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 小ネタ



 世界会議の始まる某国のある朝――。
 国々の宿泊するホテルが建ち並ぶ都心とは少し離れた郊外の、さびれたモーテルの一室で
一組の男女が口づけを交わしていた。
 コートを脱ぎもしない彼らの足元には大きな旅行鞄が落ちており、押し付け合う唇に負けて、
少女が片足をずらすとき、側面に当たった。
「んっ……なんでこんなに遅くなったんですかぁ」
「仕事が立て込んでたんだよ」
 唇を離す少しの隙間に言葉を交わす。
 数ヶ月ぶりの逢瀬に交わすキスは念入りに行われた。
 どちらもしばらくはやめるつもりはないようだった。
「イギリスさん、せめて、夜中のうちについてたらゆっくりできたのに。あと二時間くらいで
会議始まっちゃいますよ」
「寄り道する時間作っただけでも褒めろ」
「私を寄り道とはなんですか」
 そういって少女は、男の屈んだ顔に唇を当て、背伸びをして押し返す。
 男は言い直した。
「お前に会うためだけに寝る時間削って二時間早く来たんだぞ」
「直前の仕事なんてブッチしちゃえばよかったんですよ。会議前なんだから」
 唾液を絡ませながら、お互いに相手のコートのボタンを外していく。
「……服。皺にしたくないです」
「ん、じゃ、ベッドに手つけ」
 少女は男に背を向けスカートをたくし上げ、下着を膝までおろして言われたとおりベッドに
手をついた。
「……イギリスさん……」
 その体勢に羞恥心の隠しきれない表情を覗かせながら、少女は男がベルトを緩ませ、
ファスナーを下ろす音を聞いた。
 彼の手が腰に触れる。
 期待に吐息をつき、待つ――
 が、しばらく待っても期待した接触は起こらない。
 訝って首を後ろに向けてみると、男は拳を握って一人感動していた。
「俺に惚れてる女が俺に抱かれたくて俺に尻を向けてる。ああ、良い眺めだな……」
「変態! 変態! 変態!」
「好きだぞセーシェル」
「ばか! なんでそう変態なんですか! っ百歩譲ってそう思っててもいいですから
口に出さないで下さい!」
「好きだってか?」
「違う! その前です! もう、私、帰るっ」
 おろした下着を引き上げようとする彼女の尻を押して、男は彼女をベッドに押し付ける。
「やる気でてきたからちょっとサービスしてやる。服はあとで新しいの買ってやるから
気にしなくていいぞ」
「やだ! 変態! 変態!」
「その変態に抱かれたくってこんなとこまで来てこんなとこ濡らしてるのは誰だよ」
「あぅ、それとこれとはっ、別っ」
「別じゃないなー」
「会議、がっ、」
「どうせ全員揃うまで始まらないんだから遅れたって平気だろ。
 好きだぞ、セーシェル。お前は?」
「う……その……好きです、けどぉっ」
「じゃ、問題ないな」
「うわぁぁぁぁぁん」




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[セーシェル][イギリス]

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