妖精の国
しゃんしゃん。
鈴の音。
少女は鈴を手に大事そうにもっていた。
まるで誰にも取られたくないかのようだ。
掌の上の鈴、大きくはないし、とりわけ目立つ装飾はない、地味な鈴であった。
だが、そのような鈴を、少女は大事そうに手で包み込む。
そして少女は呟いた。誰にも見つからないように、自分の部屋で、こっそりと…
「出ておいで」
すると、しゃん、と鈴は少女が何もしていないのにも関わらず音を鳴らす。
そして、次の瞬間、鈴の隙間から光り輝く何かがでてきた。
少女は愛しい目付きでそれを眺める。
小さな身体、金色で美しく輝く髪、均整の取れた顔…どれを取っても凄い、と言えるものであるが、中でも背から生える羽、それが特に目を引いた。
少女は慣れているようで、特に驚いたりはしない。
また、それも少女に驚いたりはしない。
それ…妖精は少女の友達であった。
少し前、少女のもとにやってきた妖精。
すぐに少女は妖精を受け入れ、少女は鈴の中に妖精を住まわせた。
妖精はそれに従い、鈴の中に入っていた。
少女は誰にも妖精の事は喋ってはいない。彼女だけの秘密であった。
二人は仲良くお話をしたり、本を読んだりして秘密の時間を楽しんでいた。
少女は妖精の持つ多くの知識を得た。
そして彼女は妖精にますます興味を持った。
他の妖精にも会ってみたい、彼女はそう思うようになっていく。
そして、ある夜に少女は妖精に言った。
「私を妖精の国に連れていって!」
妖精は妖精たちが暮らす国があると言った。そこに行けば沢山の妖精たちに会える、そう思ったからだ。
妖精は大きく頷いて、
「わかったわ、一緒に行きましょう、妖精の国へ…」
妖精はそう言いながら少女の回りを5回、回った。そして、彼女に魔法をかけた。
すると、少女の身体が変わった。
妖精の姿になったのだ。
「わあ!」
妖精となった少女は思わず歓声を上げる。
そして二人は妖精の国へと向かって飛び出した。
ふわり、身体は勝手に浮いてくれる。風を切る感覚が気持ち良かった。
そして二人は妖精の国へと降り立った。
少女は妖精に元の姿に戻して欲しいと頼んだ、しかし妖精はかぶりをふり、拒絶した。
そして彼女は、少女に教えていなかった妖精の増え方について話した。
「妖精は卵を産むことは出来ないし、子供を孕むこともできない。だから人間を妖精にするの。人間に近付いて、仲良くなってそして妖精に変えちゃうの」
その声はとても嬉しそうであった。
だが少女は嬉しくはない、いやだ!と叫び、泣きだした。
「ごめんね、もうどうしようと元に戻すことは無理なんだ。大丈夫、今まで通り、私が全て教えてあげるから…」
20060419
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