■ 犬夜叉〜折れた飛来骨〜 ■





「もう、俺は誰とも組まねえ・・・」

これが犬夜叉の第一声だった。

あまりに不意の言葉に、弥勒も珊瑚も七宝も言葉を失った。

「どういうことです・・・それにあの日、かごめ様と何があったのです」

弥勒の問いに犬夜叉は振り向きもせずに一言・・・



「もう、二度と会えねぇよ・・・」



かごめに何があったのか・・・

犬夜叉はその全てを思い知らされたのに、慰めの言葉もかけられなかった。

かごめは枯れ井戸から現代へ帰ってしまった。

ただ、「ごめんね」とだけ言い残して・・・



「本当に、もう会えないのかよ・・・」



犬夜叉は拳を地面に叩きつけて、へたり込んだ。

その様子を見つめる弥勒と珊瑚は顔を合わせた。

「かごめちゃんに何があったのかくらい教えなさいよ・・・犬夜叉」

「そうです。我々は仲間ではありませんか」

「うるせえ!」

犬夜叉は背を向けたままだ。

「お前ら、俺の前から消えろ! 今、人間って奴らが心底嫌いになったぜ」

「犬夜叉・・・」

慰めようと近づく珊瑚の肩を弥勒が止めた。

「珊瑚・・・犬夜叉を一人にしてあげましょう。一人で考える時間が必要なようです」

「でも・・・かごめちゃんのことも・・・」

「無理に聞き出さない方がいいでしょう。私たちの力が必要になったその時に、自分から話すはずです。だから、今はそっとしてあげましょう」

弥勒にそこまで言われれば、珊瑚も頷くしかなかった。



「では、犬夜叉・・・私たちは四魂のかけらと奈落の城の場所を探しに行きます」

弥勒はそれだけ告げると、犬夜叉の前から去った。











雲ひとつない青い空が広がっている。

山の獣道に他に人の気配もなく、ただ鳥の鳴き声だけが響いていた。

弥勒と珊瑚を先頭に、雲母と七宝が続いて歩いていた。

犬夜叉とかごめの姿はもちろんない・・・二人が欠けただけで、とても寂しく感じる。

「かごめちゃん・・・心配だよ・・・」

隣を歩く珊瑚の沈んだ声に、弥勒はため息を漏らす。

「犬夜叉が事情を説明してくれない限りは、我々は事実を知ることはできません。なにしろ、かごめ様の国に行けるのは、かごめ様と犬夜叉だけなのですから」

「しかし、犬夜叉のヤツを一人にしておいて大丈夫なのか?」

後ろを歩く七宝の言葉に弥勒は顔を曇らせる。

「それなんですが・・・一つ、気になることを言ってましたね」

「気になること?」

「人間が嫌いになったと言ってました・・・どういう意味なのかなと思いまして」

「法師さま、やっぱり、犬夜叉を一人にしない方がいいんじゃ・・・」

珊瑚が言いかけた瞬間、弥勒が手で制止した。

「何か来ます・・・」

「えっ?」

いつの間にか、鳥の鳴き声が止んで、不気味なほどの静けさが辺りを支配していた。

珊瑚は飛来骨をいつでも飛ばせるように構える。

突然、茂みの中から白く丸々と太った妖怪が地面を這ってきた。

弥勒たちの前に現れたのは白い芋虫のような妖怪だった。

「なっ・・・」

珊瑚が声を詰まらせる。

無理もないことだ・・・その数はあまりにも多かった。

まるで、白い絨毯を敷き詰めたような有様で、妖怪一つひとつが軟体の身体を揺すっていた。

「数が厄介ですな」

弥勒は杓杖を地面に突き立てると、右手の数珠を外した。

「手っ取り早く、片づけてしまいます!!」

弥勒の右手にあがたれた風穴が、芋虫を吸い上げていく。

芋虫の大軍は次々と手の中に消えていき、数が明らかに減った。

「いいぞ! 弥勒!」

七宝が歓声をあげる。

「くっ!」

不意に弥勒の身体が傾く・・・

「法師さま! どうしたの?」

「毒か・・・あの妖怪に毒が仕込まれていたようです」

珊瑚の声に、弥勒は右手に数珠を再びかけながら座り込んでしまう。

「大丈夫? 法師さま!」

「ううっ・・・だめかも・・・珊瑚が私に口付けでもしてくれれば」

珊瑚の拳が弥勒の言葉を遮った。

「何をするんですか・・・毒で苦しんでいるのに」

「はあ、とりあえず、法師さまは大丈夫みたいだね」

呆れ顔の珊瑚。

「後は、私に任せて」

珊瑚は飛来骨を投げた。

飛来骨は力強く回転しながら、芋虫たちを巻き込むように飛んでいった。

そして、孤を描きながら、珊瑚の手に戻った。

「えっ?」

珊瑚は手元に戻ってきた飛来骨を見て、唖然とした。

芋虫に大きな手傷を負わせた見返りであるかのように、飛来骨の表面が泡立って溶けていたのだ。

「そんな!」

「飛来骨が溶けているぞ・・・」

丈夫な飛来骨を溶かすほどに強い酸・・・見かけより厄介な妖怪だ。

それに気づいた珊瑚はハッとした。弥勒はこんなとんでもない毒を風穴で吸い込んでしまったのか?

「法師さま?」

「・・・・・・」

弥勒は意識を失っていた。

大丈夫と言ったのは虚勢だったのだろう。弥勒の顔色は死人のように青白くなっていて、がくがくと震えていた。

「しっかりせい! 弥勒!」

七宝が弥勒を揺り動かすが、目を覚ます気配はない。

ジュッ・・・

そのすぐ隣にどこからともなく飛んできた液体が落ちると、地面が白い煙を立てて溶ける。

芋虫が粘液を吐きかけて襲ってきたのだ。

白い芋虫は動きこそ鈍かったが、口から勢いよく飛び出す白い粘液は厄介だ。

飛び散った粘液をとっさに飛来骨で防ぐ珊瑚。

「この粘液・・・モノを溶かせるのか?」

飛来骨がさらに溶けたのを見て、珊瑚は顔をしかめた。

弥勒の風穴が使えないのを理解したのか、妖怪たちは俄然強気だ。何度も粘液を飛ばしてくる。

そんな妖怪たちに怒りを覚えたのか、雲母は唸りながら飛び掛かろうとした。

それを珊瑚の手が制する。

「いくら雲母でも噛み付いたら危険だよ。下がってなさい!」

珊瑚は飛来骨を今一度飛ばした。

残りわずかに減った芋虫を殲滅して、ただちに弥勒を医者に見せる。

珊瑚はそう決意したのだ。

「おらがしっかりせねば・・・」

七宝もそれを感じたのか、珊瑚を支援する。

珊瑚が飛来骨を投げるたびに、芋虫の数は減っているが、飛来骨自体も表面を少しずつ溶かされてしまう。

「ごめんね・・・飛来骨・・・もう少しがんばって!」

「狐火!」

七宝の放った炎が芋虫を焼くが、焦げ目がついただけだった。

「うわわ、おらの狐火が効かない?」

「雲母、ここは私が食い止めるから、七宝と法師さまを連れて逃げるんだ!」

「珊瑚! お前も一緒に逃げなければやられてしまうぞ!」

「私なら大丈夫だから!」

「ええい、犬夜叉のヤツがおれば・・・」

七宝は空を見上げて悔しそうにうめいた。

「法師さまをお願い!」

珊瑚に頭を下げられて、七宝は頷いた。

雲母に乗った仲間がその場を離れると、途端に芋虫妖怪は追いかけようと動き出した。

「待ちな! お前たちの相手はこの私だよ!」

珊瑚は溶けかけた飛来骨を投げた。

無抵抗に等しい妖怪の身体は、飛来骨の回転に巻き込まれて無様な死体に変わり果てる。

数もかなり減って、珊瑚は勝利を確信していた。飛来骨ももう少し持ちこたえられるはずだ・・・

珊瑚は必死に飛来骨を投げ、粘液の攻撃をかわした。

霧のように、粘液の毒が辺りに立ち込める。

「ふふふふ・・・毒に侵された弥勒を逃がすために一人で戦うのか。健気だな・・・」

「誰だ!」

不意に、茂みから現れたのは珊瑚の最も憎い相手だった。

「奈落!」

マントヒヒの衣で身を覆い尽くした奈落の目が、珊瑚を見つめた。

「その格好・・・誘っているのかな?」

「えっ?」

奈落の言葉に自分の着物を見下ろして初めて気づいた。

辺りに立ち込める酸の毒の湯気が、珊瑚の着ている麻の着物をわずかに溶かしていたのだ。

着物の表面はまるで濡れた紙でも触っているかのように湿っていて、手で触れると形を失って溶けてしまう。

珊瑚が飛来骨を投げる度に、肩口や腰の周りが溶けていたのだ。

「くっ・・・」

「珊瑚よ。弥勒を助けたければ、無駄な抵抗は諦めるのだ!」

「お前が仕組んだことなのに、信じられるか!」

陰謀に長けた奈落のことだ。何か企んでいる。

「ならば、最後まで戦うがいい」

「言われなくても!」

珊瑚は飛来骨を奈落に向かって投げた。

キレのある回転で、奈落の身体を捉えた飛来骨の軌道・・・

「えっ!」

奈落は飛来骨を避けようともしなかった。

なぜなら、奈落に直撃した瞬間に飛来骨は真ん中から二つに割れてしまったからだ。

「飛来骨が・・・」

さんざん、酸の毒を浴びた飛来骨はいくら丈夫であっても耐久力を完全に失っていたのだ。そんな状態で、軟体生物ではない奈落の身体に当たれば、簡単に砕けてしまう・・・

「くそ・・・」

珊瑚は着物の中にしまっていた小刀を抜き放った。











奈落が来た今となっては、はっきり言えば勝ち目のない戦いだった。

いくら奈落の傀儡(くぐつ)であっても、切り抜ける自信はない・・・

その次の瞬間、芋虫たちの口から一斉に毒液が吹き付けられた。

飛来骨のない珊瑚は防ぐ術もなく、両手で顔を庇うようにして液体を浴びてしまう。

「ああああっ!」

全身に熱湯を浴びせられたような痛みが走った。珊瑚の上半身まで浴びせられた酸は、着物を溶かしてしまい、白い肌を露にしてしまう。

「きゃあああっ!」

恥ずかしさに身体を抱きしめるようにしてうずくまる珊瑚に、芋虫はさらに粘液を吐きかける。

「うああああああっ!」

身体の皮膚に走る焼きつくような痛みから逃れるように身体を丸めると、白い背中や丸いお尻が陽光の下で晒されてしまう。

不思議なことに、皮膚は白いままで火傷を負った様子はない。

だが、着ていた着物は今や切れ端だけとなり、身体の至るところに隠してある隠し武器の刃物すらも溶けていた。

武器を失い、丸腰同然の珊瑚は戦意も失い、ただ奈落の目から丸見えの身体を隠すことしか頭になくなった。

「ふふふふふ、いい眺めだぞ。珊瑚!」

「ううっ・・・見るな、見るなぁ!」

奈落の無遠慮な視線が身体を這うのを睨み返す。

隠そうとする仕草はむしろ、奈落の性欲を煽るだけだった。

「見るなと言われれば、余計に見たくなるのが男の性と言うではないか。どれ、もっとお前の身体を見せてもらおうか?」

「お、お断りだよ・・・」

「どうせなら、自分から進んで見せた方が楽だっただろうに、馬鹿な女だ・・・」

奈落の合図で、白い芋虫たちは一斉に動き始めた。

「な、何をする気だ!」

より強く胸を庇うようにして身体を丸める珊瑚。

「えっ?」

芋虫に周りを囲まれると、何匹かが珊瑚に飛び掛ってきた。

「きゃあっ!」

両手に組み付かれた瞬間、芋虫の身体が密着した時の感触の気持ち悪さよりも先に、身を焼くような痛みが珊瑚を襲った。

芋虫の身体の表面は強い酸の汗がにじみ出ていた。

その酸は外敵を退けたり、体当たりでダメージを与えるために分泌されているのだ。

「うああああっ!」

信じられない力で芋虫によって両手が引っ張られ、隠していた珊瑚の乳房が弾み出る。

芋虫は両足にも組み付くと、珊瑚の身体を引っ張っていく。

「熱い、熱い・・・コイツらを剥がせ!」

奈落に叫ぶが、奈落自身はただ珊瑚の正面に立ったままで動こうともせずに見つめている。

珊瑚の身体が大の字に広げられて、まるで奈落に身体を見てくださいと言わんばかりだ。

全裸同然の格好で、とけ残った切れ端は大事な部分を覆い隠せず、むしろ珊瑚の美しい裸体を引き立てていた。

ピンクの聖裂がパックリと開き、戦いで邪魔だと思っていた乳房も珊瑚がもがく度に揺れて、奈落を誘っているように見えてしまう。

「くそぉっ! 放せ!」

人語を理解できるとは到底思えない芋虫に叫びながら、珊瑚は身体を隠そうともがいた。

その度に、芋虫の酸が密着した手足にかかり、激痛が走った。

痛みと屈辱的な気分と恥ずかしさに珊瑚は顔を真っ赤にする。

「以前から賞味したいと思っていたが、なかなかのモノではないか・・・」

「くっ・・・分かったなら、解放しろ!」

「何を言ってる。これからではないか。傀儡で来たのは勿体無かったな」

「ど、どういうつもりだ!」

奈落が近づいてきて、珊瑚の開かれた股の間に座り込んだ。

「ひっ!」

奈落の顔が間近に迫り、珊瑚は思わず身震いする。

マントヒヒの衣が珊瑚の身体の上に当たり、独特の獣の毛の感触が恐怖を増大させた。

「や、やめろ・・・来るな!」

「ふふふふ、退治屋などやめてこの奈落の玩具になってもらおうか」

「ふざけるな! 貴様・・・いやっ!」

珊瑚の乳房に手がかかり、軽く撫でてきた。

思ったよりも細くて繊細な手の感触に珊瑚は戸惑う。

「薄汚い手を放せ!」

叫ぶが、奈落の手は両方の膨らみを不気味なほどに優しく揉んできた。

徐々に感覚が痺れ出して、珊瑚の口から甘い吐息がこぼれる。

「あっ・・・やめろ!」

「どうした? 珊瑚・・・」

まるで珊瑚の反応を楽しんでいるかのように奈落の手はゆっくりと快感を刷り込んでくる。

珊瑚は首を振って、奈落の行為に拒絶の意思を返すが、表情は女の艶っぽさを露にしていた。

乳首がピンと立って、奈落の指が待ち望んでいたように突起をつまんだ。

「あっ!」

電撃が走ったように、珊瑚の身体が跳ねる。

「ふふふふ、次はこっちだ・・・」

奈落の右手が珊瑚の股の間に入る。

「くっ・・・やめろ、やめろぉッ!」

珊瑚は押し寄せる快感に涙をこぼして必死に抗ったが、奈落は動きを止めようともしない。

指が珊瑚の恥部を撫でる。

「あっ・・・あぅ・・・はあはあ・・・」

憎い男に無理やり感じさせられる戸惑いと、自分への不甲斐なさで涙がこぼれる。

やがて奈落の手が止まり、珊瑚は肩で息をしながら睨んだ。

「こ、こんな真似をして・・・どういうつもりだ! 奈落!」

「これほど濡らしておいて、よくそんな態度がとれるな」

奈落は彼女の恥部を弄んだ右手を差し出して、強引に珊瑚の口に押し込んだ。

「んんっ!」

右手についた自身の愛液を舌に感じて、珊瑚は快楽に落ちた自分を思い知らされた。

「おおっ!」

怒りにまかせて奈落の右手に噛み付いてやると、奈落は手を抜いた。

「恐い、恐い。さすが、退治屋珊瑚だな・・・」

珊瑚は唾を飛ばして、奈落を睨む。

「珊瑚よ。弥勒が好きなのか?」

奈落は不意に切り出した。

「貴様には関係ないだろう!」

「そう邪見にするな。お前の想いを遂げさせてやろうと思ったのだ・・・」

「自分の気持ちは自分で言う! 貴様には関係ない!」

「そうか。やはり、好きなのだな」

いつの間にか、奈落の問いの答えを返していることに気づいて、珊瑚は顔を赤くした。

やりきれない気持ちが胸を締め付ける。

「お前の想いを成就させてやろう・・・」

奈落は地面に転がっていた弥勒の杓杖を拾い上げた。

風穴を使った時に弥勒が地面に突きたてたままだったのだ。

ジャラン・・・

杖が涼しげな音を鳴らす。

その聞きなれた音に珊瑚はいつもならホッとした気持ちを覚えるのだが、この時ばかりは不安な気持ちを掻き立てられてしまう。

「法師さま・・・」

珊瑚は目を閉じて、弥勒の顔を思い浮かべる。



お願いだよ。助けて・・・法師さま・・・



それは先日、かごめが盗賊に凌辱されながら犬夜叉に助けを求めた時とまったく同じ状況だった。

奈落という悪魔は、二人の少女に同じ運命をなぞらせたのだ。

想い人への気持ちを胸に抱いた珊瑚の心を砕くために用意したシナリオを奈落は実行した・・・











「えっ・・・」

冷たい金属の感触が股の間に当たり、珊瑚は目を開いた。

弥勒の武器である杓杖を構えた奈落がいた。

そして、杖の先端は珊瑚の股・・・膣口にまさに差し込まれる瞬間だった。

「あっ・・・ああああああぁぁ!」

珊瑚の絶叫が辺りに響いた。

甘い快楽を味合わされた後だけに、膣を襲った激痛は常軌を逸している。

珊瑚は尻を振るようにして、押し込まれていく杖の軌道を変えようともがいた。

が、芋虫の妖怪にまとわりつかれた身体では、腰を振るのが精一杯で逃れるなんてとても無理だ。

「うううっ! 法師さまぁあっ!」

悲痛の叫びが喉の奥から勝手にこぼれだし、悲しみの涙が乾いた野道に落ちる。

股間に杭でも打ち込まれたような痛み・・・

逃れられず、無様に身体を動かす珊瑚の仕草・・・

そして、悲痛に歪んだ絶望の表情・・・

奈落にとってはこの上ない感動だった。

「どうだ。大好きな法師に貫かれた気持ちは!」

奈落の卑劣な言葉責めに、珊瑚は反応すらできなかった。

股間を襲う初めての異物感と激痛は、思考をつなぎとめることすら許さない。

今の珊瑚にはただ呼吸を紡いで、痛みをこらえることしか浮ばず、奈落の言葉も耳に入らない。

杖と彼女の接合部には血の涙が滴り落ちていた。

紛れも無い初めての証だった。

「ふふふ、よほど嬉しいようだな」

反応がない珊瑚に奈落は苦笑する。

「精神がどこかへ飛んでしまったか?」

奈落は両手でつかんだ杖を何度も揺すりたてた。

突き出される度に、走る激痛に珊瑚の意識が無理やり揺り起こされる。

「ああっ! やめろ!」

ジャラン! ジャラン!

揺すりたてられる度に、杓杖の金具が冷たい音を響かせる。

優しげで涼しい聞きなれた杓杖の音が、今は珊瑚にとってはけたたましい騒音に聞こえた。

「いい加減にしろ!」

「もっと女らしい言葉を使え。でないと・・・」

奈落の手に持った杖が威嚇するように、珊瑚の最奥まで押し込まれた。

「ぎゃあああぅっ!」

「弥勒に嫌われてしまうぞ・・・」

「やめろぉ・・・やめてぇッ!」

芋虫に拘束された惨めな姿で、処女を散らされショックが隠せない珊瑚。

弥勒と結ばれたなどという気持ちは少しも湧いてこない。

それどころか、金属の杖に初めての花園を踏み荒らされる現実は、あまりに悲しくて屈辱的だ。

「助けてぇっ! 法師さまぁあぁッ!」

珊瑚の身体が一際大きく反りかえり、髪の毛が地面を箒のように掃いた。

「痛いっ・・・痛い・・・」

奈落はそんな珊瑚の悲痛の声に耳を貸すこともなく、弥勒の杖を往復させる。

感情もこもっていない往復運動は、珊瑚の身体に対する労わりもなく痛みだけを増幅した。

「悔しいか?」

「わ、分かりきったことを聞くなぁッ!」

「ふふふふふ、悔しいだろうな。棒切れに処女を奪われては・・・」

神経を逆撫でする奈落の声に、珊瑚は顔を持ち上げて睨み返した。

「奈落・・・許さん・・・」

「ほう。まだ、そんな目つきをする元気があるようだな」

奈落は珊瑚の反応に嬉しそうに目を細めた。

そして、不意に杖を抜かれる。

「えっ・・・」



ううっ・・・痛い・・・

やめてくれる気になったの?



恐る恐る目を向けると、マントヒヒの衣の隙間から陰茎を取り出した奈落が目の前に立っている。

反り返った陰茎は、珊瑚の腕の太さくらいある上に節くれだっていて、先端には先走りの液が光っていた。

「あっ・・・ああっ・・・やめて・・・」

細い杓杖でさえ耐えがたい痛みだったというのに、奈落の陰茎は遥かに太いのだ。

恐怖の感情だけに突き動かされて、珊瑚は涙をこぼしながら哀願を繰り返していた。

「やめて・・・お願いだから・・・」

先ほどまでの強気な珊瑚の姿を思い出して、奈落は新たな興奮を覚える。

「やれやれ。傀儡の身体で来たのはやはり勿体無かったな・・・」

そうぼやきながら、珊瑚の股の間に割って行く。

「アア・・・助けてェっ! 法師さまぁッ!」











「弥勒・・・どうした! おい、これはどういうことなんだ。七宝!」

ようやく、楓の村までついた七宝たちを見て、犬夜叉は絶句した。

あの強かった弥勒が完全に血の気を失った顔で雲母に担がれて、帰還したのだ。

「弥勒! しっかりしろ!」

「ガミョーン! 犬夜叉さま・・・これは芋虫妖怪の仕業ですぞ」

犬夜叉の肩からひょっこりと顔を出したのは、冥加(みょうが)じじいだった。

犬夜叉の父に仕えていたノミ妖怪だ。

博学の冥加は、弥勒の具合を見て瞬時に「酸の毒を吐く妖怪」の姿を思い出した。

「どういうことでぃ?」

「酸の毒でなんでも溶かしてしまうたちの悪い妖怪ですじゃ。早く、毒を吸い出さないと」

冥加は弥勒に飛び乗ると、血を吸い出し始めた。

「そ、それより、珊瑚は?」

「珊瑚は一人で敵をひきつけておる! 早く、助けに行ってくれ!」

「おっし。分かった・・・そいつら、すぐに片付けてきてやる!」

七宝の言葉に犬夜叉は頷くと、すぐにその場を飛び出した。



「いやああぁぁぁあっ!」

珊瑚の裸体が芋虫によって持ち上げられ、まるでブリッジでもしているように背中を逸らす格好にされる。すると、珊瑚の膣口は膝立ちの奈落の陰茎とちょうど同じ高さになってしまう。

「あああぁあっ!」

もがく度に、芋虫の身体全体から染み出した酸が珊瑚の両手足を焼いた。

「ふふふふ、早くも誘っているのか? 珊瑚よ・・・」

「違う、違うッ!」

珊瑚は顔を上げて、必死に拒絶の意思を伝えようとする。

涙目になった瞳に奈落の姿が映る。奈落の陰茎はすでに珊瑚の中に少しずつ沈みつつあった。

「ああっ・・・痛いッ・・・」

処女を奪われて間もない膣の入り口が大きく押し広げられ、中に最も受け入れたくない男の陰茎が入っていく。

珊瑚の意思などお構いなしだ。絡み付いてくる襞の感触に導かれて、奈落は腰を動かしていく。

「ぎゃあああっ!」

奈落は珊瑚の悲しみと絶望を楽しみながら、むしろゆっくりと粘っこい動きで珊瑚の中を味わう。

いっそ、同じ痛みを味わうなら早く終わってほしい。

そんな珊瑚の気持ちを裏切るように、奈落はゆっくりと動く。ズキズキとした緩慢な痛みが珊瑚の全身を突き抜けていく。

「やめてぇ・・・やめてぇえぇッ!」

乳房に顔を埋めると、マントヒヒの仮面の中から舌を伸ばし敏感な乳首を舐める。

「ううっ!」

珊瑚に先ほどの快感が襲い掛かってきた。

まさに激痛と快感を両方同時に味わわされて、神経がどうかしてしまいそうだ。

「助けてぇっ! 法師さまぁ! 犬夜叉! かごめちゃん!」

手当たり次第に仲間の名前を叫ぶ。

頭の中を仲間たちの顔がいくつも過ぎ去るが、どうしようもないほどの痛みがその映像にノイズを入れる・・・

「かごめもなかなか見ごたえのある見世物になってくれたぞ・・・」

「えっ?」

珊瑚の胸に顔を埋めたままの奈落の声に、首をかしげる。

「犬夜叉から聞かなかったのか? かごめは薄汚い盗賊たちに弄ばれたのだ」

「ええっ!」

「ふふふふ、わしの手で犯すより、薄汚い人間どもに犯される方がショックも大きいであろう」

「ヒドイ! ぎゃあああっ!」

珊瑚の抗議の声は悲鳴に塗り替えられた。

奈落の陰茎が突然、激しい動きで珊瑚を揺すり始めたからだ。

ゆっくりと動かれた時の鈍痛に耐えられるようになっていた珊瑚には、寝耳に水だった。

しかも、興奮したのだろう。奈落の陰茎は珊瑚の膣の中でさらに大きく膨らみながら硬くなっていった。

「ふふ、そろそろこちらも気持ちよくさせてもらおうと思ってな」

手加減なしに腰をぶつけられて、珊瑚の全身ががくがくと揺れた。

長い髪の毛が動きに合わせて乱れ、奈落の顔の中で程よく膨らんだ乳房が弾んだ。

「あアアアああぁッ!」

奈落の顔が近づき、珊瑚の顔を嘗め回した。

整った顔立ちの珊瑚の顔の輪郭をなぞるように・・・

「気持ち悪い・・・」

唾液にまみれた顔に髪の毛が張り付いて、煽情的な風情だ。

それを奈落は目を細めて見つめた。

「珊瑚よ・・・お前はやはり退治屋よりも娼婦の方が似合う」

「うああぁぁアあッ! ば、バカにするな! 早く、抜いてぇっ!」

「そう急かすな」

セリフとは裏腹に、奈落の動きは激しさを増した。

「出すぞ!」

「ひいっ・・・や、やめ・・・あががぁアッ!」

一際激しい動きの後、奈落は珊瑚の中に精を放った。



法師・・・さま・・・

助けてぇッ・・・











「うっ・・・ここは・・・」

目を覚ました時、覗き込んできたのは心配そうな顔の七宝だった。

「珊瑚・・・目を覚ましたか?」

「あっ!」

珊瑚は顔を真っ赤にして、自分の身体を見下ろした。

犬夜叉の火鼠の衣が掛けられていたが、その下は全裸だ。

「・・・夢・・・じゃなかったんだね」

「お、おら・・・子供だからよく分からないんじゃ」

七宝はリアクションに困ったように顔を赤くした。

「ううん。ありがとう。七宝・・・」

珊瑚はそういって、笑顔を作った。



今、ひどい顔してるんだろうな。私・・・



そう思っている自分がいることに少し落ち着きを取り戻して、珊瑚は辺りを見回した。

あの惨劇の野道から少し離れた場所にいるのが分かった。

弥勒や犬夜叉の姿は見当たらない。自分の横で小さくなった雲母が身体を丸めて眠っていた。

「七宝。法師さまは?」

「弥勒は冥加じじいのおかげで一命を取り留めたんじゃが・・・その・・・珊瑚の仇を討つといって・・・」

「・・・じゃあ、私のこと・・・知ってるんだね?」

その言葉の本当の意味に気づくはずもなく七宝は頷いた。

「犬夜叉が奈落を倒した直後に駆けつけたんだ。おら、あんなに怒った弥勒を見たのは初めてじゃ」



法師さま・・・そんなに怒ってたんだ・・・

私のために・・・



倒したのは傀儡の奈落であって、本体ではない。きっと、弥勒たちは本体を倒しに行ったのだろう。

気づくと大粒の涙をこぼしていた。

先ほどまでの恥辱の時間が脳裏に鮮やかに蘇ってくる。

精液を注ぎ込まれ、ようやく奈落から解放されたと思った瞬間、奈落はとんでもない行為に出たのだ。

芋虫妖怪たちに合図を出したのが始まりだった。

合図された芋虫たちは、一斉に珊瑚に飛びついて口や膣、お尻の穴にまで入り込んできたのだ。

酸の焼け付くような痛みを珊瑚は味わいながら、気絶する・・・

その最後のビジョンに首が飛ぶ奈落の顔が見えた気がした。

きっと、犬夜叉か弥勒が助けに来たのだろう。



涙の雫を浴びて目を覚ました雲母が珊瑚に擦り寄ってきた。

「ごめんね。ごめんね・・・」

雲母を抱きしめ、珊瑚は泣き続けた。

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