん!」
既に固さを持ったそれを強く吸い上げられ、鼻に掛かった甘ったるい声が出る。
「随分とエロティックな声で鳴くんだな。
ちんこちんこと下劣な事を連呼していた口からこんな扇情的な声が出るとは、正直サプライズだよ。」
「うるさ…ん」
胸を両手で容赦無く揉みしだきながら、唇を重ねる。
先ほどしたのよりも長く、執拗なキス。
「ユーはまだ兄さんの事をスィンクし続けているのかい?」
「当然、だ…!」
口では強がってみたが、ベラルーシは目の前の男の行動に翻弄されてロシアの事など考えている余裕が無かった。
「なかなか手強いな。」
そう言って香港は笑う。
まるでその強がりなど見抜いているとでも言う様に。
蕩けてしまう。流されてしまう。
「ペニスをインサートされてもまだベラルーシは兄さんを」
「出来る!」
香港が皆まで言わない内に、意地でそう言ってしまった。
多分無理だとは分かっていたのだけれど。
「じゃあ忘れさせてやるよ。」
香港は既に意味を成していないショーツの紐を解き、ベッドの下に放り去る。
下半身が纏っているのはガーターベルトとストッキングだけという、なんとも妙な格好にさせられた。
「御開帳っと」
M字開脚させられ、ベラルーシの秘部が香港に曝け出された。
ベラルーシは羞恥で顔が赤らむのを感じながら、『御開帳』が『open the sesami!』じゃ無くて良かった等とどうでも良い事に安堵していた。
「さて、ベラルーシはこれから俺にどうして貰いたい?」
「………この性悪」
「朝まで視姦してても俺は構わないけど?」
「…………………触って…」
「『Please』は?」
「………………………触って、下さい。」
死ぬ程恥ずかしかった。
睨んでやろうと思ったがその前に快感が身を走った。
「んんんっ!」
「クリトリスが膨張している。」
ぷくりと膨れたそれに愛液を擦り付けると、ぐりぐりと指の腹で刺激する。
「あっ、ん…香港…」
「………ブラザーの事なんて、忘れてしまえ。」
香港は既に痛い程怒張した自身を数度手で扱くと、ベラルーシの入り口にあてがった。
「…OK?」
ベラルーシは腕を香港の背中に回してから、小さく頷いた。
「俺オンリーを見ろ。」
「ん、あああああっ!」
一気に奥まで貫くと、子宮口に先端が当たっていると分かった。
「キツ…」
「ひっ、あっ、あああ」
ベラルーシの中は良く締まり、蠢く肉は香港自身に絡み付く。
「もう、ムーブしても平気か?」
切羽詰まってそう問う。
こくこくと頷くベラルーシもまた余裕が無かった。
ギリギリまで引き抜いて、奥まで打ち付ける。今までとは比べ物にならない快感が二人を襲う。
「ソーリー…もう自制、無理…」
「ひっ、ああんっ」
香港はリズミカルに腰を動かし始める。卑猥な水音が部屋に響いた。
「あっ、あっ、香港っ…私っ…も、駄目ッ…イッちゃ…」
「ベラルーシっ…!」
そろそろ二人とも限界だった。
香港は大きく腰を引くと、最後とばかりに強くベラルーシの中に突いた。
「あああああッ!」
先にベラルーシが絶頂を迎えた。
「――――…ッ!」
ベラルーシが膣が大きく収縮する刺激による快感は凄まじく、香港は中に精を吐き出した。
日の光が窓から差し込んでいる。
外では小鳥がさえずり、樹々は柔らかくその美しい葉を揺らす。
文句の付け様の無い爽やかな朝だった。―――香港一人を除いて。
一回戦の後、オーガズムでぐったりしているのをいいことに、香港はベッドの縁にあったギャグボールをベラルーシに装着した。
そして自分が脱ぎ捨てた衣服からネクタイを抜き取ると、ベラルーシの両手首と縛りベッドの支柱にくくり付けて拘束した。
意識を取り戻したベラルーシを美味しく頂き、ネクタイを解いてやると、ナイフを突き付けられ再びギャグボールを噛まされ、自分がしたようにネクタイで拘束された。
それから香港は言葉通り精根尽き果てる手前までベラルーシの『練習』に付き合わされた。
どんどんテクニシャンに近付くベラルーシ、射精は時折息子の根元を頭のリボンで括られて焦らされ、ついでだと携帯で延々ムービーを撮られた。香港は少し泣いた。
「…私を勝手に縛り上げた事に対する反省はしたか?」
顔を上下に勢い良く振った。
まるで豚か何かでも見る様な目をしたベラルーシは、手に持ったナイフで香港の両手を拘束しているネクタイを切った。
香港は手首の自由によってギャグボールも外した。
自由の素晴らしさに泣いた。
手首の後を見ると只のマゾ男だった。泣いた。
「…結局パイズリがマスター出来なかったじゃないか。」
不機嫌そうにベラルーシは呟いた。
マスターする前に夜が明けたのだった。
「…ソーリー。」
香港は来た時同様に服をきちりと着込んだベラルーシに向かって言った。
「次回はパイズリと足コキとスマタをマスターしようと思う。
付き合え。またその粗チンを一晩貸せ。
お前の国でも紹介しろこのルー大柴。
異論は無いな?」
一瞬ぽかんとした表情をしたが、すぐにその意味を汲み取り、「…オフコース」と言ってから男はくつくつと笑い始めた。
少女は赤らんだ顔で男を鋭く一瞥すると、部屋を出ていった。