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作品公開掲示板

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LAST 2007-03-01 14:51
短編作品を募集してます。遠慮なくどしどし投稿下さい
スタートまで(第一回三題話『長い坂道』『夕暮れ時』『ショッピングセンター』)
 このショッピングセンターでは毎月五日(ゴーの日)、カートレースが行われている。
 重いものなどを買うときなどに使う、あのカートである。
 このレースは今年の一月から始まったもので、今日、四月五日で四回目になる。
 毎回百人以上の参加者が集まるのだが、それを聞いていつも僕は首を捻ってしまう。
 まず、危ない。レースのルールは、ただカートを使って十キロのコースを走るというシンプルなものだが、カーブのところにさえ、クッションすら何も置いてない。さらに、責任は自分で取ってください、ときている。第二回の時にガラスを割ってしまった人がいたらしいのだが、その修理代を何と自分で払ったらしい。さらに第三回の時には骨折をした人がいたのだが、その人も治療費は全額自分で負担したらしい。……これは確実にぼったくりだ。でも、その二人は今回も当然のように参加している。骨折をした人はまだギプスが取れたばかりと言っていたのに、大丈夫なんだろうか。
 さらに、景品がしょぼい。優勝した人には、トロフィーと千五百円分の買い物券と賞品。二位の人には賞状と千円分の買い物券と賞品。三位の人には五百円分の図書券と賞品。五百円分の図書券って……小学生かっ! ちなみに、景品は毎回違う。第一回は、いち、わん、犬、ということで犬のぬいぐるみ。第二回は、に、ツー、つう、痛、ということで痛み止め。第三回は、さん、スリー、スリ、ということで防犯ブザー。で、第四回目の今回は、よん、フォー、ということで、今大人気の某腰振り芸人バージョンの黒ひげ危機一髪。ちなみに余談だが、この芸人はすぐに消えると思っていたので、それが少し悔しかったりする。で、次回の第五回には、僕は、ご、碁、ということで囲碁セットだろう、と思っていたのだが、その日は五月五日で、ゴーゴーの日らしく、何だか景品がすごくなるらしい。まぁ、それでも大したことはないだろうと思うのだが。

『スタートまで、あと、三分です。スタートまで、あと、三分です』
 と、僕はそのアナウンスで我に返った。いつもこうなのだ。スタート直前になると、どうしても走ることから逃げようといろんなことを考えてしまう。
 ふぅー、と息を吐く。汗ばんでいた手をズボンで拭い、カートを握り直す。
「あれ? やっぱり今回も緊張してるみたいじゃん。弱虫策士?」
 隣から聞こえたその声に、僕は苦笑して言葉を返す。
「だから、その呼び方は止めよーよ。いつも言ってるでしょ? 暴走特急」
「お互い様だろーが」
 暴走特急も、僕に苦笑を返す。ちなみに僕たちが呼び合っている名前は、表彰された人だけに与えられるあだ名みたいなもので、このレースを主催している社長が、レースの様子を見て勝手に決めているようだ。暴走特急は、いつもスタートと同時にカートを蹴り飛ばし、あとは自分で走って、ゴール寸前になってカートを掴んでゴールするため、そう名付けられたのだろう。それを聞いたとき、僕は思わず何度も頷いてしまったほどだ。ちなみに僕の弱虫策士とは、僕がまったくスピードを出さず、脱落者待ちをしているためだろう。でも、それだけでは三位にはなれないのだ。一応、安全なところではスピードを出すようにしている。……まぁ、弱虫策士がピッタリだということは否定できないのだが。ちなみに暴走特急は二位で、それよりも更に早い奴がいるのだ。そいつの名前は――
「そろそろお喋りはお止めください。もうじきスタートです」
 ウルトラマンカート。こいつのことだ。こいつはいつもカートの下の荷台にうつ伏せになり、手を伸ばして床を掻いているので、こういう名前になったのだろう。僕も暴走特急も、一位のこいつにだけは頭が上がらないのだ。こいつは第一回の時からずっと一位をキープし続けている。暴走特急も僕も、ずっと二位と三位にいるのだが、いつまで経ってもこの順位が変わることはない。
『スタートまで、あと、三十秒。……スタートまで、あと、二十五秒』
 ふぅー、と僕が緊張を解すようにゆっくりと息を吐いていると、いつも思い浮かぶ光景がある。それはこのレースが終わって表彰式の時、一位になって表彰台に上っている自分の姿だ。いつもは後ろからそれを見るだけなのだが、その時、ちょうど夕日が出ていて、ウルトラマンカートがシルエットみたいに見えるのだ。その瞬間が僕は好きだった。それでいつも、僕はそこに上ろうとレースに出ているのだ。おそらく参加しているほとんどの奴が、そうなんだろうと思う。
 と、そこでまた僕の思考は中断された。
 スタートまで、あと、十秒。僕はもう一度ふぅー、と息を吐く。どこまでも続く、長い坂道のコースを見つめる。

 僕たちは今日も走る。
 怪我をするかもしれない。もしかしたら、死ぬことがあるかもしれない。
 でも、それでも良いのだ。

 走り出したら、もう止まれない。


――――――――――――――――――――
……正直、これはどうなんでしょうかね。
けっこう前から書き終わっていましたが、もう何日も公開するか迷ったりしていました。
結局、感想を貰えなきゃ何も変わらないということで、公開します。
どんどん批判してやってください、お願いします。
by 2006.07.08 14:22

RE:スタートまで(第一回三題話『長い坂道』『夕暮れ時』『ショッピングセンター』)
 感想、ありがとうございます。

>侍殿
 気に入ってくださり、嬉しいです! ラストの言葉は、自分でも書きながら惚れ惚れしておりました(恥)
 西向くランキング、一位!? ありがとうございます!! そんな栄誉ある賞(?)を頂けるとは……。その名前に恥じない作品を、書いていきたいです。

>キム兄
 そ、そんな眼差しを向けないでください!(髪をかき上げながら)
 そうなんですよねー。僕もガキの頃はカートを押しながらウィリーとかやってました。今思うとものすごく恥ずかしいのですが。
 そうですそうです。スピード感を出し、テンポの良い会話文ですよねー、うんうん(意識無し)
 ちなみに、初めは42.195キロにしようと思っていたことはナイショです(何)

>日原さん
 そうですよねー、この熱さ! 情熱! 伝わったのなら、嬉しく思います。
 一応百人以上と書いてたのですが……、ごちゃごちゃして分かりませんね(汗)。次は気をつけますです。

 本当に、自分ではどうなんだろうなー、と思っていたので、嬉しいです! この言葉を励みに、精進していきます。
by 2006.07.08 14:22 [4]
RE:スタートまで(第一回三題話『長い坂道』『夕暮れ時』『ショッピングセンター』)
 拝読しました。
 こんばんは。日原武仁です。
 なるほど、そう来たか。て、感じですね。このある意味無意味なことに命をかける、みたいな熱さが実は日原は好きです。あと、参加人数と言うか、規模みたいなことが書いてあったら良かったな、と思いました。
by 日原武仁 2006.07.05 23:16 [3]
RE:スタートまで(第一回三題話『長い坂道』『夕暮れ時』『ショッピングセンター』)
 ありですね。
 いいですよ、この作品。

 むしろそう来たか、と発想の豊かさに羨望を覚えました。
 ショッピングセンターのカートでレース。
 まさに幼い頃に夢見た物語です。

 結局5月の賞品がなんだったのか分からずじまいです。気になります。

 技法的には改行を少なくしてスピード感を出し、なおかつテンポの良い会話文と決め台詞がきちんと決まっているところが素晴らしいです。

 一つだけ気になったのは。
 カートで十キロはちょっと辛いです。
by 木村勇雄 2006.07.02 23:32 [2]
RE:スタートまで(第一回三題話『長い坂道』『夕暮れ時』『ショッピングセンター』)
ども、西向くです。
読みました!

これ、自分はかなり好きです。
馬鹿馬鹿しい内容なんですが、根っからのコメディじゃないところが良いです。むしろ自分はかっこよさを感じました。
「走り出したら、もう止まれない」
ラストがこのフレーズで、ぐっと来ました(^^)

惜しむらくは、自分としてはショッピングセンター内でのレースという設定がほしかったんですが、長い坂道を登場させるためか、屋外レースだった点にちょっとがっくりw

作品公開場にある作品の中で、現時点で西向くランキング・1位です。
by 西向く侍 2006.06.19 22:38 [1]
No. PASS


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