夢のブライド Lovin' Callin'
ヤンデレ普による凌辱一人称
「…綺麗だ」
生まれてはじめて口にした褒め言葉は、緊張のあまり掠れていた。
品よく整えられた部屋の中に、獣じみた息づかいと卑猥な粘音が響く。
美しく化粧した女の顔には猿ぐつわ。忌々しいあの男の名を叫ばせない
ように。
ウェディングドレスに身を包んだ女の額に銃口を突き付け、下着だけを
剥ぎ取ってひたすら繋がった腰を揺する。
綺麗だ。綺麗だハンガリー。本当に。
熱いため息と共に奥深く放ち、引き抜けばゴポリと溢れた精液には赤が
まじっていた。
純白のガーターベルトを、ドレスの裾を、転々と汚す。
やっぱり初めてだったんだな。わき上がる愛しさに浮かされ、泣くなよ、と
囁いて、汗で髪の貼り付いた頬を優しく撫でる。
泣き顔も苦しいくらい魅力的だから、困る。いつも笑っていて欲しかった
はずなのに。
なあハンガリー。俺強くなっただろう。今や帝国のトップは坊っちゃん
じゃなくて俺だ。
本当はもっと早く助けたかった。
あの頃俺はちっぽけな貧しい北の公国で、トルコに攻められオーストリア
に取り込まれていくお前を見ていることしか出来なくて。そして誓った。
どいつもこいつもブッ殺してやると。
ずいぶん待たせたけれど俺は誰より強くなった。今なら誰からだって守っ
てやれる。
狂おしい喜びがこみあげて、再び硬くなった肉茎をゴリゴリと深く突き
入れる。
ハンガリーが小さく呻いた。
脚を高々と持ち上げれば泣き腫らした顔と生々しい結合の様を同時に
見下ろすことが出来る。
真っ白なドレスを背景に、汚れない朱鷺色が痛々しく口を開けて、血と
精液にまみれた俺の赤黒い肉がそこを容赦なく行き来する。
溶ける程の快感に溺れどうしようもなく興奮しているのに、胸の奥が酷く
重い。あんまり女が泣くものだから俺まで涙がこぼれて笑えた。頭が痛くて
何もかも非現実的で夢のようだ。
セックスなんてただの排泄だと思ってたけれどきっと違うな。これは
むしろ殺戮に近い。
ぐちゅり、ぐちゅりと激しい抽送のたび翡翠の目から雫がこぼれ、その
一滴ごとにお前と俺との儚くささやかな思い出がひとつひとつ、死んでいく
のが判る。
犬の仔のようにコロコロ転げまわって喧嘩した幼い日々。ふわふわの長い
髪に触れたくて引っ張って何度も顔をしかめさせた。
木陰で眠るその白い額に初めて密やかな口づけを落とした夏の昼。渡せな
かった小さな赤い花が握りしめた手の中で萎れていた。
子供じみた俺の悪態に、むきになって追いかけてくる姿も。仕方ないなあ
と吹き出して最後に笑う顔も。
戦に明け暮れた日々の中、大切に抱いてきたはずの思い出は、ぱちん、
ぱちんとまるでシャボンの消えるように、軽い音をたて壊れていく。その
あっけなさが酷く悔しい。
何度めかの吐精の後。抵抗する気力を失い、力なく横たわるハンガリーの
猿ぐつわを外した。
顔は涙でぐちゃぐちゃで、けれど綺麗に化粧したさっきよりも百万倍
可愛いと思った。
ガチリと重い音を響かせ撃鉄を起こす。
――さあ一緒にいこうかハンガリー。
虚ろだったハンガリーの目に再び恐怖と絶望が宿った。
銃口を突き付け不浄の肉で繋がりあったまま、青ざめて震える花嫁の唇に
俺は誓いの口づけを落とす。
――意地悪ばかりしてきてごめん。本当はガキの頃からずっと好きだった。
葛藤と辛苦の日々は終わる。死は優しく俺たちを結びつけてくれるだろう。
――すぐに行くから少し待ってな。愛してる。俺の花嫁。
生まれてはじめての愛の言葉を囁いて、引金をひいた。
* * *
葬送の鐘にも似た祝福の音が鳴り響く中、プロイセンはぼんやりと目を開く。
長い白昼夢を見ていたようだ。
6月の新緑につつまれた真っ白い教会。
式に参列する客たちが笑いさざめきながら徐々に集まってくる。
空は晴天。日差しはやわらかに心地よい風が吹く。
素晴らしい、絶好の挙式日和だ。
――ああハンガリー、今、迎えに行く。
小さく口元を歪め、彼はポケットの中の拳銃を握りしめた。