わたしのすべて
「それじゃあ、これをあげるよ」
お兄さんがそう言ってお菓子をくれた。
でも、わたしはお兄さんが持っている別のお菓子も欲しくなった。
それ、全部ちょうだい。
わたしが言うと、お兄さんは困った顔をした。
だって欲しいんだもん!
全部欲しいの!
全てを欲するようになってから、わたしの世界は全てが変わった。
わたしは大きくなり、ある人と出会った。
その人はとてもいい人でやがて私たちは恋に落ちた。
わたしは全てを手に入れるために無邪気になったり、悲しんだり、笑ってみたり…
わざとあの人の気を引いた。
でも、そんなの本当のわたしではない。
それは分かってる。
でも、どうしようもないんだ。
「ほんとうのわたし」を見たらあの人はなんて思ってしまうかしら?
今更わたしの汚いところなんて見せられないよ。
「好きだよ」、「君の全てが好きだよ」って彼は言ってくれる。
でも…
ごめんなさい。
それはほんとうのわたしではないの。
美しいコトバだけを言い続けて、いい所だけを見せ続けて、取り繕っていた「わたし」の姿。
あなたはそこだけを見て、愛してくれているんだよね。
では、わたしの醜い部分を見てもわたしの事愛してくれる?
あなたをずっと騙していたわたしを許してくれる?
…こんなこと今更言えるわけないじゃない…。
あなたがわたしに持っていてくれているイメージをずっと持ち続けていてほしい。
その方があなたにとっていいと思うの。
だから…
「さようなら」
(20050927)