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 〜甘い香りは誘惑の香り〜



――どうしてこんな事になったんだ?

身体の下には、雪のような肌をした少女が一人。
頬を赤らめ、ただ、彼を見つめていた。
薄い茶色の髪、頭のリボンが呼吸のたびにさらりと揺れる。
紺色のワンピースは乱れ、肌が露になっている。
嫌だったら、手加減なしに殺してくるような奴だ。
何もしてこないという事は、無言の肯定なのだろう。


もし、これが想い人だったら、ためらいもない。
だが。
どうして。
こんな
数回顔合わせた程度で、ここに来るまで話もろくにしなかった奴と、こういう展開になっているのだろ
うか。


事の始めは、数日前。
女に襲われたショックと、ドイツの非情さに泣きながら家を飛び出したのがきっかけだった。

「ちくしょう! いじけてやる! ぐれてやるぅぅっ!!」

大の大人がいじけるとかぐれるとか言っても、誰が止めるというのだろうか。
現に、ドイツは止めにこなかった。きっともう一戦だか、もう二戦だか楽しんでいることだろう。
最初は、追いつける程度の速さで。追いかけてくるものがいないとわかると、とぼとぼと歩き出し。
ついには地面に座り込む。
涙でぼろぼろになった顔なのに、口元だけはどうにか笑ってみせ、

「一人楽しすぎるぜ〜」

いつもの強がり。

そこまではいつも通り。

ここからがいつもとちがったのだ。

「どいて」
可憐な声とともに、背中に走る衝撃。
前のめりになり、でんぐり返しで2周して、大きな木にぶつかって止まった。
新たにあふれ出てくる涙を拳で拭い取り、後ろにいるはずの人物に向かって叫ぶ。
「いてぇじゃねーか!!」
だが、その人物はもうすでにそこにはいなかった。
辺りを見回すと、黙々と歩みを続ける少女の姿。
「おい、ぶつかっておいて侘びもないのかよ!」
まるでチンピラのような口調で叫ぶと、立ち上がり、少女に追いついて肩に手をやり……
――再び、視界が回った。
実に華麗な技だった。攻撃を受け流し、それを自らの攻撃へと変化させる。
一度ならず二度までも転ばされた身としては、怒り奮闘だろう。
「だから待てって!」
「何? 私はお前に用はない。私が用あるのは兄さんだけ。兄さん兄さん結婚結婚結婚」
その様子から推測するに、相変わらずロシアを追いかけているようだ。
きっと、今日もロシアに結婚を迫りにきたのだろう。
だが
「……今日はセーシェルんち行くとか言っていたから、そっちにいっても無駄だぞ」
「そう……」
急に表情が曇る。
(ああ、そうか。あいつが意味もなく行くわけない。暖かいとこ狙ってるんだっけな……)
ぼんやりと考える。
(ロシアの事だから、温和に済むわけない。無理やり蹂躙するに違いない。泣き叫ぶセーシェルをあーん
な手で……)
頭の中で、中坊的ピンク妄想があっという間に広がった。が、すぐに考えを変える。
(って、わけないか。確かロシアが向かったときいて、フランスとイギリスが公務放りだして向かったと
誰かが言ってたな)
「何、ニヨニヨしてる。気持ち悪い」
八橋のやの字もなく、ずばっと言い放つベラルーシに、彼は少々興味を持った。
兄弟を愛する者、報われぬ愛、言いたいことはずばりといってしまう性格。
どこか自分に似ていたからか。
しょんぼりと肩を落とし、去っていこうとする彼女に声をかけてしまったのは。
「これからちょっと俺につきあわねぇか?」
「嫌」
0.2秒で玉砕。相変わらず普憫さは絶好調らしい。

「で、なんで?」
「だから、押してだめならば引いてみろって奴だよ。
数日姿を現せなければ、きっとロシアも気にするさ」
「そうだけど、何でお前なんかと」
「大丈夫。俺も何でお前なのかわからんから」
話すら聞いてくれないベラルーシをどうにかなだめ、ある空き家へとやってきたのだ。
作戦はこうだ。
どこかに姿を隠す→数日姿が見えない→ロシアとドイツが心配する→必死に探す→程よい所で出て行く→やっぱり君が必要なんだ
そううまくいかないとはわかっている。作戦を考えたプロイセン以外は。
でも、たまには心配した兄が見てみたい。
「……付き合ってやる。ただし……」
「あー、わかってるって。俺だってもう少し胸が大きい方が」
「……殺す!」
口は災いの元。ナイフを持ったベラルーシに追い掛け回されるプロイセン。
そんな関係だが、一人じゃない事、誰かと騒げるのが少しだけ嬉しい。
ちょっとだけ彼の目に涙が浮かんでいたのは、恐怖だけのせいではないといっておこう。


さて、同じ目的の元、一緒に数日を過ごすことになったのだが。
偶然見つけた空き家は、アジトとして最適だった。
一部屋しかないのは難点だが、その他、生活に必要な物品はそろっている。
部屋の真ん中に置かれたベッドはベラルーシが占領したのはしょうがないだろう。
むしろ、一応紳士(自称)なんだから、もし彼女に譲られたとしても、頑として受け入れる気はなかった

……まあ、そんな話、ひとかけらも存在しなかったのはいつものことだ。
一日二日は、彼女の動向にどぎまぎもしたのだが……ここまで意識されないと悲しいものがある。
風呂上りはタオル一枚は当たり前。時折、ベッドに潜って甘い声を上げている時すらある。
ここで襲わないと男ではない。

だが、プロイセンも男であるまえに、ひとりの人だ。命は惜しい。
泣く泣く、一人シャワールームで抜く日が続いていた。
『イカクサイ』とか『変態』とか言われようとも、抜いておかないとこっちの身が持たない。

「あー!! お前、ビール飲んだだろ! 折角俺が買ってきたってのに」
「うっさい。コレじゃ足りない。買って来い」
鬱憤を晴らそうと買ってきたビールが飲まれていた。
いつものようにマイウェイなベラルーシの姿に、彼は肩を落とす。
どうせ、彼女に何を言っても無駄なのだ。
それならば……
「しゃーない。たっぷり買ってくるから、たまには2人で酒盛りでもするか」
「あんたのおごりならば」
「へいへい」
相変わらず口数は少ない。
だからこそ、たまにはじっくりと話してみたくなり、酒盛りを提案したのだった。
2人でバーか何かで飲む……という雰囲気ではない。居酒屋で飲み明かすようなものだ。
彼女はウォッカを好んで飲む。だから、少々の酒ではどうにもならないと踏んでいた。
……それが大きな誤算だった。
「ちょっとまて、それは俺用のビール」
「お前のものは私のもの。黙ってろ」
「しゃーねぇなぁ。ワインでも飲むか」
「そうしてろ。馬鹿」
ウォッカが燃料な雪国の娘と、ビールが栄養なゲルマン人。
二人が揃えば、あっと言う間に酒が消えていく。
最初はテーブルで酒を嗜んでいたが、次々と空く酒瓶にテーブルを支配され、いつの間にか床に座り込んで酒盛りをしていた。
もくもくと酒を胃に流し込んでいくだけだったが、やがてアルコールが全身にまわると、徐々に饒舌になってきた。
「にしても、ヴェストの奴め。あんな小娘といちゃいちゃするだなんて……
うらやらしすぎるぜ」
「それをいうのならば、うらやましいでしょ。
意味はあってそうだけど」
ピンクに染まった頬でしっかりと突っ込みをいれる。手にしていたウォッカのグラスを床に置くと、一つため息をついた。
「私だっていちゃいちゃしたいわ。
兄さんならばどんな事されたってかまわないのに」

「ああ、よくわかるぜ。俺だってヴェストならば、なにされたっていいのな」
「……ホモは死ね」
「違う!!そーいうわけじゃねぇ」
ヴェストの為ならば悪にでもなってやるって事だよ」
すわった瞳に一瞬だけ真面目な光が灯る。しかし、すぐにへらっと笑い……涙目になった。
「あああ、ヴェスト〜小さい頃はあんなに可愛かったのに。
いや、今でも可愛いが」
「酔っ払いうざい死ね」。
……だけど、半分は私も同じ。
兄さんの為ならば全世界敵になってもいい」
遠い目でウォッカのグラスを傾ける。氷が澄んだ音をたて、揺れた。
憂いの表情。赤く染まった頬。濡れた唇。
アルコールも手伝ってか、彼女の姿に妙にどきどきする
気づかれないよう、少しずつ、近づいていく。
「近寄るな。イカクサイ 」
そんな行動はバレバレだったらしく、首筋にナイフを突きつけられた。
(本気かわいくねぇ)
喉まで出かけた言葉を飲み込む。
これを言ったらナイフを横に引かれるに違いない。それもためらいなく。
――と、ここであるいたずら心が浮かんだ。
ニヨニヨといやらしい笑みを浮かべると、まっすぐに彼女を見つめた。
「イカクサイって、何の臭いだかしってんのか?」
彼女は視線をそらし、頬を更に赤らめ……

……だったら、良かったのだが。

目を逸らすことなく、表情も変えず、きっぱりと言い放つ。
「精子の臭いでしょ。一人楽しすぎる男は寂しいわね」
「悪かったな! お前だって一人でやっていたじゃねぇか!!」
「男がやっていることを、女がやって何が悪い?」
「やるにしても、もう少し男の目を気にしろ!! 女の恥じらいもねぇのか!」
「ムラムラきたの? はっ、理性の無い男ね」
「理性無くて悪かったな!! そんな恥じらいも無い女に誰がムラムラ来ると思うか!
そんなんだから、ロシアに愛想つかされるんだよ!」

売り言葉に買い言葉。
……その時、言ってはいけない言葉を言ってしまった自覚はあった。
だが、とまりそうにない。
「どうせ女の武器を使ったところで、ロシアに見向きも去れないんだろ。
まあ、しゃーねーよな。お前のねーちゃんはあんな巨乳だし、お前には色気も恥じらいもないだろー…
…んぐ」
言葉が途中で中断させられた。彼女の柔らかな唇によって。
アルコールの味がする。
舌が入り込んでくる。
歯茎をなぞられる感覚に鳥肌が立った。舌が絡まる。口の中を蹂躙される。
「……テクはある。あんたよりは」
息が荒い。顔が赤いのはアルコールだけが原因ではないだろう。
「なら、試してみるか?」

――こんな色気も無い女にくらっときてしまったのは、アルコールのせいにしておこう――

頭の中で言い訳をし、彼は彼女を押し倒した。

白い首筋に唇を落としながら、胸元のリボンを解いた。
胸元が露になる。大きくは無いが、小さくはない。丁度良い大きさである。
手を中にいれ。ふんわりとした胸の感触が気持ちよい。
スカートの中に手をいれれば、ぴくりと小さな反応を見せる。だが、彼女は関心のない風を装って、顔を背けた。
「……こっち見ろよ」
顔を正面に向けさせると、今度は彼からのキス。
「ん……やっ。穢れる……」
ささやかな抵抗をしているが、本心ではない。
唇を重ねたまま、手は彼女の身体をさまよう。
腿を指でなぞり上げ、太ももに触れる。滑らかな肌だ。
「くっあ……あしふぇち? 変態ねぇ」
息は荒いし、目はやや空ろになってきたが、口は減らないらしい。
「黙れ。感じてるんだろ?」
「三流悪役な台詞ね」
甘い声はあげても、毒舌ははく。だから面白い。
今まで全然興味がなかったのだが、興味がわいてきた。この女を淫らにしてみたい。
ロシアの事など忘れさせ、ただあえがせてみたい。
「そんな口聞けないぐらい、いかせてやるよ」
「だから、三り……くぅ」
ショーツに触れる。上からなで上げるとすでに湿っており、微かに濡れた音がする。
「濡れてるじゃねーか。もう少し素直になれよ」
「へ、へたくそ……そんなんじゃ、犬畜生だって満足しな……んぁ」
「なら、犬のようにやるか?」
腰を持ち上げ、またの間に足を入れ立ち上がらせる。足元がふらつくのは、かなり感じているせいだろう。
「ほら、壁に手つけ。足広げろ」
「百回死ね」
悪態をつきながらも、言うとおりにしているのが、少しだけ気持ちよい。

スカートをめくりあげると、青い下着が露になる。中心部が色が濃くなっているのは、愛液だろう。
鼻先をつけてみる。甘酸っぱい香り。舌でぬぐってみれば、少しだけしょっぱい。
ショーツを横にずらし、割れ目の中に舌をねじ込んだ。途端に溢れる愛液。
「くっ……ま、まさに犬畜生ね……あんたにはふさわしいわ……くぅ……ん」
甘い声をできる限り押さえ、毒を吐く彼女に、彼は苦笑を浮かべた。
「いい加減、素直になりゃいいのに。
ま、気の強い女は嫌いじゃねぇ」
これ以上じらしても素直になる気がせず、先に進める事にした。
青いショーツを膝までおろし、指を中にねじ込む。
まずは一本。締め付けてくる感触がとても気持ちよい。
二本、三本と増やしていくたびに、そこは更に求めるかのようにひくひくと反応を起こす。
つーっと愛液が腿に流れ落ちる。それを舌で拭い取ると、彼女は声をあげた。
「……んっ、さっさと……入れろ……ん! この、腐れ野郎が」
「『入れてください』だろ。ん?」
「プロイセンのくせに……んふぅ……お前なんかに……ぁ、誰が言うか」
声は甘いのに、いう事は辛い。
まあ、ここまで甘い声を聞けるようになっただけマシというものだ。
「しゃーねぇな。じゃ、お望み通り入れてやるよ」
後ろからというものは、実はあまり好きでは無い。
本当は顔をあわせ、恥ずかしがる顔を見て入れるのが好きなのだが。
ズボンを下ろすと、すでに硬くなったモノを割れ目に数回擦り付ける。
「んじゃ、入れるぞ」
一応、断りをいれてから、ゆっくりと中へと進入した。
かなりきついが、彼女は痛みはないようだ。むしろ、中に入っていく感触に身体を震わせていた。
静かに全部沈めると、一つ息を吐く。
「入ったぞ」
「……んっ……兄さんより小さい」
「悪かったな」
色気も何もない感想に、少しだけ萎えそうになるが、気を取り直し、腰を打ち付ける。
「ほら、俺の腕はどうだ。くっ!」
「んーーっ! ヘタクソヘタクソヘタっ、やっ、やぁ……」
口ではそうはいいつつも、髪を振り乱し、涙を流しながら乱れる姿は麗しい。
毒を吐くたび、強くうちつける。

――こいつとやってると、マゾなんだか、サドなんだかわからなくなってくるな――

頭の中でそんな考えが浮かんだ。だが、すぐに頭が白くなり、下半身が熱くなって

「中に出すぞ! くっ」
「か、勝手にし……ふぁっ!」

そして、彼女の奥底まで蹂躙を完了した。


モノを抜けば、とろりとあふれ出す精液。足をつたい、地面に流れ落ちる。
あまりの快楽に、起ってられなくなったのか、地面にへたれ込む彼女。
乱れる呼吸を抑え、彼を潤んだ瞳で見つめる。
何かを言おうとして、少し戸惑い、だがやはり口を開く。
「ヘタクソ」
「ああ、そういうと思ったぜ。だが、お前もあれだけ声だしてただろ」
「くっ、痛かっただけだ。それに……」
瞳が怪しく輝く。いつの間にか手には数本のナイフ。
そのナイフを構えると、彼に向かってすばやい動きで投げつけた。
彼の髪をかすり、壁に突き刺さる。
「……兄さんからもらった服汚した。責任取れ」
「ちょ、待て! それはお前が座り込んだせいで!」
「煩い。責任とって死ね。おとなしく死ね」

次々と投げられるナイフ。どうにか紙一重でよけるプロイセン。下半身出したままで。
二人の行為は、やはり最後まで普通に終わる事が無かった。

「私が殺してから、兄さんにも殺させる。だから安心して死ね」
「んな無茶な事いうなぁぁぁっ!!」


ネズミと猫のごとく、どたばたと家の中を駆け回る二人。

――意外にこの二人はこれで幸せなのかししれない――

『入ったぞ』
『……んっ……兄さんより小さい』
『悪かったな』
『ほら、俺の腕はどうだ。くっ!』
『んーーっ! ヘタクソヘタクソヘタっ、やっ、やぁ……』

彼らの愛嬌が響き渡る。それをただ黙って見つめる黒尽くめの男達。

そう、ここは毎度お馴染み黒組織のアジトの一室である。
映像を止めると、男達は大きくため息をついた。
「……これ、売り物になるか?」
「さぁ? そういう趣味の奴ならば……
「にしても、なんでベラルーシちゃんとプロイセンなんだ? 
ウクライナ姉さんとシーランド君辺りを狙っていたはずだよな」
そう。男達の目的は、『巨乳とお子様。母性バリバリか、それともお姉さま怖いになるかドキドキ大作戦』のはずだった。
そのために、前にドイツたちを監禁した家の準備をし、後は二人を連れてくるだけだった。
……どこをどう間違えたのか、いつの間にかプロイセンとベラルーシが勝手に住み込んでしまい、勝手に行為を始めてしまい……
準備していたビデオも稼動して、二人の行為をとっていたのである。
未だに続いていた家の中の惨劇は、見なかったことにし、行為中の映像の編集に着手したのだ。
「まあ、それなりにエロイし、結果よければ全てよしということで」
「けど、結果がよくなればいいんですけど。血に染まった床、掃除するの大変なんですよ。壁にはナイフの跡もあるし」
「あー……」
隠しカメラの映像に目をやれば、元気に鬼ごっこを続けている二人の姿。
男は下半身丸出しだし、女はショーツを脱ぎ捨てたまま。
余韻も色気も何も無い二人。
「……ま、何とかなるだろ。じゃ、編集作業の続きやるぞ」
『おー』
プロイセンの不憫さに少しだけ同情しながらも、男達は再び編集作業に戻るのであった。




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