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作品公開掲示板

BACK BBS  COUNT:16768
LAST 2007-03-01 14:51
短編作品を募集してます。遠慮なくどしどし投稿下さい
逢魔が刻(第一回三題話『長い坂道』『夕暮れ時』『ショッピングセンター』)
 男は3階建ての巨大なショッピングセンターの駐車場に立ちつくしていた。とくに何をするわけでもない。ただ飄然と空を見つめ、立ちつくしていた。
 ふと風がひるがえり、男の横顔を荒々しく撫でていった。はげしく波打つ黒髪の合間に、つめたく冴えた黒瞳が見え隠れする。
 風がひとしきりそのダンスを踊り終えても、男はやはり微動だにせず立ちつくしていた。空を見つめて。
「ついに見つけた」
 声は横合いから、鋭いナイフのように。
 それをどう受け止めたのか、男がゆっくりとその視線をずらす。視界のすみに少年の姿をとらえたとき、唇の端が喜びにつりあがった。
「たしか名前は……拓弥、だったか」
 少年は自分の名を呼ばれたことに少なからず驚いたようで、すぐに訊き返してきた。
「僕の名前を憶えていたのか?」
「ああ、憶えているとも。君の家族のこともね」
 男の台詞を聞いた次の瞬間、少年の全身から怒りの感情が吹き出した。少年はすばやく半身の体勢になり、拳をかまえた。
 対して、男は立ちつくすだけ。
「復讐のつもりだろうが、傷ついた身体で私に勝てると思っているのか?」
 たしかに男の言うとおり、少年は満身創痍だった。特殊繊維で織り込まれた着衣は、いたるところが裂けており、そこからのぞく地肌は血の赤に染まっている。ここに来るまでに<COPY>たちから受けた傷だろう。しかし、少年は生き残っていた。滅ぼされてしまったのは<COPY>たちの方。
 だからと言って男の態度が変わることはない。男はつづける。
「それに……」
 そこでようやく、少年の方へと身体ごと向きなおる。斜陽にさらされ、白皙の頬があわく色づく。
「……もうじき陽が暮れる。夜の私たちを滅ぼしたことはあるのか?」
 さっと少年の顔面から血の気がひいた。敵を前にして隙を見せるのはタブーだったが、男から目を離しあわてて太陽を見ている。
 少年の拳がわずかに下がった。恐怖が怒りを凍りつかせていく。
 少年を含め、<視た者たち>の感覚器官は常人の数倍の能\力を発揮する。視覚だけでなく、嗅覚や触覚によって落日を感じることができるはずだった。男に対する怒りの念がそれを鈍らせてしまったのだろう。
「残念だ。初歩的なミスだよ。もはや君に勝機はない。さぁ、選びたまえ。人として死ぬか、私たちの仲間となり生きるか?」
 男はもう800年も前から幾度となくくりかえしてきたその台詞を、いつもと変わらぬ美しい笑みで口にした。そして、相手の返答に対するその後の行動も、800年前から決まっている。
「死ぬか仲間になるか、だって?」
 少年が男をにらみつけた。恐怖や怯えは、いつの間にかその瞳から消え去っていた。
「おまえは、父さんや母さん、妹を殺した。そのときに、仇を討つと決めた」
 あらためて拳を構\えなおす。
「<ORIGINAL>を……おまえを滅ぼすことで仲間たちへの手向けにもなる!」
 言うが早いか、男に向かって走り出す。走るスピードと全体重と、右腕の筋力のすべてを乗せた一撃。狙っているのは真っすぐ心臓だ。
 男は楽しそうに「ふっ」とだけ笑うと、軽く地面を蹴った。
 少年の右腕が空を切る。空を見上げたときには、すでに男の姿はショッピングセンターの屋上まで飛んでいた。
「逃げるのか!」
 激高して叫ぶ少年を見ながら、男は、当たり前のことながら、自分が空を見上げていないことに気づいた。建物の屋上から地上を見下ろしている。全身の肌が総毛立ち、気分がさらに高揚するのがわかった。
 眩しい空を見上げながら、夜を待ちつづける生き方。たとえ夜がおとずれたとしても、また朝がやってくる。かならず月は昇ってくる。しかし、それと同じように太陽もまたかならず昇ってくるのだ。
 幸せが約束され、不幸せもまた約束されている。そしてその割合は半々。
「……たまには見上げるのではなく見下ろすのもいい、か」
 ちいさくつぶやいて、男は少年を見つけたときのよろこびを思い出していた。
「拓弥! おまえの跳躍力ではここまで来れない。おまえの言葉を借りれば、私はもう逃げることに成功している」
 拓弥の顔が苦渋にゆがむのが見えた。
「だが、チャンスをやろう」
 男がふたたび跳躍する。今度はほんの1メートルほどの高さであったが、驚愕すべき変化はその足下で起こっていた。いつの間に切れ目を入れたのだろう。轟音を立てて、3階建てのショッピングセンターが真後ろに倒れていく。
 垂直に立っていた建物がだんだんと角度を落とし、ふたたび屋上に着地した男の位置もそれにしたがって低くなっていった。
「さぁ、来い。拓弥」
 もはや少年は、次第に地面と平行になりつつある長い上り坂の、その起点に立っていた。少年は迷うことなく建物の壁面に足をかけた。眼光は鋭く、男を射抜いている。
 男はその様子を見てとると、ゆっくりと夜の空気で肺を満たした。
「私に過分な幸せを、もしくは……過分なる不幸せを」
 唇の端はやはり喜びにつりあがっていた。

−−−−−
すんません。締め切り過ぎました(><)
仕事が忙しくて推敲の暇がなかったですよ。
とにもかくにも、第2作目です。よかったら感想をお願いします。
by 西向く侍 2006.07.26 22:03

RE:逢魔が刻(第一回三題話『長い坂道』『夕暮れ時』『ショッピングセンター』)
 拝読しました。こんばんは。日原武仁です。
 長編の中のワンシーン、という感じです。「ショッピングセンター」が「長い坂道」になるのはさすがです。
 バトルシーンを丸々削ってしまったとのこと。その辺を今度は読んでみたいです。散りばめられた設定がやっぱり気になりますです。
by 日原武仁 2006.07.26 22:03 [5]
RE:逢魔が刻(第一回三題話『長い坂道』『夕暮れ時』『ショッピングセンター』)
みなさん、感想ありがとうございます。

>木村さん
ずいぶんと苦労しました……(^^;
文字数制限がある作品を初めて書いたので、削りまくりの修正しまくりで、めちゃくちゃ時間かかりましたよ。
文字数制限があると想像以上に大変ですね。

>瓜さん
「ふっ」ですね、了解!
言われてみれば、たしかにそうだ。

>路傍さん
まだシェイプアップできるところがありますか?!
最初に書き上げたとき、大幅に字数オーバーをしていて戦闘シーンをまるごと削ったのですよ(^^;
ちなみに、あまり深く考えずに書いたのできっと長編は書けませんw
by 西向く侍 2006.07.06 21:44 [4]
RE:逢魔が刻(第一回三題話『長い坂道』『夕暮れ時』『ショッピングセンター』)
主人公である“男”の、人ならぬ身の醸し出す嫌みったらしさがよく出てて良いですね。
これぞ悪役というか。
展開も無理なく、ショッピングセンターを崩して『長い坂道』を演出したところは見事です。

気になった点ですが。
「長編のワンシーンを切り抜いた」風の作品ですが、2000文字制限はあったのかな?
もしあるなら、掌編用にシェイプできそうなところがちらほらと。
固有名詞とか具体的な数字とか、顔を出してる設定が気になるのですよー。
この設定で長編書いてすっきりさせてくれませんか?w
by 路傍の 2006.07.03 23:51 [3]
RE:逢魔が刻(第一回三題話『長い坂道』『夕暮れ時』『ショッピングセンター』)
普通に面白かったですよ。
格闘の一場面を切り取ったような書き方。
綺麗です。

一つ気になったのは『「ふっ」とだけ笑うと』って処。
「ふっ」の「」は必要ないと思いますよ。

全体的に面白い作品です。
これをバネに上達されるであろう次の作品が楽しみです。
by 瓜畑 明 2006.07.03 19:33 [2]
RE:逢魔が刻(第一回三題話『長い坂道』『夕暮れ時』『ショッピングセンター』)
 うん、初回よりもすんなり読めました。
 侍さんにはこういった文体の方が似合っているような気がします。
 まあ文体についてはまた後日話すとして。

 文章に違和感はなかったです。
 ただ少し、肩に力が入っている感じはしますね。
 もう少し楽に書いてもいいと思います。

 話の流れはスムーズですね。
 制限がある中でこれだけ書ければ十分だと思います。
 主人公の男は吸血鬼ですか?
 とすると視た者たちとはセコンドサイトの持ち主か、半獣人なのかなぁ、と考えたりしました。

 適度に背景も隠してあって読みがいもあります。
 かといって辻褄が合わないほどに隠されているわけではない。
 過不足のない判断だと思います。

 ずいぶんと苦労された跡が見える作品でした。
by 木村勇雄 2006.07.03 19:19 [1]
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