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 日本のくるん観察日記



○月×日
イタリア君のくるんを引っぱって以来、台湾さんのくるんが非常に気になっています。
今まで気に留めませんでしたが、やはり彼女のそれもイタリア君と同じく…なのでしょうか。
外見としては、釣糸のように重力に逆らわず垂れています。
…と見せかけて、案外芯は強いのでしょうか、何故か髪の毛に見られる柔軟な動きはありません。
風に吹かれても大きく揺れたりはしないですね。しっかりしてます。
とりあえず彼女に直に聞いてみようと思いましたが、なんと聞けばいいのでしょう?
「その一本飛び出ている毛は何ですか」と正直に言うべきでしょうか。
言ったところでもし本当に性的な何かだったら…投げられますね。椅子か何か。
…眠くなってきました。また明日考えることにします。



○月△日
今日は雨でした。
台湾さんと外出中、急に降ってきたものですから、傘を持っている筈もなく、ずぶ濡れになってしまいました。
しかし思いがけないチャンスです。タオルで彼女の髪を拭くついで、さりげなくくるんに手を伸ばしました。
僅かでも触れればわかる筈です。少なくともイタリア君と同じか否かくらいは。
しかしあとちょっとで触れるところで、いや実際少し触れたところで、台湾さんが、
「自分でやります!」
とタオルを引ったくってしまったので、それ以上は無理でした。
…なんだか体よくかわされた気がします。気のせいでしょうか?
とりあえず、直接聞いても教えてくれない可能性は高まったと見ていいでしょう。



○月□日
昨日とはうって変わっていいお天気でした。
暖かかったので縁側でうとうとしていたら、いつの間にか台湾さんも隣でうとうとしていました。
またもやチャンス到来です。しかしうたた寝では起きる可能性もあるので、一回彼女を起こしました。
縁側で寝たら風邪をひきますしね。すると台湾さんは小さく唸って薄目を開けました。眠そうです。
なんとか、出しっぱなしのこたつへ誘導すると、数分もしない内に彼女はすやすやと寝息をたて始めました。
さて、いよいよです。
私はやや緊張しながらも、彼女の頭の右側から出ているくるんを眺めました。
…重力に逆らっていました。
今まで気付きませんでしたが、このくるんは普段重力に従っている訳ではなく、元がこういう形らしいのです。
イタリア君といい、本当にこれは一体何なのでしょう。気にしたら負けでしょうか。
しかしここで引き下がるのは日本男児としてのプライドが許しません。
私は意を決すると、そのくるんに手を伸ばしました。
…意外と固い。そして紛れもなく髪の毛。

くいくいと引っ張ってみると、なんだか妙な気持ちになりました。楽しいというか。
と、そこで台湾さんに変化が見られました。寝言でしょうか、小さく声が聞こえます。
「ん…ん…」言葉になっていません。起きる気配もないので、くるんを指でぐりぐりしてみました。
台湾さんがまた「う」と言いました。心なしか顔が赤いです。
ちなみに私、くるんを弄りながらこの日記を書いているのですが…なんというか、嫌な予感しかしません。
やっぱりこのくるんは、私なんかが触れていいものではなかったのかもしれないです。
しかし何故か手が離れない。好奇心が勝ります。
右手にペンを、左手にくるんを。
台湾さんが身動ぎしました。
私はすかさずくるんを



○月☆日
昨日はえらいことになりました。日記も途切れましたし。
昨日のことは…ここに書くのも悩みますが、まあ私しか読みませんからね…一応記します。
あのあと妙にハイテンションのまま台湾さんのくるんを撫で回していたら、彼女の息は荒く、顔は赤くなっていきました。
指に巻きつけてみると、「んぁ」と台湾さんが甘い声を出します。
いい加減私も気付いていましたとも。
これはやはり彼女の性的なものなのだ、と。みだりに触れてはならないと。
なのに何故かやめられない。恐怖でした。くるんには魔力でもあるのでしょうか。
私はくるんの先端、3の字みたいになっている箇所をつまむと、指の腹で押し潰すようにしました。
「ひっ、あ、あれっ、やだっ、日本さん!?」
そこで台湾さんが目を覚ましました。さあいよいよ後戻り出来ません。
何をしてるんですか、と言う彼女の言葉を遮ってくるんを弄ります。
「やっ、んっ、だめですっ、そこはだめですっ!」
その言葉を聞いて更にテンションが上がった私は、くるんの根元から先までついーと指を滑らせました。
台湾さんが更に身動ぎします。こたつで見えませんが、多分足を擦り合わせているのでしょう。
「日本さんやめて、そこは、んっ、だめなんです、そこだけ、はぁっ、だめぇっ」
涙目で私に訴える台湾さん。
そこで年甲斐もなく興奮してしまい…いや、まあ、それは置いておきます。
さすがに彼女が可哀想なので、弄るのをやめました。掴んだままでしたが。
台湾さんはしばらく息を整えていましたが、やがて私を見上げて頬を膨らませました。
「酷いです」
ごもっともです。
「バカ兄にも触られたことなかったのに…」
あったら大変ですよ、私が。
「なんでこんなことしたんですか」
台湾さんの表情は困惑や悲しみに満ちて―――いる訳がありません。むしろ怒りでしたねあれは。
正直に言えば二、三発で許してやる。そんな感じです。

そこで、卑怯の極みと思いつつ、私はくるんを握る手に力を込めました。
「ふぁっ、や、やぁ…」
と、台湾さんが再びかわいらしい声をあげました。
うぅ、と台湾さんが私を睨み付けてきます。さすがに良心が痛みましたね。
くるんを解放し、思わずその場に正座しました。
すみません、好奇心に勝てなかったんです。
バカ正直にそう言うと、台湾さんは呆れた顔をしました。
「それだけですか」
それだけです。それは本当です。
台湾さんはしばらく黙っていましたが、やがてこたつから出て私の目の前にちょこんと座りました。
殴られる。確実にひっぱたかれる。私が冷や汗を流していると、台湾さんが言いました。
「責任取って下さい」
…はい?
言われた意味がわからずに首を傾げると、台湾さんは真っ赤な顔で叫びました。
「だからっ、私にいたずらした責任、取って下さいってば!」
いたずらした責任。
土下座や切腹をしろと言われている訳ではなさそうでした。
いやしかし待ってください。彼女が私と半同棲し始めてから早数十年。
既に床を共にする関係にはなっています。
なので、そういう意味での責任というのは今更ではないでしょうか。
その旨を伝えると台湾さんは、
「最近は…してなかったじゃないですか…」
そう言って真っ赤な顔を俯かせてしまいました。
…私も年ですし、最近忙しかったですからね。
で、まあ、つまり、誘われているということでいいんでしょうか。
「…責任取って下さい」
もう一度そう言った台湾さんには、妙な凄味がありました。
断れる筈も、そして権利もありません。
私はその夜、一滴残らず搾り取られたわけです。
そして今、これを書いている隣では台湾さんが裸のまま眠っています。
時刻は午前三時半。月が綺麗です。

急展開ですが、一応は彼女のくるんの正体はわかりました。
これにて台湾さんのくるん観察日記は終わりです。




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