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 女の子の逆転判事



「で、結局誰が一番うまかったの?」

ぶっちゃけた話を振ったのはベラルーシ。
男どもをぶちのめし、勝利のミニ祝賀会をなごやかに開いていたはずの女性陣の笑顔が固まった。
「えっとその」
顔を赤らめ、台湾が口ごもり、
「えーと……」
ハンガリーが視線をそらす。
「誰が一番だなんて……」
やはりもじもじとリヒテンシュタインが身悶えし

「ん〜誰が一番かはおいといて、カナダは優し過ぎて、あたしには合わなかったねぇ〜」
ずばっと言い放つベトナムに女性陣の視線が注がれた。
心なしか、死屍累々な男どもの耳がぴくりと動いた気がする。
ベトナムは煙管を一ふかしし、紫煙を燻らせる。
「あたしの事を一々気にかけてくれんのは嬉しいんだが、本気にほしがってる時にすら、許可をとってからってのがねぇ」
「あ、それよぅわかるわ。
ラトビアさんもそのパターンだったし。優しさも時には邪魔やなぁ」
ベルギーが首を縦に振り、同意した。
「でも、優しさは必要です
変態同士の争いに巻き込まれて、ふた穴同時に突っ込まれた時の絶望感ときたら……
ああ、あの時の事はいつ思い出しても憤死しそうですよ」
セーシェルが顔を青ざめつぶやく。

だが、すぐに顔を赤らめ、
「その点、スーさんは素敵でした。あの人にはじめて奪ってもらえて幸せだったかもしれません。
ただ……」
「無口で顔がちょっと怖いのが難点よねぇ〜」
イギリスからの戦利品である紅茶を皆に配りながら、ウクライナが言葉を続けた。
「テクニックはいいんだけど、口数少なすぎて、誤解を受けやすいのよねぇ。
逆にトルコちゃんは口数はあるんだけど……やっぱ年のせいかな、入れてからが長持ちしないし、復活に時間がかかって」
「わかります! 日本さんとか中国さん、あっさりしすぎてますし。
香港さんはあんなに長く、たくさんしてくれたから、アレが普通だと思ってました。だから少し拍子抜けして」
少し興奮気味に台湾が演説し、すぐに顔を赤らめ口ごもった。
「でも、韓国さんは元気すぎて、私の体より自分の精を放つことに夢中でその……」
フォローをしようとするが、違う方向でのフォローになってしまった。
口の中でぼそぼそと呟くと、助けを求めるかのように、自分と同じ妹的存在のリヒテンシュタインに視線を向ける。

「えっと、その私は……お兄様とかオーストリア様は最後までいたしませんでしたし、
ドイツさんとかプロイセンさんは体力が有り余っている方々ですから、比べる事は……その」
コーヒーに角砂糖をどぼどぼといれつつ、もじもじとしている。
コーヒーが飽和状態になりかけたころ、ぽんっと手を一つ打った。
「そうですわ。イタリアさんならば平均ですよね。あの方はとても丁寧にしてくださって。……あ、でも」
再び黙り込み、ちらりちらりと皆の顔を見て、言葉を発しようとするが、どうしてもいえず
「包茎なんでしょ」
さらりと言い放つベラルーシに、一同は微妙な笑みを浮かべた。
どこから取り出したのか、ジャムを舐めながら、紅茶を傾ける。
男らしく一気飲みをすると、カップを置く。陶器のぶつかる音が部屋に響き渡った。
「日本や中国もそうだった。ま、勃つと先っぽ出たから、問題なくやったけど。
それよりも、問題は大きさ。兄さんは大きくて気持ちよかったけど、ポーランドは……」
大きくため息一つ。それだけで何となく理解できてしまった。
つられるように、ベトナムがため息をつく。遠い目をし、紅茶にミルクを注ぎ
「……エジプトは痛かった。裂けるかとおもったねぇ。実際、少し裂けたし。
で、涙に興奮して更に動かすから、しばらくは使い物にならなかったんだよ。あたしはМじゃないってーの」
その時の事を思い出したのか、手に力が入り、鈍い音を立てスプーンが変形してしまった。
使い物にならなくなったスプーンを後ろに放りなげ、ミルクティを一口。
ほんのりした甘さが、少しだけ笑みを作らせ……その笑みはすぐにいやらしい笑みへと変化してしまう。

「で、黙り込んでるハンガリーはどうなんだい。色々経験豊富のようだけど」
「あーとえっと……ですね」
突然振られて、紅茶を落としかける。どうにか留まったが、少しだけ赤いしみがテーブルクロスに染み付いてしまった。
赤い染みというと、どうしても初めての時の事を思い出してしまった。頭を軽く横に振り、その考えを追い払おうとしたが。
「あらぁ〜、ハンガリーはん、顔赤いやん。もしかして……」
「いや、ドイツさんとの始めての事なんて考えていませんったら。
最初はいきなり縛ってきたり、鞭を使ってきたりもされたけれど、初めてだと知ったら、戸惑いながらも優しくリードしてくれて……
その後、数日間は妙に恥ずかしくて、仕事も手がつかずに惚けてたら、あのバカに襲われたりしただんてないんですから!」
……ハンガリーが気がついた時には、すでに生暖かい目で見守られていたりする。
湯気がでそうなくらい真っ赤になって、机に突っ伏すハンガリーの頭をウクライナが優しく撫でる。
それだけならば、ほのぼのですんだのだが。

「SМ好きな一族に囲まれて苦労したんじゃないの? やるたびに鞭で打たれると大変よね。
だから、今度、ハンガリーちゃんが女王様やってみたらどうかな?」
ウクライナにとっては、きっと冗談のつもりだったのだろう。
だが、ハンガリーの表情は一変した。少し青ざめ、目を逸らし
「すみません。女王様なんてできません。愛してますから、罵る事なんてできません。許してください。
そんな豚と罵ってくださいだなんていわないで! 貴方にならぶたれたって愛してますけど、アレを踏むことなんてできませんっ!!」
なにやらトラウマスイッチを押してしまったのだろう。
泣きそうな顔で宙に向かって、必死に頭を下げるハンガリーに、一同は同情の目を向けた。

「あー、壊れちゃいましたねぇ。
……でも、あんなに愛されてていいですね。私なんて、あの変態二人相手ですもん。
会議中にバイブ入れられたり、公開セクハラされたり……」
「甘い……あの中国は本気の鬼畜。薬使われて散々やられて。兄さんにもあんなにやられたことないのに」
「あー、あんときゃ苦労したねぇ。あぁんの馬鹿中国、年だからってあたしたちに薬つかいやがって!」
「薬は使われはしやかったけどな、フランスも中々の鬼畜やでぇ。スペインはんが寝てる横で襲われたんよ。
声はだせへんし、せやけど技術はあるしで、何度意識失ったことか」
次々と話が男たちへの怒りへと変化していき……
何故か居酒屋のOLの愚痴大会の幻が見える気がする。
カップの中身が見る見る間に減っていき、目が据わっていく。
ただし、アルコールは一滴も入ってはいない。

「……私たち、普通でよかったですね。ちょっと暑苦しい時もありますけど」
「そうですね。私たち幸せですわね」
意外に普通に愛されていたという事を感謝するリヒテンシュタインと台湾。
リヒテンシュタインは胸の前で手を組むと、にこやかに微笑み、
「愛されるための淑女の教えを教授してくださったオーストリア様には感謝しないといけませんわね。
頑張りましたもの。オーストリアさんの精液でおなか一杯になって、ご飯が食べられなくなるぐらい練習いたしましたし」
淑女の思いがけない台詞に、突っ込もうかどうしようかしばらく悩み、聞かなかったことにした。

「まあ、オーストリアちゃんの教育はおいといて……
私が一番うまかったと思うのはやっぱり、あの子ね」
「もしかして、アイツ? ……悔しいけど同意。兄さんよりうまかった」
姉妹の言葉に思い当たるふしがあったのか、ハンガリーが我に返り、彼との行為を思い出し頬を微かに赤らめた。
「……確かに。あの見かけに反して、妙に上手だったわね」
「そうやねぇ〜あの手には何度も……もぅ」
思わず甘いと息を漏らすベルギー。
「あんなのあたし、初めてだったよ。強引の中に優しさが隠れてて、でも野生的で」
「ええ、欲しい所できちんと答えてくださって……意識失っても優しい手で抱きしめててくださって……」
珍しく乙女の顔になるベトナムと、彼の姿を思い出すかのようにうっとりと目をつぶる台湾。
「ええ、私も……です。ああ……」
彼女達は一呼吸おくと、甘いと息とともにその男の名前を口にした。

『シーランド様……』

「よし、今夜はとことん語りましょう。酒行くですよ」
「そうねぇ。私もまだまだお話したいな」
「僭越ながら、私もご一緒してよろしいですか?」
「私も……」
「……今夜は飲む。たくさん飲む」
「よーし、今夜は女同士で飲もうじゃないかい」
「たまにはそういうのもよろしいどすなぁ」
いうだけいうとすっきりしたのか、女性陣は意気投合し、和やかな雰囲気で部屋を出て行った。

部屋に残されたのは、死屍累々の兵達。
女性達の足音が遠ざかり、物音一つしなくなった部屋の中、一つの影がむっくりと起き上がった。
「……シーランドはどこであるか」
手にはライフルを構え、瞳には冷たい光が宿る。

「隊長! シー君の抜け殻のダンボール発見であります。……で、俺達も逃げたほうがいいんじゃないかなぁ」
「隊長ではないが、懸命な考えだな。珍しくイタリアの意見に賛成だ」
スイスに気がつれないよう、ドイツとイタリアが匍匐前進で部屋を脱出しかけ、がしっと二つの手によって止められる。
「……ヴェスト、どこ行くんだ? ちょーっと聞きたいことが」
「不本意ながら右に同じです」
「じゃ、俺は先にいくね。ドイツ、君の尊い犠牲は無駄にし……ヴェ?」
イタリアの目の前には数本のナイフ。恐る恐る振り向けば、スイスの腕が迫っており……
「ヴェ〜スイス怖いよぉぉっ」
とまあ、ご近所同士の戦争が始まりかけたり、

「へぇ〜君がお姉ちゃんとベラをねぇ」
「ロシアさん。今日ばかりはお手伝いします」
「ん、やるん? リト、俺が負けるとマジおもってる?」
友情の危機やら命の危険やらが迫っているのに、マイペースを崩さない者もいたり

「香港、台湾の処女返すんだぜ! 台湾は俺の可愛い妹で」
「……そのsisterが処女じゃないってわかったreasonは?」
「ぐっ、と、ともかく、賠償と損害と……じゃなくて、あー! とにかく返せぇぇっ」
微笑ましい兄弟げんかをしてみたり

「べるぎぃぃぃぃぃぃっ! 俺のべるぎぃぃがぁぁ」
「す、スペインさん、く、苦しい……ぐ」
「まて、さすがにラトビアの顔色が怖いことに……あー、邪魔だ! 俺はスペインを止めなきゃ! ……え?」
暴走する親分を止めようとしている矢先に、自らにも魔の貴族の手が迫っている事に気がついて、凍り付いてみたり

「くくくくっ、今こそ本家本元の魔法であの髭とむっつりスウェーデンを……
そして、あのシーランド覚悟してけ!! くくくくっ」
一人寂しく黒魔術を行い始め、回りの妖精たちに本気で心配されてる者もいたり、

「ベトナムさんって、たまに見せる女の子らしい姿が魅力なんだよね」
「……そうだな。よくわかる。」
いつの間にか、ベトナムファンクラブができかけていたり、

「……猫が二本足で喋れる……」
この騒ぎの中、未だに眠り続けている諸悪の根源がいたりと、まあ、そこはかとなく平和である。

その横では、あまり被害のなかったものたちが、円をえがくよう座り込んでいた。
「そーいや、日本とかはどこ消えたんだ? ぜってぇ暴走すると思っていたのによぉ」
タバコに火をつけながら、キューバが問う。
「日本さんは、女の子のお茶会が始まってすぐ、フランスさんとトルコさんとスウェーデンさんつれてこそこそと出て行きましたよ。
……あそこで僕も逃げてればよかったです」
「まあ、中々面白いものも見れたし、聞けたからよしとしとこうよ」
苦労人エストニアのため息に、温和なフィンランドが微笑む。
「だけど、俺らって完全に被害者じゃないか?」
アメリカの珍しく現状を把握していた台詞に、二人は大きくため息をつき、首を横にふった。それはいうなという事だ。悲しくなるから。
「……ああ、俺達も幸せになりてぇな」
『ああ』
キューバの言葉に、アメリカとエストニアは深く深く同意したのだった……


――そして――
「シーランド先輩。是非、その技を教授してもら。そして、いつかはシーランド先輩を越えるような男に」
外はクールで中が熱くて、意外にむっつりなアイスランドが、闘志を燃やしていたのは些細な話だろう。




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