裏・奥さん運び大会〜レース編〜
【前回のあらすじ】
ベルギーがスペインを地味にボコり、アメリカはウクライナの巨乳でデッドオアアライブ。
台湾とハンガリーはフライングあっはん。
一方で貴族とじいちゃんは走っていないのに疲れていた。
あとイギリスはやっぱり変態で、セーシェルに[ピーーー]された。
『もう一度ルールを確認します。一番早くゴールしたペアが優勝!射精、及び合体解除は失格!』
『ちなみに女の子は何回イってもOKだからな!じゃんじゃんイってくれ!』
『むしろイかせたらレース後に贈呈品があるので、男性の方々は頑張って下さい。絶対射精してはいけませんが』
エストニアとフランスのアナウンスが、異常な熱を帯びた会場内に響く。
選手たちがスタートラインに並ぶと、ギャラリーから応援や野次が飛んだ。
「頑張れーみんなー」
「あーなんだ、日本、オーストリア、あまり無茶はするなよ」
「賞金取れよスペインこのやろー!」
「奥さん運び大会の起源はお」
「黙るよろし。日本てめぇ台湾落としたらわかってるあるな!」
「ウクライナさーん、アメリカさーん、ベラルーシちゃんはどうしたんですかぁー!?」
「ロシアさんもいない…」
「あっアメリカぁ!死にかけてる!?」
「ダレ?」
「カナダだよ!」
「ハンガリィー!いい格好じゃねーか!ビデオ取ってやるごべふっ!!」
誰が誰の台詞かは説明が面倒くさいので省くが、フライパンが宙を舞ったことだけ言っておく。
そしてイギリス宛の声援はブーイングのみだった。
「わぁ変態紳士だ」
「変態紳士ですよ!!変態紳士!!」
さしものイギリスもキレた。
が、セーシェルの腰をがっちり固定したままなので迫力はない。
「変態変態うるせーよお前らぁ!!」
「そうですよ、イギリスさんは変態紳士なんかじゃありません!」
「セーシェル…」
「ただのド変態です!!」「てめぇぇぇ!!」
「本当のことですよこの変態眉毛ぇぇ!!」
スタート前だというのにフルパワーで言い争う二人を尻目に、約二名はぐったりとしていた。
日本とオーストリアは無言でフランスを睨み付ける。てめーさっさとスタートさせやがれと目が言っていた。
『よし…』
いよいよ、スタートである。
『(中略)位置について!よォい!!ドン!!!!』
フランスの言葉と共に、運動会お馴染みのパァンという音が響いた。
そして、飛び出したのは一つの影。
『おおっとあれは…スペイン選手です!弾丸のように飛び出しました!!』
スペインが晴れやかな顔で、あっという間に他の選手を置いていった。
「優勝はいただきやー!しっかり捕まっとけ、ベルギぃー!」
「ひゃ、ちょ、ちょお待ってっ、当たっとるぅ!やぁぁっ!」
ベルギーが顔を真っ赤にして身を捩る。
ほどなくして、スペインの顔色がさっと変わった。
「ひょっ!?べっ、ベル…おま、締めすぎ…」
「んっく、あんたのせいやろがぁっ!どないすんの、もう出てまうやろ!?」
「あかん…もうあかん…俺もうあかん…出る…」
「出すなぁあぅっ!」
20mほど進んだあたりで、ついにスペインの動きが完全に止まった。
それを見て、フランスがにやりと笑う。
『ふっふっふ…早く走れば走るほどナニは振動して擦れるんだぜ?甘かったなスペイン!』
『しかし、遅ければいいというわけではないようです。3m地点をご覧ください』
スペイン&ベルギーの後ろにはイギリス&セーシェル、そのまた後ろにアメリカ&ウクライナ、オーストリア&ハンガリー。
3m地点。つまりビリっけつには、日本が息も絶え絶えに走っ…
…歩いていた。
「日本さんもういいです!諦めましょう!もう勝たなくていいですからぁ!」
「いえ…日本…男児たる…者……女性一人…抱えて……歩…」
「もう限界ですよー!」
台湾の悲痛な声も、日本に聞こえているのかいないのか。
『日本呼んだの間違いだったな…』
『今さらしょうがないですよフランスさん。…ん』
『どうした?―――あ、あぁぁぁっとぉ!!』
その瞬間、会場内がざわついた。
イギリス&セーシェルの後方で、えっちらおっちら走っていたアメリカが、糸が切れたようにぶっ倒れたのだ。
『アメリカぁぁぁぁ!!なんてこったアメリカが死んだひゃっほう!!』
『さすがにあれじゃ呼吸できませんからね…残念ながらペニスも抜けたようですので、失格です』
開始一分とたたずに、アメリカ&ウクライナ、失格!
と、アメリカの下敷きになっていたウクライナが慌てて這い出た。
「アメリカちゃぁぁん!ごめんね!おっきくてごめんねぇぇ!!」
「ふ…ふふ…大丈夫…俺は…ヒーロー…なんだぞ…」
「アメリカちゃん…!うわぁぁぁん!!」
「ぴぎっ」
『あ、なんだ生きてやがった』
『今ので死んだんじゃないですか?』
超巨大マシュマロに潰され、アメリカはあえなくリタイアとなった。
イギリスがちらりと後ろを振り返る。
「なんだあいつ情けねーな。ま、スペインの野郎はああだし、アメリカさえいなけりゃあとは…」
「あの…イギリスさん…」
「あ?なんだ…って」
このまま優勝はいただきだな!とか思っていたイギリスは、セーシェルを見て絶句した。
セーシェルの顔は真っ赤に上気し、目は涙に潤み、時折ぴくんと肩が痙攣していた。
明らかにイキそうである。
「お前…やめろよ。マジやめろよ?俺お前がイって出さねー自信ないぞ!?」
「だっ、誰のせいだとんっ、思ってるんですか!おっおおお尻にぶっ挿しといてぇ!!」
「なんだお前あれで感じぶげっ!」
「バカバカバカァ!!イギリスさんのんあっ、バカァ!!」
「馬鹿はお前だ!動くなっ出る!」
イギリスもセーシェルも涙目ですったもんだしている。当然走れるわけもなく、そのスピードは日本と遜色のないものになってしまった。
『おーっと変態眉毛の足が止まった!どうした変態眉毛!』
「フランスお前ちょっと黙れぇぇぇぇ!!」
「ふっ、うぅぅ、駄目ですもう限界ですよぉ!」
セーシェルはついに涙をこぼしていた。さっきから小刻みな痙攣が止まらない状態である。
もう限界だというのは、セーシェル本人の次にイギリスがよく理解していた。
何せ密着しているのだ。色んな意味で。
だから、イギリスは覚悟を決めた。
「セーシェル」
「ふぁい…」
「お前一回イっちまえ」
「は…はあ!?」
その言葉に、朦朧としていたセーシェルが復活する。
「なに言ってるんですか、ついにおかしくなっちゃったんですかイギリスさん!?」
「俺は至ってまともだ!このままじゃ走れないだろ。唐突にイかれるよりマシだ!」
「そりゃそうですけど…って違う!私に人前でイけと!?」
「じゃあお前我慢出来んのか?」
ぐ、とセーシェルが詰まった。
一瞬間を置いたあと、目を伏せて観念したように呟く。
「……無理」
「…大丈夫、バレないようにすればいい。俺も協力するから」
「うぅ…声とか出ちゃいますよ…」
「お前たまに声殺してイくだろ。あれだ。あれ思い出せ」
「…はい」
極限状態のためか、セーシェルはいやに素直だった。
その可愛さと、ちょっとの罪悪感とで、励ましの意味も込めてイギリスは彼女に口づけた。
セーシェルの身体がびくっと震える。
「…大丈夫だ、お前ならやれる」
「イギリスさん…」
イギリスが微笑むと、セーシェルも笑い返した。
会場の雰囲気にそぐわない穏やかな空気が、二人の間に流れる。
しかし。
「ていうかすいません、今ので軽くイったみたいです」
セーシェルがあっけらかんと言った。
「あぁ!?」
みるみるイギリスの顔が赤く上気していく。
反対にセーシェルはどこかスッキリした表情である。
「おまっふざけんなよ!これじゃ俺ただの痛い男だろ!」
「ま、まぁ結果オーライじゃないですか?さ、走って下さいイギリスさん」
「くそぉぉぉバカァ!!」
―――と、端から見たらただのバカップルな会話をしているうちに、二人の横をオーストリアとハンガリーがすたすたと歩いていった。
ちなみに速度は普通に歩いた程度である。
なのでばっちり会話を聞けたハンガリーが、くすりと笑った。
「微笑ましいですねぇ」
「全く…私には出来ない芸当です。ところでハンガリー、あなたは大丈夫ですか?」
「私は大丈夫です!オーストリアさんこそ大丈夫ですか?私重いでしょう」
「平気ですよ」
オーストリアは貴族らしくさらりと言ってのけ、ハンガリーをときめかせた。
しかし足は正直で、少々ガクブルしている。ハンガリーは気付かないふりをした。
その頃、ずっと止まっていたスペインも何とかゆっくり歩き出して、レースはいよいよ佳境である。
『さて、途中経過です。…フランスさん、ふてくされてないでちゃんと司会してくださいよ』
『なんだよ…あいつらイチャイチャしやがって…俺も混ぜろよ…』
『無茶言わないで下さい。勤めを果たさないとイギリスさんの料理フルコースですからね!』
『さぁみんなお待たせ途中経過だぜ!』
顔中冷や汗でびっしりのフランスがマイク片手に叫んだ。
『一位はスタートダッシュで他を引き離したスペイン&ベルギーペア!スペインお前大丈夫か!?出してもいいぞ!!』
「えっほんま?」
「あかんあかんあかんあかん!!」
『二位は堅実な走り(?)を見せるオーストリア&ハンガリー!坊っちゃん休憩しなくて大丈夫か!?』
「余計なお世話です」
「オーストリアさんをなめないで下さいよ!!」
『三位はイギリス死ね!!イギリス&セーシェルぅ!!』
「なんで俺だけ死ね呼ばわりなんだよ!」
『うっせーバーカバーカ!!おぶっ何すんだエストニア!!』
『公平を期して下さいよ、一応司会者なんですから。ちなみにセーシェルさんはイったようですね、おめでとうございます』
「しっかりバレてるじゃないですかぁ!」
「俺のせいかよ!」
『そして最下位は日本&台湾!!…なぁ日本、やめてもいいんだぞ?罰ゲームとかないから…』
「はははははは大丈夫ですよはははははは」
「いやあああ日本さんしっかりしてぇ!!」
『…で、でだな、リタイアはアメリカ&ウクライナペア!残念!さぁ残る四組は残りの距離をどう走る!?』