■ メロひな第三集〜愛憎の行き着く果て〜 ■

 [第十話] [第十一話] [第十二話] [あとがき]




[第十話〜敗者〜]



午前五時・・・しのぶの部屋



「う…ぐす…ひっく…」



もう誰もいなくなった景太郎の部屋、そこでしのぶは灰谷と白井の生臭い精液にまみれてすすり泣きつづけていた。

放置されてしばらくたったのだろう。出された当初は少し湯気を立てていた精液もすっかり冷えてしのぶの肌にまとわりついていた。

そのすっかり冷たくなった気持ち悪い精液の生臭さの中で、時間とともにすっかり冷えてしまった身体だが、

苦痛で焼けるかと思うほど熱いあそこのじんじんとした痛みはそのままだ。



景太郎と幸せになるという希望を完全にぶち壊された心の痛み。

身体は穢れてしまったという哀しみ。



先輩に差し出すはずのアナル処女もファーストキスも何もかも、私から奪われてしまった。

そのうえ、好きでもない男達に廻され、好き放題に中出しされてしまった。



やめてぇ!!中だけは!それだけは・・・いやぁ・・・あ・・・ああ・・・



ブルッ…としのぶは抱きしめた自分の身を震わせた。

嫌な事、辛い事、強姦された事が強烈に頭によみがえる。

あれだけ出されては、私は妊娠していかも知れない。

運良く妊娠していなかったとしても私がどうしようもないほど汚れてしまった事には変わりない。



先輩…ごめんなさい…私は…もう駄目です…



「助けて……誰か…寒い……」



泣きながら誰かに助けを求めても、そこには誰も来なかった。







[第十一話〜勝者〜]





しのぶが、陵辱を受けている間、なるは、薬品で眠らせた景太郎を自分の部屋に運んでいた。

自分の布団の上でスース―と寝息を立てている景太郎の顔は、可愛らしく、成瀬川は思わずクスリと微笑んだ。



「ふふ・・・私だけの景太郎、他の誰にも渡さない・・・景太郎も私の事、好きだよね?」



柔らかく暖かい景太郎の頬を両手でそっと包み込み、言い聞かせるようにゆっくりと言葉を紡ぐ。

それは、契約。私からあなたへ、切れない運命の鎖に繋がれた永遠の愛を。



ちゅっ・・・。



そして、頬に軽いキス。



「私はあなただけを愛してあげる。だから景太郎・・・あなたも私だけを愛してね。」



再び、頬に手を当てて、今度は、深く、舌をいれての口付け。



「んむ・・・」



景太郎の口内を一通り、舌で舐めまわった後、成瀬川はキスをやめた。

そして、景太郎の寝ている横に自分も横渡り、景太郎を抱きしめて見る。

暖かい景太郎の体が、成瀬川の体の温かさと交じり合い、心地よさを成瀬川は感じた。

ちょうど、胸のあたりに景太郎の頭を抱え、景太郎の顔を胸の谷間に埋めた格好だ。

それでも、まだ幸せそうな顔でスース―と寝ている景太郎の無邪気な表情は、童顔なのと相まって成瀬川の母性本能をくすぐった。

・・・か、可愛い・・・。



「本当、可愛いわね・・・。このままずっと抱きしめていたくらい。」



呼吸の時、吐き出される息が、胸のあたりに吹きかかるのもなんだが、こそばゆいような心地よいような・・・。

成瀬川は、今、至福を感じていた。

なんて、穏やかな時・・・愛する人を愛でながら、笑いかけたり、ちょっといたずらをしてみたり・・・。

この時が永遠に続けばいいのに、と成瀬川は思った。

その穏やかな時の裏では、しのぶが生贄の羊となっている事など忘れていた。



そして、成瀬川は、普段は言えない本音を景太郎に語りかけようとしていた。



「起きている時には言えないんだから、こんな時にでも言っておかないとね・・・」



「景太郎・・・やっぱり私、あなたのことが好き。本当に・・・いつも言えなくて、いつもひどい態度をとってごめんね。」



「気恥ずかしくって、どうしても景太郎の目の前でいえないの・・・景太郎は私の事好きって言ってくれた時本当に嬉しかった。」



「どうしてかな?私。いざ景太郎を目の前にすると素直になれなくて・・・。ゴメンね・・・。」



自分の素直な気持ちと景太郎にきちんと伝えられない自分が情けなくなった。



でも。

今度は・・・。今度、景太郎が起きている時には伝えよう・・・私の気持ちを。



「ふふ・・・少し薬を嗅がせすぎたみたい・・・あら・・・なんだか私も眠たくなってきたわね・・・。」



「おやすみ・・・私の愛しい景太郎・・・」



寝顔の景太郎をもう一度ぎゅっと抱きしめて、成瀬川は、景太郎とともに眠りへと入っていった。







[第十二話〜親友の絆〜]





隣から聞こえてくるしのぶの悲鳴が、壁伝いに部屋に響きわたる。

その部屋の真ん中で、キツネは、耳を手で塞いで震えていた。



景太郎の部屋に成瀬川が入っていくところを見かけたキツネは、その隣の部屋に入り込んで聞き耳を立てていたのだ。

その好奇心をキツネは心の底から後悔していた。

まさか、しのぶと成瀬川が景太郎を取り合って、こんな事になっているなんて思っていなかった。



「なんで、こないな事になってしもうたんや……」



ぎゃああ、としのぶが喉から搾り出した悲鳴をあげたのが、聞こえた。

これ以上ないという悲惨な声は、キツネ手越しで耳に飛び込んでくる。



「ひッ……!」



キツネは、その声に身を震わせた。



「この前までは、皆で楽しくやってたのに。なんで……。」



「皆で、景太郎を奪い合って……」



いや、止めてぇ、と、また声が聞こえてくる。

この壁の向こう側で、しのぶは一体どんな仕打ちを受けているのだろうか。

そして、それはおそらくは、しのぶと同じく景太郎を我が物にしようとした他の住人の仕業だろう。

でも、こんな奪い合い、貶め合い……。



「こんな争い…………うちも、けーたろの事を…考えたことはあるけど……」



正直、キツネも景太郎の事を男として、意識していた。

妙に景太郎の事が思い浮かび、自慰行為に耽ったこともあった。

とはいえ、それはこんな奪い合いをしてまで!というモノでなくあくまでも意識する程度の感情であった。



「ウチはどうすればいいんや……なる……」



なる……一番の親友のなまえをつぶやいて、キツネは、はっとした。

自分の取るべき行動、それがキツネにはわかった。



「なるを裏切るわけにはいかん。うちだけは、なんとしても、なるを応援せな!そうや、なるは親友やから……。」



キツネが、そう決意し、塞いでいた耳から手を離したとき、隣から聞こえていたしのぶの悲鳴は、ぴたりと止まっていた。

不気味なくらい何も聞こえてこない。

しのぶは、どうなったのだろう……。

恐ろしい想像をしかけて、キツネは頭を振った。



「……やめとこ……今はなるの幸せを祈るだけや……」



……なる!ウチだけは、なるの味方やで。

そういって、部屋を後にする。

行き先は成瀬川の部屋。

もちろん、自分だけは成瀬川の味方である事を伝えるためだ。



「あ……。」



成瀬川の部屋前の廊下で運良く成瀬川をみつける事ができた。

ちょうど自分の部屋に向かっているようだ。

キツネは小走りで、成瀬川の方に走りよっていった。



「お〜い、なる〜」



「何?」



とげとげしい態度でなるが返事を返した。

その態度に多少面食らったのか、キツネは言葉をドモらせながら言葉を続けた。



「あ・・・な、なあ、どないや?最近」



「何ともないわよ。」



「そ、そうか……。」



「それで?何の用?言いたいことがあるなら早くいって」



取り留めのない話から入ろうかと思っていたのだが、かわされてしまった。

それにこれ以上無駄な事を話していたら成瀬川が、キツネを押し切って部屋のなかに入りそうだった。

キツネは、本題を切り出す事にした。



「あ……その……やっぱりけーたろは、なると一緒にいるのがお似合いやし……なるは、ウチの大事な親友やから、……なるの事応援してるで。」



「ふぅん……そう。でも信用できないわね。」



「え……な、何で……」



親友の口から発せられた言葉は、キツネにとって予想外のものだった。

しかも、成瀬川は、その言葉を冷たく言い放ち、キツネを蔑むようなに見つめている。



「アンタそんな事いって、土壇場で私を裏切って景太郎を奪い取る気でしょ?」



「確かに一人で動くより、誰かとつるんで、ライバルを減らしたほうが、効率がいいもんね。」



「そ、そんな、ひどいで!なるとは親友やから、ウチは応援を……」



本心で成瀬川を応援しようとしていたキツネには、成瀬川が発する言葉の一つ一つがショックだった。



「……景太郎の名前を連呼しながら、毎夜、オナニーに耽っているのはだあれ?」



「な!!どうして・・・」



あまりに衝撃的な言葉にキツネは絶句する。

親友の恋人をオナニーのオカズにしてはいけないと思いつつも、密かにしてしまっていた事がばれていたなんて。



「私が何も知らないとでも思ったの?馬鹿にされたものね」



「そんな……それでも……」



「フン……私もキツネが応援してくれている、と思っていたのよ。……恥ずかしげもなく悶えるアンタのオナニー姿を見るまではね。」



「アンタの方から裏切っておいて今更応援する……?親友……?馬鹿にするんじゃないわよ。」



キツネは言葉に詰まった。

あのオナニーを知られていたのならもはや弁解の余地はなかった。

心底自らの行為を後悔するが、もう遅かった。



「……それは……でも!ウチはホンマに……」



「しつこいわね。もう無理よ」



「そんな……!うちらずっと前からの親友やん!」



「昔からの親友?同じ男を好きになった時点で終わったのよ。私とアンタの友情はね。」



「用事はそれだけ?邪魔だからさっさとどいてくれる?」



「ひどい……ひどいで……あんまりや……」



キツネは、ぽろぽろと大粒の涙を流して、その場に崩れ落ちた。

友情は、こんなにも簡単に崩壊してしまった。

悲しかった。一緒に楽しく過ごしてきた数年間の友情は、この瞬間終わりを告げた。



「ふん。ウソ泣きかしら?だまされないわよ。じゃあね。元親友のキツネさん。」



高笑いを交えながら、馬鹿にした口調でそういって成瀬川は去った。



愛は友情を破壊した。





第十三話〜化膿する現実〜





カーンと空気が凍りついた。

廊下で、加奈子と成瀬川が鉢合わせたのだ。

二人の女は、お互いを無視するかのように無関心を装って、そのまますれ違う。

殺気……。



「……」



さっきまで飛んでいた鳥も鳴いていた虫も何時の間にかどこかへいっていた。

二人の周囲に生き物の息吹はまるで感じない。

殺気……。



すれ違い様に成瀬川は、フンと鼻をならした。



「……何?」



その態度にカチンと来たのか加奈子が短く声を出した。



「別に……?」



面倒くさそうな声で成瀬川は短く答えた。

その眼は、加奈子を一瞥する。

再び、フンと馬鹿にしたふうに鼻を鳴らした。



「不愉快です。止めてください。」



「アンタの指図は受けないわ。このブラコン女。」



キッ!と鋭く加奈子が睨んでも成瀬川は表情を崩さない。

逆に睨み返して、すごんで見せた。



「何ですって?」



一番言われて腹が立つことを言われ、加奈子は、一層きつく成瀬川を睨みつけた。

そのまま睨み合いがしばらく続く。

沈黙の衝突に周囲の空気が凍り付いていく。



「……」



「あなた……いつまでも、自分の好き放題できると思ってなんかいないでしょうね。」



その睨み合いに耐えかねてか、怒りに耐えかねてか、加奈子が成瀬川にそう釘を刺した。

不適に表情を笑わせながら、成瀬川は、睨み続ける。



「好き放題?私の景太郎よ?何をしようと勝手でしょ?」



「兄は……」



「まさか、私の物よ。とかいうんじゃないんでしょうねぇ。え?ブ・ラ・コ・ン・女。」



「……ッ!」



これ以上なく嫌味たっぷりに言われ、加奈子は、歯をギリギリと鳴らした。

握った拳がブルブルと震えている。



「クスクス……こんな見え見えの挑発に乗るなんて単細胞ねぇ。アンタ、馬鹿じゃない?」



「……あなたという人は、どこまで人を馬鹿にしたら気が済むの?」



「フフフ……さあね……?」



加奈子は、薄笑いを浮かべる成瀬川に人差し指を突きつけた。

そして、周囲に響き渡る大声で高らかに宣言した。



「いつか……いつか、あなたから兄を取り戻して見せる!」



「そう……。まっ、せいぜい頑張るのよ。ブラコンちゃん。」



「あ、そうそう……そっちが本気なら急いだほうがいいわよ?」



「……時間切れになる前にね……。フフフ……」



含み笑いを残して成瀬川は、去っていった。

その悠々とした後姿に殺意を抱き、眉間にありったけのシワを寄せて睨み付けた。



「あなたは邪魔なんです…なるさん。だから、消えてもらいます…兄の前から…」



加奈子は、そう決意を露につぶやいて踵を返した。

いつかきっと……兄を奪還するその日を胸に加奈子は歩みを進める。



「……やっぱり、ココの住人は皆、敵なのよね。」



自分の背中を睨みつけているであろう加奈子のその姿を想像して、成瀬川は、軽く唇を吊り上げてニヤリと笑った。





つづく







[あとがき]




メロひな第三集はいかがでしたか?

なるべく急いで第四集を執筆していきます。

私は、小説を見せるのにお金をとりません。

そのかわり、私の小説を読んだ皆さん…私に対する報酬だと思って感想をください。

では〜

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