神への願い



風が吹いた。

びゅおおぉ…と、音がする。

その風に向かって立つかのように、一人の青年が立っていた。

青年の顔には、自信が漲っていた。

それもそのはず。

彼は、果てしない旅を終えて今、この地に辿り着いたのだから。



ここは、神々の丘。

人々が住む場所からは遠く遠く離れた、神々の住まう国への入口。

ここに辿り着くには、様々な苦労や苦しみがあった。

道無き道を抜け…断崖絶壁をよじ登り…樹海を進み…本当に沢山の苦労があった。

諦めよう、と思った事もあった。

だがしかし、彼を送り出した村の皆の思いを考えると諦める事は出来なかった。

彼は足を引きずりながら、一歩一歩進み、ようやくこの地へ辿り着く事ができたのだ。



彼は叫んだ。

「お助けください!」

すると、天から光が差し込まれた。

そして、その光が差し込まれた所に、いつの間にか一人の人物が立っていた。

きっと、この人物が神なのだろう。神は口を開いた。

「何が、望みか?」

青年は、話した。彼がここに向かった理由を。

平和な農村に起こった突然の飢饉。

空は荒れ、毎日が豪雨。川は氾濫し田畑を飲み込む。

…もう、生活など出来る状態ではなかった。

それを何とかしたい。青年はそう言った。






だがしかし、神の答えは青年の予想だにしなかったものであった。



「我々は、君の住む村の下流にある村の願いを聞いた。

上流の村が多くの水を使ってしまい、下流にはほとんど水がない。生活に使う水

がやっと手に入る位で、農業に使うほど水はない。だから、雨を沢山降らせてください、とな」

青年はそれを聞いてその場に立ち尽くした。雨をやませることはできない。

神に逆らうことはできない。

青年は、その場に倒れ、もう二度と動こうとはしなかった。




     ・・・了・・・




20060330
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