我愛イ尓 最大公約数のハッピーエンド
オリジナルキャラ登場(シンガポール)注意
あれから、台湾と中国は大ゲンカをした。
美麗之島(中国語、台湾の別名)中が湧き、文字どおり死ぬ気で中国を追い出したのだった。
その時の彼女の表情を、中国は覚えている。
小銃を握る表情は怒っていたのではない。・・・怯えていた。
それからまた、しばらくの時間が流れる。
台湾は積極的に外来語を取り入れ、お洒落な洋服を探し、古い言葉の歌を歌って過ごしていた。
自己同一性(アイデンティティ)の確立に力を入れていた。
彼女は一抹の不安を抱えながらも、確実に成長した。今や『アジアの四龍の一角』という別名を頂いている。
まあ、“龍”って正直やめていただきたいのだが。
・・・気づくのに10年かかった。認めるのに10年かかった。
そしてまだ、その気持ちに素直になれていない。
広い自室で中国はぼふっと、特大シナティちゃん枕に体をうずめた。
この間も台湾を見かけた。アジア地域の経済会議とかなんとかそういうやつでだ。
彼女の国際的独立はあのあと奪ってやったが、どうやらそれでへこたれるタマでもなかったらしい。
・・・・というか、それ以来、彼女の外国かぶれが進んでいったような・・・。
黒いスーツに鮮やかな化粧を施した台湾は、素顔の少女らしさを残しつつもぐっと大人びて見えた。
「・・・ったく、やめるあるよー。」
そして彼女は、中国に対抗するかのように、常に日本の隣に立っていた。
「あの馬鹿女・・・!」
彼女の処女を頂いたのは、多分あいつなんだろう。それ以後も、やっぱり喰われてるんだろうか。
「ぬあああああああああ〜っ!!」
ぼふぼふと、いまいちかわいくないシナティちゃんの枕をたたく。
いてもたってもいられなくなり、手帳のカレンダーを確認した。
手元の携帯電話から一つの番号を呼び出す。
とあるホテルの喫茶店で、ファッション雑誌を香港と台湾が並んで広げていた。
東アジアの新興経済地域とか呼ばれる人たちによる会議に二人とも出席していた。
今はそれも終わり、二人はくつろいでいた。
「そのフィーリングは、非常にワンダホー・・・だな。」
「ありがとう。うわあ、このパーカーはないわ。アメリカさんみたい。」
「イエス。英國もきっとそう言う。」
タラーラーラー・・・香港の携帯から寂しげなグリーンスリーブスのメロディが流れた。
「イクスキューズミー、台湾。・・・ヘロー?」
「ハァン?・・・あー、OKOK。アイスィー。」
香港は携帯を切るとため息をついた。
「ソーリー。俺のとった部屋のシャワーの温度調節が効かないのが発見されて、今から修理が来るらしい。」
「え、そうなんだ?困ったホテルだね。・・・んじゃあ、私も部屋に戻るよ。」
台湾は雑誌をぱたんと閉じると元のラックに戻した。
「See you tomorrow,マイ スイート シスター。」
香港はキザったらしく言って自分の部屋のある棟へと向かっていった。
「甘い姉妹って、どんなよ・・・。」
台湾は一人エレベーターに乗った。外にはシンガポールの高層ビル群。
窓に映る姿を見る。
「ふん、綺麗になってるじゃない。」
ガラスに映った女性がにっこりとほほ笑んだ。
カードキーを入れて部屋のドアを開け、真っ暗な部屋の電気を入れようと壁のスイッチを探った。
・・・その手が、ぐいっと掴まれた。
「ひいぃっ!?」
相手が見えないだけに、台湾はパニックに陥った。手は更に台湾を引っ張り込み、身体ごと抱きしめた。
「え・・・・ち、ちゅう・・・ご、く?」
台湾を抱く腕に力がこもった。しばらくの間、無言。
じんわりと伝わる体温と何か懐かしい香りに台湾は、何となく頭がぼうっとするのを感じた。
「そうあるよ。久しぶりあるな。」
どくん、と台湾の心臓が跳ねた。
「な・・・え・・・っ?は?!」
急に目が冴えたように思考が復活した。ヒールで相手の足と思う場所をめがけて踏んづけてみたが、失敗。
逆に勢いをつけすぎて姿勢を崩してしまう。
「おいおい、何をしてるあるか?」
暗闇に目が慣れて、中国の表情がはっきり見えるようになった。ほとんど普段通り・・・に見えた。
「何で?・・・何でここにいるの?」
突然すぎて思考も感情も追い付いていかない。そのことに気づいて焦るが、焦るほど余計に思考力を失くしていく。
「あ・・・うん。」
中国は珍しく言葉を濁す。
「ここ、オートロックなのに・・・」
「え、ああ。そこあるか。まあ、シンガポールは我の庭あるから。」
「理由になってない!」
少しだけ気を取り直すと、台湾は何かを振り切るように叫んだ。
「離せーーっ!!」
「嫌あるよ。」
中国は反対に極めて静かな声で告げた。
「ふざけるなーっ!!この痴漢!変態っ!おまわりさーん!!」
「なっ、何を言ってるあるか?!」
「てめーに洋服なんて似合わないのよ!田舎者っぽい顔のくせに!やたら偉そうだし!
自己中心的だし!絶対に謝らないし!それに・・っ」
大声を出したとしてもこのホテルは防音仕様なので外に漏れはしない。
「おい、台湾?落ち着くあるよ。」
考えれば侵入者がいて自分をとらえているのに落ち着け、なんて変な話だと中国はふと思った。
台湾は尚もぎゃあぎゃあと叫んでいる。その声が涙声なのに、気づくまで少し時間がかかった。
「たいわ・・・?」
「うああああああ〜〜っ!!」
台湾が小さな子供のように大声とともに涙をこぼし始めた。中国は流石に慌てて手を緩めた。
「お、い・・・?」
台湾は逆に中国の胸に顔を埋めて腕を背中にギュッと回した。中国はぞく、と鳥肌が立つのを感じた。
「ば、馬鹿。泣きやむある。・・化粧とか、落ちるあるよ!」
「うえぇっ・・・ひくっ・・・馬鹿に、馬鹿・・・とか、言われたくないわよ・・・この馬鹿!」
子供のような言い回し。
「大人っぽくなったのは外見だけあるか・・・?」
中国は若干呆れて言った。それにしても、彼女の方から抱きついてくるとは。
台湾の頭は、およそ中国の顎程度の高さになる。柔らかい髪の毛を梳いてやると台湾は
「馬鹿ぁ・・・」
とまた言った。中国はは、と鼻で笑うと台湾の顎を指で持ち上げて唇を重ねた。
台湾は抵抗はしないものの素直に受け入れない。受け入れられない。離された唇がかたかたと震えた。
「苦し・・・」
「ん?」
「いや、助けて・・助けて・・・!」
台湾はうわごとの様に繰り返している。目の焦点が合っていない。
「日本さん・・・」
「なっ!」
「嫌です・・・わたし、は・・・」
「黙れ!!!」
中国は台湾を抱く力を最大まで込めた。
「我を誰だと思ってるあるかっ!?」
さっきの台湾に負けないくらい大声で中国は叫んだ。
できれば、優しく接してやりたかった。何とかして気持ちを伝えようと思った。
しかし頭に血が上った中国には、もはやそれは不可能だった。
腕の中で動かなくなった台湾をベッドに横たえると中国は再び携帯電話を取り出した。
「シンガポール。」
中国が呼びかける。
『兄さん?』
少年の声が応答した。
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・
ぷちっ。
携帯を置いて寝かされている台湾に覆いかぶさった。
眠っているのかと思ったが、そうでもないようだ。何かを小声でつぶやき続けてる。
「もう大丈夫あるよ、台湾。全部忘れていいある。」
軽くキスを落として、中国はその場を離れた。
中国の目をかいくぐって、日本に会いに行ったことがあった。
ほんの数年前、ぼろぼろになったばかりの町には小さくて簡素な家が立ち並び、人々は狂ったように働いている。
そんな人々に混ざって、日本さんはいた。艶を失くした黒髪、とても健康には見えない顔色をして、
それでも目だけは光らせていた。邪魔するのは悪い気がして隠れていたらあっさり見つかってしまって、
彼の休憩にお茶を汲みながら一緒にいた。
『あなたは、何があってもあなたのままでいるように。』
何があったのか見透かされているのかと驚いた。
・・・だからなのかな?初めてのあの時、痛いと言ってもすまなそうにしながらも、やめてくれなかったのは。
「・・・ほお、そんなことがあったあるか。」
イライラしているのをなんとか抑えた声で中国は言った。
台湾は表情もなくぽつぽつと語る。
小さな火が揺れている。特別に強い香りがする。
「・・・うん。私、中国に流されそうで怖かった。うっかりしてると今も流されそう。
あの人の思い出が、私を奮い立たせてくれてる。中国が激流だとしたら、日本さんは杭のような人。」
「そうあるか。お前にとって大事な奴あるか。」
「うん。」
「じゃあ・・・」
「そいつのことを、おまえは今から忘れるある。」
「・・・・。」
台湾は無言で揺れる火を見続けている。中国は後ろで様子を見守っていたシンガポールに視線を送った。
シンガポールは静かにうなずいた。
「台湾・・・。」
中国が呼ぶと台湾は無表情のまま顔を上げた。
「じゃ、兄さん、僕はこれで。」
シンガポールが控えめに言って部屋から出て行った。全く、使える弟だ。
中国は蓋をカチンと閉じた。あたりが暗くなる。
「怖くねえあるよ、台湾。我がずっと一緒にいてやるある。」
「・・・うん。」
台湾から返事が返る。柔らかい髪を梳き、指を丸い顎に回す。
ついばむ様に軽いキスを繰り返し、口が開いたのを見計らって吸いついた。
ついでに勢いも加えて押し倒した。
舌を口内に滑り込ませると、台湾も反応して舌をちろちろと絡めた。
―ああ、愛おしい!!
中国は一度口を離して、もう一度重ねた。力強く抱きしめると、台湾は少し身じろぎした。
もう一度口を離したとき、台湾はかなり正気を取り戻したような目つきをしていた。
「・・・中国。スーツのままはよして。しわになるから。」
「あ、ああ・・・。悪かったあるな。」
「あとシャワーが浴びたい。」
ただでさえ熱帯の気候。加えてさっきまでジッポまで点けていたのだ。台湾の首筋にはじんわりと汗がにじんで
髪がまとわりついていた。
「そう・・・あるな。」
台湾は意地の悪い笑みを浮かべた。
「一緒に入る?」
「馬鹿。別々でいいある。」
「はーい。」
台湾はバスルームに入って行った。ほどなくしてシャワーの音が聞こえる。
中国は後ろ向きにぼふっと倒れこんだ。
敵兵の口を割らせたりする時や口止めしたいときに使ったりした洗脳方法の一つだ。まさか、台湾に使うことになるとは。
「ははは・・・」
別に反省も後悔もしていない。というか今更してどうなる。
彼女の話によると、日本と関係をもったのはたった一度だけ。しかし、日本が台湾の気持ちを縛りつけているのは
そんな理由ではなかった。それはただ、とりとめのない数十年間の日々であり、死ぬ気で様々なものと戦っていた
日本を傍らで眺めていた記憶だった。
「・・・なかなか遅いあるな。」
シャワーの音は止まない。嫌な予感がして中国はバスルームを開けた。水蒸気が肌を湿らせる。
台湾はバスタブに肩を預けてぐったりとしていた。浴槽は何故か泡風呂になっていた。
「しまった・・・!」
中国はシャワーを止めた。
記憶が抜け落ちた後遺症は、もちろん残る。うっかり失念していた。
「・・・うっかりどころじゃ済まされねえある。」
長い髪をタオルで中途半端にくるんだところで、台湾は目を覚ました。
「うー・・・あ、れ?中国?」
「お目ざめあるか?・・・ったく、風呂場で眠りこけてんじゃねえあるよ。心配したある。」
「え?あれ?私寝てた?ご、ごめん・・・中国、服が濡れてる。」
台湾は中国の微妙に古臭いネルシャツとスラックスを引っ張った。
というか濡れた腕で引っ張られるとなおさら濡れる。
「・・・こんなの、何でもねえあるよ。」
「どうしたの?中国らしくない。」
台湾は困惑した顔で中国を見上げた。
(そうか・・・。こんな時我なら怒らなきゃなんねえあるか・・・)
中国はすっと息を吸って顔をしかめた。
「この馬鹿。お前のせいあるよ!以後気をつけるよろし!」
「対不起・・・。」(ごめんなさい)
台湾はしゅんと顔を下げた。中国は濡れたシャツとスラックスを下着ごと脱ぎ捨てて、広いバスタブに漬かり、
台湾の横に座った。
ちなみに、中国では通常、家族で一緒にお風呂に入るなんてことはない。
「ところで何あるか、この泡風呂は。」
「え、これ?なんか、そこの棚に石鹸とかと一緒に置いてあったから使ってみたの。」
「ああ、そうあるか。」
台湾が横から後ろで束ねてある中国の髪を解いた。
「洗う。」
「え・・・」
自前のシャンプーのボトルをプッシュして中国の髪をクシャクシャといじり回す。
息が詰まるほど甘い匂いがした。
「髪綺麗・・・いいな。」
「げほっ、何言ってるあるか?お前の髪だって綺麗あるよ。」
「私の髪ちょっと癖があるから・・・。」
「まあ、少しな・・・。触るとふわふわして、むしろいいと思うあるが。」
「そうかなあ?」
台湾はふと黙り込んだ。
「どうしたあるか?」
中国は台湾のほうを向いた。台湾はきゅっと、中国に抱きついてきた。
若い、すべすべした肌が直に触れる。
「分からない・・・。」
「分からない?」
「うん。」
「分からなくても不安がらのやめるよろし。我が付いてるあるから。」
「うん・・・。」
「のぼせてるあるか?」
「ううん。平気。」
中国が手を台湾の腰に伸ばす。台湾は、早く、とでも言いたげに腰を動かした。
指を更に下部へ移動させる。割れ目をそっと指で開いて中を滑らせると、水とは違うぬるりとした感覚を得る。
「中国・・・」
台湾が吐息半分に声を漏らす。
入口を開かせるように指を動かすと、案外ぬる、とすぐに動いた。
「準備はいいってことあるね。」
中国は己の物をゆるくしごくと、中腰で台湾の上になり、指を参考にしながら入口にあてがった。
ぐっ。
「んああっ!」
台湾が声を漏らした。
(やっぱり、中はきついある・・・)
もう一度勢いをつけてぐっと入れ込む。今度は奥まで入ったようだ。
「あうぅ、中国・・・。」
台湾が切なげに名前を呼ぶので片腕を彼女の肩にまわして首筋にひとつ鬱血痕をつけてやった。
(確か・・・)
中国はさらに少しだけ腰を浮かせた。腕を浴槽の底につく。ばしゃんとお湯がはねた。
ゆっくりと前後に輸送を始める。台湾は下から中国の首に絡みついた。
「きつ・・・」
挟みつける様に中が締め付けてくる。
「きゃっ・・」
その場所に当たったのか台湾が首を縮めた。
身体ごとぐいぐいと抜き差しすると、お湯がちゃぷちゃぷと合わせて動く。
「はっ・・あ、あ、・・っ、ふうっ、ん!」
浴槽で出す声は、嫌に響く。中国は耳元でささやかれるような甘い声に合わせて腰を動かし続けた。
「は・・は、・・・くっ。」
浴槽の中でというのはなかなかに体力を奪う。仮にもちょっと年寄りの中国は頭がぼうっとしてきた。
それでも、リズミカルにぎゅっぎゅっと締めつけてくる少女の内壁に、中国は夢中で抜き差ししていた。
「あんっ、ちゅーごくうっ!」
「何あるか!」
荒い息を交えながらお互いに叫ぶ。
「私、もうダメ・・っ、」
喉から出すような声。
「イけ!思う存分いけばいいある!」
湯けむりのせいだろうが、視界が白くてよく見えない。
ぎりっ、ときつい内壁が固まった。
「ひああぁっ!あああああっ!!!」
悲鳴に近い声を台湾は上げた。びくん、と体が痙攣し次いで中が小刻みに震える。
決壊した中国の精をぎゅぎゅ、と搾り上げる。
「・・あ、あ・・・」
「・・・っ、う、は・・・・」
それぞれ脱力しきったような声を上げた。
台湾はじんわりする余韻にぼうっと浸る。下腹部が温かいのは、ひょっとして中に出されたわけだろうか。
まあ、別に構いはしない。
「風邪・・・ひかないうちに、早くあがるよろし。」
中国がだるそうに言った。
翌朝10時過ぎ。台湾は目を覚ました。ベッドの上、毛布はかぶっていたが裸のままであった。
隣に同じく裸の中国がいる。
「うーん、と。」
昨日の記憶はある。会議に出て、部屋に戻ったら何でか中国がいて、一緒にお風呂場で・・・
それは覚えている。しかし、部屋に中国がいるのを見つけたとき、自分はどう思っただろうか?
何か口喧嘩をしたような・・・。
「・・・?」
頭がこんがらがってきたのでぶんぶんと振った。中国が起きたら聞けばいいか。
毛布のほんの一部が膨らんでいるのに気がついた。これは何か、本で読んだことがあった気がする。
毛布を一部だけはがすと、半起ちのものが目に入る。右手で先端の少し膨らんだところをつついた。
反応なし。
先端から根元までつつーっと、指を滑らせて、根元の方だけ掴んでみた。
「・・・何やってるあるか。」
「ほわぁっ!」
中国が薄く眼を開けた。
「根元の方は掴んでもいいけど先の方は指で押すくらいにしといてほしいある。」
「そ、そうなの?」
根元を掴んでゆるゆると動かすと微妙に柔らかかったのが固くなってきた。先端を指二本でぐにっと押すと
中国は軽く唸り声を上げた。
「そ、そういえばさ、中国。」
「何あるか?」
「昨日、何か私たち喧嘩しなかった?」
「・・・喧嘩?喧嘩なんかしてねえあるよ。」
「そうだっけ。」
「そうあるよ。」
「あと・・・」
「何あるか。」
「私はなんで中国のこと中国って呼んでるの?”兄さん”じゃなくて。」
「それは・・・我がそう呼ぶように要求したある。うっ、」
台湾が先端をつまんでいた指につい力を入れた。
「あれ?今の痛かった?」
「別に痛くはねえあるよ。でも台湾。我は一つお前に言ってなかったことがあったある。」
「何?」
「我は本当は少し遅漏の気があってあるな・・・かなり強い刺激がないとなかなか抜けねえある。」
「そうだったの?」
「だからちょっと、お前が手とか口とかで我を抜こうとするのは、時期尚早、技術が未熟あるね。」
「うー・・・」
「中はかなり締まりがいいんだから、そっち使えば十分ある。」
「ちょ、ちょっとその言い方は無いよ!」
中国はけらけらと笑って、台湾の腕を引っ張って抱き寄せた。
「我愛イ尓。」(愛してる)
帰ってきたのは昼過ぎだった。
一歩、中に踏み込んで、台湾は違和感を感じた。
台湾島の低い瓦屋根の一軒家。住み家である建物。
居間に入ると外国の言葉の本が並び、お洒落な服が転がっている。
間違いなく自分の部屋なのに、何となく違和感を感じて落ち着かない。
戸棚に、おもちゃのおまけのような古めかしいブリキのおもちゃが並んでいる。
隣には使い方がよく分からない桜と梅の飾りがついた簪。
「・・・何これ?」
胸がざわついた。足元が崩れていくような錯覚を覚える。
がらがらと戸棚からそれらを床に落とした。目眩がしてたまらなくなって膝をついた。
「中国・・・。」
彼に会いたい。
会って抱きしめてもらえれば、きっと全ては解決する。
台湾は重い足を引きずって帰ったばかりの家を飛び出した。
後には―――。