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作品公開掲示板

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LAST 2007-03-01 14:51
短編作品を募集してます。遠慮なくどしどし投稿下さい
深夜(第二回テーマ小説・お題「月」)
 愛とは何かを問い掛けたい気分だ。私の中に込み上げてくるものがそう訴えかけている。
 二歩、三歩と前に進み、そこで立ち止まる。家から三歩、だから散歩なんてくだらないことは言わない。ただそこで、込み上げてきたものが止まらなくなったのだ。
 声が漏れないように手で口を塞ぐ。しゃくり上げる喉を空いた方の手でつかむ。物理的な苦しみが嬉しい。
 その場にいられずにさらに足を進める。後ろを振り返る。灯りは消えていた。安心と不安が綯い交ぜになる。これはどちらの兆候?
 膝の震えが先に進めと命じている。とりあえず腰を下ろせる場所まで行こう。思いついたのは公園だった。暗闇に紛れて、思い切り高笑いしてやるんだ。私の決意は固かった。目標を定めることが、今一番の薬なのだと信じていた。
 側溝を一枚一枚、丁寧に踏みながら歩く。シシオドシのような空っぽの音が、夜空に鳴り響く。レーダーはいつでも精細だ。十年間のロックオンで逃げ場がないことは承知している。逃げる必要はない。逃げられない。逃げたくない。私は何を望んでいるというのだろう。
 街灯は定期的に私を照らしていた。その度に裸にされた気がして、胸元を両腕で抱える。そんなとっさの行動に、自問自答する。
「他に隠すところがあるんじゃない?」
「それはこの真っ赤なほっぺたのこと?」
 自答するつもりが自問自問になってしまう。問いかけはいつまでも続く。
「どうして隠さなくちゃいけないの?」
「恥ずかしいとは思わないの?」
「誰も見ている人なんていないのに?」
 誰も見ている人なんていなかった。私は一人だった。
 ブランコに座るのは遠慮した。あれに乗ると子供は喜ぶが大人は死にたくなる。それにスカートではいかにも具合が悪い。誰も見ていないのだが。
 代わりに滑り台の上に登った。私の視界を遮るものはなかった。全てが見通せると知ったとき、私の全身はレーダーになった。策敵、発見後は直ちに離脱せよ。内なる声はそう言っていたが、あの男の姿を見た瞬間、体の全てが機能停止することは分かりきっていた。
 夜風が頬に沁みる。熱さを感じていた分、気持ち良くはある。だけど、その分、痛みも増していた。
 自問自問している間に、涙は枯れていた。こちとら年季が入ってんだ、泣いてばかりもいられねえんだよ。また自分の中の誰かに説教している。私は一体誰なんだ?
 考えるのが嫌で、滑り台を滑り降りる。わざわざ滑り降りるってしとかないと、近頃の子供は走って降りたりするから困る。
 靴が滑り台の足元の砂場に埋まった。裸の足裏に小さな石の感触がこそばゆい。視線は頭上を向いていた。できるだけ視界を狭くしたかった。天上は闇だ。闇は天井と同じだ。何も見ずに済む。
 が、そこには豆電球が灯っていた。
 違う、月だ。ぼんやりと、天上に溶け込むように広がっている。折りしも流れ星が月の辺りから地上へ向かって流れていった。あの紐を引っ張ると、電球は消えてしまうのだろうか。
 流星は願いを叶える前に消えてしまった。月を消し去る方法は永遠に失われてしまった。しまった、ぜひとも頼みたいことがあったのに。
 月だ。
 私の頭の中が、その言葉で埋め尽くされてしまった。
 月だ。月だ。月だ。月だ。月だ。月だ。月だ。月だ。月だ。月だ。月だ。月だ。月だ。月だ。月だ。月だ。月だ。月だ。月だ。月だ。月だ。月だ。月だ。月だ。月だ。
 コピーアンドペースト。世の中楽になったものだ。だからこそ傲慢な考えを持つ人間が増えて困る。そう、例えば滑り台を走って降りるような。
 今の私を、どこかの誰かにコピーアンドペーストできないだろうか。
 傲慢な考えを持つ誰かに捕まらないように。
 月が私の頭を埋め尽くす。おどけていられなくなる。妖精のように消えてしまうことも、少年漫画の主人公みたいに強くなることもできない私はどうすればいい?
 消えてしまえ月よ。そうすれば私は逃げていられる。永遠に隠れていられる。
 できないのならば。
 できないのならば……。
 靴を脱いで砂を落とす。丁寧に、一粒も残らないように。背中は上手く叩けなかった。飛び跳ねて、落とせないかと試してみる。跳ねる度に頬が痛んだ。ちょっとやそっとじゃ、消えない痛みだった。
 公園を出る。また私は側溝を一枚一枚踏みながら歩いていく。家の灯りは消えたままだった。だけど、玄関だけは明るかった。
 私には、それが月のように思えた。

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 何て言いますか、意味が分からなかったらごめんなさい。
 ダブルミーニングが多数入っています。
 背景説明もあえて乏しくしています。
 そして、救いがない(いや、ほんの少しは……)作品です。
by 木村 勇雄 2006.06.20 02:19

RE:深夜(第二回テーマ小説・お題「月」)
日原さん、感想ありがとうございます。
確かにこの小説はかなり実験的で、分かりにくく作ってあります。
 分かりにくさは意図したものですが、やはり少々やりすぎたかな、と反省も感じますね。
アピールに関しては、盛り込んでません。
説教臭くなるのが嫌だったからです。
生活と暴力が諦観によって結び付いていることを表現したかったのですが・・・
テーマとしては、やはり重すぎですかね。
もうちょっと明るい話が書きたいです。
技術とはそれと感じさせないところに上手さの神髄があるのだと思います。
その点ではまだまだ勉強の必要ありですね。
by 木村 勇雄 2006.06.20 02:19 [7]
RE:深夜(第二回テーマ小説・お題「月」)
 拝読しました。
 こんばんは。日原武仁です。
 少し難しいな、と思いました。分かりにくいというのがより正確かもしれません。
 DVを主題に置いているのならば、それに対する何らかのアピールを織り交ぜても良かったのではないでしょうか? これは日原の感覚的なものなのかもしれませんが、ツールとして使うにはDVは少々重過ぎるように思いましたので。
 それから技術的な要素を詰め込みすぎてしまったように感じます。おそらくは試験的な試みの産物なのだと思いますが……。
 学ぶところの多い作品でした。
by 日原武仁 2006.06.19 21:05 [6]
RE:深夜(第二回テーマ小説・お題「月」)
感想、どうもありがとうございます。

>侍さん
ひらがな表記の「わたし」は確かに女性的な柔らかさを持っていますが、作品の内容と登場人物の性格に合わせて使わないと、やや軽い印象を持たれてしまいます。
この部分で女性と分かりにくかったのは、やはり私の描写不足ですね。

>直さん
改めて感想ありがとうございます。
裏技使われてしまったww
昨今は男性がDVの標的にされることもあるらしいですが、まだまだこの問題は女性特有のものですからね。
レーダーやシシオドシ・・・シニカルな表現って難しいです。もうちょっとここら辺上手く書きたいです。でも、直さんの感想を見るとおおむね成功のような気も。ありがとうございます。

ダブルミーニングはシュールレアリスムの発想です。
同じものに二重の意味を持たせて表現することですが、この作品では電球と月がその役割を担っています。
月には古来から女性の意味がありますし、家の外灯も同じく女性(主婦)の位置づけになりますから、その部分で結びつきます。
さらにそれが「消えてしまえ」と思うことは自分が消えてしまえと思うことにつながります。
だが消えない。コピーアンドペーストのところで自分が増幅され、存在を増し、逃げることができなくなってしまう。
結果、女性は家に戻り外灯を見る。
迎え入れるために点された外灯。
ですがそこには逃げられない存在としての自分も厳然としてあるのです。

と、自分の作品について語ってしまうのは悪い癖ですねww
直さんの感想、嬉しかったです。
by 木村 勇雄 2006.06.18 00:10 [5]
RE:深夜(第二回テーマ小説・お題「月」)
ども、西向くです。

性別のわかりにくさの問題です。
直さんの書き込みを見て思ったのですが、たしかに「わたし」とひらがなで表記すると女性っぽくなりますね。自分は、大人の女性でも「わたし」をあまりおかしく感じないので、そりゃあいいなぁと思いました。使おうw
by 西向く侍 2006.06.17 16:07 [4]
RE:深夜(第二回テーマ小説・お題「月」)
これはおそらく、苦しみから立ち直っていくような、そんな話なんだろうな、と思います。ですからそうだと勝手に結論付けて、感想を書いてみます。
どうも、直です。

確かに性別は、わかり難いかもですね。十代とかだったなら、俺とかあたしとかできるんですが、もう大人になってしまったなら、男の人も私と言いますからねぇ……。
でも、僕は初めから女の人だとわかってましたよ? ブログでテーマは「DV」だと書いておられましたから(裏技)。

例えば、三歩だから散歩のところや、なぜか突然出てきたシシオドシや、私はレーダーになった、索敵、や、コピーアンドペースト、世の中楽になったものだ、と言うところあたりで、雰囲気を和ませることに成功していると思います。それで何となく、立ち直っているな、とか思ったんでしょう。

で、ダブルミーニングが何なのかよくわからなかったりするのですが、スカートではいかにも具合が悪い、の後の、誰も見ていないのだが、はいらないような気がします。

でも、これは良かったです。素晴らしいです。それに、短かったですし(笑)
では。
by 2006.06.16 20:29 [3]
RE:深夜(第二回テーマ小説・お題「月」)
木村です。
どうも、ありがとうございます。

>最初の方は男
 うん、間違えても仕方ない書き方ですね。
 一人称の盲点でもあります。
 なぜなら、自分のことを「自分は女で」なんて言わないし、今回の場合は対人会話もないからです。
 ちょっと工夫が必要でしたね。

>SF
 直接的に表現しなかったのは、主人公の夫(?)に対する恐怖を表現したかったからです。
 あえて夫(?)も登場させず。
 できるだけ間接的に、おどけた言い方をしながら、彼女が自分の怯えを決意に変えていく様子が表現できてれば良いんですが……難しいですね、こういうのって。

 ありがとうございます。
 今回はけっこう五里霧中なので助かります。
by 木村勇雄 2006.06.15 21:10 [2]
RE:深夜(第二回テーマ小説・お題「月」)
ども、西向くです。

読みました!


ドメスティックバイオレンスがテーマですかね?
最初の方はなぜか主人公が男だと思いこんでました(^^;
スカートうんぬんのくだりで、やっと女性だと気づき……まぁ、これは自分だけかもしれません。

「レーダー」や「ロックオン」や「赤いほほ」がさっぱりわからなくて、単純な自分は本気でSFなのかと思ったりもしました。そして、最後に納得。もう一度読み返しましたよ。
何度も読み返すとまた味が出てくる良い作品だと思います。
by 西向く侍 2006.06.15 19:17 [1]
No. PASS


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