白と黒
イギリスさんが自国に巨大図書館を新設されたとのことで、私たちお馴染みメンバーは一般公開前に今日はその図書館へと遊びに来ています。
正直ものすっごいかったるいです。
けれど招待されたのにすっぽかすと後が怖いし、旅費は食事も宿代も含め全てイギリスさんもちとの事で、渋々足を運んだ私なのです。
イギリスさんは短くとも2日は滞在しろなんておっしゃってやがりましたが、私は今日の夕方の便で帰ります。
ちなみにお昼はイギリスさんの焼いたスコーンには手をつけずに、フランスさんからのパンをいただきました。美味しかったです。
スコーンは食べたフリをして紙に包んで鞄の中へと隠しました。
おじいちゃんへのお土産です。
図書館の中は独特な雰囲気が漂っていて、なんだかんだわりと楽しみながら時間を過ごせました。
時々
「おい、セーシェル!今俺手が離せねえからもう少し待っとけ!」
だの
「セーシェル、勝手に帰るんじゃねえぞ!」
だの何か不快な声が聞こえましたが、無視させていただきました。
今はもう大体の所を見終わったので、後は音楽書コーナーを覗いてからすぐにここを出ようと思っています。
音楽書コーナーは、人気がなくとても静かです。
きょろきょろとしていると奥に人がいるのに気が付きました。
音を立てずに私は近づきました。
目の前まできて、やっと誰だかわかります。オーストリアさんが、机の上に肘をつき眠っています!
私はすごくびっくりしてしまいました。
世界会議で見るこの人はとても真面目で厳しそうで、居眠りなどするイメージが全くなかったからです。
あまりの貴重さに、思わず私も椅子に座って、オーストリアさんと向かいあってしまいました。
色白で気品があって伏せた睫毛も長くて、オーストリアさんは男の人ですがかっこいいというより綺麗です。
見とれてしまいます。ふと気になって辺りを見回しましたが、カメラを持ったハンガリーさんはいないようでした。
今ここには二人きり。風邪を引いてはいけないし、起こしてあげようと私はオーストリアさんの肩に手をのばした。
そ の と き
私は口元の一点に目線を奪われてしまいました。
そ、壮絶にセクシー!!なんで今まで気付かなかったのでしょうか!
色白な肌についた小さな黒子!!目を離せません。
触りたい触りたい触りたい触りたい触りたい触りたい…
だ、だめです。絶対だめです!
寝ている男性に手をかけるなんてそんなこと!!
これじゃああの変態紳士と同類です…!
やり場のない手を空中でぶらぶらとさせながら、私は悩みました。
それはもう食料自給率についてと同じくらい深刻に。
触りたいダメです触りたいダメです触りたいダメです触りたいダメです触りたい触りたい触りたい…
あ、欲望が勝ってしまいました。
私は人差し指に全神経を集中させ、慎重に黒子を押します。ぷに。
「…ん」
あ、ちょっと反応した。ヤバい、ヤバい。止めなきゃと思うのですが、オーストリアさんのお肌の感触も別の意味でヤバいのでした。
ぷにぷにぷにぷにぷに…
「あっ…んんっ…」
どうしよう、明日目覚めたら眉毛が太くなっているかもしれない。
でも、やっぱり…。
ぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷに…
「んっんあっ…!」
「!?」
その声でやっと私は異変に気が付きました。
オーストリアさんの顔はほんのり赤くなり、先程まで閉じられていた唇からは艶めかしい吐息がこぼれているのです。
これは一体…?
それでも私の指は止まりません。
ぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷに…
「あっああっ…!ふぁっ!…え」
「え…」
「貴方…は」
オーストリアさんがまっすぐに私を見ています。
「確か…イギリス領の」
「セーシェルです…。ごめんなさい、ごめんなさい、出来心だったんです!だから侵略やめて超やめて」
「……」
ち、沈黙が怖いです。どうやらオーストリアさんは、この状況を冷静に考えているみたいです。
「…………」
「…………」
ああああっ!ダメです、この間。耐えきれません。
私は困惑しながらとりあえず。
ぷにぷにぷに…
「えっちょっ…やめっ…!」
再び押していました。
もう何だかどうでもよくなりました。本能のままに行動するって、この事なんだと思いました。
ぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷに…
「ふぁっ…ああっ…やっやめっ…」
ぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷに…
「もっ…やっ…やめなさい!!」
大きな声にやっと正気に戻ります。
オーストリアさんはさっきよりもさらに頬を赤らめ、苦しそうに呼吸をしています。
や、やってしまった…!
「…いろ、いろ…考え…たのですが…」
「え、ええっ??」
オーストリアさんは机の上に移動し、私の体も持ち上げて、さらに2人の距離が近づきました。
「あ、あの…?」
オーストリアさんが、机の上に座るなんて。
「貴方が私を煽ったのですから、お相手お願いします」
「え、ええっ!?」
その言葉と同時にオーストリアさんの顔が迫ってきて
「んっんんっ…!」
口を塞がれてしまいました。
「んんっ!んっ!」
かしゃんっかしゃんと眼鏡がぶつかる音がして、私は怖くなりました。
「…ふぁっ」
「んっ…失礼」
オーストリアさんは眼鏡を外し、私たちの隣に置きます。そしてまた、顔が近づいてきました。
つい私は目を閉じてしまいます。
「やっ…んんっ…んっ!?」
口の中に異物感がして、私は目を見開きました。
オーストリアさんの手が私を自分の方へと引き寄せ、さらに深く私の口の中に侵入しようとしています。
くちゅ…という音がした途端恥ずかしくて逃げたくなったのに、強い力で抑えられて私の体はびくともしません。
「んっんっんっ…」
飲み込みきれない唾液が首につたいはじめて、オーストリアさんがやっと唇を離してくれました。
呼吸を整えようとする時間も与えてくれず、今度は服に手をかけられます。
「ま、待って…ください!」
「すいません。これでも、抑えてはいるのですが」
どこかだ!という突っ込みを口に出す事はできず、あっというまにショーツ以外全てを剥ぎ取られてしまいました。
物凄く綺麗な肌をしているオーストリアさんに体をみられると、恥ずかしい以上に何だか悲しくなってきます。
「あ、んまり…見ないでくださ…」
「どうして?」
「だって、私綺麗じゃな」
「綺麗です、すごく」
そんな事を言われるなんて夢にも思ってなくて、必死で体を隠していた手の力が抜けてしまいました。
「ああんっ!」
その隙にオーストリアさんは私の胸を揉みはじめ、私は自分でも初めて聞くような声を出してしまいました。
「ひゃっ…!やめっ…!」
「…止めるわけがないじゃないですか」
「あんっ…んんっ!」
先端を指で弾かれ、その瞬間、背中がぞくぞくとします。
オーストリアさんは何度か私の胸を揉んだあと、軽く私の唇にキスをして机から降りました。
「…?」
急に離れた温かみに不安になってオーストリアさんを見ると、オーストリアさんは笑っていました。
「きゃああっ!?」
ショーツが勢いよく下げられ、私の体は全てさらけ出されてしまいました。
オーストリアさんはすぐさま私の足を開かせ、股の間に指を埋め込みました。
「あっああっ…!」
少しの痛みと快感が襲ってきて、どうにかなってしまいそうです。
「これは、貴方の中から出てきたんですよ」
そう言ってオーストリアさんは濡れた指をこすり合わせ、私の頬にそれを塗りつけました。
真っ赤になった私を笑って、オーストリアさんは私の足の間に顔を近づけます。
「え、まさか、え」
ぐちょ、という音がして、自分でも触ったことがない所にオーストリアさんの舌が入ってきました。
「ひゃっ!もっ、もうっやめっ…」
制止の声は無視され
「あああんっ!あっああっ…!」
思いっきり吸われて、私は何も考えられなくなりました。
「はあ…はあ…」
「すごく濡れてますね。これなら、大丈夫でしょうか」
「!!待ってくださ…」
すぐに指とは比べ物にならない大きさが私の中に入ってきて、私は痛みに顔をゆがめました。
途中でつっかえてしまい、オーストリアさんも少し辛そうに眉を寄せます。
「もっ…無理です…よっ!」
「…大丈夫ですから。力を抜いて」
圧迫感に涙があふれて、行き場のない痛みに足を動かすと、がしゃっと嫌な音がしました。
「あ…」
オーストリアさんの眼鏡を落としてしまいました。
「ごっごめんなさい!」
激しく動揺している私にオーストリアさんは笑いかけてくれました。
「大丈夫ですよ。割れてませんし、スペアもあります」
「でっでも…ごめんなさい」
オーストリアさんのことだから、きっと大事にしていたに違いません。
私は落ち込んでしまいました。
「本当に平気ですから。それより」
「え?あっふあああああっ!?」
眼鏡のことで頭がいっぱいで忘れてました。
「入り…ましたね」
「…っ!!」
完全にオーストリアさんのものが入りこみ、私は初めての感覚に戸惑っていました。
「動きます」
「ああんっ!あっあっ…やあんっ!」
激しく腰をぶつけられ、体中が揺さぶられました。
何度も何度も奥を突かれ、自分の腰もいつの間にか揺れていることに気付きます。
「あっああっ!オーストリアさんっ!もっもうっ…」
「はいっ…イってください…!」
「ああああっ!」
どくどくと体の中に吐き出される感覚に打ち震えながら、私は目を閉じました。
が、再び腰を揺らされ
「ふえっ?オーストリアさん…?」
「すいません。私にもう少し」
「ひゃああっ!?」
「付き合ってくださいね」
その後の記憶は、私には残っていません…。
目が覚めると私は新しい洋服に着替えていて、何かの列車に乗っていて、隣にはオーストリアさんが。
「あれ、一体、私…?」
「目が覚めましたか?」
思わず吹き出しそうになりました。
正面から見たオーストリアさんの眼鏡が明らかに曲がってるのです。
ダメです、笑っちゃダメです!
元々私のせいなのですから!
スペア忘れてたんだ!あれだけさらっと余裕かましてたのに、この人仕方なく曲がった眼鏡かけてますよー!!
心の中で大笑いした後、私は平常心を取り戻しました。
列車の窓から見える風景が、時間帯が違い夜とはいえ明らかに行きで見てきたものと違います。
「あの、私、図書館から直帰するつもりだったんですが」
「これはオーストリア行きですよ。ああ、本当に疲れました。図書館から彼らに見られないように貴方と抜け出すのは」
思考が追い付きません。
「あの、えっと」
「ああ、すいません、いきなりですよね。ですが、せっかく遠くからここまでいらっしゃったのですから、ぜひ貴方にオーストリアにも来ていただきたくて」
「はあ、いえ、あの、そうじゃなくて」
「ああ、すいません。不躾でしたが、貴方の鞄の中に入っているスコーンを勝手にいただいてしまいました」
「や、そうじゃなく…えっ、ええっ?」
「本当に無礼ですよね。申し訳ないです。ただ、その…。あの後さすがに何も口にせずに後始末をして、図書館から出るのはなかなかに辛くてですね…ん!?んんっ!?」
「あ、オーストリアさん!?」
「うっうぇ…」
「きゃああああ!待ってください!こ、堪えててくださいね!?」
私は、疲れているというのに全速力で袋を探しにいきました…。
何なんですか。何なんですか。
疲れてるのに。早く眠りにつきたいのに。
なぜ私はオーストリアさんの背中を一晩中さすっているんですか!
…本当にさっさと眠りたいのですが、やはり目の前の人を放ってはおけません。
私は学びました。ヨーロッパにまともな男はいないのだと!!
オーストリアさんの具合が良くなったらすぐに帰ってやります!
もう二度とこの地にはきません!
私は月を見上げて静かに、ため息をつきました。