「…忘れていたんだよ。調べものが多くてね。全学年が昨年度の内容から始めなくてはいけないし」
食欲自体、無いんだけどと溜息をつくと、フォークを手にした。
「これを全部?」
「そうだ。自分が担当する教科が、教科書を読むだけではないことくらい分かっているだろう」
「…去年のこの教科、いったい何やってたんだい?」
「指導記録を見ていないのか」
「ベストセラー作家、ロックハート氏のファンクラブ活動記録なら」
少し呆れているような声。
「しかも本人主催ときていた」
昨年度の数々の騒動を思い返したのか、スネイプの表情がいっそう険しくなった。
「よく君も他の先生方も我慢していられたね」
「それどころではなかったからな」
「大変だったみたいだね」
労うように言ったルーピンの顔を見やる。もそもそと食べ物を口に運んでいる。味わっているようには見えない。
その向こうで校長が席を立とうとしているところだった。
「ではお先に」
二人は扉に向かう校長に会釈した。
そして周囲に他の教諭たちもいなくなると、ルーピンが大きく息をはいた。
「………緊張した。落ち着かないね、この席は」
「慣れろ」
「はいはい」
にべもない言葉にも臆した風もなく笑った。
「……お前、空きっ腹であの劇薬を飲むつもりだったのか」
「あ…やっぱり良くないよねえ。…え?あの薬のことを知ってるの?」
「民間だがあれ専門の研究所につてがある。サンプルも入手した」
「じゃあ、作ってくれるんだ。良かったあ。」
「お前に研究室を使わせる気はない。一時間もたたずに破壊されるに決まっているからな」
「それは言えてるかもねえ。昔から薬学は苦手だったから。どんな材料を入れても結果はいつも爆発物ときてたし」
「笑うなっ。その巻き添えをいつもくらっていたんだ、こっちは」
「迷惑そうなのは分ってたけど、あえて無視してたよね」
「お前絡みのトラブルは、奴等にも相応の被害が及んでいたからな。何故助けてやらねばならん」
「……」
「何がおかしい」
「いや、君が今言った同じことをジェームズが言ってたのを思い出した」
「何だとっ」
「『リーマス、悪いけど薬学は自力でガンバってくれ。ヤツの傍で。筆記試験のヤマなら俺が完璧なのを教えるから』ってね」
「……野郎」
「ごめんごめん。これで機嫌なおして」
「…ルーピン。何だこれは」
「魔法省謹製、脱狼薬の最新資料、その他もろもろ」
「これをどうやって」
「あ〜御心配なく、足はつかないよ。きちんと手続きを取って持ちだしたことになってる、書類上では」
「書類上では?」
「うん。書類上では」
「これ以上聞かん方が良さそうだな…相変わらずの手癖の悪さだ」
「やだな〜。これが無くなったからって誰が困る訳でもないし」
「お前ら人狼病患者が困るだろう」
「困らない」
「言いきったな」
「詳しくはその資料をどうぞ。スネイプ教授」
別サイトで書いていたものその2。
ちょっとセリフばっかりですみません(^^;)
2004.10.31
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