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LAST 2007-03-01 14:51
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片翼な気持ち、両翼な気分〈第一回企画裏テーマ小説 テーマ『片方だけの翼』〉
 健太郎は机にひじをつき、窓の外を眺めていた。ああ、今日もいい青空だ、浮かんでいる雲なんて綿菓子みたいで食べちゃいたいや、なんて気をまぎらわせながら。
 それというのも教室内のひと隅で展開されているものを気にしないようにするためだった。極力なにげなさを装って、ぎしぎしと首を教室中央に向けると、楽しそうに笑っている春日井萌美さんとええかっこしいの斉藤駿介、その他数名の姿が見れた。昼食後、春日井さんが数人の友達とひっそりと会話を楽しんでいたところ彼が大げさな身振りでもって割り込み、話し込んでいるのだ。
 この高校に入学してから見ている、いつもの景色、いつものことだった。
 でも、そのいつものことに健太郎は納得がいっていなかった。本当なら自分が斉藤の位置にいるはずだ、いま彼がしているように気軽に春日井さんの肩をぽんと叩いたり、笑顔を共有していたはずだ、と。
 そうは思うのだが、健太郎の体は彼女に向けて動かそうとすると全身強化マシーンでも着込んだように、思うように動かせなくなってしまうのだ。ちょっと目が合っただけでも顔がかたまり目は見開いたまま、数秒はマネキンになっている。健太郎は自分が情けなくてしょうがなかった。
 春日井さんは決して目立つ部類ではなく、むしろ地味に属するひっそりとした女の子である。肩まである黒髪をそのまま流しているか、ちょっと後ろでひとつかふたつに縛っている。顔にもまるで化粧はしていなく、柔和な彼女の顔を隠すものはない。ただひとつ、赤色の縁の眼鏡のみが顔に色を添えている。それだけで十\分だった。
 彼女は人当たりもよく、クラス内外に友達が結構\いるみたいだった。
 それゆえに春日井さんに言い寄る男は数多く、斉藤駿介はその中で抜きん出ているのだ。彼にはかなわないとみた男子生徒がすごすごといなくなるのも何度も見ている。
 それに春日井さん自身が、まんざらでもなさそうな雰囲気だから。
 今日も話しかけられなかったな、と重い気持ちをため息と一緒に出そうとする。出るわけないけど。
 下校路にいる生徒はまばらで、少数と言っていい。その中をとぼとぼとローファーの足裏で小石をじゃりじゃり鳴らしながら歩いていく。見上げれば昨日よりは晴れた空。濃い水色と言っていいその中に、白い絵の具をたらしたような雲がうにゃりくねっている。視線を降ろせば、毎日行き帰りで見ている同じ風景。塀に囲まれた家家家。
 そして、いつもの不満の溜まった気持ちを抱えた自分、と結び、ため息をもう一度つこうとしたところで足を止めた。
 足下に小さな鳥がいた。そこは人通りの少ない道の隅っこだったので誰も気づかなかったのかもしれない。その青い小鳥は体半分をアスファルトにあずけるように横たわっている。座って様子を見ていると時折羽をばたつかせ、かん高い声を発する。そして横たわる。それを繰り返していた。
 体のどこかを傷めたのかもしれないと思った健太郎は小鳥に手を伸ばす。自分を攻撃する敵だと思ったのか小鳥は必死に声をだし暴\れる。健太郎は苦笑しながらそっと両手で抱え上げた。そして持った感じが変だと思った。小鳥の裏側を見ると、赤色に染まった反面が見えた。思わず顔をそむけそうになる。誰がこんなことをしたのか。どこかにひっかかってこうなったのか。原因はわからないが、傷を負って弱っている小鳥を放ってはおけないので家に運ぶことにした。
 発見が早く、健太郎のした応急処置の効果もあり、小鳥は早くも元気を取り戻した。けれど獣医の話ではもう飛ぶことなできないという話だった。
 空を自由に飛べなくなった気持ちってどんなだろうと健太郎は考えた。きっとつらいに違いない。つらいに決まってる。仲間たちは元気に楽しげに空を駆け回っているのに自分はずっと下の方で、ばたばたと跳ね回っているだけなのだから。
 何日たっても片方の翼を失った小鳥は飽きることなく、鳴き、元気に飛び回っている。たまにぱたりと倒れこみ足をばたつかせている。そんな姿を見ていると自然と笑みを浮かべてしまう。小鳥は自分の状況がわかっているのだろうか。わかっていてなお、こんなに元気に振舞っているのだろうか。もしかしたら大空へ羽をはためかせるために躍起になっているのかもしれないが、それでも気持ちを失っていないことには違いない。
 なぜだか健太郎は自分のことを言われているような気がしていた。俺は片側だけで頑張ってるんだ。お前はなにをしてる、ってね。そう思ったら苦笑し、うん、そうだなと思えた。
 翼はひとつじゃ飛べない。ひとつでも頑張ればなんとかなる。
 でも翼はふたつでひとつ。ふたつあれば世界が広がる。
 カゴの中の小鳥にありがとうと言って、立ち上がる。心に決めたことがあったのだ。
 
 翌朝の教室。まぶしい朝陽が射しこむ室内では早く来ていた春日井さんと数名の生徒がいた。あのうるさい斉藤もまだ来ていない。とあっては行動しない手はない。
 健太郎は自分の席に手早く荷物を置くと、自然な動きで春日井さんに近づくことができた。心も体も軽くなったようだ。
 彼女が振り返る。笑顔で「おはよ」と言ってくる。それに「おはよ」と返す。話の接ぎ穂を探し、懸命に言葉を重ねる。
 朝の空気の中、また違う空気が健太郎と春日井さんの間では広がっていた。とても心地よい。楽しい、そんな空間。健太郎がいままで欲しかった空だ、と思った。
 いま自分は空をはばたいているのだと。
 内心、ずっと彼女が僕のもう片方の翼になってくれればいいのにと思った。
 先のことはわからないが、でも春日井さんとずっと羽ばたいていきたいと健太郎は強く思った。

 〈おわり〉

****************

 なるべく短めに短めにと思って書きました。自分としてはうまくまとまったかなと思っています。
 今回は主人公の気持ちの流れはわかりやすいかと思います。気のせいだったらご指摘ください。
by 真崎鈴人 2006.06.05 19:49

RE:片翼な気持ち、両翼な気分〈第一回企画裏テーマ小説 テーマ『片方だけの翼』〉
往復特攻隊隊員の瓜です。
ええと、まず。
直さんじゃないけど、まじゃきのネーミングセンスに一本!です。
なかなかよろしいなと思います。

それと、内容ですが。
良いんじゃないでしょうか。
綺麗にまとまっていて、続きが読みたいなとか思ってしまいました。

んんー。
あと、これはかなり自論だけど…。
改行した方がもっと読みやすいかなと思いました。 
by 瓜畑 明 2006.06.05 19:49 [4]
RE:片翼な気持ち、両翼な気分〈第一回企画裏テーマ小説 テーマ『片方だけの翼』〉
ええかっこしい、って久しぶりに聞いたような気がしている直です、どうも。

うん、きれいに纏まっていると思います。書かれているように、心理も違和なく流れていると思います。

でも、良い意味でも悪い意味でも、きれいに纏まりすぎていると思います。淡々と話が流れているような、そんな感じでしょうか。

あと、今回もタイトルが素敵です。見習いたいと思います。

では。
by 2006.06.02 15:09 [3]
RE:片翼な気持ち、両翼な気分〈第一回企画裏テーマ小説 テーマ『片方だけの翼』〉
 こんばんは。日原です。
 拝読しました。
 この後の展開が気になるところです。こういうのを読むとそうなんだよなぁ、とか思ってしまいます。
 ただ、難を言えば三人称と一人称が混ざったような文体なのでこう、微妙に淡々とした感じがしてしまうのが少し残念だったように思います。
by 日原武仁 2006.06.01 21:02 [2]
RE:片翼な気持ち、両翼な気分〈第一回企画裏テーマ小説 テーマ『片方だけの翼』〉
キム兄です。

良いですね。
主人公の気持ちの流れは良く分かります。
起承転結もはっきりしていて分かりやすいですし、自然な感じがします。

ただ、最後に健太郎が春日井さんに話しかける場面はもっとドラマティックにした方が良かったような気がします。
同時に春日井さんのキャラクターが感じられるエピソードがあれば感情移入の度合いもよかったのかなぁ、と思いますが、この枚数でそれを求めるのは酷ですね(笑

真崎さんの文章についてですが、助詞(てをには)が複数重なっていたりします。
読点(、)の位置などを合わせて考えてみると、もっと読みやすい文章ができますよ。
by 木村 勇雄 2006.05.27 12:02 [1]
No. PASS


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