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 ある妹の日常



ヨーロッパ東部に位置する共和国、ベラルーシは少女の姿をしている。
 美しい少女だ。
 染みひとつない滑らかな白い肌はバルダイ丘陵に降り積もる深雪のようで、腰まで届く長い髪は白銀に近い
プラチナブロンドである。
 すらりと細長い手足は精巧に造られたビスクドールを想起させ、どこか薄氷を思わせる冷たい表情さえ、些
かも彼女の美貌を損なわせるものではない。
 そんな彼女が実兄のロシアに激しく懸想しているということは、どっかのストーカー予備軍なフツメンを除
いては全世界の知るところであった。
 今日も今日とて、彼女は婚姻届という名のカレンダーを握りしめてロシアの屋敷を訪れていた。

 PM2:10。
 この時間、ロシアは公務のために部屋を空けていて、そのことは勿論ベラルーシも知っている(彼女はロシ
アの年間スケジュールを秒単位で暗記している)。
 ロシアが寝室として使用している部屋の前まで辿り着くと、彼女はまず髪に用いていたヘアピンを1本抜い
て座り込み、迷わずそれをドアノブの鍵穴に差し込んだ。
 カチャカチャとそれを慣れた手つきで動かすと、約2秒後にカチンと軽い音がする。
 ピッキング行為である。
 思いっきり犯罪である。
 しかしベラルーシの表情に罪悪感や後ろめたさのようなものは1ミクロンも存在しない。彼女にとって、自
分と兄の絶愛(絶対的に不可侵な究極愛の意)を邪魔するものこそが即ち万死に値する悪であり罪であるから
して。
 そうして自らの行動にミジンコの爪先ほども疑問を抱くことなく、ベラルーシは通算2783回目の不法侵入を
果たしたのであった。

 扉の向こうは、楽園に通じていた。

 もしろんベラルーシにとっての楽園であり、リトアニアやらラトビアやらにとっては八寒地獄でしかないと
いうことはもはや言うまでもない。
 三重構造の壁で文字通りの凍てつくほどの寒さを凌ぐその部屋は、古びた調度品が三つ四つ申し訳程度に置
かれただけの、実に質素なものだった。

 擦り切れた薄っぺらなカーペット。
 歴史を感じさせる木製のチェストにコート掛け。
 あとは時代遅れの蓄音機とくたびれたベッドだけが、ロシアの部屋の守り人だ。
 ベラルーシは室内に微かに残るロシアの体臭を肺腑の奥まで思う存分吸い込むと、酔ったようにクルクル回
転しながら、ベッド脇のチェストにしがみついた。
 このチェストの上から2段目の引き出しには、ロシアの下着類が収められている。
 彼女は興奮に震える手でその引き出しを開けると――おもむろに顔面を突っ込んだ。
 はふーっ、はふーっ!
 頬に触れる布の感触はロシアの素肌を包んでいたもので、鼻腔から入る匂いはロシアの体臭そのものだ。
「ああ……っ、兄さん! 兄さんの匂い! 兄さんの匂いいいいいい!!」
 はふーっ、はふーっ、はふーっ、はふーっ!!

 -10分経過-

 至福の時間を心ゆくまで堪能したベラルーシがようやく顔を上げると、その雪のように美しい白い肌はバラ
色に紅潮し、薄氷の張った湖のような瞳は甘く潤みきっていた。
 元来の美貌も併せて、その姿は蠱惑的な女神のようにも見える。
 見えるだけだが。
 女神は引き出しの中を漁って1枚のトランクスを引っ張り出すと、天啓を受けた王が戴冠するように、それ
を頭部に装着した。
 愛しい兄との一体感が増したようで、体内のアドレナリン値が急激に上昇する。
 蓄音機のレコードに針をかけると、荘厳な音楽が室内に轟いた。
 チャイコフスキー作曲、オペラ「エフゲニー・オネーギン」。

「……あ……、兄さん?」

 ――ベラルーシがふと気付くと、ベッドにロシアその人が腰掛けていた(幻覚)。
 ベラルーシの見ている前で、ロシア(幻覚)はゆっくりとコートの留め金を外していく。まるで見せつける
ように、緩慢に。
 やがて全ての留め金が外されると、はだけた布地の隙間から、逞しい腹筋と――雄々しく隆起するエルブル
ス山(標高5642メートル)が見えた。

 や ら な い か。

 ベラルーシの耳は、愛しい兄の唇がそう囁きかけるのを捉えた(幻聴)。
「兄さん……ああ、兄さん!」
 夢遊病者のように覚束ない足取りで、無人のベッドにダイブするベラルーシ。
 ロシアの匂いが染みついた枕に激しく鼻を擦りつけながら、既にしとどに濡れていたショーツの中をまさぐ
り始めた。
<いけない娘だね、ベラルーシ。もうこんなに濡れちゃってるよ?>
 脳内の兄が耳元で囁く。ベラルーシは顔を耳まで紅く染め上げ、急くように胸元のリボンを解いた。途端に
豊かな乳房がボロリと零れ出す。
「だ……って、兄さん、兄さんがぁ……っ」
<僕が……なぁに? 言ってごらん、可愛いベラルーシ>
「兄さん……兄さんの指が……っ、ベラ(一人称)のアソコぐちゃぐちゃって触るからぁ……ッ、いっぱい濡
れちゃうのぉ!」
 叫び、自らの指で蜜を湛えた花びらを掻き開く。
 脳内設定ではこの指はロシアのものということになっている。
<僕が触っているだけでこんなになっちゃうの? ベラルーシはいやらしい娘なんだね>
「ああっ、ごめんなさい兄さん! いやらしい妹でごめんなさい!」
<そんないやらしい娘には……お仕置きが必要だよね?>
 幻覚の兄が命じるまま、ベラルーシは己の長いスカートを乱暴にたくし上げた。
 下着としての機能を果たせないほどぐしょぐしょに濡れたショーツを足から引き抜くと、濃密な雌の匂いを
放つ外性器がロシア(幻覚)の目に触れる。
 ベラルーシの(脳内設定ではロシアの)指がひくひくと息づく膣口に僅かに潜り込むと、ぴゅくっ、と濁っ
た愛液が噴き出した。
 そのまま指は焦らすように花びらをなぞって上に滑り――紅く充血した肉芽を弾く。

「はヒィいんッ!!」
<ふふ、相変わらず感じやすいんだなぁ。ほら、見てごらんよベラルーシ。クリトリスがこんなに大きく膨ら
んじゃってる。……まるで男のペニスみたいだね?>
「ああ……ッ、兄さんの指が……らめぇ……っ、兄さん、そこ弄っちゃ駄目ぇ! そこはCISの本部なのぉ! 
感じ過ぎちゃうからぁ……!」
<感じすぎてオカシクなっちゃいそう? ――でも駄ぁ目。これはお仕置きなんだからね?>
「そ、そんなぁ……っ! 兄さん……!」
<ほら、もっとたくさん感じられるように、皮を剥いてあげるよ>
「!? だッ――あヒぁあアアア!!」
 自らの指で肉芽を覆う包皮を剥くと、ベラルーシは裏返った嬌声を上げて仰け反った。
 途端、割れ目から勢いよく潮を噴く。
<……ベラルーシ? ひとりでイっちゃったの?>
「あ……は、ひぃ……っ。兄さんの指で……兄さんの指で、CIS弄くられてぇ……ベラ、イっちゃいましたぁ
……っ」
<本当にいけない娘だなぁ、ベラルーシは。お仕置きなのに、ひとりで勝手に感じまくって、イっちゃうなん
て>
「ごめ……なさ……っ、兄さん……っ。許してぇ……っ、ふわぁ、許ひてぇぇ……っ!」
<許して欲しかったら――解るよね?>
 慈愛に満ちた瞳で優しく微笑み、ロシア(幻覚)は自身の巨大な一物(本当は電動バイブ)をベラルーシの
眼前に見せつけた。
 ベラルーシはそれをうっとりと見つめ、兄(脳内妄想)の求めるがまま、両脚を大きくM字に開く。
「兄さん……ください! ベラのエロエロ淫妹ポレーシエ湿地に兄さんの極太スプートニク号を不時着させて
くださぁい!!」
 唾を飛ばしながらあられもなくそう叫ぶと、妄想の中のロシアが満足げに笑った。
 勃起したペニス(バイブ)がヴァギナに宛がわれ――そして一気に挿入される。
「ぃひぁあああッ!!」
<ベラルーシったら。挿れただけなのにまたイっちゃったの?>
「ま……って、兄さ……待って……っ」
<駄目だよ。動くからね>
 綺麗にマニキュアの塗られた爪が、カチリとバイブのスイッチを入れた。

 ヴイイイイイイイィィィィィンッ!!

「あッ! ああ――ッ!!」
 いきなり最大出力にされたバイブが膣内で暴れ狂う衝撃は、筆舌に尽くしがたいものがあった。
 ちなみにこのバイブは日本を盗撮写真(某緑色ツインテ歌姫のフィギュアにオナニーしてブっかけていたと
ころを激写)で脅してブン奪った至高の一品である。挿入しながらクリトリスも同時に刺激することが可能な
二点責め仕様となっており、素材は人間の肌に最も近いシリコン製、スイング方向の反転もスイッチひとつで
簡単にできる、匠の技が光る代物だ。さすがはメイド・イン・ジャパン!!
「あああッ、あア――ッ! 兄さんのスプートニクがベラのポレーシエ湿地ぐちゃぐちゃに掻き回してるぅ!
ジョイントがぁあ! ジョイントがイイのおお!!」
<ふふ、すごい乱れようだねベラルーシ。でも君はどうしようもない淫乱だから、前だけじゃ足りないんじゃ
ない?>
「へ……? ……あ……ああッ、兄さん!?」
 ベラルーシの見ている前で、ロシア(幻覚)のペニスが2本に分裂した(もう1本バイブを出しただけ)。
 今度のものは1本目よりいくらか細長く、節のついた奇妙な形をしている。アナル用のバイブだ。
 ちなみにこれはやっぱり日本を盗撮写真(某懐かしのセーラー服美少女戦士コスプレで自家発電に耽ってい
たところを激写)で脅して獲得した究極の一品である。
「だ……駄目です! 2本同時になんて……ベラ壊れちゃう!」
<あはは、2本じゃないよ?>
 ベラルーシは笑うロシア(妄想)の下半身がタコかイカのような触手状に変化していることに気付いた。
 その先端部はどれも男性器を模しており、ぬらぬらとカウパーを零しながらベラルーシの白い体をねらって
鎌首をもたげている。
「兄さ……――いやあああッ!!」
 ヒステリックに叫びながら、ベラルーシは取り出したSM用のゴム製拘束具で手早く己の乳房を縛った。3本
目のバイブを喉の奥まで咥え込み、肛門にアナルバイブを挿入する。
「ンふッ……フーッ! フーッ!」
 口の中いっぱいにロシアの触手(妄想)が突っ込まれているため、声を上げることさえ許されない。
 そんなベラルーシを嘲笑うかのように、ロシア(幻覚)は彼女の体内でめちゃくちゃに触手を動かした。
<最高だよベラルーシ! 君の口も乳も性器もアナルも……どこもかしこも姉さんの駄穴なんかとは比べもの
にならない! やっぱり姉より妹だよね!>
 その言葉(幻聴)に、ベラルーシは歓喜した。

 口と膣内と尻穴にそれぞれバイブを咥え込み、拘束具で両の乳房を絞り上げた奇怪な姿で、ひとりきりのベ
ッドの上に乱れ狂う。
 彼女は――そして彼女の脳内の兄もまた――最果てを迎えつつあった。
<イくよ、ベラルーシ……! 子宮も直腸も食道も、全部に僕の精液を注ぎ込むからね! 僕の精液で種付け
するから……ちゃんと着床して妊娠するんだよ!>
「あああーッ! はい! はイぃ! ベラ妊娠します! 兄さんの特濃こくまろミルクで孕んじゃいますぅ!!」
<結婚式はロシア正教式で、新婚旅行は熱海に3泊4日だよ!>
「できちゃった結婚! できちゃった結婚んんんッ!!」

 ――瞬間。
 ベラルーシの目の奥で激しく火花が散り、視界が真冬のシベリアのように白く白く塗り潰された。

「んあアッ、アッ――!!!」

 そして彼女は高く細く嘶きながら絶頂を迎え――同時に失禁して、ロシアのベッドシーツにバイカル湖のご
とき大きな染みを作ったのだった。

 その後、公務を終えて帰宅したロシア(本物)がベッドに残されたお漏らし跡を見て泣いたとか。
 テーブルの上に置かれた婚姻届(何故か全ての欄が記入済)に悲鳴を轟かせたとか。
 なんかそんな感じのエピローグもあったりなかったりするが、まあ、どうでもいい話だろう。

 ヨーロッパ東部に位置する共和国、ベラルーシは少女の姿をしている。
 美しい少女だ。
 細くしなやかな肢体はミネルヴァのごとく。
 憂いを帯びた端正な顔はヴィーナスのごとく。
 そんな彼女が実兄のロシアに激しく懸想しているということは、わりと全世界が知っている。




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