再会
『……友達でいてくれてありがとう…』
卒業の日、校門を出たところで、ふいに立ち止まった友人に振り返る。淡い鳶色の髪が俯いた顔を隠していた。
『どうしたんだよ、これからジェームズ達と合流して〈三本の箒〉で宴会するってときに』
友人が何を言いだすのか予想できただけに、言わせまいと腕をつかもうと歩みよる。しかし逆に捕まれた。
『僕はもう行くよ…もう、会わないだろうけど…忘れないから…この呪いのせいで自分がヒトであることを忘れても、君やみんなのこと忘れないから…』
どうか幸せに、泣きながら言い終えると姿くらましで消え去った。
腕に捕まれた感覚だけを残して――。
目が覚めた。
昨晩から今日について、起きた事柄を思い出してみる。
ワームテールを捕まえた。
逃がした。
魔法省に捕まった。
ハリーとハーマイオニーという女の子に助け出された。
夜が明けて、とある山の中腹に見つけた洞窟に飛び込んだ。
飛び込みついでに睡眠。
バックビークにつつかれる。
そして。
「やあ、おはよう。昨日はおつかれさん」
「………???」
自分を覗き込んで微笑む男が一人。昔よりも色の淡くなった髪、瞳も同じ色をしている。優しげな顔立ちだけは昔のままだ。
昨晩、10数年ぶりの再会を果たした友人だ。残されたたったひとりの親友。
記憶が確かなら、今日は平日、なぜに勤め人でもあるこの友人がここにいる?
「うん。辞めた」
顔に出たのか、友人は正確に心のうちでつぶやいたことを読み取り、苦笑した。
「人狼だということがバレてね。全校生徒に。吠えメールのターゲットになる前に出てきた」
穏やかに笑う内容ではない。
何と言葉を継げようか逡巡していると、きっぱりと言った。
「いいんだ。もともと1年と決めていたから」
目の前にすとんと座り、安堵のため息をついた。
「それにいろいろなことがありすぎて落ち着いて考えてみたいと思った。…君とゆっくり話したかった」
遠慮がちに、それでも柔らかく微笑んだ。
自然と腕がのびた。今度は逃がさないように言葉よりも先に動いた。そしてあのときのように腕ではなくその枯れ木のような身体を抱きしめた。
驚いたような気配を見せたが、ゆっくりとその腕を背に回した。
「……それなら、もう離れるな。お前を勘だけで探せるのはホグワーツとホグズミート周辺だけだ」
「もう、私はここにいる。だから君こそ無茶して突っ走るな」
昔、学生のころに何度も言われた言葉をまた聞いた。少しむっとしながらも、嬉しさが込み上げる。
また会えた。またこうして近くにいる。
静かに離してお互いの顔を見る。
自然と笑いが込み上げた。
離れない。離れているから余計な誤解を産む。
そして、二度と互いに疑わなくてもいいように。
いろいろ書いていて、省いたらなんか短くなった…
別サイトでもいちおうハリポタを書いたんですが、
そっちはスネイプ先生が目立ってます。ルーピン先生との
やりとりが楽しい3巻話。なんかちがうぞ(^^;)
お暇なかたは探してみてください。リンクは張ってませんが
ヒント(のヒント)はホームページアドレス。
2004.10.1
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