野球拳直後
呆然とするEUの面々を尻目にスウェーデンはほぼ裸のウクライナを抱き抱え部屋を出ていく。
「あ、あの・・・スウェーデンさん?今から一体どこへ・・・?」
「俺の家(ストックホルム)。」
歩きながらスウェーデンは答える。
「お、お気持ちはありがたいんですが・・・あの・・・その・・・」
「なんだべ?」
スウェーデンは立ち止まり、抱きかかえたウクライナを見る。
その突き刺さる視線にウクライナは半泣きである。
「うう・・・そ、その・・・服が・・・」
「おお。忘れとったわ。」
スウェーデンのちょっとびっくりした表情。
ウクライナは初めて見たその顔をみて少しほほ笑んだ。
その顔をみて、またスウェーデンも少し表情がゆるんだ。
ウクライナの状態を忘れていたスウェーデン自体もまたボクサーブリーフに靴下だけである。
とすんと廊下脇にあったソファーにウクライナを座らせ、シャツをかけた。
持っていたジャケットの中から携帯を出し誰かに電話をかけている。
ウクライナは声が低くて聞き取りにくいなあと思いながら、ぼんやりと彼を眺めていた。
こうやって眺めていて初めて気がついた。
眼鏡の奥の意外とやさしげな深い青の瞳、堅そうな髪、筋肉のしっかりついた肩・・・
(あの腕にさっきまで抱きあげられてたんだよなあ・・・
なんか昔もおんなじような感じのこと、なかったけ?)
ウクライナは記憶の深い深い所に既視感を感じた。
「ま、頼むわ。」
電話が終ったらしくズボンのポケットに携帯をしまおうとする。
が、スウェーデンもまだ裸同然。
あるはずの無いポケットに入るはずもなく、携帯が派手な音をたてて落ちる。
その音でウクライナははっと我に返る。
携帯はウクライナの足元に転がっている。
「ああ〜やっちまっただ・・・」
落とした衝撃で携帯の液晶部分が割れている。
頭を掻きながらスウェーデンが拾い上げようとするより先にウクライナの手が伸びる。
ウクライナが屈んだのとスウェーデンが屈んだのとほぼ同時。
二人の目線が同じ高さになった。
すっと顔を寄せたウクライナがスウェーデンに口づける。
何故、しようと思ったかわからない。
勝手に体が動いた。
ウクライナは自ら舌をからめスウェーデンの歯をなぞる。
離れた後、二人の間に透明な糸が垂れる。
「おめ・・・」
スウェーデンが真っ赤になる。
だが、それ以上に真っ赤な顔のウクライナ。
「ごめんなさい・・・」
「謝ることじゃねえけど・・・」
少しの沈黙。
「む〜〜〜〜〜・・・・おめが悪い。」
ばつの悪そうな顔でスウェーデンが呟くとまたウクライナを抱きあげる。
「えええ!!!?私歩けますって〜〜〜〜!」
「靴、ねえじゃねえか。」
ズカズカとものすごいスピードでスウェーデンが歩く。
そのままスウェーデンは手近の部屋に入る。
さっきまでいた野球拳の部屋が大会議室なら、この部屋は小会議用の部屋。
5〜6人が会議するための小さな部屋で机と椅子、あとは内線電話とVTR用の機器があるくらいの部屋。
EUの会議が行われる会場なので絨毯はふかふかだ。
机の上にウクライナを座らせる。
きょとんとするウクライナの顔の前にスウェーデンはずいっと顔を近づける。
「・・・床と机、どっちがええ?」
「?え?何で??」
「どっちがええ!?」
「(うひゃあああこわすぎるうううううう)じゃ、床?」
そう答えると机から下ろされ、床にすとんと座りなおさせられた。
スウェーデンも床に座る。
また同じ目線。スウェーデンの目に困ったような色が浮かんでいる。
「家まで、我慢すっべと思ってたんだがなあ・・・」
おでこをポリポリ掻いている。
ウクライナはなんかこの人、思ったよりかわいいなあと見ていたらいきなり押し倒された!
スウェーデンの大きな手がウクライナの胸をつかむ。
それと同時に口をふさがれる。
「ん・・!」
密着する体がものすごく熱い。
はじめからお互いほとんど着衣のない状態。密着する肌と肌。
するすると動くスウェーデンの手がウクライナの弱い部分を攻め立てる。
いつの間にかウクライナもスウェーデンの背中へと手を回し、背中のラインをなぞっていく。
無我夢中でお互いがお互いの口の中を貪る。
これで興奮しないわけが・・・ない。
だめだと思う間もなく、没頭していってしまう熱さ。
息ができなくなり、ウクライナは少し離れる。
真っ赤な頬に快感の涙が頬を伝う。
「真っ赤な顔は、変わんねえなあ・・・」
「・・・?」
しみじみとスウェーデンが呟くとウクライナの最後の砦を取りさる。
スウェーデンは足をグイっと開かせ、熟れて蜜の溢れる秘所に顔を寄せ舌でなぞる。
「ひゃっ、スウェー・・さん!そこ・・」
見られていると意識しただけですでにぐちゃぐちゃになっているのに刺激がさらに加えられる。
快感と刺激の波に揺らされなんとか留まりたいと思うのか、スウェーデンの体に爪を立てる
その痛みがさらにスウェーデンを熱くさせる。
快感に呑まれながらもウクライナは行為に没頭するスウェーデンとふと目があったような気がした。
悪戯をする子供のように一瞬にやっと笑ったような気がした。
次の瞬間蕾を甘噛みされ、ウクライナの意識は飛んだ。
ちらりと壁掛け時計にスウェーデンは眼をやる。
「まだ大丈夫だな。」
そういうとウクライナの中心に指を差し入れる。
指に絡みつく肉の感触。
徐々に増やしていくと、ウクライナの嬌声が上がる。
スウェーデンは心地いい声に興奮する自分を自覚する。
「いれっぞ。」
「ん・・・ぁ!!」
ひと際高くウクライナは啼き、その衝撃に意識が飛びそうになる。
無言で動くスウェーデンに何度か奥までたたきつけられ意識が飛びそうになる。
なぜ、いまこの人と体を重ねているんだろう?
行為が始まってからずっとウクライナの頭の中にあった疑問。
けどもういい。
くだらない疑問をも吹き飛ばすかの様な熱さにもう委ねてしまおう。
スウェーデンは腰を打ちつけながら、ウクライナの首筋を軽く噛んでやる。
中がギュッと締る。
まだだ・・・と思いもう一度ぎりぎりまで引き抜き最奥に己を叩きつけた。
「ん・ああっ・・!!!」
ウクライナが一声啼く。
その声を聞いてスウェーデンも中に己を放つ。
「・・・今は開けるべきじゃないですよね。デンマークさん・・・」
「勇気があるならあけるっぺよ。フィンランド。俺は止めんぞ。」
「今開けたら確実に俺らもスウェーデンに犯られっぞ。なあアイスランド。」
「ウクライナってフィンランドに似てないですか。ノルウェー。」
「えええ!!????」
ドアの外まで聞こえるウクライナの声に北欧レンジャーの残り四人は南無南無といった風情で手を合せ、
スウェーデンに電話で頼まれ買ってきたウクライナの服をドアの前に置いて「さー飲みに行くべ〜〜」と去って行った。
何度か体を重ね、二人ともいつの間にか眠っていた。
ウクライナは夢を見ていた。
深い緑の森が雪に染まっていく。
ああ、生まれたころの夢だ。
まだ自分も小さく、幼い弟と妹の手を引き雪の中を歩いていた時の夢。
どこに行けばいいのかまったくわからない。
降り積もる雪。
どうしたらいいかわからなくて泣き出したくなった。
その時、温かい手に抱きかかえられた。
「よう歩いてきたな。」
そういった声の主はスウェーデンだった。
「寒かったか?真っ赤な顔してっぞ。」
そう言って幼いウクライナの頬をなでたスウェーデンは笑顔だった。
「おめえ、めんげえなあ。おっきくなったらおれの嫁さなるか?」
「あ・・・そうだった・・・」
そこでウクライナは目が覚めた。
「あの時のおにいちゃんだったんだ・・・」
隣で寝息を立てているスウェーデンの髪をなでる。
「すっかり忘れてたな。だめだなあ・・・スウェーデンさんは・・・覚えてたのか・・・な?」
さわさわ撫でていたらスウェーデンが目を覚ました。
メガネを外していたのでまた目つきがとんでもない。
が、野球拳の時ほどの恐怖は感じない。
「今、何時だ・・・?」
「え〜っと・・・え???夜の9時半!?」
「何!?」
「確か野球拳終わったのが夕方の4時くらいだったような・・・」
スウェーデンが真っ裸で外に飛び出る。
廊下の電気は付いていた。が人の気配はない。
そしてドアの前には祝・北欧レンジャー一同と書いてある袋(中身服・タオル)が置いてあった。
がっくり肩を落とすスウェーデンがなんとも面白く可愛いなあとウクライナはにこにこしていた。
とりあえず服を着て会議場の外へ出る。
春先とはいえまだまだ寒い。自然と二人は寄り添った。
「・・・どうするべか・・・」
「とりあえず、ご飯でも行きませんか?」
「・・・だな。」
「・・・お願いがあるんですが。」
「何だ?」
「スウェーデン、行ってみたいんです。仕事、とりあえず・・・言ったら1週間は休めますし・・・
・・・いいですか? もっと知ってみたいというか・・・その・・・」
ウクライナが最後まで言う前にスウェーデンがまたむぎゅっと抱きしめる。
「めんげえ・・・・」
スウェーデンは耳まで真っ赤になっていた。
(多分、これは肯定でいいんだよ…ね?
そういや自分もこの人も一回も「好き」とか「愛してる」とか言ってないや。
・・・まあいいか)
抱きしめられながらふと疑問に思ったがこれからだよなあとウクライナは抱きしめられながら空を見上げた。
満天の星空がたぶん答えだ。そう思ってウクライナはスウェーデンを抱きしめかえす。
前から聞き覚えのある声がする。
「あーーーあいつらやっと出てきやがったぞーーー!」
店から放り出され酒瓶を握りしめたデンマークが思いっきりこっちを指さす。
「祝いだ!お前らも飲めーーーーーー!!!!こっち来いーーーー」
ノルウェーとデンマークが叫んでいる。
ウクライナとスウェーデンは顔を見合せ、笑い合うとその店へと近づいて行った。
おわりー