はじめて
はじめて出会ったのは、泣き疲れて父に抱かれていた君の姿を見た時。
はじめて話をしたのは、様子を見に行った時。
君は起き上がっていて、「ここはどこ?」って尋ねてきた。
知らず知らずの内に、何かが私の中で芽生え始めた。
それに気付いたのはもっと時間がすぎてからだったけれども。
はじめて誘ったのは近所の案内。
少し恥ずかしそうに、君は私の手を握った。
はじめて一緒に寝たのは、雷が鳴り響いた夜。
怖くて、震えていた私を守ってくれた。
はじめて私が作った物を食べてくれたのは父が外出した時。
私の作ったクッキーをおやつに一緒に食べた。
食べながら、私は君を見ていた。
君のために私は自分の中に君の居場所を作った。
一人きりなのに、君の笑顔が見える。
君が隣りにいるだけで、強くなれる。
どんな時も、君が静かに眠れるように、私がんばる。
だから、いつまでも一緒にいよう。
あの頃の気持ちを忘れずに、さ。
了
出会いはふとしたきっかけ
でもやがてそれは大きな何かを持っていた
20060115