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 海への招待状

  時事ネタ注意‌‌

ソマリア沖:イタリア客船が海賊船と“交戦”し追い払う
http://mainichi.jp/select/world/news/20090428k0000m030091000c.html 


「ヴェー♪ 青い海〜青い空〜綺麗だね」
目の前に広がる光景に、素直な感想を述べてくれるイタリア。
つれてきてよかったと、心の底からそう思った。
自分の家に向かう船の上、セーシェルは微笑んだ。

最初のきっかけは、『君んちに行きたいな』という、ありきたりなナンパだった。
別に本当に家に行きたかったわけではない。話のきっかけを作りたかっただけなのだ。
しかし、どこか世間ずれしている彼女に、そんな事わかるはずは無い。
「ならば、案内しますよ! よし、とっとと行きますです!」
テンションのあがった彼女に、準備するまもなく拉致されるように客船へと乗せられ、セーシェル諸島へと向かう事になったのだ。

女の子のやることには、全て好意をもって接する。
それが信条のイタリアは、特に何も言う気はなかった。
逆に、素直に案内してくれる彼女に強い興味を抱いた。
甲板で潮風に髪をなびかせる少女は、とても魅力的で。
肩にそっと手を置き……
「あ、あそこ、アオウミガメです! 結構人懐っこくて、一緒に泳ぐと気持ちいいんですよ」
手すりに身を乗り出した為、彼の手は空振りに終わった。
だが、嬉しそうに案内をする彼女の笑顔に、『まあいいか』と小さく呟くと、彼女の真似をして体を乗り出した。
「あははは、船と競争してる〜可愛いねぇ」
「ほら、トビウオもいます! あ、あっちにも!」
「え、どこどこ?」
彼女の指差す方に視線を向け……彼女の唇が間近にある事に気がついた。
少し動かせば、口付けぐらいはできるだろう。
素早く、顔を近づけ、彼女の唇を奪おうと
「きゃっ!」
したとき、船か大きく揺れたため、彼は危うく海へとダイビングしそうになった。
彼女の腕力が意外とあった事が幸いし、それはどうにか免れたのだが。
甲板に投げ出され、ぶつけた頭をさすっていると、再び激しい衝撃。
「ヴェ〜」
ごろんごろんと転がるイタリアを必死に追いかけるセーシェル。
目を回したイタリアを捕まえた頃には、甲板に不審な人影が多数現れていた。
顔はマスクで隠し、手には銃器を持った、体つきの良い男が数人。
男達は武器で乗客を脅す。
イタリアは数日前の会議の内容を思い出した。この海域で海賊が横行しているという事を。
各国が海軍を出すとは言っていたが、今のいままで、そんな事すっかりと忘れていた。
海賊に襲われたということよりも、彼女とのデートを邪魔された事に落ち込む。
――まあ、こちらから手を出さなければ、金品だけの被害だろうし、きっと他の国が助けてくれる――
いつものようにお気楽に構え、怯えているであろうセーシェルを慰めるため、肩に手を伸ばし……

伸ばしたが、そこには彼女はいなかった。

慌てて周りを見回せば、海賊に食って掛かっている彼女を見つけた。

「私の珊瑚礁を荒らすなです!! このやろぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
いつの間にか手にしていたのか、冷凍カジキマグロを振り回し、海賊に突撃していた。
イタリアは頭を抱えた。そういえば、彼女は意外と沸点が低い。かっとなって暴走しやすいのだ。
しかし、悲しいかな。カジキマグロで対抗などできそうにない。あっさりと海賊の一人に身を拘束されてしまった。
腕をつかまれ、小柄な身体が宙に浮く。
「離しやがれです! イギリス秘伝のスコーン兵器でお腹一杯にし殺すですよ!!」
「なんだ? この小娘は」
「うーん、まあいい。中々上玉じゃねーか。こいつもいただくとするか」
男達は手荒く彼女を縄で締め上げると、床に転がした。鈍い音がした。彼女の目じりに浮かぶ涙。

――その涙で、イタリアの何かのスイッチが入る――

「ダメだよ。女の子は丁重に扱わないとさ」
にこにこ顔で近づいてくる彼に、男達は卑下た笑いをあげる。
「けっけけ、お前イタリア人だろ。ヘタレなんぞに何ができるんだ……げはっ」
周りで見ていたものは、その時何が起こったか理解できていなかった。
男の身体が大きく揺れると、倒れこんだ。傍にはりんごが一つ。
「食べ物は無駄にしたくは無いんだけどさ」
にっこりと微笑む彼に、ただならぬ殺気を感じたのか、男達は銃を構え、
「えいっ♪」
気の抜ける掛け声とともに、彼は足を動かした。途端に男達の視界が閉ざされる。酸っぱい香り、そして顔にはりつく何か。
目を開けようとするが、その何かの汁が目に入ると、激しい痛みが襲ってきた。
「スペイン兄ちゃんちのトマトの味はどうかな?」
「ちくしょうが!!」
目に入るトマトを振り払い、がむしゃらに銃を振り回す。
「あ、言っておくけれど、その状態で撃ったら暴発するからね。
 どうせあまり手入れしていないんでしょ。その銃は」
急いで銃口を確認してみれば、中に何か詰められていた。細長い何か。これは……パスタか。
目をトマトで封じられ、銃口にパスタ。
戸惑う男達に、彼はいつもの笑みを浮かべた。
「ごめんね。俺、ヘタレだから、もしかしたら、当たっちゃうかも」
手には数本の銀製のフォーク。いつの間に食堂から拝借したのだろうか。
ダーツの要領で、フォークを男達に投げつける。
風を切る音がし、銃を構えた男の右腕をかすり、続いて銃本体にあたり、男の手から離れ、転げ落ちた。
「あ、動いちゃダメだよ。コントロールに失敗して、目とか首に当たるといけないよ。
そんな光景、女の子には見せるわけにいかないしさ」
微笑んではいるが、得体の知れない気配に圧倒される。

「ぐっ!!」
敵わないと思ったのが、一人の男が床に転がされていたセーシェルに駆け寄った。
肩をつかみ、首筋にナイフを押し当てる。
「ヒャハァ! こいつを傷つけたくなければ、おとなしくしてろ」
三流悪役の行動と台詞。
あまりにテンプレート過ぎて、映画にしたらアメリカからゴールデンラズベリー賞をいただく事間違いなしだろう。
「あーもう、何か泣きたくなるよ」
口ではそういっていても、余裕な態度は消えそうに無い。
へらへらと笑いながら、男にじりじりと近づき、
「……セーちゃん、ちょっと目をつぶっててくれる?」
彼の言葉の意味もわからず、素直に従い、硬く目をつぶった。

――首元から、ひんやりとした金属の感触がなくなり、鉄の香りが漂う。

「知ってる? イタリアってね、11人以下か女の子のためならば、世界最強にもなれるんだよ」

鈍い音とともに、男の手が彼女の肩から離れた。
驚いて目をあけると、頬を赤く腫らし、手すり近くで伸びている男の姿。
「で、どうする? まだ俺とやる?」
意識のある男達は、顔を見合わせ、舌打ちし、自らの船に戻っていった。
「あ、忘れ物だよ」
伸びた男をその船に向かって放り投げる。
あっけにとられている乗客に深々と一礼すると、
「ごめんなさい。りんごとトマトと、パスタ、ダメにしちゃった。
 俺んちで買い取るから、領収書送ってね」
それだけ言うと、セーシェルの荒縄をナイフで切ってやり、抱き上げて船内へと歩き出した。

あてがわれた貴賓室の扉を開ける。
彼女にとっては、どうせ甲板で海の風を浴びながら向かうと考えていたから、あまり利用する機会がないと思っていた部屋。
キングサイズベッドにそっと身体が置かれる。
不意に彼の顔が歪む。右手を後ろに隠し、少しだけ笑って見せた。
「ワンピース汚れちゃったね。ゴメン。
 今度、可愛いワンピース買うから許して。もちろんワンピースだけじゃなくて、一式買うからさ。
 きっと可愛いだろーな。あ、今も十分可愛いけど」
饒舌に話し始める彼とは対照的に、彼女は妙に冷静だった。
肩口にべっとりとついた血液。だが、彼女の身体には傷一つ無い。
「イタリアさん」
「ヴ、ヴェ〜何かな。セーちゃん。顔怖いよ。ほら、笑って。ね、……うっ」
いきなり右手を彼女につかまれ、苦痛に顔をゆがめた。
手のひらには一筋の傷。傷口はふさがっておらず、血があふれ出していた。
原因は容易に想像できる。先ほどの海賊との戦いの中、彼女に向けられていたナイフの刃を握り締めたためだろう。
気まずそうに笑うと、左手で傷口を隠す。
「もう、女の子には血なんて見せたくなかったのに」
特にセーシェルは血生臭い事に慣れてはいない。だから殊更見せたくなくて。
「ゴメンね。俺、あっちいってるから、セーちゃんはゆっくり休んで」

――泣きそうになる彼女の顔なんて見たくなかったのに――

一番見たくないものを目の当たりにし、彼は顔を俯けて、彼女に背を向けた。

「……ずるいです……」

空耳のような小さな声。彼の足が一瞬とまり。

「ずるいです!! イタリアさんの馬鹿ぁぁっ! ココナッツに頭ぶつけて死にさらせですぅぅっ!!」

がこーん

彼女の放った豪華な時計が、彼の頭にクリーンヒットした。頭を抱え、しゃがみこむ。
その間にも、次々と物が飛んできた。
メモ帳、電話、ぬいぐるみ、りんご、えとせとらえとせとら。
段々と投げつける力が弱まり、かわりにしゃくりあげる声が大きくなってくる。
「ずるいです。ずるいです。
 何で私を責めないんですか! 何で謝るんですか! ずるいです! ずるい……」
「だって、セーちゃんは悪くないもん。
 俺がもう少ししっかりしてれば、怖がらせる事もなかったのに」
慰めるために、彼女の横に座り込んで、頬にキス。だが、泣き止みそうに無い。
「それがずるいんです! なんで……なんでそんなに優しいのぉ……」
ぽろぽろと涙をこぼす彼女の髪を手で梳き、肩を抱き寄せる。
「うーんと……君が好きだからじゃダメかな」
「ダメです。……言葉だけじゃ、嫌です」
自然と二人の唇が重なった。最初は軽いキス。それから、お互いを求め合うキス。
「……止まらなくなるけどいい?」
女性を大切にするイタリアとしては、彼女に同意を求める。
潤んだ瞳が彼を見つめ
「嫌」
雰囲気を壊す台詞に、彼の肩ががくっと落ちた。
膝を抱え、ベッドの隅に行ってしくしくと涙を流し始める。
「どうせ俺はどーてーだよ。甘い雰囲気なんてつくれないもん。ヴェ〜ヴェ〜」
「あーもう、そうじゃないです!!」
まだ血に染まっている彼の右手にキスを落とす。
痛々しい傷に少しだけ眉をひそめるが、ハンカチを取り出して、手に巻きつけた。
「出血多量で死ぬ気ですか?! ……もう」
今度は彼女から唇を重ね、
「……止まらなくなってください。たっくさん欲しいです」

――そして、そこから二人の理性の糸は切れた――

ワンピースのファスナーを下ろし、日焼けした肩に口づけする。
鼓動する胸に顔をうずめ、手で滑らかな背中の感触を味わう。
「いいなぁ。やっぱ女の子の香り、気持ちいいや」
ほんのりと潮の香りがするのは、ここが海の上だからだろうか。
『海は全ての母』その言葉が頭に浮かぶ。
桃色の突起を舌で転がすと、口に含んでみる。
両手で乳房をもみながら、何か出ないかと期待をしてみたが
「さすがに出ないかぁ」
「んぁ……ば、馬鹿な事、言わないでくださ……ゃぁ」
胸からは何も出なかったけれど、甘い声が聞けたからよしとしておこう。
舌を徐々に降ろして行き、くびれた腰、そして魅惑の下半身へとたどりついた。
ふっくらとしたお尻の手触りが気持ちよい。
下着の上から、何度もなで上げると、筋がじんわりと表面に現れてきた。
だが、わざと筋にはふれず、内股を集中的に攻める。
「ふぁ……ゃ、そこじゃな……くぅ……ん」
じらされ、足をこすり合わせ来る彼女がとても可愛らしく、唇を重ねた。
とろんとした瞳で、彼の舌を受け入れ、貪欲に求めた。
唇を重ねている間にも、手は身体を這い回る。
下着の上から、主張し始めた豆を軽く触り、反応を確認する。
「ん……触ってくださぁ……もっと……触ってくださぁっ」
指の動きに合わせ、小鳥のように反応する彼女が楽しくて、わざと直接は触れようとしない。
「ああ、もう可愛いな」
割れ目に顔をうずめ、潮の香りを楽しむ。唇で布越しに軽く噛むと、大きく反応する。

――さて、そろそろかな――

すでに意味を失った下着を脱がし、指で静かになぞる。
自らのズボンも脱ぎ捨て、男根を割れ目に沿わせ、
「くぅぅんっ」
急激な刺激に手を振り回し、丁度そこにあった頭のくるんを握り締め
「ちょっ、や、そこは! ま、待ってふぁーーーーっ!!」

「えっぐうっぐ……やっぱり俺、ヘタレだよぉ〜」
ベッドの片隅で膝を抱え泣いているイタリアに、彼女は気まずそうな顔でかける言葉を考えていた。
入れる前にかけられた精液がちょっとべたべたするが、そんな事気にしている時ではない。
「えっと、その……ゴメンナサイ。イタリアさんの頭のくるんがそんな敏感だとは知らなくて。
でも、もう少しでしたから、もう一回挑戦すれば」
「う〜女の子に慰められる俺、情けないよぉぉぉ」
「あー……ほら、楽しみが少し伸びたと思えば」
「どーてーも少し生き伸びたよ。このままだと魔法使いになっちゃうよぉぉぉ
 女の子の中、知らないで死ぬのは嫌〜ヴェヴェー」
「魔法使いって……はぁ」
大きくため息をついた。
こんな状況では何を言っても無駄なのだろう。
背中合わせになったまま、イタリアが泣き止むのを待つしかないセーシェルであった。

「……好きですよ。ね、好きです。
 だから、私の家についたら、もう一回しましょう」
彼の頬にキスをし、背中のぬくもりを感じながら彼女は何度目かのため息をついた。




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