このほし





「たとえばさ、俺は思うんだよ。

 何であいつらはそんなに小さな石ひとつに大騒ぎするのかってね。

 …だってさ、食べられないんだぜ、あれ。

 削ればキラキラと輝いて美しいけどよ、所詮只の石だろ。

 只の炭素だぜ。

 …まったく、そんな石一つで何で血を流さなきゃなんねーんだよ。

 そんな世界に住まわなければなんないあいつらは、間抜けなのか価値感覚がおかしいのか、はてまた狂っているのか…

 あいつらは子供をつくるけどよ、まっさらな心をもって生まれてくるその子がそんな世界にいなきゃなんないのは可哀 想すぎやしねえか?

 …だったら、この星壊しちゃってもよくねえか?」









…彼はそうまくし立てると大きく息をつく。

今までこの星を見ている中で溜まってきた鬱憤を一気に晴らしたのか、すっきりとした表情になっていた。

そんな彼に、後から声をかける者がいた。


「確かにそうだけれどもね、いい所もあるんじゃないかな」


その声を聞き、彼は思わず立上がり、振り返った。

そして慌てて頭を下げる。

「すみません!」

「いや、いいのだよ。この星は確かに酷いからな。

 …だがまだ壊さない。変わっ て行くからな、随分先になるが…それまで、苛立つかもしれないが、見ていてくれ。

 私の作上げた未来から外れる事のないように…」

そう言うとそれは歩み去っていった。





彼は大きく息をつく。

…まさか、この場を神に見られるとは思ってはいなかった。

神の作上げた星に対して罵倒をしたことを見られてしまった…一瞬背中に冷や汗が流れた。



だが、寛大にも許してもらえた。

彼はうーん、と伸びをしてからまた望遠鏡に見入る。





「さぁて、また愚かなあいつらを見てやるか」

そして、笑った。

20060603
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