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6_18-23


 Artemis


(・・・アンドロギュヌスって、知ってる?)
(あ?お前んとこの神話に出てきた昔の人間だっけ?)
(そう。母さんから聞いた。昔の人間はみんな男であり女であった・・・らしい)
(ふーん)
(で、ある時神様が、人間がわがまますぎるっていうんで、そいつらを真っ二つに割った)
(・・・へぇ。真っ二つって痛そうだな)
(で、こうして男と女ができた・・・)
(へええー。そうだったのか。一つ賢くなったぜ。
 ・・・でも、何で今そんな話するんだよ?)
(・・・別に)



Artemis


ハンガリーが久しぶりに帰ってくる。

イスタンブル、トルコの私邸。
宮殿はハンガリーを迎えるための準備で大わらわだった。

「あいつの好物のマントゥを忘れるな。ああ、ああ、チョルバもたっぷり用意しとくんでぃ。
 それから踊り子や曲芸師の配備も怠るなよ」

トルコは嬉々として人々に指示を与え回っている。
相当に豪華な宴が催されるらしく、宮殿の中の人間はみなせわしなく動いていた。
ギリシャはそんな忙しそうな人々をぼんやりと見つめていた。

オーストリアの所にハンガリーが行ってしまってから、ずいぶん経つ。
別れた時はお互いちびだったが、今ではギリシャの外見の年齢は13、4歳といった所だ。
ハンガリーも同じくらいに成長しているだろう。
久しぶりすぎて、どのような姿になっているのか、想像がつかない。

「・・・想像、したくない、だけかも」

ぼそりと誰に言うでもなく呟いた。
夕暮れの空を見上げると、遠くの方から召使達の「お着きになったぞ!」というざわめきが聞こえた。

***

久々に見たハンガリーは、思ったほど変わっていなかった。
もちろん背は伸び、顔つきも子供くささが抜けてきたが、野趣ある表情や意志の強そうな眉は昔のままだった。
男ものの上着、ズボン。髪は昔のように結んではおらず、肩まで伸びたそれをそのままにしている。

ただひとつだけ、違和感のあるものがあった。

「・・・花飾り?」

***

饗宴は盛大に行われた。
踊り子が舞い楽団が唄い、色とりどりの地中海の美味が振る舞われる。
宴の中心に座すトルコとハンガリーは、お互い積もる話を語り合っていた。
「坊ちゃんはどうなんでぃ。ちゃんと大事にしてもらってんのか」
「ああ、大丈夫、親切にしてもらってるよ。少なくともあんたんとこよっか待遇いいぜ」
ったく、こいつは!とトルコは笑いながらハンガリーを小突いた。

ギリシャは近くに座っていたが、会話に混ざらず二人をぼんやり見つめていた。
ハンガリーとは最初に「・・・よ」「よぉ」と挨拶を交わしただけである。

なんとなくそれ以上その場にいたくなくて、席を立った。
「どこ行くんでぃ」
「・・・疲れた。出る」
このガキは!せっかくハンガリーが帰って来てるって言うのによぉ!
トルコの怒声を背後で聞きながら、ギリシャはふらふらと騒がしい宴を後にした。

***

ギリシャは宮殿の中庭に来た。噴水があってひんやりと涼しく、喧噪もここなら遠い。
「・・・ふぅ」
珍しく溜息をついた。宴はそもそも好きな方ではないが、今日のは特別に疲れた。
理由はわからない。

噴水の石垣に座り足を水に浸した。あの熱気を帯びた部屋で火照った体に丁度いい。
空を見上げる。満月。深い藍の空に、くっきりと白い円があった。

(・・・満月の光は人を狂気にさせる、らしい)

なんとなくそういうことを考えた瞬間、背後で声がした。振り向く。

「よお」

ハンガリーだった。あたりは暗くなっているが、月灯りのおかげでその表情まできちんと見て取れた。
「なんだよーお前、水臭いなあ。久しぶりにお前とも話したかったのに」
「・・・トルコがお前にべったりだったから。あいつのそばにいたくない」
これは嘘だ。自分があの場にいたくなかった理由は、多分、もっと違うもの。
「なんだ、まだあいつのこと嫌いなのかよ。ま、俺はお前が相変わらずで嬉しいけど」
「・・・そうか」

(やっぱり、変わったな。ハンガリー)
隣に腰かけ、会っていなかった間の出来事を嬉しそうに話しているハンガリーに、
うん、うんと相槌を打ちながらそう思った。

先ほどは気付かなかった、良い匂い。肩の丸み。そして、わずかな胸の膨らみ。
何より、オーストリアのことを話している時の表情。
「・・・でな、あの人すっげーピアノ巧いんだよ。俺、そういうのからっきしだから羨ましくてさあ・・・」
彼を、本当に眩しいもののように話す、その顔。
自分と一緒にいたときには見せたことのない表情だ。
月明かりのせいでその笑顔は神秘的なまでに美しく、ギリシャはしばし見とれていたが、
一方で胸に不快なものが溜まっているのを感じた。

「でな、オーストリアさんが」
何度目か分からない「オーストリア」の単語が出てきたとき、ギリシャは初めて自分から口を開いた。

「・・・その花飾りはなに?」

自分の話を途切れさせる質問にハンガリーは少し驚いたようだが、ああ、と言って答えた。
「ああ、これもあの人からもらったんだ。・・・自分には似合わない、って言ったんだけど。
でも、くれるって」
ギリシャはそれを聞いて、ほんの一瞬眉をしかめた後、不機嫌そうに呟いた。

「・・・おんな、みたい」

その言葉にハンガリーが息を飲むのが分かった。
子供のころ、二人はどちらも一応「男」として過ごしていた。
ギリシャはハンガリーが「ついてない」ことに違和感を覚えていたが、ハンガリーが自分で
「自分は男だ」と言うのでまあそういうやつもいるのかな、くらいに考えていた。
だが、ハンガリーが貴族の所に行った後、トルコがぽつりと漏らした。

「・・・行く前にちゃんと、お前は女だってことをあいつに言っておいた」

ギリシャは少しショックだったが、やっぱりと思ったことを覚えている。
―――あいつは女。で、坊ちゃんの所に貰われていった。
ハンガリーがオーストリアの所に行ったという事実は、彼女の性別を知った後には
違う重さを持って幼いギリシャに受け止められた。

それが、今、掘り返される。

「・・・あ、ああ・・・。そういや、言ってなかったよな・・・」
気まずそうに話すハンガリー。目が泳ぎ手は頭を掻いている。

「おれ、実は、おん」


言い終わる前に口付けた。

「!?」
目を見開くハンガリー。驚きのあまり無抵抗なその唇に、無遠慮に舌を割り入れる。
「んはぁ・・・!」
ハンガリーから色っぽい声が漏れる。キスには慣れていないようで安心した。
舌を絡め十分に味わった後、すっと離して見つめあった。
ハンガリーは今起きた事態を信じられないという顔をしていた。
「お前、何して・・・!」
その声は怒りというより混乱が勝っていた。ギリシャは気にせずハンガリーの肩を抱き押し倒す。
噴水の水にハンガリーの上半身が浸る形になった。
髪の毛が泉に放射状に広がり、水面に映った月が波でゆらりと形を歪めた。
ギリシャはそのたわんだ月を少し見つめると、無遠慮にハンガリーのズボンの中に手をつっこんだ。
「な!?ちょ、なにしてんだよ!」
さすがにハンガリーもこれには抵抗の声を上げた。
気にせず割れ目をなぞり穴に指を這わす。陰毛がまだ生えそろっておらず柔らかい。
「何って・・・。昔も、よく、こういう事した。ちんちんが生えるおまじない、って」
確かにそうだった。昔のハンガリーは自分が「生えてない」ことを気にして、
ギリシャと二人でよく自己流の「生えるおまじない」をしていた。
その中には、今思うとかなり際どいものもあった。

「ハンガリー、まだ、生えて・・・ない。俺が手助けしてあげる」
そう言って突起への刺激を開始するギリシャ。
ハンガリーは面白いくらいに指の動きに合わせて「あっ!」「はぁ!」と反応した。
次第に膣から蜜があふれ出す。いったん引きぬいて、指先を見るとぬらぬらと怪しく光っていた。

ギリシャは外見年齢こそまだ少年と呼べるが、もう女は知っていた。
ハレム好きのトルコの影響である。

慣れぬ快感に戸惑っている様子のハンガリーにお構いなくギリシャは行為を続ける。
上着の下から手を入れ、わずかな膨らみを持った乳房を揉んだ。
「あっ!」
ハンガリーからひときわ大きな声が漏れた。
「胸、こんなに腫れてる。治してあげる」
乳首を摘み掌で包む。まだ育ちきってないそれは、敏感に刺激に反応した。
「ひゃ・・・や、め・・・!」
ハンガリーはほとんど涙目で、悲しみとも悦楽とも取れない表情をしていた。
「やめない」
ギリシャは淡々と答え愛撫を続けた。少年とは思えない慣れた手つきで、ハンガリーの良い所を見つけ
貪欲に攻めていく。

「ハンガリー・・・、覚えてる?」

胸を揉みしだくのをやめずにギリシャは問いかける。
「え・・・?あぅ!」
愛撫のせいでハンガリーは答えられるような状態ではなかったが、瞳だけはギリシャに向けた。
「アンドロギュヌスの話」
ハンガリーの上着をゆっくりたくしあげるギリシャ。小さな乳房が月明かりのもとに露わになった。
「え・・・?」

「昔々の人間は、男で女、両方だった。
   でも、神様がそれを二つに分けた」

乳房に顔を埋めるギリシャ。乳首を噛むと「あ!」と嬌声が漏れた。

       「・・・そのせいで、人間は求めあうようになった。
                        男は女を、女は男を。」


ちゅ、と吸い上げる。まだ母の恵みとは呼べぬその膨らみは、しかし若い毅さに溢れていた。



                 「そのままだったら、良かったのに。」


―――あんたが、男でも女でも無いままだったら。

この気持ちに、気付かなかったはずなのに。

こんなにも、その花飾りに動揺することも無かったのに。

こんなにも、あのお坊ちゃんに嫉妬することも無かったのに。

ギリシャの手が再びハンガリーの下に伸びた。
ズボンのベルトを外し脱がしにかかる。

すると、がし、と手をつかまれた。

「もうやめて」
そう言われた。はっきりと、女の口調で。

ギリシャはハンガリーから体を引き、長らく押し倒されていたハンガリーはようやく解放された。
泉の水に浸った髪の毛が、満月の明かりに照らされて光っている。
神秘的なその姿は、まるで月と処女の女神アルテミスみたいだなと思った。
「・・・ごめん」
「いいよ」
交わした言葉は二つだけ。
身だしなみを整えると、ハンガリーはギリシャに背を向けて宮殿の方に向かって行った。
ギリシャは何も言わず、その姿が見えなくなるまで見送っていた。


ずいぶん長い時間が経つと、ギリシャは、ほぅ、と本日二度目の溜息をつき、空を見上げた。
「・・・満月、きれい」
空には変わらず月が怪しいまでに白く光っていた。
「・・・でも、きらい」

―――満月は人を狂気にする。

全部、全部、月明かりのせいだ。
今日彼女にしたことも、なぜか頬を伝う涙も、この焼けるような胸の痛みも。




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