嫉妬に駆られた現彼氏は不安になって(ry
あの飲み屋での狂乱の後、ぐったりとしたハンガリーはなんとか無事、帰路に就いた。
謎の国際裁判から始まった今日一日はなかなかにハードだった。
薬を盛られて記憶が定かではないが、トルコと接しているうちになんだかやんちゃだっ
た昔を思い出していたような気がする。
「あー、もう疲れたわ。早く寝よう……」
重い体を引きずって家にたどり着き、化粧も落とさず寝室へと直行した。
あくびをしながらドアを開けると、
「おや、ハンガリー。お帰りなさい」
そこはSMルームでした。
口をぽかんとあけて瞬きも忘れるハンガリーの目の前には、SMグッズに囲まれたオース
トリアが全裸に首輪とペニスキャップで緊縛されていた。いや、この場合どう考えてもオ
ーストリアが自分で自分を拘束したとしか考えられないのでされていたという表現はおか
しいかもしれない。
ともかく、自宅の寝室がそういう異様な雰囲気に様変わりしていた。ハンガリーが肩か
ら掛けていたバッグがぼとりと床に落ちる。
「ずっと待っていたんですよ。いったいこんな時間までどちらにいってらっしゃったので
すか」
ハッと我に返ったハンガリーは踵を返してそこから飛び出そうとしたが、思いのほかに
強い力で引き寄せられた。
「ごめんなさい。すみません。許してください、オーストリアさん……!」
「いえ、なにも謝ってほしいわけではありません。逆に私を罵っていただければそれでい
いのです」
今日のアレコレでいろんなことが発覚し、不安になったオーストリアはどうしたものか
とハンガリーの自宅で待ち構えていたのだ。
やばい。何かのスイッチが入っている。ハンガリーの脳裏に焼き付いて離れないオース
トリアと積み重ねた性生活の一部強烈な記憶。――そう、SMだ。軽く縛る程度だったり目
隠しをする程度のソフトSMとはわけが違う。鞭打ち緊縛当たり前のハードSMだ。
ゲルマン系との付き合いが長く、初めてのときもドイツに縛られて鞭を使われたが、マ
ジャールはその起源をアジアに持つ人種だ。どんなにゲルマン系との付き合いが長かろう
と、どれだけご近所であろうと、人種の性文化の壁はなかなか超えることはできない。つ
まりはごめんなさい。SMだけは無理です。
「さあ、ハンガリー。今日は蝋燭を用意しておきましたよ」
そして渡される、メラメラと妖しい炎が揺れる赤く太い蝋燭。今日のオーストリアは蝋
燭プレイを所望しているようだ。もちろんロウをかけられるのはハンガリーではなく、オ
ーストリアだ。
何度も言うように女王様は無理です。そんなことできません。今日の朝から先ほどまで
飲み屋で起こっていたことのすべてが頭からすっぽり抜けて、蝋燭を手にしたままハンガ
リーは立ち尽くす。
「ロウって、熱くないんですか?」
「それはSM用の低温蝋燭なので大丈夫ですよ。お願いします、ハンガリー。私を豚と家畜
と罵りながら背中にロウをかけてください」
低温蝋燭でも熱いものは熱いですよね。愛するオーストリアにこんなことをしたくない
のだが、彼がこうでないと性的な興奮を十分に得られないというのだから仕方がない。ハ
ンガリーは期待に胸を膨らませながら四つん這いになったオーストリアの背中の上で恐る
恐る蝋燭を傾けた。赤いロウがポトリポトリと落ちていく。
「こ、この豚さん! こんなことされるのが好きなんですか! 熱くないんですか! 火
傷しちゃったら焼き豚になっちゃいますよっ!」
「ああっ! いいですよ、ハンガリー。もっと私を責め立ててください……!」
精一杯の罵り文句を口にしながらロウを垂らしていくハンガリー。オーストリアの背中
に落ちた赤ロウが固まっていく。その周りが腫れてきているように見えて、ハンガリーは
眉をひそめた。
「……本当にひどい火傷をしちゃう前にやめましょうよ。ふ、踏みますから」
瞳を輝かせたオーストリアが彼女を見上げる。期待のこもったその視線に、オーストリ
アさんがひどい火傷をするよりはとハンガリーは覚悟を決めた。
蝋燭を燭台に置いて、床に寝転がったオーストリアの大事なところを覆うペニスキャッ
プを外し、そこをハイヒールで軽く踏む。今日は国際裁判出席のためにいつもの装いとは
違ってスーツにハイヒールだ。ヒールが陰嚢を直撃し、裏筋は靴底で押し上げられる。す
でに興奮しきっていたそれは緩急をつけたハンガリーの踏みつけにカウパー液を滲ませた
。
「あぁ、ハンガリー。もっとです。もっと強く……!」
こんなドエムに誰がした。ハンガリーは夜になったとたん変貌してしまう恋人の姿に、
たまに泣きたくなってくるのだった。
オーストリアの先走りの汁がハンガリーのハイヒールを濡らす。異常なシチュエーショ
ンに直面してはどう足掻いても興奮を隠せないのが人間の性か、スーツのスカートに隠れ
たハンガリーの股から太ももを伝う一筋の愛液にオーストリアは気がついた。
「ああ、ハンガリー。貴女も気持ち良くならなくてはなりませんよね。今奇麗にして差し
上げますから」
オーストリアはハンガリーをソファーに座らせ、その足の間に跪く。スカートをめくり
あげ、下着とストッキングの上から肉びらにかぶりつく。舌でぞわりと舐めあげると、彼
の動きを制止したハンガリーが顔を真っ赤にさせながら下着とストッキングを膝のあたり
までずり下ろした。
「お、オーストリアさん、すみません……」
「ふふ、我慢できませんか?」
両の指で陰唇をかき分け、膣の中に舌を潜らせようとした矢先、ハンガリーのそこから
白濁した何かがどろりと流れる。その感覚に彼女は凍りついた。今の今まですっかり頭か
ら抜けていたが、先ほどトルコにいろいろとやられたばかりだった。
オーストリアは膣の中に二本の指を突き入れてぐるりと掻きまわし、白濁液を彼女に見
せつけるようにその手を掲げる。
「ハンガリー、いいえ、女王様。ほかの男の味はいかがでしたか? 私のものだけで満足
していただけないとなると、やはりいろいろと考えなければなりませんね」
そうそう、私が長年大事に取っておいた貴女の初めてを奪っていったという、ドイツで
すか、彼にはキツイお仕置きをしておきましたよ。
ドエム全開とも違う、何やら不穏なオーストリアの空気にハンガリーは身を縮ませた。
「ご、ごめんなさ」
「謝る必要などありません。私の力不足が貴女の性的な欲求不満を招いているのでしょう
。まだまだ夜はこれからです。これからはほかの男では満足できないようにして差し上げ
ますよ」
そう微笑むオーストリアの手には何やら液体の詰まった太い注射器が抱えられていた。
「まずは洗浄からですね」
おわれ