『I've got a feeling 4』




 ジャックが、拗ねた子供のように唇を尖らした。

「トニー、仕事が」
「僕にだってありますよ。だから、早く吐いたほうがお互いの為です」

 これではまるで尋問だ。
 ジャックも同じように感じたのか、両手を上げて了解の意思を示した。

「まあ、俺のせいでもあるしな」
「自覚はあるんですね」

 嫌味ったらしく言うと、ニヤリと笑って見上げてくる。

「お前の反応が面白くて、つい」
「……勝手にしゃべらないで。僕の質問に答えてください」
「わかったよ、チーフ」

 足を組み替えて、咳払いを一つ。ふと、ジャックの様子が気になった。

「ジャック、怪我は大丈夫ですか?」
「ほとんど俺の血じゃない。それより、早く本題に入れ」
「仕事の話をするんじゃないんですよ、わかってるんですか?」
「わかってるさ。つまり――、俺はお前のことが好きだけど、今日はそれでからかってしまったことは
謝る。今後はもうしないから安心しろ」

 相変わらず、あっけらかんとしている。

「安心って」
「困ってたんだろ? お前、意外にいい奴なんだな。お前の気持ちなんてわかってるから、そんなに
悩まなくてもいいのに」

 だから、その達観ぶりが気に食わないのだ。
 からかい半分だったにせよ、今日「好きだ」と告げた時に浮かべた表情を、ジャック自身は知って
いるのだろうか。小さく笑った幸せそうなその表情を、トニーの心は撥ね付けることも、受け流すこ
ともできなかった。

 ジャックには、幸せになってほしいと思う。辛すぎる過去を背負った人だ。だから、彼が笑う理由が
トニーなのであれば、それは素晴らしいことではないかと思う自分がいる。恋だの愛だのを持ち出す
前から、ジャックはトニーにとって大事な友人なのだ。それ以上の余地はトニーにはないのだけれど、
ジャックから投げられた新しいボールを、ただ無視することだけはしたくはなかった。

「そうですね。僕の気持ち”なんて”、どうせジャックにはわからないでしょうから、あなたの気持ちを
聞きます」
「だから、伝えたろう」
「僕が知りたいのは、恋愛対象として、本当に僕のことを好きなのかってことです。そして、答えが
分かっていて、何故それを告げようと思ったのか」
「おい、プライバシーの保護はないのか」
「ごまかさないで。ジャック、お願いです。教えて下さい。僕はどうしたらいいんですか」

 じっと見つめると、ジャックは目を逸らした。
 視線が宙を彷徨い、やがて膝に乗った自分の手に落ち着く。
 口を開き、溜息をつき、舌で唇を潤してようやく決心がついたようだった。

「…お前、しつこいぞ。好きだって、伝えるだけじゃ信じてもらえないのか。受け入れてくれとも頼んで
ないのに」

 それは独り言で答えを望んでなく、トニーは静かに続きを待った。

「…ある日、ふと自分が死ぬ時のことを考えたんだ。こんな仕事をしてると、ありえないことじゃない
だろう? その時になったら俺は、きっとキムとお前の顔を思い浮かべるんだろうなぁと思って。俺
には、もうその2人しかいないから」

 トニーは小さく息を吐いた。複雑な気持ちだ。
 しかし、キムと同列とは光栄だが、それはつまり、親愛の情や友情と変わらないのではないか。
 チラリと視線を上げて苦笑するジャックに、トニーもなんとか笑みを浮かべた。

「キムはわかりますが、僕まで? そんなに僕は頼りないですか?」
「馬鹿言うな。キムだってもう子供じゃない。俺がいなくてもやっていけるさ。心配とかじゃなく…未練
だよ。俺が、この世に未練を持つ人間だ」

 まだ笑んだままの瞳でそう告げられ、トニーは今度は息を詰めた。

「お前と、離れたくない」







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2009.3.8
だんだん、書いていることがわからなくなってきました。
けど、急に路線変更したわけではありません。
前半が遊びすぎただけです(計画性なさすぎ)




































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