「ん、うぅっ…ふ、」
ジャックは、こんなにも息苦しいのは泣いているせいだと思っていた。
泣き出した自分を、クルーズが受け止めてくれたのが嬉しかった。いい年を
して情けないとか、常識
ばった思考は回らない。ただ、彼の背中へ回した手に
力を込めるだけで精一杯だった。
「んぅっ、ア!?」
さきほどから口内を弄っていた柔らかいものが敏感な部分をなぞり、思わず
身体が引ける。その拍子
にソファに当たり、カクリと膝が折れてしまう。ソファ
に座り込んだ姿勢で、自分に覆いかぶさるクルーズ
に、やっとジャックは状況を
把握した。更に顔を寄せてくる彼を、シャツを引っ張って留める。
「ク、ルーズ…?」
「ジャック。守ってやりたい、って言ったら、アンタは怒るかな」
戸惑った呼びかけに返ってきたのは、思いもかけない質問だった。
「何を言って…」
「アンタが苦しい時、傍にいてやりたいんだ」
冗談を言う口調ではない。
しかし自分を見つめてくる強すぎる視線に、ジャックは本能的に恐怖を感
じた。身を捩るが、クルー
ズの拘束は外れない。
「クルーズ、まずは放してくれないか」
「いやだ」
「クルーズ!」
太股に押し当てられた紛れもない欲望に、ジャックは驚きの悲鳴をあげた。
「クルーズ、一体何を…君はゲイだったのか!?」
「そんな質問って意味ないぜ、ジャック。俺はアンタだから欲しくなったんだ」
「勝手なことを…っ、んぅ…!」
再び唇を重ねられると同時に、クルーズの手が身体を弄り始める。
遠慮も戸惑いもなく、ズボンの布越しにやんわりとそこを刺激され、ジャック
は呻いた。拒絶するため
に振り上げていた腕が、再び彼の背中へ縋りつく格好
となる。逃げようとすればそれを利用して横たえ
られ、ますます逃げ場はなく
なった。
なかなか外れないベルトに苛立ったクルーズが上体を起こした。抜かりなく
ジャックの腕を拘束し、片
手でベルトを引き抜く。次いでジッパーを下げら
れる音に、ジャックはなりふり構わず叫びだした。
「やめろクルーズ! 正気か!? 離してくれ!」
力任せに下着ごとズボンを下ろされる。抵抗も効を為さず、片足をソファの
背もたれにかけられた。
大きく晒された無防備な部分にクルーズの視線を感じて、ジャックの頬は羞恥と怒りに染まった。
「クルーズ! やめろと言ってる!」
「俺は正気だよ、ジャック。やめる気もない」
「やめ…クルー、や、ぁあっ!」
腕の拘束を外された途端、温かい粘膜に自身が包まれるのを感じた。いまだ
うなだれているジャック
のモノをクルーズが口に含んだのだ。両腕は自由にな
ったが、刺激を恐れてクルーズを殴ることもでき
ない。彼の髪の毛へと手を
差し入れ引き剥がそうとするが、与えられる快感に力が入らない。
「あ、んっ…ア、や――」
「感じやすいな。ご無沙汰だったのか?」
屈辱的な台詞にジャックは歯を噛み締めた。
しかし心を裏切り、身体は素直に反応してしまう。クルーズの言うとおり、
久しぶりの快楽に身体は抑
えがきかなかった。とろとろと先走りが溢れ始め
ると、クルーズは顔を離して手で扱き出した。興奮に
上気した顔で、ジャック
を追い立てる。
「なあ、嫌だなんて嘘だろ? こんなにしといて」
「違っ、ぅん、ふ、っ…」
「違わないさ。気持ちいいんだろ」
「あ、あァア!」
先端を軽く抉られ、ジャックは堪らずに爆ぜた。
目を閉じてクルーズから顔を逸らし、荒い息を整える。だがそれで終わりで
はなかった。足を抱え直さ
れ、後ろにクルーズの指を感じてジャックはぎょっと
して目を見開いた。窪みを押すようにしてなぞられ、
ぞわりと鳥肌が立つ。
「く、クルーズ!」
「I love you,Jack」
「なっ――」
唐突に告げられた言葉に、ジャックは唖然とした。
この行為は暴力に違いないのに、その意味に愛を吹き込むクルーズが信じら
れなかった。気力を振り
絞って彼を睨みつける。
「ふざけたことを言うな! 愛してるだと? 守りたいだと? じゃあお前が
やっていることはなんだ、レイ
プだぞ! 僕は嫌だと言っているのに!」
それは、クルーズの良心を疼かせるには十分すぎる言葉だった。
男らしい太い眉が苦悩に歪められ、しかしジャックを拘束する手は緩めない。
「嘘は言ってない。俺だって信じられないさ。昨日会ったばかりの人間に惚れる
なんてね。しかも相手は
男で、年上ときた。なんでだろうな、いい友人になれ
ると思ったのに。アンタが泣くからいけないんだ」
「知るか! いい加減この手を離せ!」
それはおそらく、クルーズを説得する最後の機会だった。
しかしジャックにそうとわかる余裕はなく、咄嗟に拒絶してしまうことで、逆にクルーズの決心は固められた。
暴れるジャックを押さえつけ、彼の放ったもので濡れた指をつぷりと侵入させ
る。ビクリと揺れる反応
に下半身が疼き、クルーズは喉を鳴らした。
「だけどもう手遅れだろ? もう戻れないだろ? 許してくれなんて言わない。
今だけ俺を受け入れてほしい」
ジャックが、絶望と恐怖が入り混じった瞳で見つめてくる。
その青に耐えられずに視線を外すと、クルーズはジャックの身体へと溺れて
いった。