きみはぼくのもの
薄暗い部屋のベットに、手錠でつながれたベラルーシが横たわっていた。服装や、髪は乱れ、魘されているのか手錠のせいかなのか、時折苦しそうな呻き声を上げている。
「っ!?此処は・・・。」
ベラルーシが目を覚ました。どうやら薬か何かで眠らされていたようで、頭がまだボーっとしている。ぐるりとあたりを見渡してみる。見覚えのある部屋だった。綺麗に本棚に詰められた本、落ち着いた上品な調度品、塵一つない部屋。ここは、誰の部屋だったか・・・。
「目が覚めた?」
ベットの傍らの椅子の上から、静かな声が降ってくる。まだ声変わりを迎えておらず、柔らかな少年の声だ。
「ラトビア・・・・っ!」
明らかな嫌悪を込め、ベラルーシが少年の名前を呼んだ。ラトビアは可愛らしい容姿とは裏腹な、わずかな嘲笑をうかべている。
「お前、何のつもりで・・っぐ!」
ベラルーシがラトビアに詰め寄ろうと身をよじったが、手錠が手に食い込み、鈍い苦痛が走った。眉根を寄せて、ベラルーシが顔をゆがめる。
「何のつもりって、それ本気で言ってるの?」
ゆっくりと、ラトビアは椅子から立ち上がると、ベラルーシの顔を覗き込んだ。
「はぐらっ、かすな・・・!」
「はぐらかす?隠し事をしてるのはそっちでしょう?ねぇ、ベラルーシ。」
鼻先が触れそうな距離で、ラトビアがささやく。ベラルーシはふい、と目をそらした。
「何のことかわからないの?じゃあ、教えてあげようか。」
ぐい、とベラルーシのメイド服を引き寄せると、ラトビアはびりびりと胸元の部分を引き裂いた。白くすべらかな肌があらわになる。それと同時に、白い肌に散った紅い鬱血あとが目に入る。
「ね、これ、なあに?」
可愛らしい声で、ラトビアがたずねる。が、目は一切笑っていなかった。
「・・・・・・・・・・・・。」
ベラルーシは、先ほどから目をそらしたままで、無反応だ。
「なあにって言ってるでしょ?」
ぐっと顎を掴むと、ラトビアはベラルーシを自分と向き合わせた。
「・・・ただの虫さされだ。」
吐き捨てるように、ベラルーシが答えた。
「ふーん。そっかぁ・・・、虫に刺されちゃったんだぁ・・・。ねぇ、僕もその虫知ってるよ?」
鬱血跡をなぞりながら、ラトビアが微笑んだ。
「地味な眼鏡のインテリ野郎でしょ?」
ぺろりと、鬱血跡に舌を這わせる。
「っぁ・・・、」
ぞわりとした感覚にベラルーシが震えた。
「これ、あいつにつけられたんだ・・・。嗚呼、違うね。つけさせたんでしょ?」
気付いてないとでも思った? と、続け、ラトビアはまた別の跡に舌を這わせた。
「んぅ・・・・っ!」
心なしか、ベラルーシの頬が上気している。息も少し荒い。
「他にはどこにつけられたの?・・・首の付け根でしょ、おへその上、右の足首でしょ、内腿に、肩甲骨の間。それと、左の二の腕、へぇーずいぶんといろんなとこについてるねぇ。」
呟きながら、徐々に服を脱がせ、跡のついているところをなぞっていく。
「ぅ、んぁ・・」
ベラルーシが、甘い声を上げる。
「あれ、どうしたのベラ?もしかして、感じちゃった?」
くすくすとラトビアが笑うとベラルーシはラトビアを睨み付けた。だが、潤んだ瞳に、赤く染まった頬のせいで、迫力は欠片もない。むしろ誘っているようにも見える。
「ベラ、なんでこんなことさせたの?僕がこうゆうの嫌いだって知ってるよね?あ、もしかして、僕にやきもちやいてほしかったのかなぁ。」
ベラルーシから手を離すと、ラトビアは立ち上がり、自分の机に向かった。ベラルーシに背を向けているため、何をしているのかはわからない。
「だったら、成功だね。僕はいますごくやきもちやいてる、っていうより、怒ってるなぁ・・・。かまってほしかったなら、そう言えばよかったのに。」
ベラルーシはもう何も言わない。ラトビアが何をしようとしているのかもみようとせず、ただ天井を見つめていた。
「ねぇ、ベラ。・・・・悪い娘には、おしおきしないといけないよね?」
ざくり、とラトビアは手に持ったものをベラルーシの首の付け根につきたてた。紅い鬱血跡がみえなくなり、もっと鮮やかで、赤い液体があふれてくる。
「あ゛ァァァァァァっ!」
ベラルーシの悲鳴が上がる。
「痛かった?ごめんね。これ、フィンランドさんの国花なんだ。あ、でも安心してね?あんまり深くは刺してないから、すぐ血は止まると思うよ。」
苦しげにうめくベラルーシを見下ろし、ラトビアはもういちど鈴蘭をにぎりなおした。
「これで、僕以外には見せられない体になるね・・・。まだ終わらないよ。我慢、できるよね?」
にっこりと微笑むと、ラトビアは別の鬱血跡に鈴蘭をつきたてた。
バタン、と音を立てて、ラトビアは部屋を出た。部屋の鍵はかけなかった。
ベラルーシの手錠の鍵は、はずしていない。まだ彼女はベットの上に横たわっている。
かちゃかちゃと、手のひらで手錠の鍵を弄びながらラトビアは廊下を歩いていく。
「あ、ラトビア!」
少し前のほうからリトアニアが小走りにやってくる。
「リトアニアさん。どうしたんですか?」
「さっきロシアさんが探してたよ。まだあっちにいると思うから、いってきなよ。」
「わかりました。あ、そうだ。リトアニアさん、ちょっと頼みごとしてもいいですか?」
「? いいよ。なにをすればいいの?」
「僕、部屋の鍵閉めてくるの忘れちゃって・・・。見られたくないものがあるので、鍵を閉めてきてもらっても良いですか?」
「わかった。ちょうどそっちのほう行くところだったし。」
「ありがとうございます。」
ラトビアは、ぺこりと頭を下げた。
「これ、鍵です。」
そういって、リトアニアに2つの鍵を渡した。一つは部屋の鍵、もう一つは手錠の鍵だ。
「大きいほうが、部屋の鍵です。じゃあ、おねがいしますね。」
そういうと、ラトビアはロシアがいるというほうへ向かった。途中、振り向くとリトアニアが急ぎ足で角を曲がっていくのが見えた。ラトビアはそれをみて、ひとりくすくすと笑った。
「ベラルーシのあんな姿見たら、リトアニアはどうするのかなぁ・・・。」
興奮するかな?軽蔑するかな?
あぁ、そろそろ彼は僕の部屋に着いた頃だろうか―
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