2月10日の出来事。
デビッドとネルソンは連れ立って一教室へと向かっていた。
その途中で目的の人物と遭遇した。
「やあ」
「ハーイ、デビッド、ネルソン」
「ハイ…」
相手は同じ学科の女性だ。
「機嫌悪いわね、ネルソン」
「別に…」
彼女にちらりと目を向けたものの、すぐに逸らした。
「気にしないでいいよ、ちょっと虫の居所でも悪いんだ」
デビッドが取り成すように彼女に声をかけた。
「気にしてないわよ。そう…虫の居所がね…」
くすくすと笑う彼女をデビッドは少し不思議な面持ちで眺めていた。
「それで? 何か用かしら?」
まだ笑っている彼女に聞かれて、デビッドは我に返った。
「そうだ。これを渡そうと思って…」
デビッドは持っていた箱を軽く持ち上げて見せた。
「何…?」
「……」
「ネルソン」
デビッドは相変らずそっぽを向いたままのネルソンの肩を突つく。
「っ…」
唇を噛んだネルソンを彼女は不思議そうな顔で見た。
「どうかした?」
再度デビッドに小突かれたネルソンはようやく口を開いた。
「昨日誕生日だったって聞いた…」
「あら…それでケーキを?」
彼女は嬉しそうに笑った。
「一日遅れだけど、誕生日おめでとう」
「ありがとう、デビッド」
「…おめでとう」
「ありがとう、ネルソン。じゃあ、お礼にこれをあげるわ」
彼女は小さな鍵をデビッドにそっと渡した。
「これは?」
「ほとんど使われない部屋があるの。私しか使ってないかな? そこの合鍵」
「は?」
彼女はネルソンに笑いかけた。
「大丈夫よ、貴方達が何に使っても。でも備品は壊さないでね」
揶揄するように言われ、ネルソンは顔を赤らめた。
「あ、一応、使う時は一言言ってくれたら嬉しいかな。そしたら近づかないから
」
「分かった」
「じゃあ、また授業で」
「ああ…」
今度はネルソンも手を振った。
彼女はウキウキした様子で去っていく。
「ネルソン? どうした?」
彼女の後姿を眺めているネルソンの顔を覗き込む。
「昨日、渡してやっても良かったかな…」
「情けは人の為ならず」
やっぱり回ってきたな、とデビッドは内心苦笑した。
「折角だし行ってみるか…」
「あ?」
デビッドはネルソンの腕を取った。
「場所は? 彼女、場所なんか言わなかったろ?」
「大丈夫、知ってる」
途端にデビッドの手を振り払った。
「何で知ってる!? 僕は知らないぞッ」
「何を怒ってるんだ…」
怒りに震えるネルソンをデビッドは呆れたように見やる。
「何を怒ってるか、だと?僕の知らないところで彼女とイチャイチャして…ッ」
デビッドは大きく息を吐いた。
「どんな誤解だ…」
「誤解!? 何が…!」
「前に資料運ぶのを手伝っただけだ。その時『ここ使ってるのは私ぐらいだから
物が増えちゃって』って言ってたからそこだろ」
「なん、だ…」
ネルソンは小さく呟いた。
「ネルソン…俺、そんなに信用ないのか?」
「違う、別に…! だって、」
「色々と足りないようだな」
デビッドはネルソンの体を担ぎ上げた。
「デビッド!? ちょっ…」
「黙ってな」
「下ろせ!」
「うるさい」
デビッドはそのまま階段を上がった。
「うぇ…デビ…気持ち悪く、なる」
「もう着いたぞ」
デビッドは鍵を開けて中に入ると机の上にネルソンを下ろした。
「ネルソン?」
「平気だ」
心配そうに聞くデビッドに首を振る。
「ならいいが…」
言いながらデビッドはぐるりと見回した。
つられたのかネルソンも辺りを見る。資料が山積みになっていた。
「なんか一杯だな…」
「別に困らないだろ?」
デビッドの手がネルソンの服の下に潜り込む。
「ん…」
肌の上を指が辿っていく。
「は…デビッド…」
「ノォ」
「怒ってる、のか…? なぁ…」
ネルソンの伸ばした腕をデビッドは押さえ付けた。
「デビッド!?」
「俺のことはロクに信じてないんだろう? 今日はキスはお預けだ」
冷たく言うとネルソンの顔が歪んだ。
「嫌だ…」
「すぐにそんなこと言ってる余裕なくなるだろ?」
デビッドの手が直接肌に触れてきて、足の間をゆっくりとした調子で撫でられる
。
「ンッ…」
焦らすように指は触れるか触れないかの位置にしかこない。
自然とデビッドの肩口を掴むネルソンの手に力が入る。
「んぁッ!」
「ネルソン?」
ゆるゆると擦ると透明な液体が零れ落ちる。
「デビ…っ謝、る…ッ」
「何だ?」
その雫を拭うように先端を擦ればさらにとろりと溢れだす。
「疑ったこ、あ、も、焦らすな…!」
「ただイきたいだけだろ?」
「違っ」
ネルソンはビクビクと身を震わせて仰け反った。
「…分かってる。ちょっと覚えさせようと思っただけだ」
ネルソンの背中を支えながら体を倒させる。
「デん…んんぅ…」
唇を塞がれて、舌をきつく吸われると甘い痺れが付け根から拡がって全身を浸
す。
「ハっ一人じゃ、嫌だッ」
「我儘言うな」
ネルソンの瞳は欲に濡れている。
「もう我慢できやしないだろ?」
「だからっ」
「欲しいのか?」
デビッドの手は後ろの窄まりへと伸びて入り口を擽る。
「んンっ」
つぷりと指が中に入っても萎えるどころか更に硬さを増して涙を流す。
「もっとか?」
「も、と…ッ」
指が探るたびにねだるように腰が動く。
「やっ」
「もっと欲しいんじゃなかったのか?」
掻き回すたびに熱い息が漏れる。
「絡み付いてきてる」
「はぁっぁ、デビッド!」
「仕方ないな」
デビッドは苦笑してネルソンの腰を抱え込んだ。
「アッァあッ…ッ」
融けたネルソンの中はデビッドをあっさり飲み込み締め付ける。
奥を探れば尚もきつく絡み付いてくる。
「は…ネルソン…」
「も、無理…ッ」
「イけよ」
「っヒあ…!」
ネルソンの爪が腕に跡を残す。
「ふ、ぅ…痛いぞ…」
息の整わないネルソンは涙目で睨んだ。
「お前が意地悪するからだ」
「最初の原因はお前だろう」
やり返されて、むぅ…と黙った。
「そうだ、授業…まあいいか…」
デビッドは時計に目をやって苦笑した。開始時間は当然過ぎている。
「なぁ…どうせだし」
腕を掴むネルソンにため息を吐く。
「言うと思った」
「嫌ならいいっ触るなっ」
途端に癇癪を起こすネルソンを押さえながら唇を合わす。
「嫌とは言ってないだろう? だが次の授業はでないとな」
「分かってる、ァ…」
ネルソンの声に煽られて時間的な余裕に不安を覚えるデビッドだった。