『シーソーゲーム』
ロベリアさんより8239(ハニー咲く)




「ジャック!」
出動前の、緊迫した時に。
迷惑だということはわかっている。
でもどうしても、いつも呼び止めてしまうんだ。
                                            「なんだトニー」
                               舌打ちしつつも振り向く自分が嫌いだ。
                             張り詰めた糸を、柔らかく解されるような。
                        今は…いや、いつも、前だけを向いていたいのに。
「その…気をつけて」
舌打ちされるのも無理はない。
出てくるのは、こんな月並みな台詞で。
ジャック、貴方にはわからないでしょうね。
この言葉に、どれだけ切実な願いが込められているか。
                                       「言われるまでもない」
                                     お前の目を見ればわかる。
                                言われるまでもないんだよ、トニー。
                            どれほど、僕の身を案じてくれているのか。
                       つい返してしまうのは、あいにく憎まれ口だけれど。
「そうですね…」
言葉なんて無力で。
どうか、どうか気をつけて。
無責任な願いを、心の中で何度も唱える。
会話にならないような会話を、毎回繰り返してる。
彼の無事を祈る時間だけ、自分のために彼を引き止める。
                                               「じゃあ…」
                                          言葉なんて無力だ。
                                     僕のことなんて気にするな。
                              優しい彼に、それをどう伝えればいい?
                          この国を、大統領を、キムを、…そしてお前を。
                       守るためなんだから、何があったって僕はいいんだ。
「ええ…」
ジャックは動かない。
焦れたチェイスが呼んでいる。
一刻を争う時機だと言ったのはどの口か。
だけど本音は、ジャックに行ってほしくない。
                                            「じゃあ、…」
                                       チェイスが呼んでいる。
                                ああ、僕が行かなきゃ始まらない。
                           過酷な任務に就く前に、もう少し彼の声を。
                        わかってる、本当は引き止められて嬉しいんだ。


                                      「…トニー」

     「はい?」

                            「行ってくる」

               「――はい」


   そう、言ってくれるから。
   俺はまた、余計な願い事を一つ。
   おかえりなさい、を言わせて下さい。
   どうか、帰還したら真っ先に俺のもとへ。
                                   そう、言うのは僕の弱さか。
                                そしてまた、余計な希望が一つ。
                            なあ、そんな心配そうな顔をしてるなよ。
                         戻ったら、真っ先にお前のもとへ向かうから。




次に会う時は、笑顔を。



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2006.3.25
文色も変えようかなと思いました(思っただけ)
リク「ギクシャクした2人」のつもりですが、
こんなトニジャでよろしかったでしょうか(問題な日本語)
え、ラブラブ全開? うん、ごめんねロベリアさん!








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