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2-6
「ワタシが桑原です」一呼吸おいて、「社長から直々に『少数精鋭でやってくれ』と言われたんでねえ、この三人なのよ。少ないんだから、仲良くやろうねえ」
 うれしそうな笑みで言った。
 下泉は悪魔に魅入られたように、血の気が引いた。その仲良くやろうねえとは、生け贄にされるということだろうか。こっちは結婚してまだそんなに経ってない。家だって買いたいし、子供だってほしいのだ。一難去ってまた一難だ。人生とは過酷なものだと思い知らされた。
 正午が過ぎ、パソコンで作業していると、しばらくして香坂が呼びに来た。なんだかうきうきした顔をしていた。
「下泉さん、桑原部長が呼んでますけど」
「部長、どこにいるの?」
 下泉は呼ばれた場所、会社の近くにある喫茶店へ向かった。店内は落ち着いた雰囲気で、少し暗い照明がそれを醸し出している。テーブルの間を抜けていくが、会社の者はいないようだ。一番奥の席に桑原が新聞を読みながらコーヒーを口に運んでいた。
「よ、来たね」
 目で席を勧めてきた。下泉はぎこちない動作で席に着く。
「ま、そんなに堅くならないで、別にとって食おうってんじゃないんだし」
 そう言われるとますます堅くなった。本当にとって食うつもりじゃないのか。
 桑原は上目遣いにウェイトレスを呼ぶと、下泉のためにコーヒーをたのんだ。持っていた新聞を脇に置き、のぞき込むように顔を見た。


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