・・・ご用心・・・
「例えば、追われて逃げて行く者」
それは、呟いた。
それは、悪魔であった。
悪魔は特別な鏡でもって、人間の行動を見る。
全ての人の、全ての行動を見るわけではないが、面白そうなものを探す。
「例えば、殺人事件のその現場」
呟きながら、探す。
一日のうちに事件は幾つも起こる。
運良く簡単に見つけられる事もあれば、
さっぱり見つからない事もある。
さて、本日はどうか…
「…むう」
その口振りからすると、なかなか思うように事が起こらないようだ。
色々な所を見回しながら、つまらなさそうに溜め息をつく。
「昨日は牛が牧場から逃げ出して、あわてふためく人間共を楽しんだんだがな」
そう呟きながら、それは前日の光景を思い出しながら笑った。
「あのレポーター、牛に踏まれてやんの」
さてさて、それは笑い終えた後で、再び鏡に目を戻した。
そして、また面白いものを探し始める。
何か事をするときには、悪魔の目にご用心、
ご用心…
…了…
20060321
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