ゲルマン賛歌
「女神をちょっと押し倒してたら、ユピテルのおっさんに見つかってな。
で、意気投合して、女神100切りを目指してたら、99人目で奥方のユノちゃんに見つかって。
ユノちゃん可愛いんだけど、ちょいと嫉妬深くてな、ユピテルのおっさんはぼろぼろにされちまってよ。
さすがらユノちゃんにお仕置きされたらやばいとおもったんだが、一応助けてくれてな。
ってわけで、ま、こんなわけよ」
「……どんなわけだ」
茨の球体に囲まれつつも、いつもと変わらぬ様子の悪友にため息を一つ。
女神に呼び出されてきてみれば、何故か閉じこまれている悪友がいた。
それから怒涛のごとく話が始まった。孫との再会から始まり、地上の少女のつまみ食いの話やら、
その後の女神乱れ食いの話まで、事細やかに話してくれた。
こっそりと去っていった女神が、妙に疲れていたのはこのためか。
もうどれくらい話を聞いた事か。こっちの世界では時間の感覚がないのでわからないが、うんざりはしてきた。
こちらの事は露知らず、いまだ話し続ける悪友に彼は背を向ける。
「ちょっ、どこ行くんだ? 暇なんだから付き合えよ」
「少しは反省してろ。女神食ってそれで済んだんだから感謝しておけ」
「ぶーぶー、付き合いわりぃなぁ〜」
後ろから聞こえる悪友の声にもう一つため息。
そして――蘇る懐かしくも黒い記憶に、自己嫌悪のため息もついたのだった。
――昔、悪友と同じように地上に降りたことがある。
懐かしい置き土産に会うために。
その時は神の気まぐれだったが、実体も与えてくれた。
悪友を憧れて、神聖ローマと名乗る少年。虚弱体質のくせに、強気で、一途で。無茶ばかりして。
だから、ベッドの中で安らかに眠る姿を見て、少し安心する。
「お前は無理すんな」
優しく頭を撫でてやり……少しだけ眉間の皺が取れた気がする。
置き土産の顔を見るだけで帰るつもりだった。
……侵入者がくるまでは。
「んーあ〜あ……」
部屋のドアが開かれた。慌てて隠れる所を探したが、あいにく隠れられる所はない。
仕方なしにその侵入者の観察を始める。どれくらいの腕をもっているのか、置き土産に危害を加えるものなのか。
もし、危害を加えるものだとすれば、徹底的に打ちのめす覚悟はしている。
たとえ、あっちの世界でも消滅させられるとしても。
だが……その侵入者には殺気は全くない。
ぼさぼさの髪に、シャツを羽織っただけの服、寝ぼけ眼をこすりながら、部屋の中に入ってきた。
ふらふらと神聖ローマのいるベッドに近づき、布団をめくり上げ
「あー、ここ神聖ローマの部屋かぁ……
たく、この家広すぎだぜ。あのオーストリアの馬鹿が……まあいいや」
そのままベッドに倒れこむ。足が神聖ローマの顔に当たり、うめき声を上げる。
「ああ、このガキは!」
一瞬、けり落としてしまおうかと思いもしたが、わざわざ自分の身を危険にさらす気はない。
近くにあるソファーが目に入った。そこに移しておけばいいだろう。
侵入者を抱きかかえ……
むにっ
手にはっきりと感じた柔らかな感触。
侵入者の顔が歪む。痛みを感じたのだろう。
「……コレ、男だよな」
もう一度、胸に手を伸ばす。やはりほんのりと感じるふくらみ。
顔をもう見る。やんちゃそうな顔。顔には擦り傷やら切り傷がある。
「……男……だよな?」
どうも手の感触と見た目とギャップがあった。信じられないのもしょうがないだろう。
疑問半分、好奇心半分。
ソファーに静かに横たえると、シャツのボタンを一つ一つはずす。
妙な背徳感に襲われもしたが、好奇心に勝てそうにない。
そっとシャツの前を開く。下には何も身につけていない。
うっすらと膨らんだ胸、まだ生えてもいない滑らかな丘。
どう見ても女だ。まだ幼いが女だ。
そういえば……と、前に聞いた話を思い出した。
モハーチの戦いに敗れ、傷を負ったハンガリーを、オーストリアが召使として引き取ったという話を。
そのハンガリーというのが、その少年……いや、少女だとすると。
いろいろ考えたいが、頭が働かない。
穢れのない割れ目に釘付けになってしまっているから。
自分は幼女趣味はないはずだ。
そう否定してみても、清らかな身体に興味がわいてしまう。
天を仰ぐ小さな胸の突起に指を伸ばす。
「ひゃっ…く、くすぐってぇ」
声があがり、手を引っ込める。だが、少女は再び夢の中に入ってしまう。
もう一度、突起に触れる。今度は眉をひそめるだけで、声は出なかった。
「な、何をやってんだ。俺は」
そうは言いながらも、手は止まりそうにない。
膨らみかけの胸を手で包み込み、優しくもみ上げる。
時折、口に含んでみる。ほんのりしょっぱい。
手の動きに、少女の表情はやがて甘いものへと変化していき……
「ん、あぁ……はぁ……ゃ」
少女の息が荒くなる。自らの息も荒くなり、下半身に熱がこもる。
とろりと蜜を出す割れ目を指で掬い取り、舌を這わす。
そっと指で開いてみれば、今まで見たことのないような美しさ。
幼女趣味にはまる男の原因がわかった気がする。
彼の指を入れたら傷ついてしまうだろう。それほど狭い。
だが、この中に入れたらどんなに気持ちよいか。
衝動が止まらない。荒々しい感情が攻め立てる。
入れてしまえと。侵略してしまえと
「……侵略してしまえば、俺のモノ……」
ぽつりと呟いた。もう瞳に理性は残っていない。
細い腰を引き寄せ、割れ目に欲望を突き立てる。
「くはっ! やぁ……」
甘い声が高くなり、身もだえする。
激しい刺激に、少女の瞳はうっすらと開く。
潤んだ瞳。先ほどの寝ぼけた顔とは対照的に、艶やかさを感じた。
「……おーすとりあ? じゃねーな、その目つきの悪さはプロイセンだろ……いてーよ。ばーか。離せ」
だが、口からでるのは、やはり男らしい言葉。
胸に拳をぶつけてくるが、彼にそんな攻撃が効くわけもない。
黙って腰を動かすと、少女は痛みに耐えるよう、ぎゅっと目をつぶり、唇をかみ締める。
「ばかやろ……やぁ…いてぇよ……やだよぉ……馬鹿ぁ…プロイセンなんて嫌いなんだからぁ」
瞳から落ちる涙に、微かに残っていた理性が呼び起こされた。
――ああ、何馬鹿な事やってるんだ。こんな少女相手に――
止めなくてはいけないことはわかっている。わかってはいるが。
心とは逆に、身体は熱くなる。自然と動きが早まり、制御できない性器から精液が放出された。
引き抜くと、白濁した液体の中、うっすらと混じる赤。
「……あぁ……ばかぁ……プロイセンのばかぁ…」
中に出された未知の感触に、少女はぽろぽろと涙をこぼす。
少女の涙は、彼を現実に引き戻すには劇薬過ぎた。
「……俺はなんて事……俺は……」
いたいけな少女を汚してしまった後悔が、彼の心を大きく揺さぶり……時が止まった。
少女の涙さえ、宙に浮いてとまっている。
このような事ができるのは……
「全く、堅物な貴方ならば平気だと思っていたんですが」
目の前に光り輝く女性が一人。
そう、その人物こそ、彼を地上に下ろしてくれた神。
神は大きくため息をつく。
「……地上で変化をもたらす行為は禁止していると言ったでしょう。
まあ……貴方の事でしょうから、二度とこういう事を起こさないと信じています。だから今回は……」
小さくなにやら呟くと、少女は糸が切れたかのように地面に横たわった。
股間から流れ落ちる精液の後もその瞬間消える。
初め見たときのよう、清らかなままだ。
「貴方のやった事をなかった事にします。ただし、今後はもうこのような事はできませんからね」
「ああ。……感謝してる」
神の声に、言葉少なめに答えると、少女の頬に一つキスを落とす。
そして……振り向きもせず、姿を消し……
「……ハンガリー?」
少年の心配そうな声が響く。部屋を覗き込む眼鏡姿の少年貴族。きょろきょろと部屋の中を見回し。
「やっぱりここにいましたか。貴女は何度言ったら自分の部屋を覚えるので……ふぁ?」
言葉を失う。
当たり前だろう。少女はシャツの前をはだけたまま、ソファーで高いびきをかいて寝ているのだから。
「ああもう、女性としての恥じらいをもう少しですね……」
できる限り肌を見ぬよう、視線を逸らしシーツをかけようと近づくが、シーツに足を引っ掛け、派手にずっこける。
「あーもぅ、うっせぇなぁ〜」
その音で少女は目覚めた。眠い目をこすり、あくびを一つ。
シーツに絡まってしまった少年貴族を見下ろすと、ぷっと吹き出し、シーツを握り締め引きずった。
「ほら、とっとと部屋帰るぞ」
「ちょっ、待ちなさい! 女性なんですから前を! そして私をシーツから出してくださ…」
「煩い。俺は眠いんだよ」
有無言わさず、シーツを引きずる少女に、今だ絡まって抜け出せない少年貴族。
そして……そんな騒動など気がつかないで眠り続ける大切な置き土産の少年。
「――そんなある日の夜のお話でした――ってわけでしてね」
「やだー。ゲルマン、お前ロリコンだったのか。だから可愛い女がいても……」
「ちょっと待て! そこのアモル! 何でお前がその事を知っている! というか、色々脚色しすぎ…
アン時は中まで入れる前に、肉体がなくなって
それよりもその事をこいつにばらすな!」
いろいろ突っ込みたいが、ツッコミが間に合わない。
折角、とっ捕まった悪友からしばらく離れられると思っていたのに、
ある神……恋の神アモルが現れてニヨニヨとあの時の話を話し始めたから、離れられなくなってしまった。
些細な話ならばともかく、あの時の失態を話されては、彼の股間……ではなく、沽券に関わる。
慌てて止めようとしたが、すでに遅し。
アモルは逃げ惑いながら、あの夜の事をこと細やかに語り、それを悪友はニヨニヨと聞き入る。
急いで訂正をいれるが、きっとそれは無駄な足掻きだろう。
珍しく慌てる彼の姿が楽しいのか、悪友は大いに笑い始め。
「はっはっはっは。今度、一緒に女神ナンパ行こうな」
「……行かん!!
くっ、こいつに弱点を作ってしまうとは……」
肩をバンバン叩く悪友の手を振り払い、彼はいろいろ後悔し、深く落ち込んだのだった。