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 子宮



WW2時代の日台。
日本も台湾も病んでるのでご注意ください!



はじめは彼のことが大嫌いだった。
偉大な兄を裏切り、兄弟たちを傷つけ、私の家に踏み入った彼を恐れ憎しみこそすれ、好感など持ちようがなかった。
その頃の彼はあまり笑わず、それがいっそう怖かった。
でも。時折見せる笑顔や柔らかい雰囲気に気づいたのはいつだったろうか。
たとえば日本語の読み書きを教わってるとき「台湾は覚えが早い」と言って私を褒めるその声のの暖かさや。
月を眺めてるときのさびしそうな横顔に。
私はいつしか彼に恋をしていた。

だから、平気。彼に何をされても、平気。

日本に組み敷かれ、荒々しく服を乱されながら、台湾はぼうっとそんな今更なことを考えいた。
初めて抱かれたのはいつのことだったろう。
日本が怪我をして帰ってくることが増えてきたあたりだったと思う。
そのころの日本の纏う雰囲気はとげとげしく、出会ったころの時折見せた柔らかい雰囲気はもうどこにも見当たらなかった。
それでも台湾は彼を愛していた。手ひどい言葉をかけられても、冷たい視線にさらされても。
だから、より一層憔悴した彼が帰ってきたあの日、そのまま閨に連れ込まれて何かを叩きつけるかのように犯されても、台湾は抵抗しなかった。
むしろ興奮した。自分にだけ負の感情をぶつけてくる日本に。

「何を考えているんですか?」

そんな昔のことを考えていたら、昏い瞳をした日本にのぞきこまれた。
いまの日本はあのときよりもさらに痛々しい。
こんな疲れ切った状態でこんなことしたらますます憔悴してしまうのではないかと毎回台湾は心配していたが、それを日本に告げたことはなかった。
この暗く淀んだ―――しかしこの上なく二人を密着させる素晴らしいな時間が終わってしまうかもしれないのが嫌だったからだ。

「あなたに初めて抱かれたときのことです」

そううっとりと台湾がつぶやくと、日本は心底嫌そうな顔をして、台湾への凌辱―――愛撫というよりそれは凌辱に近かった―――を再開した。


ぐちゅっ、くちゃっ
一定のリズムで、淫らな水音が室内に響き渡っていた。
深く息を吐き出すように、日本の下半身が台湾の体を押し上げる。
「う・・・ッ」
ゆっくりと往復する波が、体内をえぐる。
「ン、うっ・・・」
台湾の両脚は大きく開かれ、あられもない姿を晒していたが、台湾の頭の中には快感しかなかった。

「・・・ァ、ん、くッ!」
「はっ・・・」
「ううっ・・・に、ほんさ・・・」
「はあッ・・・」
――ズズッ・・・
台湾の体を貫いていたモノが、突然引き抜かれた。
「あっ・・・!?」


ずちゃ!!!!
台湾が眼を開いた次の瞬間、再び熱い尖端が、体の中を深々と奥まで突き刺した。
「ああああッ!!」
背中が限界まで反り返り、吐息とともに絶叫が喉から解放される。
あまりにも唐突に訪れた絶頂に、台湾の意識が溶けていく。
「はッ! ・・・はッ! は、うッ・・・!」
「台湾・・・」
日本が、台湾の耳元で囁いた。日ごろには決して聞くことはできない、甘さを含んだ声だった。

「台湾。たいわん。貴女は私のモノですよ。私の」
「あ、う・・・はッ!!」

再び台湾の体が突き上げられ、そのたびに子宮を震わせる音が体内を揺らし、留まることのないうねりが、台湾のすべてを犯していった。
「はあっ・・・! あ、ああッ!!」
ぐちゃ、くちゅ、ずちゅ・・・
台湾の体が激しく突き上げられる。
膝をついて背を反らす日本の上に乗せられた台湾の体は、まさに人形のように揺れていた。
打ち上げられんばかりに突かれ、力を失い落ちる往復が繰り返される。
弾む乳房と、乱れる髪の動きが徐々に激しくなり、登りつめるように呼吸が急速に早くなっていく。
「う・・・あっ! はあッ!!」
体の芯が焦げて極まる瞬間が、幾度も訪れた。
台湾は焦点の合わない眼を見開いた。
背筋が痙攣し、胸が反り返る瞬間、そそり立つように張りつめた乳房を日本の肉の落ちた両手が荒々しく揉みしだいたのだ。
「あうぅッ! ううーッ!!」
脱力しかけた間際に与えられた刺激が容赦なく体を貫き、首を左右に振る台湾の唇の端から涎が散った。
果てても果てても、更に高いうねりが沸き上がる。
「あ・・・は、あ・・・」
「まだです。まだですよ、台湾」
どこか熱に浮かされたように告げる日本の瞳は爛々と鈍く輝き、まさに獣のそれだった。

日本が台湾の体を抱き起こし、引き寄せた。
「あ、うっ・・・う」
半開きの小さな口の中に日本の舌が滑り込む。
重なる唇の隙間から、低く、くぐもった声が漏れた。
台湾の上唇の裏をべろりと舐めた後、舌なめずりをしながら、
「愚かだ。貴女は愚かな娘だ。私の舌を噛み切ることだってできるのに。あるいは自分の舌を」
囁く日本の唇と台湾の唇の間が、光る糸を引く。
蕩けた視線をさまよわせていた台湾は、深く熱い息を吐くと、耳元を舐める男の眼を見返した。
「貴方が、私に何をしても・・・、私を変えることなんてできません」
(私のこの、想いを)
しかし最後の言葉は口にしなかった。
そんな残酷な・・・いまの日本にとって残酷でしかない言葉を吐いてしまったら、
彼が本当に壊れてしまうような気がして。

日本の眼がつりあがる。
「ククク、いつまで強気でいられるんですかね。・・・ハハッ!」
台湾の両脚を肩に担ぎ上げ、日本は勢い込んでのしかかる。
布団に押し付けられ、仰け反る台湾の首筋を、粘りつく舌が這い上がった。
「うううッ・・・!」
大きく開かれた両脚の間から襲い掛かる、深く、激しい衝撃が体の中心を貫通する。
「さあ・・・、いきますよ」

どくどくと脈打ち張り詰める男根が、台湾の中で膨張する。
「あ! ・・・あッ! あ・・・!!」
激しく体を突き上げる動きが連続的に、より深く、より奥深くへと迫る。
台湾はあまりの快感から、上半身を捩り、その熱い濁流の浸食から逃れようと暴れ、もがいた。
しかし強く押さえつけられた腰は、逃げ場がない。
ド・グン・・・
「ぐ、うッ!!」
ドグン!!
「あああーッ!!」
台湾は、自分の中で解放された熱い液体の噴出を感じ、一瞬の後に目の前で断続的に火花が散ったのを見た。
子宮に染み込む衝撃が、全身を染めて駆け上がる。
「ア・・・ ア・・・ ア・・・」
目の前が、真白に染まっていった。

台湾が気づいたとき日本は上半身を起こし、虚空を見つめていた。
「にほんさん・・・」
台湾が掠れた声で呼びかけると、日本は視線を動かすことなくつぶやいた。
「新しい“くに”・・・」
「え?」
「こうして貴女を抱いていれば、いつか新しい国が生まれないでしょうかね?
気高く、強い。そう、西欧にも負けないくらい強い国です。この亜細亜を守り導く王者。
そんな新しい国が生まれないものでしょうか?」
日本はさきほどの情事の激しさが嘘みたいに淡々と述べた。
国が新しい国を“生む”なんてありえない。
国とは知らぬ間に生まれ、知らぬ間に消えていくものだから。
それでも台湾は察した。彼は本気でそれを望んで自分を抱いていたのだろう。
ありえないと知りながら。

「日本さん」
台湾は日本の肩に寄り添い、うっとりとつぶやいた。
「日本さんが、なればいいじゃないですか。気高く強い、この亜細亜の王者。そのために、」


そのために兄弟を裏切ったんでしょ?


そう囁いた瞬間、台湾は日本に突き飛ばされた。
その怒りに燃えた瞳を見て、台湾は大変満足した。
自分だけだ。日本のこの瞳を見ることができるのは。
刀で切られるかとも思ったが、日本はもう台湾を見ることもなく、服を整えて出て行った。

台湾はぼんやりと木目の天井を見上げる。
本当は台湾も日本ももう分かってる。日本は王者にはなれない。
わかっているからこそ日本も、ありえもしない新しい国の誕生を望んだのだろう。
どろっと太ももを伝う日本の精液を感じて、台湾は身震いした。


結局その後、台湾が再び日本に会うことはないまま終戦を迎えた。
終戦後、兄とアメリカに頼み込んで会いに行った彼は、全身包帯だらけで昏睡していた。
「日本さん」
台湾がよびかけてもぴくりとも動かない。
自分と同じ漆黒の瞳は、瞼に隠されたまま見ることはできない。
台湾はそんな彼を見つめながらぼんやりと思った。
今度彼の瞳に自分が映るとき、自分たちの関係は変わるのだろうかと。
変わってほしいのか変わってほしくないのか、自分でもわからないけれど。
「早く、目を覚ましてください・・・」
そう呟いた言葉と、重ねた唇の感触だけは、まぎれもない真実だった。






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