【主人公会話例】 ■最序盤、ヒロインからの連絡 「ん……」 眠りかかった俺の意識を覚醒させたのは、携帯電話の着 信音だった。普段使ってないそれから発せられる無機質 で規則的なメロディは俺の耳を伝い、それなりにやかま しく脳奥を揺さぶってくる。 「……もしもし?」 着信ボタンを押して、自分でも「しまった」と思うくらい にはイラついた声を出してしまう。 「あ……、その、もしもし」 女性の声だった。眠気で濁った思考に滑り込む涼やかな 声は、やはり少しだけ遠慮しているような色を浮かべて いて。 「今、ダメだったか?」 窺うような様子でそう言った。 「いえ、すいません。寝起きだったもので。 ……どちら様でしょうか?」 できるだけ不安感を与えないように、優しい声色を使う ものの、電話口から伝わる相手の雰囲気を察するに、ど うも効果を示さなかったらしい。 「なに、覚えてないのか? 俺の事」 途端、不機嫌な感情を隠そうともせずに言う。 俺という一人称を使う女性の知り合いに心当たりはない。 ないのだが、全く聞き覚えの無い声でもない。 「……どちら様でしょう」 だから、名前を尋ねたというのに、 「死ね!」 お気に召さなかったようだ。 ツーツー、という電子音を聞きながら、女心ってなんだ ろうなぁ、と感慨深げに呟いていた同僚の姿を思い出す。 もう答えは出たのだろうか、ご教授願いたい所である。 「ん?」 そう思って、同僚に電話を掛けようと携帯電話の液晶を 眺めてみれば、そこにはそっけない字体で「○○ 通話 時間40秒」そう記されていたわけで。 ずっと連絡を取っていなかったから忘れていたのも仕方 ないとか、寝ぼけていたから画面を見ずに着信ボタンを 押してしまったのも仕方ないとか、そんな言い訳は思い つくのだが、どんな事を言った所で結局あいつは怒って るのだから、とにもかくにも、俺はこの気難しい幼馴染 に謝る必要があるわけだ。 「もしもし」 今度はこちらから電話をかけてみると、 「なんか用?」 今度は向こう側がイライラした声を出した。 用があるのはそっちじゃないのか。そんな言葉が浮かん でくるが、喉を出る前に飲み込んでしまう。 「さっきは、その、すまん」 「……まあ、四年も連絡取ってなきゃ忘れるのも仕方な いんじゃないの? 俺は忘れてなかったけど」 久しぶりだというのに、キツい物言いは相変わらずとい った感じだ。 「いや、忘れたわけじゃない。ただ」 「ただ?」 「寝ぼけてただけだ」 女の子みたいな声だったから気付かなかった。 正直にこう言ってしまって、こいつを怒らせた事が何度 あるかはあまり数えたくはない。 「そう……なのか?」 疑われている。きっと過去の行いのせいだろう。 「ああ、お前の事を忘れるわけないだろう?」 「ふーん……」 「それで、本題は?」 「ん、ああ、お前、○○覚えてるか? 昔良く行った叔 父さんの喫茶店」 「ああ、覚えてるぞ。叔父さんは元気か?」 ――――――――――――――――――――――――― 【ヒロイン会話例】 ■序盤、ヒロインへの指導 「いいか? トレイの持ち方はこう」 「こうか?」 「違う。肘は直角に曲げて体に付ける」 「ん、こうか」 「ん、んん? こんな感じ?」 「違う、ここを……、こうして、こっちを……そう、そ んな感じだ」 「ふぉ……ぉ、変なとこ触るなよ!」 「わかった。これからはミスする度に触っていくから な」 「鬼め……」 「じゃあトレイの上に……、そうだな、このグラスを乗 せよう。これを落とさずに……あのテーブルの上まで運 んでみろ」 「ちょろいもんよ」 「おい、走るな」 「あっ!」 「あー……」 ――――――――――――――――――――――――― 【コメント】 主人公の方でエロゲ調の分に挑戦、 ヒロインの方で会話だけの文に挑戦してみました。 描き過ぎのような、描き足りないような、妙な違和感が残ってます。