歴史
男は言った。
「俺は神を越えた」
男の手には長い剣、その先には赤く滴るもの…血がついていた。
男の目の前には男に斬られ事切れた男の姿があった。
それは神であった。
神を斬ったのだ、男が…
男は喜びと驚き、そして自分への陶酔に襲われた。
だから分からなかった。
自分のしでかしてしまった事の大きさを。
男は神の信奉者たちに追われる事となった。
そして、男は追い詰められる。
その時男は思い付いた。
「神を倒した、だから俺が神だ!」
そう言われると、信奉者たちは後ずさる。
そうかもしれない、と考えるようになる。神は死んでしまったのだ、それでは何を信じればよいのか…
そう考えると、男を信じるしか道が無いように思えた。
かくして男は神になった。
男は自分の戯言が聞入れられた事に驚くと同時に、自分は神である、と信じ始め、傲慢になった。
そのような男を信じる事に、人々の一部は憤りを感じはじめる。
そして、そのような中の一人が、剣を取った。
神と名乗る男は倒れ、男を殺した男が神を名乗った…
それは今までもずっと続いていた。そしてこれからも続くであろう…
神を殺し、神になる人間の歴史は…
20060330
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