■ 終わる季節、始まる季節 ■

 [エピローグ] [あとがき]




注釈…成瀬川萌え〜、成瀬川以外は認めんゾ!という方はご覧にならないほうがいいかと思います。

   このSSは素子ちゃん萌え〜な人が楽しむのに都合よく無理やり作ってます。

   ちなみに、このSSは景太郎がアメリカ留学に行く前ぐらいの時です。

   話に無理やり感が付きまといますが気にしないでください。





俺が、やっとの事で受かった東京大学に通いだした(夏季休講後)頃。

成瀬川とも事実上の恋人になれた、そんな幸せの絶頂。



そんなある日の早朝。







チュン、チュン…



朝を告げる鳥の囀りが聞こえてくる。

瞑っている目にも朝日が差し込んできた。



それらの刺激を受け、俺の身体は覚醒へと向かって行く。



「む〜…朝か…?」



俺は、布団から起き上がると一番に、枕の横に置いてある手帳の中の成瀬川と二人で写っているプリクラを見つめた。

ちなみにその手帳の横には東大の学生証もおいてある。



朝一番にこれらを見て、今生きている現実が夢でないことを確認するのだ。

毎朝、毎朝、早朝に隣の部屋で大騒ぎされてはキツネさんもいい迷惑だろうが、迷惑かけているのはお互い様だよなぁ。

…うんうん。



「今日もいい目覚めだー。」



「東大生…成瀬川の恋人(事実上)…夢じゃないんだ…じ〜ん(感動)」



「東大に合格して、あんな美人が恋人(事実上)で、今の俺はなんて幸せ者なんだぁ!!」



ぐっと拳を握り締めて震わせながら、俺は自分の幸せさに雄たけびを上げた。

それでは飽き足らず、ひなた荘の屋根によじ登る。



「夢じゃない!俺は…俺は…やったー、やったー!」



「やったー、やったー、わっ!?」



そして、屋根から滑り落ちる。



そんな俺の行動はもう日課になっているので、ひなた荘の住人も、もう慣れっこだ。

ドシーンと大きな音をたてても、ああ…またかといった反応である。



「しかし、あいつも毎朝毎朝ようやるで…」



ぽつりと漏らしたキツネさんの声も嬉しさに震える景太郎の耳には入ってこなかった。



…はあぁ…俺はなんて幸せ物なんだろう…



俺は深くあいたクレーターの中でしばらく幸せに酔っていた。



そんな朝の日課(?)を終えて、朝食の席につく。

目の前にはしのぶちゃんが作った豪華絢爛な食事が並べられている。

ちなみに、昼と夜も同様にもの凄く気合が入ったメニューである。



…しかし・・・しのぶちゃんは俺が東大に入ってから食事にかなり気合いれてるなぁ…

…嬉しいけど、エンゲル係数がもの凄そう…

…これ以上続けるとひなた荘の財政が崩壊しかねないので後でやんわりと注意しておこう…



「うん!うまいよ!やっぱりしのぶちゃんは料理上手だね。最近はめっきり腕を上げたし。」



「えへへ…そうですかぁ。嬉しいです…」



「あっ…センパイ、それと後で勉強を教えてほしいんですけど…」



「うん。いいよ。」



「む…浦島…実は私も解らない問題があって困っているんだ。私も頼む。」



「うん。わかったよ。」



「うちもケータロと遊ぶ〜〜」



「わたしも〜」



「けーたろ、なるよりウチの方がお得やで〜。今からウチに乗り換えへん?サービスするで?」



「わあっ!?キツネさん!?」



わいわいと俺を取り囲むひなた荘の住人たち…

いつも話の中心には俺がいる。



東大に受かってからというもの、こんな感じで俺は連日モテモテだ。

…じ〜ん(感動)



しかし、その場には成瀬川の姿がない。

タイミングが悪いのか、最近、彼女にちっとも会えないのだ。

やはりあいつがいないと、どこか寂しいのは、馬鹿ぁ!とか言って殴られないからか。

…って俺はいつからマゾになったんだろ?



はるかおばさんが言うには、何でも、また実家の両親の所に行ったらしい。

夕食を食べて帰るのでひなた荘に戻って来るのは夜になるそうだ。

成瀬川の側にいれないのが少し残念だが、親御さんの所なら仕方ない。



そんなこんなで可愛い女の子達に囲まれた華やかな食事を終え、俺は部屋に戻った。



「ん〜・・・」



おなかもいっぱいになって、満足感で心地いい身体を伸ばし、そのまま布団にもぐりこむ。

東大に行くために無茶をして勉強に励んだ結果、疲れが結構溜まっているのだ。

それといってする事がない俺は、睡眠を取る事にした。



「なんか・・・幸せだなァ・・・。」



ぽつりと身体を包み込む幸福感を言葉で表して俺は、まどろみに身を委ねた。







それで、俺は夢を見た…

それは、成瀬川の夢だった。

二人で、念願の約束を果たして幸せな俺達の・・・



「景太郎・・・私達、本当に東大にいけたのね・・・」



カ〜ン、コ〜ン・・・



どこからか教会の鐘の音。



何故かウェディングドレスを着た成瀬川とタキシードを着た俺が東大にいた。

そこは、俺達の結婚式場。

衣装を着た俺達が式に出るまで少し時間があった。

式が始まるまで、俺は成瀬川と雑談でもすることにした。



「それにしても、そのタキシード、似合ってないわね〜。まさに馬子にも衣装ってやつ?」



「うるさいな〜。自分こそ、暴れてウェディングドレスを汚したりするなよ。」



「なによ・・・冗談じゃないの、そんなに怒んなくてもいいじゃない。」



「はいはい。ごめんなさい、お姫様。・・・王子様が謝るので機嫌をお直しください。」



「・・・あんたねえ・・・よくもまあそんな恥ずかしい台詞をいえるわね・・・」



「・・・・・・」



「あっ・・・本当に怒った?ゴメンゴメン。冗談だってば、私の王子様♪」



「ふふっ…」



「気持ちわるいわね。何で急に笑ってんのよ。」



「いや・・・何か・・・幸せだなァ・・・って思って。」



「・・・そう・・・私も・・・幸せ。バカな事を言い合って、じゃれあって。笑いあって・・・」



成瀬川が、遠い目をしてふとそういった。

東大に行って、幸せになる。

二人の遠い過去の約束は今、果たされようとしている。



「もう、式の始まる時間かな?」



穏やかな、笑顔。

それを俺は成瀬川に向ける。



「もう少し・・・このままで・・・」



「ん・・・?」



今、この瞬間を一秒でも味わうように成瀬川はそう言ってぎゅっ・・・と俺の腕に腕を絡めてきた。

何故か幸せそうな中に、儚さを感じる仕草だ。



「こんな幸せが、ずっと、続いたらいいのにな・・・」



「続くだろ・・・?これからも、ずっと。」



感じてしまった儚さを打ち消すために、俺は、少しマジになってそう聞いた。



「…・・・」



「・・・?成瀬川?」



突然うつむいてしまった成瀬川。

また、何かの冗談で俺をからかう気かな?



「・・・ゴメンね。もうお別れ・・・さようなら。景太郎。」



そう言ってうつむいていた顔を上げた成瀬川の目は涙であふれていた。

からかうとか冗談ではない。



「えっ・・・成瀬川?」



その成瀬川の様子に困惑する俺。

先ほどまでに腕に感じていた成瀬川の腕の感覚が無くなっていく。



「ゴメンね・・・」



「成瀬川!?」



成瀬川の姿はぼやけていた。

何か、今にも空気と交じり合って消えてしまいそうだ。

俺が咄嗟に手を差し伸べて、消え行く成瀬川の身体をつかもうとする。

だが、俺の手は空を切ってしまう。



「どうしたんだよ!成瀬川!」



消えてしまう、成瀬川が・・・焦燥感に駆られ焦ってブンブン手を振るが成瀬川の身体に触れる事は出来ない。

その間にも、どんどん空気に混じって形を失ってしまう成瀬川。



「一緒に・・・東大に行きたかったな・・・」



「成瀬川ぁぁ〜〜!!」



俺は、そう言って完全に消え去った成瀬川がいた場所で絶叫した。



「・・・・・・・・・」



「……パイ!」



「・・・・・・ンパイ・・・センパイ!」



「・・・・?」



「センパイ!センパイ!!おきてください!!大変なんです!!」



「う・・・しのぶ・・・ちゃん?」



そんな悪夢にうなされる俺を現実に引き戻してくれたのは、しのぶちゃんだった。

しかし、しのぶちゃんの様子が尋常でなかった。

何か大変な事が起こったらしい。

先ほど見た嫌な夢を思い出して俺は嫌な予感がした。

…まさか、成瀬川・・・!?



「どうしたの・・・?」



「センパイ!成瀬川先輩が…!、成瀬川先輩が交通事故で…!」



「っ!?…本当!?」



俺の嫌な予感は的中してしまった。

あの夢は予知夢だったのか、それとも最後のお別れを言いに来たのか。





「はい。今、さっき病院から電話があって…」



「それで!成瀬川は…」



「それが…!意識不明の…」



「どこの病院!?」



「きゃっ!?」



そこまで聞いて俺は、しのぶちゃんの肩をぎゅうと握った。

我を忘れて力の加減が出来ない俺は、しのぶちゃんが驚きと痛みの声をあげても意に介さなかった。



「ひ、日向病院です!」



「ありがとう!」



俺の迫力に気押しされながらも、しのぶちゃんはしっかりと答えてくれた。

俺は掴んでいたしのぶちゃんの肩から手を離すと、そのまま病院へと直行した。





俺は、息を切らせて病院へと駆け込んだ。

受け付けの看護婦にたったいま運ばれた患者の場所を聞き出す。

緊急病棟の301号室・・・看護婦がそう言ったとたんに俺は駆け出していた。



「・・・!」



ドンッ!

ドアがちぎれそうなほど乱暴にこじ開けて俺は中に入った。

そこには神妙な面持ちの素子ちゃんがいる。

入ってきた俺と顔が会う。

その顔は涙であふれている。

・・・まさか。本当に・・・



俺は、素子ちゃんの後ろに目をやった。

そこには・・・

成瀬川が、白い布を顔にのせて、ただ静かに瞳を閉じて横たわっていた。



「嘘だ!嘘だ!成瀬川!目を開けてくれよぉ!こんな、こんな…うっうっう…」



「……」



俺が泣きながら駆け寄り、成瀬川の身体を揺すっても成瀬川は全く反応しない。

揺れる身体も、力が入っていないのか俺の押すままにゆれる。



「成瀬川先輩は・・・青信号を渡ろうとして・・・車に・・・」



「もういい!・・・言わないで・・・ひどすぎる・・・」



酷い…なんて酷い…



どうして成瀬川がこんな目に…



「ひぐぅっ…なんで…あんなに辛い思いしてやっと東大に入れたばかりなのに…何故だ!?どうしてこんな事に…」



「どうして…どうして…!」



俺がやり切れない気持ちをドンドンと壁にぶつける。



「これから、これからじゃないかっ!!幸せになるのは!!」



「・・・・・・・・・浦島・・・見てみろ・・・」



俯いて震えていた俺に素子ちゃんが声をかけた。

素子ちゃんは、成瀬川の顔に乗せられていた白い布を取る。



「見ろ・・・安らかな・・・顔だ・・・息を引き取る寸前、お前の名と、ゴメンね・・・とつぶやいて・・・」



「あ・・・あ・・・うう・・・な、成瀬川・・・」



あれは、最後のお別れを言いにきたのだったのか。

その安らかな笑顔は俺が夢で見た、成瀬川が最後に見せた笑顔であった。



「成瀬川ァァ〜〜!!!」



俺の悲痛な叫び声が、狭い病室の中に響き渡った。





…翌日、ひなた荘で成瀬川の葬儀が行われた。



参列者は皆、涙し、嗚咽を漏らす。





その中でも、ひなた荘の住人達は本当に辛そうだ。

遺体との対面でも、しのぶちゃんも素子ちゃんもスゥちゃんもキツネさんもむつみさんもはるかさんもサラちゃんも…声をあげて大泣きした。

もちろん、俺も例外ではなく、決して動く事のなくなってしまった成瀬川に向かって泣き叫んでいた。





そして、出棺…



ブロロロロ…



霊柩車が低いエンジン音を上げて去っていく。



「い・・・やだ・・・嫌だ・・・成瀬川ァァ!!」



泣き叫びながらその車を追いかけようとした俺をひなた荘の住人達が必死に止める。



「嫌だ!嫌だ!成瀬川!成瀬川ぁ!!!!」



俺の悲痛な叫び声が、いつまでもあたりにこだました。







それから一週間が経ったが、俺はまだ立ち直れていなかった。

毎日、部屋に閉じこもって成瀬川の事を考えたり、思い出して泣いていた。



ある日、そんな俺を見かねたのか素子ちゃんが部屋を訪ねてきた。

俺は、流れる涙を無理やり押さえ、なるべく平静を装って素子ちゃんを部屋に入れた。



「浦島・・・?入っていいか?」



「・・・・・・うん。」



俺が搾り出すようにそう答えると、素子ちゃんは静かに戸を開けた。





「その…浦島…あんまり、塞ぎこむのも身体に悪いぞ…」



「……ゴメン。」



「い、いや、謝らなくていい。私のおせっかいだからな。」



「………」



「無理な注文かも知れないが、元気を出せ…お前が塞ぎこんでいると私まで悲しくなってくるのだ…」



「………」



「なる先輩の事は、皆悲しいんだ…お前だけじゃない。」



「………」



「本当に酷な事をいうが、お前にはいつものように笑っていて欲しい。」



「……?」



「お、お前が笑っていると私まで嬉しくなるのだ。…わ、私は…浦島の事が…」



「…ごめん。一人になりたいんだ…」



素子ちゃんは本当に心配して元気付けに来てくれている事は、俺には身に染みてわかったけど、

俺は、成瀬川を失った悲しみでいっぱいだったのだ。



だから、一人にして欲しい。



「…・…・…・…」



俯いたまま、何も話さない俺。

そんな俺を見下ろすように立ち尽くしている素子。



永く気まずい沈黙がその場を支配する。



「浦島…わ、私では、なる先輩の代わりにはならないか。」



「…素子ちゃん?」



あまりに唐突な素子ちゃんの言葉に俺は、一瞬、意味がわからなかった。

間抜けな声をだして聞きなおした俺に、素子は答えるようにゆっくりと優しい口調で語りだした。



「私は、浦島を目の敵にして、ひどい事ばかりしていたのに、お前は、いつも笑顔で私に接してくれた。

姉上に止水を折られて落ち込んでいた時も、私を優しく慰めてくれた。あの時、私は本当に嬉しかった…

 その時から…私は、お前に対する気持ちに気付いたんだ。私は、お前の事が…」



「………」



そこまで言いかけて素子ちゃんは、自分の言った事に、はっとした様子で言葉を止めた。

素子ちゃんを見上げると、申し訳なさそうな顔をして視線を逸らした。

素子ちゃんの目尻には涙が溜まっていた。



「…すまない。浦島…私は、こんな時に何て事を…お前の気持ちも考えないで…」



「……」



「私は、最低の人間だ。私の事は忘れてくれ…」



素子ちゃんは、そういって踵を返して、部屋を出て行こうとする。

俺は、とっさに呼び止めていた。



「待って…本当に俺なんかでいいの?」



「えっ…あっ…」



「俺は、素子ちゃんが思っているほど、いい奴なんかじゃないよ。こうやって素子ちゃんが俺の事を好きだって

言ってくれているのに俺は、成瀬川の事を考えてしまっている。きっと、素子ちゃんの側にいても成瀬川の事は忘れられないよ。」



少し自嘲気味にいった俺の言葉に素子ちゃんは大きく首を横に振った。

そして、口を開く。



「浦島…私は、お前の側にいれるだけで…」



「・・・なら、結婚しよう。素子ちゃん…」



「え…」



俺はとんでもないことを口走った。

これから、自分と幸せになるはずの成瀬川のあまりに突然で、腑に落ちない死。突然の素子ちゃんからの告白。

俺にとって信じられない事が立て続けに起こった。

それで、俺はあるいは冷静さを失ってやけっぱちになっていたのかもしれない。

それでも、俺の性格からか、相手を傷つける気は毛頭なかったのだが。

俺の突然の言葉に困惑する素子ちゃんをよそに俺は言葉を続ける。



「俺と京都で祝言を挙げよう。」



「…ほ、本当か。お前のほうこそ、私でいいのか。わ、私は全然、女らしくなくて、可愛くもなくて、家事も下手で、

剣ばっかり振り回して、乱暴で、世間一般の女たちとはかけ離れた女だぞ…」



「…素子ちゃんは、ただ少し不器用なだけだよ。俺はそれらを欠点だとは思わないけど、嫌なら直せばいい。俺と結婚した後に。」



「あ…う、浦島ぁ…浦島ぁ〜!」



感極まった素子が俺の胸に飛び込んで、そのまま俺の胸の中で泣き始める。

ぽろぽろと大粒の涙を流して、しゃくりあげながら。



俺はふと、いつぞやの事を思い出していた。

前の時と違って、今度は自分の胸の中で泣く素子を思い切り抱きしめた。

ふわりと素子の髪のいい匂いが俺の鼻腔をくすぐる。



見た目とは違って素子ちゃんの身体は華奢だ。

それは以前の時にもわかっていたが、抱きしめている今、それはより一層はっきりとわかった。

どんなに力や気が強くても、ちゃんと心と身体は女の子なんだよな…



俺は、この時、本気で素子ちゃんを抱きたいと思った。

下心や状況に流されての物ではなくて、本当にこころの底から愛しくて。



俺は自分に縋ってすすり泣く素子の頭をゆっくりと優しく撫でる。

素子は胸に埋めていた顔を起こし、俺の方を潤む目で見つめた。



「素子ちゃん…抱いて、いい?」



「うん。こんな私でよければ、抱いて、欲しい…浦島に」



あまり自分に女としての自信がないのか、素子の声は消え入るように小さい。

ただ恥ずかしかっただけかもしれないが。



「素子ちゃん…」



「浦島…んっ…」



お互いの名を呼んで、二人は軽く唇を合わせる。

異性とのキスが、初めてであるので素子は少し震えていた。



そんな素子を、大丈夫だよ…と、しっかりと抱きしめた俺は、キスをより深いものにかえる。

閉じられた素子の唇を割って俺の舌が素子の口へと侵入していった。



「ん…んんっ!?」



いきなり舌を入れられ、素子は驚いて唇を離しそうになったが、俺がしっかりと抱きしめているので動けない。

俺がキスを続けるうちに、素子も体の力を抜いて俺を受け入れていった。



「ぷはぁ…」



しばらくキスを続けた後で、俺は素子の服(はかま?)に手を掛けた。

不安そうな顔をする素子をもう一度抱きしめてキスをする。

そのキスにいくらか不安が紛れたのか俺に身を任せるようにもたれかかった。



「ん…」



「素子ちゃん…このまま・・・抱いて、いい?」



「うん…抱いて…抱いてほしい…浦島に」



あまり自分に女としての自信がないのか、素子ちゃんの声は消え入るように小さい。

ただ恥ずかしかっただけかもしれないが。



「じゃあ・・・脱いで…」



「ん…うん…」



始めは俺が服を脱がそうと思っていたが、それは素子ちゃんに委ねる事にした。

脱がされるよりは、自分で脱いだ方が精神的にも楽だろう。

嫌なら脱がなければいい。



「は、恥ずかしいから、あっちを向いていてくれ…」



だけど、素子ちゃんは自分で着ている袴を脱ぎ始めた。

一枚、羽織る感じで着ているだけだったから、それを脱いだらもう下着一枚になる。



「もう…いいぞ。」



向こうを向いていた俺は、素子ちゃんの声で振り返る。

そこには顔を真っ赤にして、手で胸を隠すように押さえる素子ちゃんがいた。



「……」



「あ、あまりじっと見つめないでくれ…」



「…ああ…ごめん…つい、見とれて。」



素子ちゃんは本当に美しい、と俺は思った。あるいは、女性というものそのものが美しいのかも知れない。

ほんのりと上気した、染み一つない綺麗な絹のよう、という表現がぴったりな肌。

緩やかな曲線を描く腰のライン。



「ほんとに綺麗だ・・・」



「恥ずかしい…あっ…」



恥ずかしさで胸を隠す腕に力が入り、逆にそのゆたかなふくらみが強調された。



「こっちに…手をどけて…」



俺く素子ちゃんを後ろから抱き寄せると、胸に当てていた腕を降ろさせた。

俺の目の前に素子ちゃんの豊かな乳房がさらされる。



「触るよ…」



「……ん…」



俺はは、柔らかそうな胸に手を伸ばして優しく揉んだ。

ゆっくりと慎重にその温かさを感じながら。



「柔らかくて、温かい…」



「浦島の手…あっ…んん…」



耳元で甘く呟きながら俺は、愛撫の勢いを強めて行った。

素子ちゃんの身体は、きちんと成熟している。

きちんとした愛撫を行えば、身体もそれに反応してくるだろう。



「ふ…んん、う…」



円を描くように揉んで行き、最後は乳首に達する。

それも勢いに変化をつけて、強くしたり弱くしたり…



時おり荒い息を吐いて素子ちゃんは俺の愛撫に反応する。

その声はとっても色っぽく、俺を興奮させた。



「…どう?気持ちいい?」



「ふぅ…んん…わ、わからないけど…嫌じゃないな。浦島の手が優しいから。」



「なら、これは?」



「きゃう!?…こ、こら…調子に乗るな…」



俺がいきなり素子ちゃんのうなじに舌を這わせると、素子ちゃんは驚いて可愛い声を上げた。

そして、身体をくねらせて俺へ非難してくる。



「これは…嫌?それとも、俺の舌だから嫌じゃない?」



「な、何を…んんっ…」



胸の愛撫と合わせて責める俺。



「ねえ。どっち?」



「う…い、嫌…じゃない…」



「それは、よかった。」



俺は、舌攻めをやめて再び胸の愛撫に専念し始める。

素子もまんざらでもないのか、身をくねって反応している。



「素子ちゃんの胸は良すぎていつまでもこうしていたいくらいだよ。」



「浦島の、手も優しくて私も、ずっと触っていてほしいくらいだ。」



しばらく愛撫を続け、頃合を見計らって俺は胸を揉んでいた手を下腹部へと移動させる。

素子ちゃんは俺の行動に抵抗せずに力を抜いて受け入れてくれた。



「素子ちゃんのあそこ…」



「恥ずかしい…」



下着の中に手を入れて秘部周辺を弄る。

もちろん、痛みなどを与えないように注意して、だ。



恥毛を掻き分けながら、核心の部分に近付いて行く。



「ひあっ!?」



「あっ…痛かった?」



クリトリスを指で突くと素子ちゃんは、驚きの声を上げた。

強くしすぎたかな…



「…いや。少し驚いただけだ…」



「それならいいけど、痛かったら無理せずに言ってよ。」



「うん…ありがとう。浦島。」



俺はクリトリスを突くのをやめて、くすぐるように優しい愛撫をした。

素子ちゃんの身体も俺の愛撫にしっかり反応してくれる。

俺がそれを続けていると、しっとりと素子ちゃんのあそこが潤ってきたのがわかる。



「ん…ふぅ…ん…」



素子ちゃんも、ちゃんと感じているようだ。



(もう…いいかな?)



「あ…えっ…どうして…?」



愛撫していた手を止めて俺は、素子ちゃんから離れた。

そんな俺の行動に素子ちゃんは不安げな顔でこちらを見ていた。



その顔は、私を捨てないでくれ。と言いたげな悲しい表情だった。

…そんな顔しなくても俺は素子ちゃんを捨てたりなんてしないよ。



「素子ちゃんが裸なんだから俺も脱がなきゃね…」



「あ…」



そう言って素子ちゃんの頭を軽く撫でると、素子ちゃんの不安げな表情が明るくなった。



「では…私は向こうを向いて…」



「いや…見ていて欲しいな。素子ちゃんに俺の全てを。」



「えっ…だが、それは、その…」



顔を赤くしてうろたえる素子ちゃんの前で俺は服を脱ぎ始めた。

まずは上着…そして、下着。

俺の体が少しずつ露になればなるほど素子ちゃんは慌てて、視線を逸らそうとする。

俺はそんな素子ちゃんを可愛いと思いながらも、「ちゃんと見ていて欲しい。」と素子ちゃんの視線を先に移動した。



「わ、わかった…見るから…」



素子ちゃんは、恐る恐る顔を見上げて俺の方をみた。

トランクス一枚になっていた俺の股間を見つめる。

なんだかんだいってもやはり気になるらしい。

…やっぱり勃起しているからか?



トランクスを押し上げるようにして自己主張をする俺のモノ。

それに、恥ずかしそうにしながらも魅入る素子ちゃん。



俺はトランクスに手をかけて、遂に素っ裸になった。

日本人の平均より立派な俺のモノが素子ちゃんの視線にさらされる。

…いっておくけど、俺は包茎じゃないよ。



「はは…どう?素子ちゃん…見るのは初めて?」



「ば、バカ者…女の子にそんな事聞くな…」



「ご、ゴメン…」



俺のソレを見ていた素子ちゃんに話し掛けると、素子ちゃんは、はっとして俯いてしまった。

…う〜ん…ちょっと台詞がおやじっぽかったかな?でも何て言ったら良いか、わかんなかったしなあ。



「…素子ちゃん…もう入れて良いかな…」



「あ…うん。私も浦島のがほ、ほ…」



そう言いかけて、言葉に詰まってしまう素子ちゃん。

…本当に、うぶだよな。こういう事にまったく免疫が無いんだろうな。

俺は、素子ちゃんを軽く抱きしめて頬にキスをした。



「ありがとう…じゃあ俺の方に来て。」



そう言って俺は挿入の体制を整える。

俺の希望を言うと出来るだけ素子ちゃんを感じながら一つになりたい。



そこで、俺はあぐらをかいて座り、その上に素子ちゃんを座らせるようにして挿入する事にした。

初めてで、この体位はきついかなと思ったが素子ちゃんも俺を精一杯感じながらの方が良いだろうし。



「うん…で私はどうすればいい?」



「俺の上に座るようにして、入れていって欲しいんだ。」



「う…この上にか…」



天を突かんとばかりに勃起している俺のモノを見て、不安げにそういう。

やはり、恐いんだろう。



「大丈夫…こうした方が抱き合いながら、出来るから…痛ければ俺を抱きしめて。」



「…うん…では、いくぞ…」



俺をぎゅっと抱きしめながら、ゆっくりと腰を降ろしていく素子ちゃん。



「くっ…う…あ…浦島…」



俺のモノの先端が素子ちゃんのあそこにあたり、徐々に入って行く。

素子ちゃんは俺の愛撫により、多少濡れていはいたものの、やはり痛みを感じるのか辛そうな呻き声を出し、

俺の背中に廻した手に力を入れて耐えている。



「くうぅ…入った…」



やがて俺のモノを全て受け入れた素子は俺の胸に顔を埋めた。

俺は辛そうな素子ちゃんをしっかりと抱きしめ、頭を優しく撫でる。



「大丈夫?」



その俺の声にいくらか安心したのか、素子ちゃんは少しからだの力を抜いた。

素子ちゃんの中はとても暖かな…安心できるような、そんな感じがした。

一つになれたという安心感から来ている感情なのかも知れないが。



「うん…私は大丈夫。浦島こそ大丈夫か?」



「俺?俺は大丈夫だよ。」



本当に素子ちゃんはこういう事に疎いらしい。

初めてのセックスでも男は、女ほどは辛くない(包茎君を除けば。)…というか初めてでもいきなり気持ちいい。

素子ちゃんはきっと大きな痛みをがまんしているだろう。

それなのに自分の事より俺のことを心配してくれるなんて…



「素子ちゃんの中…あったかくて…とってもいいよ。」



初めて男を受け入れる素子ちゃんのそこは俺のモノをきつく締めて来る。

気持ちよさを感じる俺とは裏腹に素子ちゃんは苦しそうだ。

それでも俺が思っていたよりは辛くないみたいで少し安心した。



俺は、初めては泣くぐらい痛い物だと思っていたから少し意外だった。

体の発育が良かったのか素子ちゃんが我慢しているだけなのか。



なんにせよ、俺達二人は一つになれたんだ。



俺はふと思いついて素子の中に埋没しているモノをビクビクと動かしてみた。



「あっ…浦島の…が私の中で…」



そう言って素子ちゃんは苦しげな声を上げながら潤んだ目で俺を見上げてきた。



…可愛い。



俺は素子ちゃんの身体を思わず抱きしめた。

すると、素子ちゃんも細い腕で抱き返してくる。



「…好きだよ。」



「…私も。」



「んん…」



軽くキスを交わして俺は、腰を動かし始めた。

素子ちゃんが少し顔を歪める。



「う…浦島…」



動き始めた俺を潤んだ目で見つめてくる素子ちゃん。



「痛い?素子ちゃん?」



「大丈夫…っ…んはっ…ふあっ!?…」



痛みを紛らわそうと俺は素子ちゃんの耳の裏側に舌を這わせた。

…確か素子ちゃんはココが感じるんだったよな。



何とか素子ちゃんの痛みを和らげる努力をしながらも俺は下から突き上げるように…

といっても、もちろん手加減をしてだが腰を動かしつづけた。



素子ちゃんも、始めは辛そうに俺に抱きついていただけだったが、

そのうちに痛みになれて来たのか控えめながら彼女も腰を降り始めた。



「ふっ…んっ…あ…」



「あっ…ふ…浦島ぁ…何か…あんっ…」



素子ちゃんは俺の愛撫と腰の突き上げにまだ少しだけれど感じ始めたようだ。

先ほどまで締め付けるばかりだった彼女の中も少しほぐれて来たのか、俺のモノを包み込むようだ。



「素子ちゃん…もっと動くよ。…いい?」



「うん…もっと動いて…私も、もっと浦島を感じたい…」



もっと気持ちよくなって欲しい。もっと俺を感じて欲しい…

俺も素子ちゃんを感じてもっと気持ちよくなりたい。



「あ…あうっ!はあっ…!んっ!」



俺がより一層激しく腰を突き動かすと素子ちゃんは、さっきの声とは違う声を上げ始めた。

痛みに耐える呻くような声ではなく、短く高い声。



「はあっ…!ふぅ…ん…!」



「気持ちいい?」



「はあっ…う…うん…あっ…浦島ぁ…」



ジュプジュプジュプ…



結合部からお互いの肉が擦れあう音が響く。



「素子ちゃんの中…気持ちいい…」



「私も…あっ…う…!はあ…浦島の…気持ちいい…」



俺達は、時おりディープキスを織り交ぜながら、激しくお互いを求め合った。

その激しい動きに俺には限界が近付いていた。



「ああ…はあ…だめだ…もう…」



もうだめだ。もっと…果てるまで彼女を感じていたいけど、それをすると膣内射精になってしまう。

いきなり、はじめての娘にそんな事をするわけも行かないので俺は限界を素子ちゃんに告げる。



「う…素子ちゃん…俺…もうだめだよ。」



「浦島…嫌…私から離れないでくれ…」



彼女の中からモノを引き抜こうとした俺を素子ちゃんは必死で抱きとめるように制止する。



「で、でも…!」



「いい…このままで…中で…」



「…素子ちゃん…わかったよ。」



「はあっ…ああ…!」



素子ちゃんの必死な気持ちが痛いほど俺に伝わってくる。

…俺が膣内射精して子供が出来たとしても育てればいい。

…二人で育てればいいだけだ。俺と素子ちゃんで。



俺はそう覚悟を決めて、素子ちゃんを強く抱きしめると腰の突き上げを激しくさせた。

果てる瞬間まで精一杯素子ちゃんを感じるんだ。

素子ちゃんも俺のモノを一層激しく締め付け、絡み付いて来る



「はあ…う、浦島…一緒に…」



「う、…素子ちゃん…」



「んっ…あはあああぁ…!!」



俺と素子ちゃんは共に絶頂を迎えた。

彼女の膣壁が俺のモノを強く締め上げる。

限界を超えた俺はドクドクと彼女の中に精を放った。

素子ちゃんへの想いをありったけ込めて。



「はあ…ああ…浦島のが…」



「ん…素子ちゃんのが俺のに絡みついて…」



恍惚とした表情で素子ちゃんが中で感じる俺の精に声を漏らす。

俺も素子ちゃんの中の搾り取るような動きに声を漏らした。



「はあ…はあ…」



「はあ…はあ…」





行為が終わった後も二人はしばらく裸で抱きあってお互いの体の温もりを感じあっていた。





「浦島…」



俺の傍らで生まれたままの姿の素子ちゃんが俺の胸に顔を寄せて、言う。

彼女の長くて綺麗な髪が俺の肌にあたり、こそばゆい。

俺は彼女の肩に手を伸ばして、彼女の言葉に耳を傾けた。



「ん…?」



「私と、なる先輩…どっちが好き?」



「そんな事、言わなくてもわかっているだろう。」



素子ちゃんの問に俺は苦笑いを浮かべる。どうも女の子というのはこういう事が、どうしても気になるらしい。

もう、素子ちゃんに心を決めた俺は、言うまでもない、といった風に答える。



「…それでも、構わない。元々、二人の間に割り込んだのは私だからな。お前の側にいられるだけで。」



だが、それを素子ちゃんは違う風に解釈したらしい。素子が悲しげにそう呟いた。

それにしても、何とも健気な事を言ってくれる。



こんな事を言われたらますます俺は、素子ちゃんを手放せなくなるじゃないか。

何にせよ。素子ちゃんにはっきりと言わなくちゃな。うやむやにならない内に。



瞑っていた目を開けて、俺は彼女に語りかけるように言った。



「…そんな事、言わないでよ。俺は素子ちゃんの事、本当に好きだよ。成瀬川より、誰よりも。」



「…ありがとう…」



素子ちゃんは、そう言って本当に嬉しそうな幸せそうな笑顔を見せる。

しばらく、そのまま見つめ合っていたが、そのうちに…



「Z…Z…Z…」



素子ちゃんは、俺の胸の中で、安らかな寝息を立てていた。

彼女の寝顔を見つめる。



安心しきって眠っている子供のような可愛い寝顔。



「……」



そんな顔を見ていたらこっちまで眠たくなってきた。

ふぁ〜あ…とあくびが漏れる。



「俺も寝ようかな。」



もう一度、素子ちゃんを抱き寄せると俺も安らかな眠りの世界に入っていった。







[エピローグ]





春。桜が咲き乱れる季節に俺と素子は結婚式を挙げることにした。

式の方は素子ちゃんの意見で和式にして、披露宴の方は、ひなた荘の皆の意見…というかこれが一般的だが、洋式になった。

それらには、ひなた荘の住人達と俺の親友のふたり、素子ちゃんのお姉さん、そしてその他の関係者が招かれている。

そんなにお金をかけた訳でもないけど、本当に大事に思っている人達が精一杯祝ってくれる。俺にとってこれ以上ない最高の結婚式だ。



「う〜こほん。…しかし…緊張するな…」



コホンと咳払いをして俺は落ち着きなく部屋の中をぐるぐると歩きまわる。

その服装は、びしっとタキシードで決めている。



馬子にも衣装というが、なかなかどうして格好いいと自分で思ってみたりする。



「ふ〜…結婚、か…」



そう呟いて立ち止まり、ふと窓の外に目をやった。



満開の桜の花が風に揺られている…



その光景を見て、俺の頭の中を巡っていく生前の成瀬川との楽しい思い出。



「………」



「…俺は…成瀬川…。」



結婚前の男が、他の女の事を考えてるようではいけない。

それぐらい、俺にも解っていたが、やはり彼女との思い出はあまりにも多く、また楽しすぎたのだ。



もちろん、俺は素子ちゃんの事が好きだし、素子ちゃんを愛しているという感情にも嘘偽りはない。

だが、無くしてしまったモノは俺にとってあまりにも大きすぎたのだ。



「…こんな俺に素子ちゃんと結婚する資格なんてないよ…」



そんな情けない自分でも素子ちゃんは、ありったけの愛情を注いでくれる。

その事に、俺は罪悪感を感じていたのだ。



…俺が、こんな煮え切らない気持ちで素子ちゃんと結婚しても、彼女を傷付けてしまうだけではないか…

そんな思いが頭をよぎる。



「やっぱり…」



情けなくうな垂れる俺の背中に、暖かい春の風が吹いた。

…あれ?確か、窓は締まっていたはずだよな…



「ちょっと、景太郎!あんた、いまさら何言ってるのよ!やるだけやって、素子ちゃんを裏切る気!?」



「えっ…」



信じがたい声を聞いて俺は、その場に固まった。

そんな俺をよそにその声は言葉を続ける。



「絶対に、素子ちゃんを幸せにしなさいよ!泣かせたりしたら、私が承知しないんだから!」



「ほらっ!!花嫁が待ってるわよ!ぐずぐずしてないで早く行きなさいよ!」



「まったく…世話が焼けるんだから…」



「…な、成瀬川!?」



どんっ…と背中を押されたような気がして俺は後ろを振り返った。

だが、そこには誰もいない。



人の存在感が、かすかに窓に残っている気がして、俺はあわてて窓辺に走り窓の外を見た。



その窓からは満開の桜の花びらが吹雪のように舞っている街道が見えた。



見渡してみても誰もいない。



ただ、桜の花びらが春風に乗ってダンスを踊っている。

春の暖かく明るい日差しの中で。



その満開の桜が咲く街道…そこに、成瀬川がいた気がした。

そして、さっきの声は聞き間違いや勘違いなんかじゃなくて。

きっと成瀬川は、ここに来たんだ。



…ドジでバカでスケベで優柔不断で情けない俺を叱りに。



「わかったよ。成瀬川…俺は絶対に素子ちゃんを幸せにする!」



(…バイバイ。けいたろう…)



窓から大声で叫んだ俺の声に答えるように、少し淋しげな成瀬川の声が聞こえた。

そんな気が…いや。俺にははっきりと聞こえた。





…そして。





「いよいよだな…」



「うん…ねえ、素子ちゃん…」



「…何だ?浦島。」



「もう素子ちゃんは、お嫁さんだよ。俺のことは、あなたって呼んでよ。」



「い、言うのか…ここでか?」



「そうだよ。言って欲しい。」



「う、むむむ…あ、あなた…」



「何?もとこ。」



俺が真顔でそう返したら素子は顔を赤くして恥ずかしそうに俯いた。

可愛いなあ。



「…っと。もう式が、始まるよ。」



「…ああ…」



照れて少し赤くなった笑顔を俺に向ける素子。

俺は、にっこりと微笑み返す。





「――では、新郎新婦のご入場です……」



…そして季節は終わりから始まりへと。



Fin.







[あとがき]




ラブひな純愛SS、景太郎×素子でしたぁ〜!いかがでしたでしょう?



なんか話の展開がかなり無理やりっぽい気が…



成瀬川への気持ちを振り切って素子とHするところらへんが強引ですね…



書いた時期が前半と後半でぜんぜん違うから文章の統一性とかがないかも…



あと、「Air」の曲聴きながらこれを作ったので、テンション的に無理やり感動物っぽくなったのですが、

私ではこんなへぼへぼが限界。陳腐だなぁ…季節なんたらってのは、中身と関係ないけど、気にしないでね。



え〜と…それと、なる派の人、ゴメンナサイね。でも、私は素子萌えな奴なんで。



本編では、景太郎は、なぜか成瀬川一筋(私なら絶対に素子かカナコを選ぶけど。)なので

純愛で景太郎と素子とくっつけようとすると、どうしても成瀬川は邪魔。(成瀬川ファンの人、失礼。)

だから、死んで貰いました。(オイ)だって、こうしないと素子と景太郎はくっつきそうにないんですよ。



あ〜私は単行本でしかラブひなは読まないんですが、少し前に素子が、かなり萌えたと友人から聞きました。



やっぱり単行本じゃあどうしてもSSの話題も遅れてしまいますよね。今どうなっているのか良く分からないですし。



う〜ん、どうしようか…マガジンを買うべきなのか…



まあ、何はともあれ、ビバ、素子。



では〜〜。

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