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7_215-221


 普×洪


  •  プロイセン東ドイツ

 世界会議を終え、人もまばらとなった会議堂。
 その廊下をプロイセンは足早に突き進む。異様なことにジャケットの中は素肌、手にはエコバックいっぱいに
入った菓子。まことしやかに会議に相応しくない恰好で第三小会議室のドアを殴る。
「戻ったぞオラァ!」
 僅かに開いたドアから覗いたのは緑の瞳。あたりを見回してすばやくプロイセンを引き入れた。
「べつに誰もいやしねぇよ……」
「誰のせいだと思ってんのよ!」
 ぶん回されるフライパンをギリギリでかわしながら「俺のせいじゃないだろ!」と些細な抵抗をするも受け入れ
られず。
 鋼の凶器を構える彼女はYシャツにショーツというなやましい姿だ。その奥、部屋の中央に紐が張られて
湿った女物のスーツが窓からの風にあおられ絶賛乾燥中。
 ハンガリーは会議後にプロイセンを狙ったいたずら、二階から放たれたバケツの水を誤ってくらって
しまったのだ。
手が滑ったのか狙いを違えたのかは犯人逃亡の為不明。
 ただ、側にいたプロイセンは爆笑した。次いでジャケットを脱いだハンガリーの姿に息を飲んだ。
 濡れたシャツはボディラインを見事に浮き立たせ下着と肌の色が透けて非常にマニアックな完成を刺激した。
あまりのベストショットに写メを撮れば、フライパンが飛んできて撃沈。そして「あんたが原因のとばっちり
なんだから責任取りなさいよ」ということで現在に至る。
 プロイセンはエコバックを十人以上で囲める広い会議机に乱暴に置いた。倒れたそれから菓子やらジュース
やらがなだれ溢れる。
「この恰好での買い物は勇気いったぞ。日本だから変な目で見られたじゃねーか。せめて下のTシャツ返して
くれれば……」
「透けるからやだ。裸ネクタイの拒否権与えただけでもマシよ」
 プロイセンのシャツを占領したままさっそくスナック菓子を開けてほうばっている。この菓子類は迷惑料としての
上納品である。
「日本のお菓子おいしー!」
 うれしそうな顔。菓子で機嫌が直るなら安いものか、と一つ椅子を空けた隣に腰掛け、プロイセンは自分用
のファンタグレープを開封した。何気なく菓子の方、つまりはハンガリーを見やった瞬間、
「ぶふぅっ!」
 紫霧ファンタ噴射。
「毒霧の術!? ニンジャ? 忍術マスター!?」
「げほっ、ごほっ。器官に入っただけだっ」
 むせながら目線をそらす。
「なんだ……つまらない」
 ハンガリーは大きなシャツのせいで半分隠れた指でスナックをつまみ、折り曲げた足のつま先を椅子のヘリに
ひっかけている。その姿勢だとプロイセンの位置から、足先からふとももまで、さらに上のやわらかそうな綿布まで
がばっちり見えてしまうのだ。
 隣で、落ちたキャラメルの箱を器用に足のつま先で拾い上げる気配。彼女はプロイセンの前だと遠慮
無しに子供時代の少年じみた振る舞いに戻る。普段のまま上品ぶられるのも笑っちまうだけだが、ここまで
こだわらないのも今日みたいな場合は困りものだ。
 もう一度ちらと盗み見る。しろいもちもち肌にふとももの張りとやわらかそうな肉感。
 脳がエンドルフィンをどばりと噴射。生唾を飲み込む。
 百年単位で幼馴染やってる身、気の迷いで何度か男女の過ちも起きている。それが逆にまた間違いが
起こるのでは? という不安と期待を呼び起こして落ち着いていられなくなる。
 プロイセン的にはヤること自体は悪いことではない。ただヤった後に初めて会う日の緊張感と、何もないように
ふるまわれる暗黒色の失望感は体験したものにしか分かるまい。「何もないように」といっても自分が普段から
言われている言葉は「きえろ」や「ウザい」だ。ヘコまずにいられるか。
 ゆえに、状況に流されてはいけない。
 気を紛らわすため鞄の中から資料を取り出して目を落とした。そんな気を知ってか知らずか、ハンガリーは
いたってのんきな様子。
「仕事? 何の資料……?」
「今日出るはずだった会議のやつ。目ェ通さねぇと」
 議題が経済問題だけに出席したかったのだが、ハンガリーにYシャツ取られたのでやむなくドイツ一人に
任せた。
 背後にまわり、ハンガリーが資料を覗きこむ。そのたたずまいを想像してはいけない。シャツからのびる生足と
かシャツの襟首からのぞく谷間とか脳内補正でTシャツ削除して考えてはいけないッ!
「経済と金融? 大変な時期だからねぇ。私達、どうなるのかしら」

「どうなる、じゃなくてどうにかするんだろが。平穏が欲しければ問題と戦って勝ちとらねーと」
 悟られぬようぶっきらぼうに言うと、何故だかハンガリーがクスリと笑いを漏らした。
「ふーん。久々に聞いた。それ」
「それ?」
 ごほん、と咳払いひとつ、偉そうな再現演技付きで彼女は言った。
「『欲しければ勝ち取れ』 ……ちびの頃言われたんだけど、覚えてない?」
「何百年も前のこといちいち覚えてらんねーよ」
「そりゃそうよね」
 少し、残念そうな声。



 ハンガリーは資料を覗きながらあの日のことに思いを馳せた。
 ちびの頃、まだドイツ騎士団がハンガリーの家にいた時代。立地のせいか日々攻め込まれ、疲れ果てていた
ときのことだ。
「これが運命ってやつか」
 何もかもが面倒になって力なくぼやいたときである。土地すら持っていなかったドイツ騎士団たるプロイセンは、
ふん、と鼻を鳴らし、
「欲しければ勝ち取れよ。運命だから当然って顔すんなバーカ」
 ふんぞり返って言われた。ムカついた。
 国じゃないから気軽に言えるんだ、と蹴りいれてやったが、同時に自分の中で眠りかけていた何かを叩き
起こされた気がした。
 正しいことを言ったのは一体どっちだったのか。今でも答えは不明のままだ。



「ふーん、日本の再生プログラム参考なんだ」
 プロイセンは書類を裏面にひっくり返した。いずれハンガリーにも通達されるものだが今の時点では一応
内密資料である。
「見るなよ。話し合い終わればそっちにも知らされるだろ」
 その時、肩に手が掛けられた。
「どうせこの方向でいくんだから大丈夫よ」
 肩越しに覗き込んでいるのか、声が耳元まで近づいた。
 見えるのは肩に置かれた手、ぶかぶかの自分のシャツからのぞく指先だけ。
 おおきなシャツに対し小さな手は柔らかそうで頼りなさげで、掴みたいなぁ、などと考えたところではっ、と我に
返る。
 集中できねぇぇ―――――――――!
 何? 今日近づきすぎじゃね? やっていいのか? いやしかし……あの『無かったこと』のダメージはなぁ……
 肩にしみこんでいく温度を感じながら思考は書面の内容からかけ離れていく。



 プロイセンの肩に触れ、うしろ姿を見つめてハンガリーは更なる感慨にふける。
 先ほどのちび時代とともに思い出すのは、この背中の記憶。あの頃よりもう少し後の、支配の時代のこと。
 その時代を思い返すと今でも息が苦しくなる。楽しいこともあったけれど民族のほこりをかけて大量の血が
流れたからだ。冷たくなっていく民の体。泣き叫ぶ人々。それでも独立は手に入らなくて。
 これは運命なんだろうか。ならば、あきらめもつく。
 武器を握る手を緩め、闘志の炎を消しかけたときである。
「ハハハハハハハ! 俺様サイコー!」
 瞳に飛び込んできたのは、彼の背中だった。
 はるか北方で国を興し、下剋上かまして高笑いあげて欧州を引っ掻き回す彼の背中。
 彼の取った手段は民族も宗教もよりどころにしないという当時の常識からすると無茶苦茶な方法だった
から、かなり苦労もあったのだと思う。それでもアイツは様々なものと戦って、欲しいものを手に入れた。否、
現在進行形で掴み取っていく。
 あの日あの時、ちびの時代に言われた言葉。  
『欲しければ勝ち取れ!』
 叩きつけられた気がした。

 手の中の武器を握りなおす。
 戦わなければ勝ち取ることもできない。
 自分の身辺をひっかきまわされ殺しあったりもしたが、それでもなお、支配の檻から見る彼の背は縦横無尽
でひときわまばゆく、目がくらんだ。

 そして数百年後が経った今、その背中が目の前にある。たくましくなった背は昔のまま、欲しいものを勝ち
取ろうと「攻め」の算段中だ。
 うれしくなって、えい、と強く肩を掴んでみる。背中はびくり、と強張った。
「な、なんだよ」
「別に。へぇ、これ、欧州じゃ難しくない?」
 肩越しに手をのばして伏せられた資料をめくる。



 肩越しにハンガリーの手が伸びてくる。そのせいで肩に柔らかく温かなものがぐにゅりと押し当たった。
 うお。おっぱい!!!
 しかも、いつもより感触が柔らかい。ふと顔をあげると窓からの強風に揺れる服。その中に、シャツの下に
隠れるように青いブラの影が。
 まさか。
 柔らかさダイレクトオォ――――――――――!
 同時に頬をくすぐる髪の匂いが鼻腔を駆け抜け脳髄を奇襲攻撃。前に抱いたときのやわらかさと表情、
自分を責めた気持ちよさが一斉に蘇える。
 血が沸騰した。
 しかし、いいのだろうか。情事に発展するのは片方がヘコんでいたりとイレギュラーな時である。今日は
そのようには
見えないが……
「……おい、それ以上近寄ると撫でるぞ」
 確認の為、言いながら髪を撫でてみる。クスリと笑いが洩れた。……よし、嫌がってない。
 意を決し腕を強く引き寄せる。小さな体は腰掛けるプロイセンの腕にまろび入り、膝の上にしりもちを
ついた。
「ちょっと、危ないじゃな――」
 いいかけた言葉は唇で直に食い殺した。
「んぐ……う」
 ドスドスと拳が降り注ぐ。が、次第に弱まって調子を合わせてくる。気持ちいい温度と感触を存分に堪能
して離れれば、互いの口に名残惜しげな橋が曳く。光るそれの向こう岸、恥じらい交じりの熱くなった頬が
むくれる。
「いきなり何するのよ!」
「近寄ったら撫でるって言ったろ」
「ひゃあ! そんなとこ……っ!」
 衣服に突っ込んだ手を、柔らかなふくらみの上でゆるゆると撫で回せば
「ん……」
 ハンガリーは甘えるように吐息を漏らした。
 その声にプロイセンの本能がじわりと熱を帯びる。もっと感じさせたい。もっと声を聞きたい。
 そのままハンガリーを抱えあげて大きな机の上に背中からとさりと下ろした。机の上にふわりと金の髪が
広がる。
「ちょっと! いい加減にしなさいよ!」 
「理性の限界だっ! 格好と状況をわきまえないお前が悪い」
「なんていう言いがかり。さっきまでこみ上げていた美しい感慨を返せ!」
 ハンガリーはプロイセンのほっぺたを乱暴につねり、ん? と小首を傾げた。
「……硬い。昔はぷにぷにだったのに」
「お前はぷにぷに増したよな。こことか」
「ひゃ!」
 がッ、と乳を掴み
「やわけー!」
「わぁ、ちょっ、おっぱい星人!」
 困り顔を無視して勢いよく着ているものを引き上げる。現れたるは大きく曲線を描く柔らかなる二つの乳房。
動きに合わせてぷるるん、と弾んで揺れ、その様にあらゆる神経が釘付けられて、突き上げる衝動のまま

絶叫。
「おっぱいさいこー!」
 谷間に顔面ダイブ。甘酸っぱい肌の香りを大きく吸い込み、脇に流れる柔肉をすくいあげてぽにぽにの
感触を頬で楽しむ。
 さすがによく知った相手、すなわちハンガリー以外にはかっこ悪くてできないので開放感万歳でおもいっきり
堪能。
「ほんとうにしょうがないんだから。そのシャウト聞くとあんただ、って思うわ……」
 自ら着ているものを頭から引き抜き、あきれた声。もはや抵抗の意志はないようだ。
「んー、いい乳だよなーホント。マシュマロみてー。なあハンガリー」
「乳に話しかけるな!」
 甘えるようにぐりぐりと顔をこすりつけていたプロイセンは、喉で笑いながらゆっくりと手を動かしはじめる。
いっぱいに広げた掌にも収まりきらぬ、豊かでありながら美しい形を保つ理想の大きさ。吸い付く肌のしっとり
感と力加減でむにゅむにゅと柔肉の形を変える様は、イイ。非常にイイッ! 甘そうな桜色の先端も、指の間
からあふれて盛り上がる肉も、全体がぷるるんとふるえる様もたまらない。体中の血が沸騰し、股間が
いきりたっていく。
「んっ、んんぅ……なんで、こんな乳魔人になっちゃったのよ?」
「はじめて両手で掴んだ乳が良かったからじゃね?」
「誰のだったの? ウクライナ?」
「お前。責任取れ」
「ひゃあ!」
 ちゅっ、と胸先を口に含む。吸って、ちゅぽんと音をたてて離し、舌先で転がす。
「やぁ…あぁ……」
 ハンガリーの呼吸に甘い喘ぎが混ざりはじめる。
 幼少のみぎりに男と勘違いして揉んだ微乳から、よくもまあここまで育ったものだ。
 いったん体を離し、全体を見渡す。ゆるやかな頬のラインにほそい首、いうまでもなく豊満な胸。ぽっちゃり型
だがちゃんとくびれた腰。むっちりと肉をまとう柔らかな二の腕やふともも。幼少の影は形もなく、それをどこかで
寂しいと思いつつも
「たまんねぇ……」
 こみ上げる興奮を抑えながらニラニラと笑う。もどかしいといわんばかりにジャケットを脱いでいると、ハンガリー
の手が伸びて、ズボンのベルトをがっ、と掴んだ。
「乳だけだと思うなよ!」
 身を乗り出したハンガリーは容赦なく下着ごとズボンを引き下ろした。
 おっぱいのおかげで元気に育った我がムスコが外気に晒される。



 机から飛び降りたハンガリーはびくびく跳ねるそれに指を絡めた。
 カッコつけのプロイセンのこと、あからさまにおっぱい星人出すのは自分の前くらいだろうし、そうでなくても
あんなに楽しそうに触られるとうれしくなって何もいえなくなる。だけど、おっぱいだけだと思われるのもシャクなので
反撃開始。
 手の中のそれを、ちょっと恥ずかしいと思いつつも大きさを確かめるように全体をなで上げて揉みこむ。
「え、ちょ……ふぁ!」
 息を詰めて顔を顰めるプロイセン。その声としぐさに身の毛のよだつような興奮が沸く。
 ハンガリーは悪戯めいた笑みを見せて唇にぱくりと先端を咥えた。
「え、マジで!?」
 ちゅう、と吸うと、むずがゆそうに眉を顰める。自分の行動で相手が踊らされる。楽しい。
「おっぱいだけじゃないこと思い知らせてあげる……。座って」
 プロイセンが言われるままに椅子に腰を下ろすと、ハンガリーは口内に溜めていた唾液を一気に解いて
全体に塗りこんだ。手の中でてらてらに光る男性器。すべりのよくなったそれを指の輪で強くしごき、揺れる
下の膨らみもやわやわと揉む。舌を這わし指先でジグザグと裏筋の蛇腹を辿り、亀頭裏を擦り、ほうばって。
「んちゅ……れろ……ちゅぱっ……」
 だんだんと硬くなっていく。血管を浮き立たせて脈打つ様はグロテスクなのに、素直な反応が愛しくて可愛く
思える。口腔に広がる生臭い香に興奮してふわふわして、鼓動の駆け足の音が大きくなる。
 ちらと上目で盗み見れば呼吸を荒くした気持ちよさそうなプロイセンの顔。
「……えっちな顔」
「どっちがだよ」
 笑いを漏らして再び咥えこむと亀頭が口内をごりごり抉った。
 この抉りが自分の中のイイトコロを擦って気持ちよくなるのね……

 途端、胎内を突かれているような気になって下腹がきゅんと疼いた。イイトコロを抉られる甘痒い錯覚。
欲しい、早くこれで擦って欲しい。奥底から湧き出る欲情にアソコがじんじんあつくなり、もどかしくて無意識に
太ももをこすり合わせる。



 ハンガリーが跪いて自分の股にうずくまり、愛おしげにものをしゃぶりあげていく。プロイセンは快楽に歯を
食いしばった。
 顔を合わせれば憎まれ口ばかりのハンガリーが自分にご奉仕している……やばい、破壊力抜群ッ!
 与えられる刺激ももちろんだが、動きと共にうねる白い背中、濡れ光る顔の熱っぽい眼差しと表情、ものに
這う舌の紅。興奮気味な息遣い。ひざまづかせる征服感。さらにハンガリーの様子がおかしく熱に浮かされる
ように夢中でしゃぶりついている。その様はプロイセンの本能を掻き立てて興奮させた。
「ふぁ!」
 強くしごかれ声を漏らすと、下方から含み笑いが漏れる。
「あえぎ声、カワイイ」
「なっ!」
 がーっと耳の端まで熱くするとハンガリーは楽しそうな笑顔を見せ、更に攻め立てる。
 プロイセンのものがあっという間に限界量の血を集わせたのは言うまでもなく。
「……しょっぱくなってきたよ」
 ハンガリーのねっとりした声。ここまで育つと何をされても気持ちが良くて無意識に腰が跳ね、快感が
こみ上げ、臨界点に向かっていく。
「ハンガリー、もう、出そうだ」
 迫る射精感にしゃぶりつく頭を押しのけ――ようとするがハンガリーは逆に亀頭を深く飲み込んだ。
「え!? ちょ……!」
 先端が喉の奥を突いた。しごきあげる手を早めて舌で尿道をこじ開けられたのがトドメ。
「わ、バカ、イッ――つあ!」
 ぞわり、と快感が駆けた。体が震える。静脈の律で吐き出される白濁にハンガリーは顔をしかめた。口の端
から受け止めきれぬものがどろりと滴る。
 脈動が止み、一息つきかけたところで、
「! ふあぁ」
 不意打ち。残り掃除のもうひとバキューム。イったばかりの敏感なものに強烈なキモチ良さ。
「無茶、すんなよ……」
 快感の余韻に浸りながら重い腕でジャケットに入っていたポケットティッシュを渡すと、ものから離れた
ハンガリーが咳き込みながら首を左右に振る。
「いらない……のんじゃった」
「ばっ」
 口元に自分の白濁を垂らしたまま見上げて
「初めてちゃんと飲んだけど、喉、イガイガするね」
 潤んだ目をとろりと細めた微笑、真っ赤な舌が口の端に残るそれをぺろりと舐めとる。その情景にプロイセン
の頭の中が真っ白になる。

 飲んだ。俺の精液飲み干した。

 なんともいえぬ感慨がこみ上げ、一瞬にして全身の血が沸点に到達。
 ハンガリーは再びびくびく跳ねだすプロイセン自身に目をやった。
「うぁ……また元気になってきた」
「誰のせいだ誰の!」
「ひゃ!」
 抱きしめると一気に机に押し上げ、のしかかる。
「いやらしい顔しやがって。ははははは! 最高! お前最高!」
 やられた。完全にのされた。
 ハンガリーの体中に掌と唇を這わし、汗ばんでしっとりした皮膚を吸い、首筋と鎖骨に柔らかく歯を立てる。
「あんっ……あっ……くすぐったい」
 鋭敏な場所を狙い定めて口付ければハンガリーは体を捩り、眉をしかめて切なげに吐息を漏らした。
「ああ……んっ」
 その様子にそろそろか、とすでにイヤラシイ染みを浮かべたショーツに指をかける。引き抜くと淫液がねとりと
糸を引いた。
「うお、ヌレヌレ。オレのしゃぶって感じてたのか?」

「ばか…… ぁん!」
 太ももを割り、指で開いたサーモンピンクの光るそこはぬかるむほと液が溢れていた。夢中でむしゃぶり付いて
液の鉄っぽい味と熟れた肉芽のぷるぷる感を楽しむと悲鳴があがった。
「ひゃあ、あん! やあ! シャワーあびてないのにっ……!」
「汚くねーよ」
 鼻先をくすぐる下生えのこそばゆさに耐えて指と舌で攻めれば入り口の肉が震えてひくつく。花裂を
かき混ぜる指が三本になったところでハンガリーはゆがんだ頬に涙をこぼした。
「ふぅっ、んっ、プロイセン、もう……」
「もう何だ? 言ってみろ」
「あぅっ。イジワル……んう」
 ぽろぽろと涙を流してむくれられ、むくむくといじめたい衝動が沸く。ニヤリと顔をゆがませて、
「してほしいことはちゃんと言わなきゃ分かんねえぞー? ほら復唱、『プロイセン、大っきくてあつい貴方の
おちんちんをくださ――」
 ごきっ
 振り上げた膝を側頭部に叩き込まれた。やりすぎました。
 プロイセンは自分のものをしごき、今しがた叩きつけられた膝を抱えて到来を待ちわびる彼女の中心に押し
当てる。
「挿れるぞ」
 息を詰め、腰を押し進める。とろける入口を通過しざらざらの襞を分け入って温かな愛液に包まれる。
全部を沈めて心地よさを味わっていると
「ああ、はあぁん!」
 ハンガリーが大きく身を捩り、ぎゅう、ときつい締め付け。襞が激しくまとわりつき奥へ引きこまれる快感を
奥歯を噛み締めなんとかやり過ごす。
「んぐ! いきなり、それはキツイって!」
「だ、って! んぅう! ちょっと……イっちゃ…った……」
「マジで!? 幸先いいな」
「ばか……」
 思わず口元が緩む。
 呼吸を荒げるハンガリーの、涙まみれの頬を拭ってやりながら収まるのを待つ。
「……もう、だいじょおぶ、だから」
「本当かよ。一回出してるし、ゆっくりでいいんだぞ」
「動いて! たまらない……の」
 膣内は刺激を求めるようにもどかしげにうねっている。
 求めに応じ、プロイセンはゆっくりと動き出した。ハンガリーのひくつくそこは腰を引けば名残惜しげに引き止め、
押し入るといとおしげに震えて受け入れる。そういう力の入れ方一つにたまらない愛しさがこみ上げ、
三浅一深のリズムで入口上部のざらざらしたこぶを擦るように抽送する。ハンガリーも動きに合わせて腰を
揺らし始めた。ぶつぶつの襞肉が生物のように蠢き、吸い付いて締め上げる。
「あっ、はんっ、ああっ、あ、あん!」
 二人の生みだす律動に合わせ、乳房がたゆんたゆんとふるえる。叩きつけるたび愛液が飛び散って太もも
までてらてらと光り、ハンガリーは感じるままに啼き声を上げ顔を歪める。素直な反応が可愛くてもっと
感じさせてやろうと、抱える場所をウエストに移してさらに深く突き上げる。
「やぁ! 深いのぉ! おくだめぇ!」
 肉の感触と嬌声ときゅ、と眉を曲げた彼女の感じている顔。最高だと思った。
 気持ちいいし楽しいし感じさせて矜持も充たされて、今日の俺絶好調とどこまでもいける気分になる。
 プロイセンは夢中で腰を打ち付ける。
「あんっう! プロイセ……ぷろいせん!」
 涙で顔をべちょべちょにしたハンガリーは迷い子のように夢中で手を伸ばした。望まれるまま身を乗り出すと
体に巻きついた腕と足が自分を強く引き寄せる。求められている現実。ハンガリーの中のうねりがいっそう
増して、自分も腰の辺りが痺れてきた。真下で揺れるもちもちのふくらみを揉みしだきながらラストスパートを
かける。
「プロイセン、プロイセン! ……あっ、ああっ、は、ああああぁぁぁぁあああん!」
 がむしゃらな引き寄せと背中に鋭い痛み。それを機に生まれた激しい収縮に促されてプロイセンもぶるりと
身を震わせた。
「ッく!」
 びゅるる…びゅく…びゅ……
 絶頂の快楽の後、脱力したプロイセンはくたりとハンガリーにのしかかった。





 霞がかった思考の中、のしかかる重たさと汗ばんだ肌、首筋に獣じみた熱い息を感じる。ハンガリーは離れ
ようとする上の体を強く引き寄せた。
「……もう少し、このままでいて。抱きしめられると、うれしいの」
 あの言葉を発し、やり遂げた張本人の腕。だからこそ安心するし、いままで頑張ってきたことを認められた
気になる。
 そんな充足の感覚を味わっていると、耳元で戸惑い交じりの声がした。
「なあ、お前、俺のこと嫌いじゃないのか?」
「……え?」
 ハンガリーは目を見開いた。昔は見ているだけでイライラしたし、今でも殴りたいとは思う。しかし嫌いなのかと
問われると、そうとも言い切れない。今思えば苛立ちは自分のほしかったものを手に入れた嫉妬や羨望、
自分への歯がゆさなどが原因だったし、現在進行形であったが為に感情が爆発的になっていた。
 でも、今は?
 無意識とはいえあの日あの時「運命」という戯言から自分を救ったのは誰か?
 不屈の突っ走り方を見せ付け、武器を握り続けさせたのは誰か?
 問題はなにもかもプロイセンが知らないということだ。好き勝手やってる姿を一方的に見つめて勝手に
受け取って……それが少々シャクだったので、
「えーと……『欲しければ勝ち取れ』?」
「あ?」
「あんた、今、本気で勝ち取りにきてないでしょう? 本気で来たら教えてあげる」
 本気で掴みに来たのならば胸のうちを全て教えようと思う。
 なんだかんだでプロイセンがいたから激動の時代を走り抜けられたってこと。
 それってつまり――
 するとプロイセンは弱り果てたように頭を掻き、
「今も、全力でヤッてたんだがなぁ……」
「……えっちのことじゃないわよ馬鹿。なんであんたの頭の中そんなことばっかりなのよ?」
「なーんてな。こちとら毎度無かったことにされるのもうんざりだからな。数百年の思いの丈をぶつけてやる。
……愛の囁きは時として言葉攻めであることを思い知るがいい!」
 一変して悪どい笑い。不吉な予感に身をちぢこめると超豪速の不意打ちが耳元で囁かれる。
「好きだ」
 ハンガリーの顔に、一瞬にして血が昇る。
「おっぱいだけを見ていたわけじゃない。髪の下の童顔もゆれる体も声も、乱暴だけど愛嬌ある性格も全部
そそる。ヤってるときの甘えた声もかわいい。あと今日、魅力リストに精液舐めるエロい顔が加わった。あれは
サイコーにエロい。かわいかったぜぇ」
「ひゃ、いやー! なんてこと言うの!」
 耳を塞ごうとする手を掴まれ、囁きはなおも続く。
 ハンガリーが耐えかねて全てを暴露するのはこの先遠くなく。時間で言うと4分27秒後のことだ。




カテゴリー
[ハンガリー][プロイセン]

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