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会
話
『……まったく君は…なぜいつもいつも自分の幻覚で済ませますか』
『こんなにしょっちゅう現れてるのに月は完全無視してるからな、お前のこと。ほんとに仲悪いな』
『リューク、彼は助かりますか』
『助かる。まだ死ぬときじゃない』
『そうですか』
『残念か?それとも安心したか』
『半々、てとこですかねえ。ところであなたがた死神としては、これから少しマズいことになるのでは?』
『へ?』
『数万単位の人間が死ぬ。夜神月の計画がたった今、発動しました。いくらデスノートで名を書かれた者の死は他人を巻き込まないとはいえ、複雑にからみあった犯罪組織のバランスを崩すことになる。デスノートの力が及ばないところで血が流れ、被害は拡大するでしょう。あなたがたの糧となる人間が減少しますよ』
『……いやー、大丈夫じゃね?? 月は殺す人間を選ぶけども、俺らは選ばねえもん』
『………タチが悪いですね、この死神は』
『人間の価値観で死神を観るとそうだろな。お前、死んで長いのにまだそんなこと言ってんのか??』
『ええまあ。執念深さは生来のものでして』
『なあ、月はなんでニアってやつを殺さなかったんだ?』
『分りませんか?』
『うん。分んねえ』
『じゃあ、見続けるんですね。でもこれだけは言っておきますか、月くんは見付けたんですよ』
『何をだ?』
『それがヒントです。はた迷惑な話なんですが』
『面白なことだなっ?』
『……私、死神がこんなにも無邪気な存在とは思いもしませんでしたよ。もっとこう重厚な厳格さを持っているかと』
『だからそれは人間の勝手な価値観だって。そんなもん押し付けられたって俺たちが知るかよ。頭の固いやつもいるけどな』
『…月くんがノートを手にしたのはまったくの偶然、たしかそう言ってましたね』
『おう。適当に放り投げただけだ。まさか一発目でこんな面白なことになるとは思わなかった』
『無責任極まりないとはいえ、あなたが起こした偶然には感謝していますよ。生涯を掛けた勝負ができた。こんな人間に出会えたのは奇跡に等しい』
『でも死んじまったな。それでもいいってか??』
『勝つ気ではいたんですがねえ。それでもただ柵に縛られて生きながらえるよりは有意義でした』
『満足したんなら、とっとと次に行けばいいのによ』
『気になるじゃないですか、夜神月の可能性が』
『結局、お前も俺もおんなじだな』
『そういうことですかね』
08.05.07
あとがきというか補足です→■
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