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 Seine



「んっ、はぁっ、あああっ!」
青空の下、林の開けた場所に、妖しい二人の人間の影があった。
ひとりは国で、ひとりは聖女。
二人ともややもすれば神々に列される存在かもしれない。
しかし、この時二人は単なる雄と雌だった。


Seine




「パリ奪還をなくしてフランスの勝利はありえません。失礼します」
城砦の中の会議室で、ジャンヌはそう言い放つとつかつかと外へ出て行った。
ふう、と時の王シャルル7世が溜息をついた。年若いがすでに人生に擦れっ枯らされた
この男は、ちらりと横にいる少年に目を遣った。
金髪碧眼、ガニュメデスのような美しい顔立ちの少年――いや、青年になりかけ、
その顔には精悍さがにじみ出ている―――は、その視線に気づき、
へいへいというようにその美しさに似合わない俗な表情をして、
ジャンヌの後を追いかけた。


「ジャンヌ」
フランスが彼女に声をかけることができたのは、城塞からかなり離れた草原の上でだった。
どんだけ早足で歩いてたんだよ、とフランスは声に出さずひとりごちた。
フランスの声を聞くと、ジャンヌは城を出た時の厳しい顔つきのまま振り返った。
「何です?」
その声は厳しく尖り、18歳の少女の声とは思えない。
フランスは少しひるんだが、自分の役目を果たすために言葉を選びながら言った。
「なぁ…お前が俺のためを思ってくれてるのはわかるけどさ、
今、ちょっとお前立場悪いぜ?
王をはじめ、権力の中枢にいるやつらは、もう武力によって領土を回復しようとは
思っていない。裏でイングランドの奴らと結びついて、なんかごにょごにょ
やってるようだぜ」
「ランカスターの狗どもなどを、王が信用するはずがない。
思慮深きわが君はきっと正しい道をお選びになります」
はあ、とフランスはため息をついた。あのへたれをどうしてそんなに信頼するのかね。
どうもこの少女、思い込みが激しいというか、
自分の信じてるものに対しては一塵もの疑いを抱かないのである。
まあ、そうでなくちゃ神のお告げを信じて軍隊の先頭に立ったりしないか、と
フランスは一人で納得した。

「フランス」
ジャンヌは厳しかった声色を変え、優しげな瞳でフランスを見つめていた。
「私は、いつも、あなたのために」
そう言ってひざまづくと、すっと立ち上がり再び城壁の反対方向に向かって歩き出した。

フランスはその背中を見送りながら、本日2回目の溜息をついた。
今、宮廷内での彼女の立場は微妙だ。彼女は劣勢だったフランス軍を奮い立たせ、
イングランド軍を破りランスでの王の戴冠を実現させた功を持っている。
しかし、今宮中では、イングランドと戦うのではなく取引や政治で
事を進めようとしている雰囲気が濃厚だ。
士気を高めるための偶像であるジャンヌは、もういらない。
王はなんとかしてジャンヌを厄介払いしようとしているのをフランスは知っている。
宮廷から追い出されたら、彼女はいったい、どのようにして生きるのだろう。

「…でも、やめちゃえばいいのにな」

フランスは誰に言うでもなくそう呟いた。
彼女が戦場に行き、旗持ちとはいえ何かしら傷をつけて帰ってくる時、
フランスの心は痛んだ。それはもちろん女という本来戦場にいるべきでない存在が
自分のために傷ついているというせいもあったが、それとは別の感情によって、
フランスはジャンヌの姿を見ては胸を締め付けられていた。

なんとかして、彼女の身の安全は確保したい。軍から追い出されても、
彼女が普通に生きていけるように。
そのためにはどうすれば良いだろう、と色んな手立てを考え、
頼れる人間の姿を思い浮かべながら歩いていると、
フランスは見たこともない小道に迷い込んでしまった。
草原だったはずの風景はいつの間にか林となり、自分が結構な時間上の空だったことがわかる。
いっけね、と思いながら来た道を引き返そうとすると、
奥の方から水の音が聞こえた。

不思議に思ってその水音の方に近づいてみると、小道を行ったその先に、小さな岩場があり、
そこは泉となっていた。―――そしてそこに、先ほど別れたはずの彼女が、
一糸まとわぬ姿で水浴びをしていた。
フランスは思わず目を見張り、その場から動けなくなっていた。
別にいやらしい気持からではなく、あまりにその光景が美しすぎたのだ。
18の若い体は、日頃の鍛練で引き締まり、なおかつそれでいて胸部や腰には
女性らしいラインがあった。
毎日外にいるというのに日焼けしていないその白い肌(体質だろうか)は、
薄茶色の髪とあいまってその光景の聖性を引き立てていた。

「フランス」
ジャンヌはフランスの方を見もしないで、しかしはっきりとした声でそう言った。
フランスはぎくりと体を一瞬震わせ我にかえると、気まずそうな顔をして
「…なんで見てないのにわかんの?」
と間の抜けた声で答えた。

「感じますから」

ジャンヌはやっとこちらを振り向き、にこりと微笑んで言った。
ああ、そうか。そういえば。前もこんなことが。

彼女が初めてシャルルを訪ねた時、フランスとシャルルはいたずらを仕掛けた。
二人とも普段より質素な格好をして、側近の中に紛れてジャンヌを迎えたのだ。
(シャルルのいる場所には替え玉を置いておいた)
神に見染められた聖女なら見破られるはずだろう、と悪友のように顔を見合せてきししと
笑っていると、彼女は迷うことなく二人のもとに進んで行き、涙を流してひざまずいて
靴にキスをしたのだった。
これに王は仰天し、彼女のことを信用したのだが、その力はまだ残っているらしい。

じゃあ、さっき城塞の外で声を掛けるまで振り向かなかったのはわざとなんだな、
とわかるとフランスは彼女の気の強さに苦笑した。

一瞬昔の思い出がフラッシュバックしたあと、フランスは現状を認識し
「えと、あー…、ごめんな」
と言った。しかし、ジャンヌは普段と変わることのない声で、
「いいんです。愛するあなたに見られても嫌だとは少しも思いません」

愛する。
その言葉にフランスの胸はずきりと痛んだ。
その愛するとは、普通の男女がいいあうJe t'aimeとは違うものだ。
母国に対する愛国の心とか、敬愛とか、そういったものだろう。
それがわかってしまうぶん、フランスは心苦しくなった。

―――どうして?

ジャンヌは裸のまま岩に腰かけると、身体を麻布で拭き始めた。
フランスはどうしていいのかのわからなさと、
自分の中にざわめいているもやもやとした気持ちが合わさり来たときの格好のまま
棒立ちしていた。
身体を拭き終わったジャンヌは、脱ぎ捨てられた服の中から包帯を取り出し、
適当な大きさにちぎろうとしていた。
「お前、その傷」
フランスは思わず彼女の方に近寄った。彼女の腕には、見たことが無い新しい大きな傷が
できていた。
「なんでもありません」
ジャンヌは苦笑してそう言うが、弓なりに右腕にできたその傷は彼女の白い肌に赤い線を
引き、痛々しさを見せつけていた。
「そんなこと言っても、利き腕じゃ包帯巻き辛いだろ」
フランスはそう言って、彼女から包帯を奪うと腕をとって丁寧に巻いてやった。
しかし傷はなかなか長く、フランスは彼女の前に片膝をついて、包帯を巻いていたわけだが、
その間至近距離でジャンヌの裸体を見ることになった。
(うわ…ちょっと軽率だったかも)
フランスは顔を真っ赤にし、腕に集中しようとしたが、どうしてもその形の良い乳房が、
控え目に生えた陰毛が、目に入ってくる。

フランスはだんだんと、今までに襲われたことのない衝動が湧き上がっているのに気付いた。
そして、その衝動は現実の状況と理性的に結び付けられ、フランスがこれから起こす行動を
正当化させようとしていた。

いや、やるしかない、とフランスは思った。

ジャンヌは何も言わずフランスの親切を受け入れていたが、フランスの変化に気づいた。
「…フランス?」
気遣うように声をかけると、丁度包帯が巻き終わり、うつむいていたフランスがジャンヌのほうに
顔をむけた。
ありがとう、とジャンヌが口を開きかけたとき、その唇をフランスの唇が塞いだ。
「!?」
ジャンヌは戸惑った。敬愛のキスなら今までに何度もしたことがある。
しかし、これはそんなたぐいのものではない。
フランスは舌をジャンヌの口に侵入させ、猛烈に絡めだした。
「んっ、ふうっ、んんんっ」
ジャンヌの口から普段の凛々しさからは想像もできない色っぽい声が流れ出す。
ジャンヌの口を支配し終えると、フランスは首筋に吸いつくようなキスをし始めた。
「ふら・・・んすっ、何を・・・」
唇が解放されると、ジャンヌはあがらいの言葉を言った。
その言葉に、フランスは唇の動きをやめ、ジャンヌのほうに顔を向けた。
「いや、聖女じゃなくなればさ」
そう言うとフランスは力をこめ、彼女を座っていた岩場から柔らかい草の上に押し倒した。
「もう戦いに行かなくっても良くなるかな、と思って」

フランスはジャンヌの上にまたがると、自分の衣服を脱ぎ始めた。
王と同じくらい高級な布を用いられた着物が、無造作に草むらの上に投げ捨てられていく。
「え・・・」
ジャンヌは困惑した。もしかしたら、状況が呑み込めていないのかもしれない。
普通の乙女が「そういうこと」を知る時期に、彼女は戦乙女として戦場を駆けていたのだ。
知らないならそれはそれで好都合、とフランスはキスの嵐を再開し、
ジャンヌの胸をもみしだいた。
「んっ、はぁっ、うっ」
ジャンヌは今までに味わったことのない快感に戸惑っているようで、声をあげ息を荒くした。
その頂はすでにぴんと立っている。
お、俺才能あるんじゃね。フランスは思った。
後々世界をまたにかけたプレイボーイになるフランスも、実はこの時点ではまだ童貞だった。
そういうことは、歴代の王の寝室とかで見たことや、身分を隠して降りる街で
酒臭い男から見聞いた話だけ。
左肩の傷口に優しくキスをして、乳のほうに唇を移動させた。
乳首にかみつくと、ジャンヌはびくんと体を震わせる。
「んッ」
そうしているうちにフランスは茂みの方に指を向かわせ、入れてみた。
その中はすでにとろとろになっており、今まで一回も出てこなかったものが一気に溢れ出したようだ。
内部を探り襞を指でいじると、「あああっ!!」と今までで一番高い声をあげた。
(一人エッチとか…したことないんだろうな、きっと)
そう思いながら指を進め、良いところを弄ってやる。「あ、あ」と恥じらいながら声をあげる姿は、
フランスのそれを勃たせるのに十分だった。
もう少しじっくりやった方がいいのだろうかとも思ったが、もはや我慢の限界だった。
「な・・・初めては痛いらしいんだけど」
喘いで涙目のジャンヌを見つめながら、フランスは言う。
「挿れて、いい・・・」
訊いてはみたものの、セックスのことをよくわかっていない彼女に訊いても卑怯だよな、
とフランスは思った。だが、ジャンヌはこれから起きることを悟ったらしく、
こくりと頷いてフランスの首に手をまわした。
「光栄です、我が国」
その言葉にフランスはなぜか頭を撃ち抜かれたようになり、勢い任せに聖女の秘部に自身のそれを
挿入した。
「あ、あ―――ッ!!!」
ジャンヌは悲鳴をあげ、破瓜の痛みを表した。フランスの背中に爪を立て、涙がとめどなくあふれる。
やっちまったな。フランスはそう思った。
これでもう後戻りはできねえぞ。
彼女の膣から血がこぼれ出し、フランスは申し訳ない気持ちになったが、
痛みを快楽に塗り替えるために貪欲に腰を動かし始めた。
「あ、あぁ」
ジャンヌは涙を流しながらもフランスの動きに応え、甘い声を出す。

「なあ、ジャンヌ」
フランスは汗まみれになりながら、太陽を背にしてジャンヌに言った。
二人の体の動きは激しさを増す。
「強引で悪かったと思ってる。だけど」
ジャンヌはんッ、んッと声を上げ続ける。
「もう、貴女には戦ってほしくないんだ。だって」
フランスは次の言葉を紡ごうとしたが、お互い絶頂に近づいていた。
「あ、ああ、あ―――――――ッ!!」
「はあぁっ!!」

(だって)



(俺は、貴女を)










    Je t'aime.







同時に果てた。

息を荒げ、ふうふうと相手を見やる二人。
なぜか笑みがこぼれて、ジャンヌの流した涙が光を受けてきらめいた。
フランスがはは、と声を出して笑おうとした瞬間、林の中からがさりと音がした。

その場の空気が凍り、二人はすぐさま音の方向に目をやる。
側近の一人だった。
その男はわなわなと震えていたが、しっかりとした声で、言った。



「国をたぶらかす、魔女」


そう言って城塞の方に駆け戻っていくのを、二人は呆然として見ることしかできなかった。


--------

そして時代は流れ、1909年。
夕闇のパリ、整備された石畳の上をフランスは歩いていた。
手にはワインのボトルが提げられている。
当時では珍しい瓦斯灯が街ゆく人々の顔を照らす。
ときどき声をかけてくる顔なじみの女の子の誘いを、、
ごめんねー、今日はあのこと用事があってさー、とあしらう。
あのこって誰よぉー、という声を背後に、快活に街を滑っていく。
向かう先はセーヌ川、フランス全域を流れる大河である。

「あー、遅くなってごめんねー」
川のほとりに立つと、フランスは誰もいない方向にそう言った。
「怒ってる?けっこう昔っから気性は激しかったもんね」
言いながら腰かけ、フランスはワインのボトルを空けた。
ぐいと瓶口から飲むと、あの時から変わらぬブドウの匂いが鼻をくすぐる。

「知ってる?今年、あんた、列福されたよ。…もう、あんたを魔女扱いするやつなんていない。
あんたの仕える神様や天使様と同類だ、って言うと言いすぎかな」
さらに一口あおり、ふうと酒臭い息をはいた。柄になく酔いが早い。
「でも、あんたには」
夜風が気持ちいい。
「単なる女で、いてほしかったな」

(光栄です、我が国)

その言葉を聞いた時、ああやはり自分達は男女の関係にはなれないんだなと思った。
俺は彼女が仕える国で、彼女は聖少女。
あのときはそれを解っちゃったから、ガーンときたのかな、とも思った。


「ま、俺だけは、あんたが普通の女だって、知ってるけどね」

答えるようにセーヌ川からざざ、と波音がした。
あっ、照れてる?とフランスはおどけ、また酒を飲んだ。



今夜は帰らないつもりだ。



―――――ジャンヌ・ダルクは宗教裁判にかけられ、火刑になったあと、
その遺灰はセーヌ川に投げ捨てられた。
当時は、最後の審判の時に宿る肉体が必要だと考えられていたため土葬が普通で、
火葬は受刑者に精神的な絶望をもたらした。
ジャンヌ・ダルクの灰は国全体に流れるセーヌ川にまかれ、フランスのすみずみまで行きわたり
フランスとひとつになった。











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