無骨で大きな手が、細く骨ばった身体を撫でまわす。ふと、腰に巻かれている物に気付き、その手が止まった。
急に止まった手に何事か、とでも言いたげな目つきでグレイは目の前の男を見上げる。 目の前の男、ガラハドは、帯締めに手をかけ慣れない手付きで結び目を解こうとする。グレイは、その大きな手が自分の腹辺りで蠢いている様子を熱っぽい目で眺めていたが、いつまで経っても解けないのをじれったく思い、その手をぞんざいに払いのける。ちらり、とガラハドを見上げ、見せつけるように、ゆっくりと自分で帯締めを解いていく。固く結ばれていると思われたそれを意外とあっけなく解けた。
次に帯に手をかけ、それをまわし、背中にあった帯の結び目を前に持ってくる。内側から結び目を緩め、帯を解いていく。締め付ける物が無くなった所為か、グレイを纏っていた白い衣服が肌を滑り、胸元を晒す。それを気に止める事なく完全に帯を解き、用が無くなった帯を床に放り投げる。

普段、あまり日に晒されない首筋と胸元は蝋燭の明かりと受け、ぼんやりと白く浮かんだ。 その明かりに照らされた鎖骨は、骨の在り処をあらわに浮き上がらせており、それ見て、痩せているなと改めて思う。まじまじと首筋を見つめていると、ガラハドのわき腹をグレイが拳で軽く小突く。
見るなという事か、それとも急かしているのか。眉を潜めた表情からはどちらとも付かないが、どちらにしても、これから始まる事は一つに変わり無い。 細い手がガラハドの背中に回され、薄い唇が遠慮がちに口元へ寄せられる。

やがて、半開きになっていた窓から流れてくる風受けて、蝋燭の火が音も無く消えた。



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