But I, being poor,
have only my dreams :
I have spread my dreams under your feet ;
Tread softly
because you tread on my dreams.
澄んだ眼差しで、その人は。
一つ一つの言葉を慈しむように。
あの日、私に「夢」というモノを与えた。
私は殺したのだ、その詩を読んだ人を。
エロール・パートリッジ。
マイ・パートナー。
someday,we'll laugh together
ガラス窓に指を滑らせる。
透明の壁越しに見える街は、午後の強い陽光に照らされていた。しかし外に
出てみれば、その祝福は
偽りで、吹き抜ける風が思いのほか冷たいことに気づ
くだろう。理想と現実も、そのようなものだ。厳しい
現実の前では、明るく輝
く希望を実感することは困難だ。
「それでも確かに太陽は存在し、光は射しているんだ…」
ユルゲンは、細身の身体を翻して窓際から離れた。目の下には濃い隈が影を
落とし、頬は疲労にやつ
れていたが、その瞳は生気に満ち溢れている。自身を
鼓舞するように奥歯を噛み締め、デスクに戻る。
そこには、解決を待つ様々な
問題が積み重なっていた。一番上のプリントに目を通し始めたところで、ド
ア
がノックされた。返事をせずとも、勝手知ったる様子で扉が開かれる。彼との
付き合いも、もう一年に
なるのだ。そのことにユルゲンは驚き、微かに溜息を
ついて顔を上げた。
「やあ、ジョン」
「ユルゲン。呼ばれたと聞いたが」
微かに頷いて挨拶に代えると、ジョン・プレストンは単刀直入に用件を尋ねた
。まったく、この怜悧な美
貌の同士は、愛想というものがまるでない。
ユルゲンは苦笑しながら、これから言うことをジョンが聞いたら、どう反応
するだろうか?と内心面白がっ
た。この提案はユルゲンの独断で、ジョンへの
純粋な好意であり、自分以上に多忙な彼への休暇申し渡
しでもあった。
「そうなんだ。実は、君に行ってもらいたい場所があってね」
「渡されたスケジュールでは…」
「ああ、違うよ。別件だ。君には明日から一週間、《フリーダム》の守護神で
なく、交渉人になってもらいたい」
ジョンは軽く眉根を寄せて疑問を示した。
無表情な彼に臆することなく、ユルゲンは話を続けた。
「ミドル・アースへ行ってきてほしい」
「…連絡が取れたのか」
声に、わずかに驚きが含まれている。
「なんとかね。しかしまだ確約は取れていない。アナログな連中なんだ、書類
のみでは信用してくれない」
「それで交渉人が必要というわけか。だが、他に適任がいるだろう」
「救世主たる君以上の適任なんていないよ。大歓迎を受けるだろうな」
ユルゲンの声音には、面白がるような響きが含まれていた。
そこでやっとジョンは彼の意図に気付いた。存在の有無も怪しかった場所と
連絡が取れたという時点で、
交渉はほぼ成立しているに違いない。ジョンの役
割は挨拶程度の面会というわけだ。
「資料は君の家に送ってある。明日9時にエリア32まで行ってくれ。あちら
から案内役が来るそうだ」
「ユルゲン、私は…」
「フリーダムの文明開化だ。一足先に、理想都市を見てくるといい」
有無を言わせぬ口調で締めくくると、ユルゲンは書類へと向きなおった。