小ネタ
ハンガリーはこちらに背を向けるように横になって寝ている。
寝息を立てて、体は規則正しく揺れていた。
栗色の髪に顔を埋めると、ふわりと花の香りがする。
顔を覗き、頬に口付けた。ぴくん、と長い睫が震える。
「ハハ、気持ちわり、俺」
嫌なら拒んでくれればいいのに。
そしたら、自分も目が覚めるかもしれない。
でも、拒まずに自分と行為を重ねてくれる。
「期待しちまうじゃねぇか……」
自分の側に来てくれるかもしれないと。
「なんでこんなことになっちまったんだろうな……」
ため息をつき、寝転がる。
「ん……」
いつの間にか眠っていたようだ。
体を起こして後ろを見ると、プロイセンが時々いびきをかきながら寝ている。
「変わってないなぁ……」
色素の薄い髪の毛を触わると、ふわふわと柔らかい。鼻を摘むと苦しそうに眉を歪めた。
「う゛……」
「ぷっあはは」
かわいそうなので指を離してやると、「ふごっ」と鼻を鳴らして、また呼吸を開始する。
「はは……」
嫌いなはずなのに。
なぜ愛おしく感じてしまうのだろう。
私にはオーストリアさんがいるというのに。
「あんたなんか嫌いよ……」
自分に言いきかせるように呟く。
いつからだろうか。
貪るように体を重ねるようになったのは。
「大嫌い……」
なんでこんなことになってしまったのだろう。
なんで自分は拒まなかったのだろう。
気付かなきゃよかった。自分の気持ちに。
「なんでよ……」
頬を生暖かいものが伝う。
それが涙だと分かるまで少し時間がかかった。
「プロイセン」
昔に戻ってやり直したいと思っても、ただ虚しくなるだけだった。