■ 月に願いを。〜第二部分岐2-2〜■ |
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[あとがき] |
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先輩、私の事好きですか?
私は、先輩の事好きです。何よりも、誰よりも。
こんな私の想い、アナタに通じますか?
私は、今日も夢を見ます。
月に願いを。
そんな夢を。
2)おもしろそうなのでもう少し見ておく。
もっと見たい。成瀬川先輩が困る様を、泣きながら浦島先輩に許しをこう場面を……。
「……の女ァ!舐めやがって!!」
え……?
私は凍りついた。
浦島先輩が、そうどなりつけていた。
その顔は、羅刹のように恐ろしく、怒りに満ちている。
「あがっ……がっ……!!」
先輩は素早く成瀬川先輩の首を締め上げていた。
ギリギリと力が入って、成瀬川先輩が苦しそうにうめく。
浦島先輩は、躊躇する事もなく、全力で成瀬川先輩の殺す気であるのが伝わってくる。
あれは決して、冗談とか脅しとかじゃない、本気だ!
う、嘘!?
さすがにマズイと思った。
とめなきゃ……!
「先輩!何をしてるんですか!」
「……」
グッ……ググッ……。
ああ、成瀬川先輩が死んじゃう。
そこまでは、そこまでは考えてなかったのに。
「手を離して!成瀬川先輩、本当に死んじゃいますよ!!」
「それでいい!この女は死ぬべきなんだ。死ね!しねっ!」
「止めてぇ!」
私は、見ていられず、成瀬川先輩の首にかかるその手を引き剥がしにかかった。
しかし、すごい力でとても引き剥がせない。
「邪魔するな!しのぶちゃん、邪魔するなら君も……」
「ひっ……」
私は床に倒れこんでしまった。
先輩が今までにない顔で私をにらみつけたのだ。
優しい先輩の怒り狂った顔は、私に恐怖を感じさせるのに十分だった。
「なる……俺は、なるの事、本当に好きだったのに……なるは、この女は、そうじゃなかったんだ……」
「っ……はっ……!」
成瀬川先輩の身体が宙に浮く。
先輩が持ち上げたのだ……。
成瀬川先輩はさながら、首吊りのように宙に浮かんで足をじたばたさせた。
必死になって首を締め上げる浦島先輩の手を引き剥がそうとして爪で引っかき、
身体を激しく暴れさせる。
「俺を、俺を弄びやがって!」
「止めて……」
先ほどのにらみが聞いて私は腰が抜けてしまった。
小さくつぶやく事しかわたしには出来ない。
浦島先輩が成瀬川先輩を絞め殺そうとしているその光景もみたくない。
私は目をつぶった。
グギィッ……!
その瞬間、嫌な音が身体に響いた。
骨が粉砕される鈍い音。
それは、きっと成瀬川先輩の……
「ひぃぃ……!」
怖い、怖い、怖い、怖い。
何もそこまで。
殺さなくても。
生暖かい物が股間をぬらす。
私は、失禁していた。
「しのぶちゃん……目をあけてみて……」
「え……?」
「ほら、目をあけて」
「は、はい。」
逆らえなかった。
私は、瞳を閉じんとして閉めていた筋肉を緩めた。
そして、ゆっくりとまぶたを開いた。
首が変な方向に曲がってしまった成瀬川先輩が居た。
もがき苦しんだ後が、首筋の爪あとから伺える。
白眼を向いて、口から変な泡みたいな物を出している。
鼻からも変な液体が出ていた。
生暖かい物が太ももにかかった。
成瀬川先輩の尿だった。
服を伝って、ぽたり。と私の太ももに落ちていたのだ。
そういえば、かすかに臭う。
きっと、脱糞もしているのだろう。
「しのぶちゃん……誰にも言わないでね……」
泡を吹いている成瀬川先輩を抱きしめて、先輩はその綺麗な髪に顔をうずめた。
「もう、瀬田さんと浮気なんてさせないよ……」
泡を吹く唇にキスをする。
「ははっ……酸っぱい……」
「うっ……んぶっ……うお゛え゛え゛え゛え゛!!!!」
吐瀉物を撒き散らしながら、私は半狂乱になって部屋を飛び出した。
「しのぶちゃん?」
廊下に飛び出していった私の様子を、浦島先輩は不思議そうに見つめていた。
「なる、愛してる……」
開かれた窓から差し込む月明かりが二人を祝福しているようだった。
終わり。
[あとがき]
しのぶ小説完結、エンディングナンバー3です。
景太郎、なるを殺害エンディング。
実はこのエンディングが書いていて一番楽しかったという…w
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