イギセー
【メインCP】イギセー
【傾向】純愛
【その他】それとなく七夕ネタっぽくしたかった埋め
夜になれば都会の死角となる人気のない小道。
立ち並ぶ木立が作る豊かな葉になかば埋もれかけながら、一本の古い街灯が夜の闇のなかにチカチカとまたたいている。
その明かりが届くか、届かないか。慎重に光を避けるようにして、薄暗い街灯のともしびさえ忍ぶようにして一台の車が停車している。
……その車は、ちょっぴり揺れていた。
「もうこんなの嫌だ。絶対に嫌だ。」
倒した助手席のシートに横たわるセーシェルに覆い被さりながら、イギリスは首筋に、胸に、鎖骨に次々と赤い跡を散らす。
ところかまわず贈られるキスのお返しに、セーシェルはイギリスの指を甘く噛んだ。
「んぁっ……ん……わたしだって……!」
「セーシェル、セーシェル」
「イギリス、さん、イギリスさんー……」
二人は荒ぐ呼吸も意に介さず、酸素よりもお互いの唇を求めて貪りあった。
一年。ほぼ、一年だ。二人が離れていた時間。まったく会わなかったわけではない。
だが、二人でプライベートな時間を過ごすことは一年ものあいだ、一分たりとも出来なかった。
その理由をいちいち挙げてもしかたあるまい。二人はともに国家の化身である。国が停止する日など一日たりともない。
ときに、時代はめまぐるしく移り変わり、社会も人も止まることのできない渦に巻き込まれる。彼ら国はそこから離れて存在することはできないのだ。
一年の空白。離れていた距離。
電話はした。メールも頻繁に交わした。ブランクの苦痛に耐えかねてテレフォンセックスにまで及んだこともある。
でも、生身の体を触れあわせることに代えられる手段などありはしない。
空港でやっと出会い長いこと二つに離れていた体は一瞬でも早く一つに繋がることを欲して一秒ごとに熱を増していった。家までのほんの数十分の道程にすら耐えられなかった。
時は夜。ひっそりと静まりかえった公園の隅、二人は全身で愛を語る。
「いいです……」
ダッシュボードをまさぐるイギリスの服をひっぱる。
「でも、始末、大変だろ」
「いいですから」
セーシェルは解かれた体を開いて両腕を伸ばした。曇った窓ガラスが涙をこぼす。
「……はやく……」
「っ……」
乱暴にスラックスとトランクスを膝まで降ろし、痛いほど充血したそこを、獲物を屠り血に塗れた剣を鞘に収めるようにして愛する少女を貫いた。
とたん、少女は甲高い声をあげる。
「うぁ……、はぁっ……。……わる、い。だいじょうぶか、セーシェル」
「ふあ、あ、……あ……ごめんなさ、久しぶりだったから……。は……だいじょぶです……」
「ん。……手加減、できそうにない」
セーシェルはうなずく。
それでも初めは精一杯気遣わしげに動いていたイギリスだったが、突然箍が外れたようになってセーシェルを責めたてた。
二人の間の距離が、やっと埋まる。愛しさが、空虚だった部分を静かに満たす。
快楽の泥渦に飲まれ完全に溺れたセーシェルは大好きな恋人をもっと、もっと近くに感じたくて、自由にならなくなっていく手でイギリスの顔つかまえて引き寄せた。一突きごとにあられもない悲鳴を漏らす唇を上手に使ってキスをし、ぎゅっと首を抱いてささやく。
「イギリスさん、逢いたかったぁ……!」
返事の代わりに、イギリスは「うぁ、」という呻き声をあげて体を震わせた。
……車体の揺れが止まり、湿った熱気のこもる車内に息の音が響く。
恋人の体重につぶされながら、セーシェルはぺしぺしと自分の首元に埋まる頭の後ろを叩く。
「イギリスさんー、はやいぃー……」
「〜〜〜っ……お前が悪いんだよ……っ」
申し訳なく思ってはいるようだった。
終わり。
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