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 【スウェーデン×セーシェル】




(物静かな物腰、知的な顔立ち、それでいて漂う男らしさ・・・)

(ああ、やっぱりお誘いしてよかったです!)


セーシェルは、自分のプライベートビーチの砂浜でベンチに腰掛けている人物に熱いまなざしを送りながら、そう思った。
その人物、スウェーデンはパラソルの下で寡黙に読書をしている。
自国でならめったにしないような、シャツ一枚に海水パンツという涼しげな格好だ。

(どこぞのエロ紳士や変態ヒゲ野郎どもとは大違いです!)

と心の中で旧宗主国をボロクソに表現し、セーシェルはうっとりとスウェーデンを見つめていた。
前から、気に掛かっていた。
自分の知らない、遠い雪国から来た人。
寡黙なその人は、あたかも自分が生涯見たことのない雪のように、神秘的な雰囲気を漂わせていた。

もちろん、顔も好みであったわけで・・・

秋に行われた世界会議の後、思い切って廊下で声をかけてみた。

「あっあのっ、ははははははっはじめましてセーシェルと申します!
あああ初めましてって言うのもおかしいですよね私も一応会議には出てるしえええっとそうじゃなくて
あのすすすスウェーデンさんちって寒いんですよね、うううううち、うち、あ、セーシェル諸島って
言うんですけど、あ、知りませんよね、あああいいんですそれは。
あ、えとうちんち冬でもあったかいんですよ、ええ、世界中のリゾート地なんですよ、ええ、
おかげで食料自給率が0%で・・・ってそういうことはよくてえええええええ・・・・

よろしければっ、この冬、うちに遊びに来て下さい・・・ません・・・ヵ・・・?」

セーシェルの言葉がだんだん弱弱しくなっていったのは、
スウェーデンの表情がものすごく険しくなっていったのに気付いたからだった。
無理もない。いきなり面識もないような少女が、早口でまくしたてていたのである。
ああ、やっぱり声なんかかけるんじゃなかった!セーシェルは心の中で激しく後悔した。
だが、スウェーデンは警戒を解いたのか、ふっとゆるい顔になって、

「ええがもな・・・」

と言った。その表情には笑みが含まれていた、とセーシェルは勝手に思った。
心の中でバンザイをし、自分の国の場所を教えようとしたが、博識なスウェーデンは自分のことをすでに知っていた。
(そういえば、福祉がしっかりしてる国なんだっけ。先進国だし、頭いいのかな?)
セーシェルはそこで自分がスウェーデンについて何も知らないことに気付いた。

家に帰ると、そのアフリカ一の国民所得の経済力にモノを言わせ、
世界中からスウェーデンに関する本を買い漁った。
すると、調べれば調べるほどスウェーデンのことが好きになった。
世界中から尊敬される国、ノーベル賞の国、ヴァイキングの国。
(あの寡黙な雰囲気からも香る男らしさは、ヴァイキング時代の名残なんだ、きっと!)
頭の中で素敵な素敵な「スウェーデン」像を膨張し、期待に胸を膨らませ、
セーシェルはスウェーデンのためにあらゆるもてなしの準備をした。


そうして迎えた今日、その憧れの人が今、目の前にいる。

(ぜーったい、落トしてやります!)
セーシェルは気合十分である。
セーシェルの服装は、若干露出部分の多い派手な柄のヒモビキニ。
ネックレスは真珠で小麦色に焼けた肌によく映えるが、これは「インド洋の真珠」という
自分に対する世界からの賛辞の言葉にちなんでいる。
(この勝負服なら、今日中にベットに行くのも不可能じゃないっ!)
なんか、こういう性に対して変に積極的な面は、旧宗主国達の悪い影響が出ているようであるが・・・。

「あのー、魚、食いますか?魚。とれたてピチピチ魚。」
セーシェルはイギリスやフランスには絶対に見せないような、極上の笑顔を浮かべて、
カジキマグロの刺身を南国風に並べたプレートを差し出した。
スウェーデンは魚食文化というのは調査済み。
「・・・ん。」
スウェーデンは本から目を離し、セーシェルの持つプレートから手で刺身をつまみ、
口に含んだ。
「・・・んめな。」
「それはっ!もう!とれたてですんで!」
緊張のあまり噛みまくることはなくなったが、やはり鼻息の荒い口調になる。
ん、とスウェーデンは答える。
それ以上は言葉を続けず、しばしの沈黙が訪れる。

「えと・・・どうですか・・・?ここ・・・」
思い切って訊いてみた。いきなり誘いはしたものの、スウェーデンは浜辺で本を読んでるだけで、
楽しそうな様子ではない。そもそも表情が読めない。
セーシェルはいささか不安になっていたところだった。
セーシェルの気持ちを察したのか、スウェーデンは珍しく多めに口を開いた。
「ん。ええどこだと・・・思う。やっぱりあったけぇってことは幸せなんだない。
わげの国には無い気持ちいい空気だばい」
その言葉にセーシェルはぱぁっと顔を明るくする。

しかし、次の言葉でその笑顔は凍りつくことになる。





「女房のフィンも連れてきたかったない」





・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?



セーシェルはその言葉を整理するのに約10秒間の時間を要した。
その間にスウェーデンはマイペースにもぐもぐ刺身を食べ続けている。


(えーっと、女房のフィン・・・?
フィンってフィンランドさんのことですよねー・・・?あのモイモイな。
あれ、女房っていうのは女性に対して使う名詞であって、あれあれ、
あ、野球では女房ってキャッチャーのことだけど、あれ、今別に野球の話してないし、
フィンランドさんは確か男で、うん、それは間違いないはず、
だってクリスマスにプレゼントもらった時しゃべったし。
えーっと、あ、スウェーデン語では「にょーぼー」って違う意味なのかな?
あ、ぬ●ぼーとかってキャラ日本さんちで見たことある!
あ、う●いぼーとかいうお菓子もあったなあ!
うん、きっとありふれた名詞の音の並びなんだ!きっとそうだ!)

「えーっと、スウェーデンさん、にょーぼー、って」
スウェーデンのなんかおいしいお菓子です?と聞こうとした。すると
「ん・・・何百年か一緒に住んどった。めんげえ嫁ごだ。
今日も『一緒に来』って誘ったんだげんちょ、クリスマスの準備があるからって来ねがった」


仮定:スウェーデンとフィンランドは男。
式:(女房×嫁+めんげえ)÷一緒に住んでる。



どんな方程式を以てしても、導き出される答えは「=スウェーデンはHOMO」以外に無かった。

つうこんのいちげきで、セーシェルはめのまえがまっくらになった。
セーシェルの杞憂を知らずに、スウェーデンは読書を再開していた。
(そ・・・そんなの・・・きいてないっ)
手の甲を目に当てふらふらとよろめき、砂浜にどすんと尻もちをついたが、スウェーデンは気に掛ける風もない。
そうして夕刻になった。


(はあ〜・・・)
盛大な溜息をつき、セーシェルは浜辺を歩いた。
あの後、ショックの収まらないまま「夕食の準備を・・・」と言ってよろよろとスウェーデンのもとから去った。
夕食はそもそもホテルのシェフ(島で一番いいシェフを雇った、この日のために!)が作ってくれるのだから、
セーシェルはなんの準備をする必要もなかったわけだが、とりあえずスウェーデンから離れ頭を冷やしたかった。
(なーんなんですか、もう・・・)
しかし本当に夕食の時間が来てしまった。
仮にももてなす側のセーシェルが、スウェーデンを放っておくわけにもいかない。
スウェーデンのいる浜辺まで、彼を迎えに行った。
(あ――――――きっとこれはあの眉毛野郎の呪いですよ。
きっとあいつ友達いないからって植民地が一人で幸せになるのを阻止しようとしてるんですよ。
あ―――――しねしねしねしね眉毛禿げろ)
心の中で無茶苦茶な八つ当たりをしながら、セーシェルはスウェーデンの寝そべってるベンチに近づいた。

刹那、足を止めた。

(寝てる)

先ほどあんな事実が暴露されたにも関わらず、セーシェルはスウェーデンの寝顔に見惚れてしまった。
白く透明な肌、色素の薄い髪、金のまつ毛。
どれも自分にはないもので、その全てに目をひかれた。
特に、肌。男の人なので多少硬さはありそうだが、雪のように白い肌はセーシェルにとって宝石以上に
目を引くものだった。
気づくと、セーシェルの手はスウェーデンの胸板にのびていた。
滑らかに見えた肌は毅さを持っており、自分のそれとはずいぶん違う感触であることに驚いた。
さらに違う箇所を探ると、各々の部分の骨ばり、筋肉がはっきりと感じ取られ、
その体から発散される「男」に夢中になり、セーシェルはスウェーデンを触り続けた。

鎖骨、ろっ骨、肩甲骨。
自分がだんだんムラムラしてくるのがわかる。
腕筋、胸筋。
徐々に手が体の中心に伸びてくる。
腹筋、そして―――――――。

「・・・なした?」

ぼ っ か ー ん 。
マダガスカルまで聞こえそうな火山の噴火の音が響いた。少なくともセーシェルの頭の中で。

「え・・・いやー、あっはははっはははははははははえひゃひゃひゃひゃくぁwせdrftgyふじこlp」

今、セーシェルはほとんどスウェーデンに覆いかぶさっている体勢で、少なくとも傍目には
襲ってるようにしか見えない、うん。

「えええーと、えーとですね―――」
硬直したまま、目を泳がすセーシェル。
手はまだスウェーデンの腹に置いたままだ。

この時セーシェルの頭の中でどのような思考が起こったのかはわからない。
しかし考えるより先に手がでていた。
「スっ、スウェーデンさん!」
叫ぶと、スウェーデンの海水パンツの中に手を入れ、アレをむんずとつかんだ。
「お あ い て ね が い ま す !」
「!?」
スウェーデンは明らかに動揺した。しかしそれ以上に言ったセーシェルの方が動揺していた。
(う―――はははは―――――なんでしょーねこの状況――――――
ムードゼロじゃないですか――――あーははー今まで普通の可愛い女の子演じてたのに―――
こんなんどう見ても変態じゃないですか――――うわ――フランスさんもドン引きの色魔ですよ―――
うわはーもうなんかどうにでもなれですよ―――――
つか相手ホモじゃないですか――こんなんやっても無駄無駄無駄ァなのに――――
うわーきっと明日にでもスウェーデン政府から国交断絶の手紙が来るんだろうな―――
あ―――はははあ―――――っていうかにぎりっぱなんですけどぉ―――あーどうすんのこの右手
あーあーあー

刹那、混乱を遮るように、セーシェルは押し倒された。
「!?」
やわらかい砂が背中にあたる。波の音がかなりそばまで聞こえる。
先ほどまでと逆に、スウェーデンがセーシェルに覆いかぶさる形になった。
「あのっ、すうぇー・・・でん・・・さん・・・」
答える代りにスウェーデンはセーシェルの首筋にキスをした。
押し倒された影響で、簡単にセーシェルの紐の水着が乱れ、乳首が露わになる。
「え・・・と・・・これは・・・」
セーシェルの声を聞くと、スウェーデンは顔をあげ、答えた。
「ん、『おあいて』」
「!」
再びキスが再開される。首筋から鎖骨まで流れるように口づけを浴びせると、
露わになった乳首を少し噛んだ。
「ひゃうっ・・・」
たまらず声をあげた。スウェーデンの長い指が片方の乳首をいじった。
「やんッ」
ざざざ。夕焼けの海は満潮が近いのか、押し寄せた波が二人を濡らした。
背中を流れる冷やかな水に対して、体は内部から熱くなっている。
そのコントラストに否応もなく興奮する。
だが、行為が高まって行く前に、セーシェルは抱いていた疑問を口に出した。
「あっの・・・スウェーデン・・・さん・・・」
「なした」
「あの・・・スウェーデンさんって・・・男の人が好きなんじゃ・・・」
「・・・」
答えないスウェーデン。行為がやむ。
その気まずそうな顔を見て、セーシェルは頭の片隅にあった考えが飛び出した。
「あの・・・もしかして、私に恥をかかせないように・・・ですか・・・?」
スウェーデンは答えない。セーシェルは泣きたい気持ちになってきた。
「あの・・・だったら・・・やめてくだ」
最後まで言えなかったのは、スウェーデンがセーシェルの右手を強くひっぱったからだ。
「!?」
そしてその手を自身の方にあてがわせる。
「・・・え・・・」
スウェーデンの意図がわからず困惑したが、ぼそりと呟かれた。
「・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・ってっべ。」
「え?」
スウェーデンの声はいつも以上に小さく、聞き取れなかった。
「・・・・だから・・・勃ってっべって・・・・・・・」
「――――――――――!!!」
確かに、スウェーデンのそこは先ほど触っていた時よりもおっきくなっていた。
「え、じゃあバイなんですか!?」
セーシェルはすごいことを言った。
「わがんね・・・でも」





「おめは、めんげと思っぞ」




行為が再開された。



「ふぅっ、やぁっ」
広い砂浜にあえぎ声が響き渡る。
プライベートビーチではあるが、周りに二人の姿を遮るものは何もない。
国民に見られたらお終いだな、と思うが一方でそのせいで余計気持ちよくなってる自分も自覚していて、
(うぅ、自分、変態ですぅ・・・)
と思い恥じらったがどうにもならない。
満潮は進み、寝そべったセーシェルの腰を、スウェーデンの膝から下を浸していた。
スウェーデンの指はすでにセーシェルの上半身を触りつくし、その手は茂みへと伸びていった。
びくん、と体が跳ねたのは、自分の秘部がぐちゃぐちゃになっているのがスウェーデンの指越しに
わかってしまったからだった。
(うああああすっごい濡れてる。でも海水に体半分ひたってるしわかんないかも・・・)
「濡れでんな」
バレバレだった。
「あ、はぅー」
照れるこどね、とスウェーデンは囁くと、一呼吸おいてセーシェルのナカをいっきに掻き回した。
「ああああああああっ!」
広げられたナカに、海水が入ってくる。冷たい。熱い。冷たい。熱い、熱い。
感覚の相互に、セーシェルの快感は最高頂だった。
「えが」
「ふ・・・ふぁい・・・いいれす・・・」
締まりのない声。恥ずかしい。
「・・・いんぞ」
「え?」

スウェーデン語わかりません。

そう思った瞬間、秘部に熱いものが挿入された。
「はああああ、ああああっ!」
(あ、「いんぞ」って、「行くぞ」ね。はいはい)
体はイッてるのに、頭の中で方言の解釈ができてのんきに喜んでいる自分が面白かった。
びしゃびしゃ、と体の跳ねに合わせて水面に音が鳴り、その音ではないと知っているのにすごくいやらしかった。
「ンんッ、やぁッ」
「ふ・・・」
セーシェルの肉壁がスウェーデンを締め付ける。
気持ちのいい狭さの内部にスウェーデンのそれは限界に達し、いったん引きぬいてセーシェルの腹に射精した。
流れ出る愛蜜や精液が海水にまぎれ流されていく。
「・・・すまね」
「いいんですー・・・」
優しい人だな、と思う。先ほど爆弾発言をされて失いかけたスウェーデンへの憧れが、
再び湧き上がってきた。

(優しい人、大人な人)

肩で息をし、額から流れる汗。呼吸に合わせ動く逞しい腹筋。
その姿にうっとりとする。

(素敵な人、でも)

再び挿入された。
二度目は最初よりも遠慮がなく、いきなり激しい動きをされセーシェルはよがった。
「あ、あああああっ!」
行為は続く。スウェーデンは下で激しく腰を振る傍ら、姿勢を落としてセーシェルに顔を近づけた。
熱い息がセーシェルの顔にかかる。

(でも)



スウェーデンの唇がゆっくりとセーシェルに近づく。




(今回で、終りにしよう)


キスをされた。舌も何もない子供みたいに純粋なキスで、
首から下はこんなに乱れているのにすごくアンバランスだと思った。
傾いた夕日の赤い光が二人を照らし、砂浜に黒い影を落とした。







****

「・・・世話になっだ」
「はい」
二人とも、強張った面持ちだった。

あの後、あたりが真っ暗になるまで行為は続けられた。
だが、途中でセーシェルが「あー!そういえば夕飯できてたんだったー!」と
そもそもスウェーデンのところに行った理由を思い出し、
二人とも慌てて海水で体を洗い、タオルで体を拭いて服を着た。
シェフからはがみがみ言われ、せっかくの料理が冷めてしまいました、と絞られた。
冷たくなったものでもいいとセーシェルは言ったが、そこはプロ、迅速に作り直して素晴らしい食事を出した。
だが、せっかくの料理もセーシェルには味なんかしなかった。
スウェーデンもそうだったと思う。

今朝は、スウェーデンが自国に帰るというので、見送りに来た。
そういえば帰りの予定は聞いてなかった。
でも、この早々の帰国には、お互い何か感じるものがあった。


可愛いと言われた。
セーシェルも、スウェーデンに憧れていた。


(でも)


ホテルのロビーで、スーツケースを脇に抱えたスウェーデンにセーシェルは尋ねた。
「スウェーデンさんは、私のどこがかわいかったんですか?」
「な・・・」
セーシェルの唐突の問いに、スウェーデンはたじろぎ赤面した。
んなごと、みったぐなくて言えね・・・と顔を背ける。その様子が妙に可愛らしく愛おしかった。
もっと見ていたいと思ったが、セーシェルは口を開いた。
「あなたはわからなくても、私は、わかりますよ」
スウェーデンは不思議そうな顔をした。
「なんで俺がわがんねのに、おめがわがんだ」
ふふふー、とセーシェルは笑う。


(だって、私とあなたは)

スウェーデンの手がセーシェルの顔に触れる。
白い肌と焼けた肌の、二人の色のコントラストが目立った。
(違いすぎる、だから惹かれあったんだと思う)

でも、それはそれだけで。
やはり、違う世界に暮らす二人同士。
触れ合うほど、それが際立つ。体を重ねあったとき、感じていたのは合一ではなく遠さだった。


スウェーデンはそのままセーシェルの顎をひかせ、やさしくキスをした。
あのときの夕陽の中でしたのと同じキスだった。

「じゃ」
「はい」

再び会う約束はしない。そのかわりさよならも言わない。

ただ、この思い出だけ取っておきたかった。
未来にも過去にも繋げず、ただ、今この瞬間の美しい思い出として。


スウェーデンがホテルのドアから出て行った。一度も振り返らなかった。



****

「おい、お前スウェーデンを自分の家に招待したんだって?」
「・・・うるさいですよ眉毛野郎」
電話口でセーシェルは旧宗主国に無愛想な声を出した。
そんなセーシェルにかまわずイギリスは明るい声を出す。
「まったく、大丈夫だったろうな?仮にも相手は大国の一つだぞ。
なんか粗相をしたら、俺の恥じゃねえか」
まさか、襲ったりしてないだろうな?とイギリスは冗談半分に言い、
あ、スウェーデン相手にそれはないか、とけらけら笑った。
「・・・」
しかし、電話口からセーシェルの声が聞こえなくなり、慌てた声を出した。
「おい、まさかお前ホントに・・・」
「何言ってやがるんですか変態野郎!そういう発想するあんたに呆れただけですよ!」
ガチャンと電話を切り、外へ出た。
背後で電話の音が鳴り響いているが、気にしない。

向かった先は砂浜だった。
昨日まで、ここにあの人がいて、そして。

本当に、夢みたいだったと思う。
実際、そのくらい稀有なことだったのかもしれない。
北の国と南の国がああして逢い、あのようなことができたことは。
雪みたいに跡形もなく消えちゃったなと思ったが、そういえばセーシェルは雪を見たことが無いことに気付いた。

「今度、見に行こうかな」
きっと、あの人を思い出せる。
雪のようにどこからともなく降りおりて、心に積もりそして消え、瑞々しさのみ残して去ったあの人を。



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