ごろごろごろ…

遠くで雷鳴が轟いた。

少年は顔を上げ、空を見上げる。

明るかった空が、いつの間にか暗くなっていた。



雨がぽつりと降り出す。

そして、一瞬空がぴかっと光り、そのあとにごろごろと音がする。

少年は思わず首を竦め、ぶるっと身体を震わせた。

彼はあたりを見回した。

街の中。

辺りにはビルが建ち並び、人通りも激しい。

街路樹があるが、まあビルに雷が落ちることはあるだろうが木には落ちないだろう…

彼の親から教えられたことを思いだし彼は傘を開いてとぼとぼと家路につく。

もう買い物は済んだし、雨の中にそう長くはいたくない。

自然と彼の歩調は早まった。






雨は強くなり、激しく地面を打ち付ける。

雷は止まりそうにもない。

稲光はやまず、ばりばりと恐ろしい音はやまない。



だんだん少年は怖くなってきた。

もし今ここに雷が落ちてしまったら…

ここでなくても、すぐ近くに落ちてしまったら…

一旦考え始めると止まらない。

嫌だ、もうやめよう。そう少年はかぶりを振る。




「怖いなあ…」

擦れ違いざまにそんな声が聞こえた。

なんだ、他の人もそう思うんだ、そう思うと少しは安心できた。

だが、やはり雷の恐怖というものは消えてくれない。




そして少年は家の近くまでやってきた。

そしていつも通る道を見る。

…大きな街には珍しい小さいながらも、森がそこにはあった。

ここを通らないと随分遠回りをしなければなくなる。

…早く家に帰りたい…。

その思いと同時に、この道の中を歩いて大丈夫かという考えも頭をかすめる。

…この中に雷が落ちたら…考えるだけで身震いがする。

彼は暫く考えた。




大丈夫。

雷なんてそう多くは落ちない。

怖いけれどもすぐ家に着ける。

一歩、足を森の方へ向けた。

…そこで躊躇する。

だが彼は意を決して飛び出した。




背後では雷鳴が轟いている。


時々ぴかっと稲光が見える。




夢中で走る。


怖いけれども走る。


家の門が見えた。


彼はそこに駆け込んだ。


家に着き、少年はすぐさま母親の胸の中に飛び込んだ。


20060426
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