僕と彼女

感情的なひとは大嫌い。

感情的な大人は特に大嫌い。

そんな姿見せつけられたら逆に更に怒らせたいじゃん?


彼女はそういって、きゃはは、と笑った。

そういうものか、と僕は首を傾げながら答えてみる。

彼女は不思議な存在だった。結構長くの知り合いではあるけれども、なかなか掴みきれない。

「そうなんだよー。君はそうは思わないの?優しいなー」

彼女はそう言いながら物珍しそうに僕の顔を眺める。見慣れた顔だろうに。

「ハンコーキってやつもなかったの?」

反抗期ねえ…彼女を無視するのは悪いと思い、僕は記憶を遡ってみる。


消えかかっているものもあれば、はっきりしているものもある。きっと忘れ去った事にすら気付かないものもあるだろう。

だが、その中のどこにも、僕自身が反抗期、と思えるものはなかった。…もしかしたら親からみれば反抗期だったのかもしれないが。


こんこん。

その時部屋がノックされた。僕も彼女も顔を上げる。

入るよ、と母の声。返事をする間もなく、扉が開いた。

「はい、郵便」と言い母は僕に葉書や封筒を手渡す。

そしてそのまま部屋を出て行くかと思うと、部屋の中を一通りぐるりと見回し、

「あなた以外の人の気配がするね」

言うと、出て行った。がちゃん。扉が閉まる。


「すごーい、あなたのお母さん鋭い」

彼女は少し嬉しそうに声を上げる。

彼女の姿は普通の人には見えない。

僕はよく彼女に尋ねる。君は何者なのか、と。

すると彼女は決まってこう言うのだ。

「天使か悪魔か、はたまた妖精か。それはあなた次第なの」

よく分からない。

だがしばらく僕の前から消えそうな気配はない。かれこれもう一年近く側にいるし。

だからせめて悪さをしてもらわないように僕はご機嫌取りをし続ける。

20060807
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